山口の伝説・昔話
人にまつわる話
長者が原と長者 〜山口市徳地〜
昔々、長者ヶ原にたいそう金持ちで、とても広い屋敷をもつ長者が住んでいました。
その長者は、ばく大な金銀財宝をもっていたにもかかわらず、たいそう欲が深く、その上
いつも、自分は金持ちの長者だということを鼻にかけていばりかえっていました。
その長者は、いつも自分の金銀財宝を奪われてはたいへんと思っていましたが、ある
日、だれにも見つからないように、夜中にこっそりと蔵の中の宝物を全部運び出し、屋敷
の裏庭の白いなんてんの木の下に埋めました。
これで宝物を盗まれることもないわいと、長者は一人でほくそえんでいました。
それから幾年か過ぎたある日、突然長者ヶ原の山が噴火しました。
付近の村人たちはみんな大慌てで避難してしまいましたが、欲深い長者は宝物が気に
かかって、そこから離れようとはしませんでした。
山がうなり、地がほえ、屋敷は崩れんばかり揺れましたが、長者は必死で柱にしがみつ
いていました。
そして、屋敷もろとも、長者も宝物も無残に灰の中にすっかり埋まってしまったのです。
長者の宝はいまだに土の中に埋まったままになっているということです。
「おんつぼ」と「めんつぼ」という二つのつつみは、その時の噴火でできたものですが、
今でもその当たりの土を掘り起こしたり、花を摘んだりすると、病気にかかるなど、何か災
難がふりかかってくるそうです。
それは欲深い長者の執念のためだといわれています。
文:渡辺るみ(出典:「徳地の昔ばなし」(徳地町教育委員会編集))
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