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 第五回   有料老人ホームの直面する課題  A

 

『特養モデル』のコンセプトで作られた低価格の介護付有料老人ホームのサービス提供上の課題は、もう一つある。それは特別養護老人ホーム同様に介護サービス中心に設計されているため、医療ニーズの高い入居者の受け入れを想定していないということだ。今後、これらの有料老人ホームが直面する課題が、入居者に対する医療ケア・医療行為への対応だ。

医療制度改革によって、療養病床の削減が注目されているが、一般病床でも、長期入院を減らすための締め付けが更に厳しくなっており、できるだけ早く治療し、一日でも早く退院してもらうというインセンティブが働くようになっている。これまでのように病気が完全に直ってから退院するということではなく、集中的に入院加療が必要な期間は入院するが、通院や訪問看護等で対応が可能となった場合は、早期退院が促進されるということだ。

この『入院から在宅』へという方針が、これからの高齢者住宅需要の増加の一因となっているのだが、問題はそう単純ではない。

有料老人ホームの経営者や施設長と話をしていても、『医療ケアは協力病院にお任せしています』『ホームで対応できない医療ニーズの高い高齢者は入居対象外としている』という意見が多い。確かに、入居時の選定においてはそれでも問題ないが、『入院から入居へ』の流れは、これまで入院対象だった人も可能な限り在宅で療養してもらうということにある。今後は、脳梗塞や肺炎で入院した入居者も、一定の医療ケアが必要なままで退院してくるということだ。

低価格のコンセプトで作られた介護付有料老人ホームでは、人件費の高い看護スタッフは最低限の配置しかされておらず、医療ニーズの高い高齢者に対する受け入れ態勢は整っていない。また、医療法人が同一グループで運営している老人ホームを除き、協力病院と言っても名前だけで、現場同士の実務的な連携が取れていないところがほとんどだ。そのため、病院からは退院を促されても、有料老人ホームではその受け入れ態勢が取れていないというケースもでてきている。『医療ケアは病院で』という有料老人ホームと、『在宅でできることは在宅で』という制度の狭間で、入居者は行き場を失う可能性があるのだ。

これまで、この有料老人ホームでの医療ケアの問題についてはあまり活発に議論されてこなかった。それは、自宅で家族が対応できる程度には回復しているのだから、介護福祉士等のプロの介護スタッフがいる老人ホームでは全く問題ないだろうと考えるからだ。これは退院を促進する病院でも同様で、特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームには看護師も配置されているから安心だという意見をよく聞く。

しかし、そこには大きな落とし穴がある。それは老人ホーム内での介護スタッフによる医療行為の問題だ。

医療行為とは、注射をしたり、手術をしたりすることだけではなく、本人ができない場合、薬を飲ませたり、シップを貼ったりすることも医療行為に当たる。現在の特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームでは、夜間など看護師の常駐していない時間帯が多く、現実的にはその一端を介護スタッフが担っているのだが、本来、これらの医療行為が業としてできるのは、医療法の中で医師や看護師の免許を持つスタッフに限られている。本人に順ずる立場として家族は可能だが、緊急時を除き、ホームヘルパーや介護スタッフは、行うことはできない。
 老人ホームに関係のある医療行為をまとめてみると、以下のようになる。

 医療行為だと知っているが、夜間等、いくつかの老人ホームで介護スタッフが行っている
                 ・・・・・痰の吸引・摘便・夜間の与薬

 医療行為となる可能性があるが、多くの老人ホームで介護スタッフが行っている                       ・・・・・爪切り・耳掻き・バイタルチェック

医療行為となる、痰の吸引はすべきではないが、気管切開の入居者で、実際に夜間に痰がからんでいれば、『看護師を夜間にそのたびに呼び出すのか』『入居者に我慢してもらうのか』『救急車を呼ぶのか』の選択肢しかなく、どれも現実的ではない。だからと言って、日常的に痰の吸引が必要という理由だけで、長期入院を受け入れてくれる病院は、全国どこにもない。

『背中が痛いのでシップを貼ってほしい』という入居者に『私は看護師ではないのでシップが貼れません。朝まで待って下さい』ということになれば、『それくらい・・・』ということになるだろう。つまり、厳密に医療行為を禁止すると、夜間に看護スタッフが常駐していない老人ホームでは、医療ケアに対する対応力は、家族のいる自宅に遠く及ばず、要介護高齢者は現在の特別養護老人ホームや有料老人ホームでは生活できなくなるのだ。

しかし、摘便や痰の吸引まで、教育を受けていない介護スタッフが行うことは非常に危険で、事故になれば入居者に多大な迷惑がかかることになる。介護スタッフが薬を配ったり,飲ませたりしているのを目にすることがあるが、一つ間違えば命に関わる問題となる。また、事故にならなくても行為自体が法律に触れる可能性があり、良かれと思ってやったことでも、家族が訴えればその介護スタッフは罪に問われることになる。それを日常的にスタッフに行わせていたということになれば、老人ホームの管理責任も免れない。

今後は『入院から在宅へ』というのが大きな流れの中で、これまで以上に点滴の管理や夜間の投薬等、医療ニーズの密度が高いままで退院する高齢者が増えてくる。有料老人ホーム内の医療・看護体制の充実が整っていないため、再受け入れを拒むことになるが、入居者や家族の立場からすれば『協力病院と連携しているので安心だと言ったじゃないか』とトラブルになることは間違いない。逆に、介護スタッフの役割や医療行為に対する危険性の理解が不十分なままで、入居者を受け入れることになると、トラブルや大事故が発生する可能性は高くなる。

『終身利用』『お亡くなりになるまで・・』とセールスしているのであれば、医療・看護を含めて看取りのシステムを構築する責任がある。『医療は病院で・・』ということだけでは、対応できないケースは多いのだ。

 

T  O  P