高次脳機能障害とは?

 交通事故やスポーツ、転落などによる脳の損傷(脳外傷)や、脳の病気(脳血管・脳腫瘍・低酸素脳症などの脳疾患)により脳に損傷を受けると、デリケートな人間の脳の回路はあちらこちらで切れてしまい、部分的に停止してしまうこともあります。

 外見上は回復し平常に戻ったように見えても、社会生活や日常生活の場に戻ると、以前と違う「変化」に家族も周囲も戸惑い、事態の深刻さに気づかされます。

 この後遺症こそが「高次脳機能障害」であり、見た目からは正常と異常の判断がつきにくいことから「見えない障害」とも呼ばれています。

高次脳機能障害の症状

 脳外傷や脳の病気の後遺症として記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害の認知障害などがあります。

具体的には・・・

 ○ 記憶が悪くなった    ○ 新しいことが覚えられない
 ○ ぼんやりしている    ○ 話がかみ合わない
 ○ 元の自分とどうも違う  ○ お金の使い方が荒くなった
 ○ イライラしやすくなった ○ すぐに怒ったり笑ったりする
 ○ 無気力になった     ○ 以前出来たことが出来なくなった
 ○ 不器用になった     ○ 計画立てて物事を実行できない
 ○ 転びやすくなった
 ○ 疲れやすく、仕事が長続きしない      ・・・などなど


高次脳機能障害者とその家族が置かれている現状

 高次脳機能障害はそのわかりづらさから福祉の狭間に置かれてきましたが、ここ数年の全国の家族団体の活動や厚生労働省による高次脳機能障害支援モデル事業(2001~2005年)の成果により、器質性精神障害の一類に認められ、精神障害者保健福祉手帳の取得が可能になりました。それにより、利用できる制度や社会資源も増えつつあります。

 しかしながら、社会一般のみならず医療関係者においても十分に理解されているとはいえず、対応できる施設も少ないのが現状です。復職や就職・就学についても「目に見えない障害」故にトラブルが生じやすく、就労等の継続が困難となる例が多く見受けられます。障がい者雇用制度による就労でも、身体障がいや知的障がいといった旧来の障害イメージのままの受け入れでは持てる力を発揮できない不適切な業務の従事につながることもあります。

 このように、障害そのものによる生きづらさに加えて、不十分な社会の理解が依然として当事者の社会的自立を困難にしています。