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浄水シャワー

○活性炭カートリッジ
 2013年に、新しい浄水シャワーヘッドを探さなければなりませんでした。それまではシャワーの塩素を除去するために、活性炭のカートリッジがついた浄水シャワーヘッドを使っていました。この商品は廃番になってしまったので、買いためてあったカートリッジを大切に長持ちさせるように使って来たのですが、ついに使い切ってしまったのです。このシャワーヘッドのカートリッジに使われている活性炭は、抗菌処理をしていないものなので、私の体にも合い、長年使って来られたのです。

 しかし、活性炭は水に濡れるとカビが生えたり、雑菌が繁殖しやすくなります。それで、市販の商品はだんだんと抗菌活性炭の製品に変わっていってしまいました。現在では、浄水器もシャワーヘッドも、活性炭カートリッジは、調べた限り、すべて抗菌活性炭になっているようです。「ようです」というのは、現在では抗菌していても、その表示がなされていないものが多いからです。たいていのものは、銀イオンで抗菌されているようで、抗菌活性炭が出始めの頃は、その効能を示すためにはっきりと表示されていました。

 しかし、そのうち、この銀イオン抗菌が人体にとって害のあるものではないか?との批判が出るようになり、それに伴って、抗菌表示はなりを潜めてしまいました。銀イオン抗菌活性炭を通した水は、塩素や有害物質を除去することはできるのですが、水に銀イオンが含まれるため、水槽に入れると魚が死にます。「養魚用には使用しないでください」と注意書きがしてあります。この表示があるものは、銀イオンで抗菌された活性炭を使っているようです。様々な商品を検討してみましたが、どの製品にもこの注意書きがありました。

 抗菌すれば毒性が、抗菌しなければ雑菌が・・・となって、浄水用活性炭カートリッジは難しい存在です。抗菌なしの活性炭を使っていたときは、シャワーを終えるごとにカートリッジを本体からはずして、風通しのよい場所で乾燥させていました。カビを防ぐためです。

 魚が死ぬことが即人体に害があることの証明にはならないのかもしれませんが、私の場合には、銀イオン抗菌に対するはっきりとした過敏反応が起きるので、使うことができないでいます。

 抗菌製品が市場に出回り始めた頃、銀イオン抗菌プラスチックで作られた浴用品(洗面器など)を売り場で見てみましたが、強い目の痛みが起きて、とても使えそうにありませんでした。また活性炭自体にも目の痛みの反応が出るようになってきました。かつての浄水シャワーヘッドには反応しなかったのですが、新たな製品を試すとなると、銀イオン抗菌の問題をさしおいても、活性炭自体に反応する可能性がありました。そういう事情で、抗菌活性炭カートリッジのシャワーヘッドは選択肢からはずさなければなりませんでした。

○亜硫酸カルシウムのカートリッジ
 そもそも、なぜシャワー水を浄水しなければならないか?というと、CS反応よりも肌の過敏性の方が原因としては大きいです。塩素が入ったお湯でシャワーを浴びると、肌がガサガサになります。特に指先は皮膚が薄いので、皮がむけてボロボロになります。水道水中の塩素は、吸い込んでもそれほど具合悪くはなりませんが、肌につけると反応が出るということです。

 活性炭の浄水シャワーヘッドは無理なので、代わりに亜硫酸カルシウムを使った塩素除去用のシャワーヘッドを買ってみました。三菱ケミカル「クリンスイ 浄水シャワー」です。活性炭なら塩素以外の有害物質も吸着してくれますが、この製品で取れるのは塩素だけです。化学的に反応して塩素を除去します。

使ってみると、シャワーからは塩素の匂いがしないし、肌がまろやかになる感じがしました。しかし、使い続けているうちに、少しずつ問題が出てきてしまいました。

 気づいた点は・・・
・肌がゴワゴワになる。油っぽくなる。
・髪の毛が異常に絡まる。くしに灰色のカスがたくさん付く。


 特に髪の状態がひどく、不快感が強かったです。せっけんの泡立ちも悪く、皮脂の汚れが取れない感じもします。

 このような変化の原因が、浄水シャワーヘッドにあるとは気づかなくて、かなり長期間使っていました。2014年夏に使い始めて、翌年の秋までは使っていたと思います。どうしてこのような状態になるのか、原因がわかりませんでした。

 次第に浄水シャワーヘッドが原因だと気づき始めたので、試しに使うのをやめてみました。すると、上記のような不快な症状はおさまってきました。しかし塩素が除去されないわけですから、肌がガサガサに荒れてきてしまいました。原因は浄水シャワーにあることがはっきりしたものの、塩素を除去しないわけにもいきません。何か別の方法を検討してみるしかありませんでした。

○浄水シャワーの原理
 これを機会に、浄水シャワーについて調べてみました。シャワー水の塩素を除去するための方法は、大きく分けて次の3つがあります。

・活性炭
塩素を吸着する。他の有害物質も取れる。銀イオンで抗菌している(と思われる)。

・亜硫酸カルシウム:塩素のみ除去
CaSO3 + HClO → CaSO4 + HCl
(亜硫酸カルシウム+次亜塩素酸 → 硫酸カルシウム+塩酸)

・ビタミンC:塩素のみ除去
C6H8O6 + NaClO  → C6H6O6 + H2O + NaCl
(ビタミンC+次亜塩素酸ナトリウム → 酸化ビタミンC+水+塩化ナトリウム) 


 調べていくうちに、なぜ亜硫酸カルシウム方式のカートリッジで不快な症状が出たのかもわかるようになってきました。せっけんは、水道水中のカルシウム・マグネシウムイオンと反応すると、金属せっけんを生み出します。せっけんカスと呼ばれているもので、白い微粉末です。これが皮膚をゴワゴワにさせたり、髪の毛を絡ませたりする原因です。含まれているカルシウム・マグネシウムイオンの量によって、水は軟水・硬水にわけられます。含有量が多いのが硬水です。
  軟水 中硬水 硬水
硬度  0 - 60 60 - 120 120以上

(単位:ppm)

日本の場合、たいていの地域の水道水は軟水なので、せっけんを使ってもそれほど金属せっけんが発生することはありません。しかし、亜硫酸カルシウムの浄水シャワーを使うと、髪のきしみが半端ありません。猛烈に絡まって鳥の巣のようです。これはひょっとして、亜硫酸カルシウムのカートリッジからカルシウムイオンが溶け出して、せっけんと反応しているのではないかと思いました。ネットでそのような解説がないかと探してみましたが、有益な情報は得られませんでした。「クリンスイ 浄水シャワー」の商品レビューに「肌がゴワゴワする」と書かれたものが一件見つかっただけです。

○硬度を調べる
 私はシャワー水の硬度を調べるために、硬度試薬を買ってみることにしました。手軽に手に入るのは、熱帯魚用の試薬でした。これを使って調べてみます。

テトラテスト


 水道水とシャワー水とで硬度を比べてみます。 水道水は、ドイツ硬度で2pH。シャワーの出し始めの水は7pHとなりました。これをアメリカ硬度に換算すると、水道水・・・17.8ppm、出し始めの水・・・124.6ppmとなります。水道水が軟水なのに対して、出し始めの水は硬水になりました。カートリッジからカルシウムイオンが溶け出しているのではないかと思います。シャワー水をずっと出してから測ると硬度が下がって、水道水と同じくらいになります。ただし、この試薬はとてもおおざっぱにしか測れないもので、硬度が15以上違っていても同じ反応になる程度のものなので、もっと詳しく測れるものならば、出しっぱなしにしたあとのシャワー水でも、水道水より硬度が高くなる可能性があると思いました。

 洗髪のあと異常に絡まる髪の毛、くしに付く大量の白い粉、ベトベトとした物質。そういうのを考え合わせると、やはりシャワーヘッドからカルシウムが溶け出して、せっけんと反応していたのではないかと思います。水道水の硬度が高い地域で肌がゴワゴワになるように、私の肌にもシャワーヘッドの影響が出てしまっていました。(水道水のカルシウム・マグネシウムイオンとせっけんの反応、洗浄力、金属せっけんについては、「スモール・データ・バンク2 洗剤」で詳しく書いています。)

 活性炭の浄水シャワーも亜硫酸カルシウムのものもダメなのだから、市販品で残る選択肢はビタミンCのものだけです。今度はこちらを検討してみることにしました。

○ビタミンCで塩素除去
 お風呂の塩素を取る方法として、ビタミンC(アスコルビン酸)の粉末を入れる方法があります。調べてみると、水道水の塩素含有量にもよりますが、お湯100リットルに対してビタミンCを約100mg(0.1g)入れると塩素が除去できるそうです。水に対して、本当に微量のビタミンCで済むことがわかります。このような割合のビタミンCを、常に浄水し続けるシャワーに供給できるものか?と考えました。よほど精巧な仕組みのものでないと、一定割合のビタミンCを混ぜるのは難しそうです。

 ネットでビタミンCシャワーのレビューを呼んでみると、この問題点が浮き彫りになってきます。「最初はシャワーに装着したビタミンCの減りが少なかったのに、使い続けるうちに減りが早くなった」「2ヶ月持つはずのビタミンCをたった1週間で使い切ってしまう」などの声が寄せられています。適正量よりかなり多くのビタミンCがシャワー水に混じってしまうようです。

 では、シャワー水にビタミンCが多く混じるのはよくないことなのでしょうか? ランニングコストを抜きにしても、これは重要な問題です。私の場合は、ビタミンCを大量に含んだ水(酸性:なめると酸っぱい)で肌が荒れるのではないか、という心配がありました。

 また調べてみると、せっけんとの反応も大きな問題となることがわかりました。せっけんは、弱アルカリ性のもので、せっけん液が少しでも酸性に傾くと洗浄力を失って、脂肪酸(油)に分解されてしまいます。ビタミンCを多く含んだお湯でせっけんを使うと、すぐに分解されて洗浄力がなくなり、あとにはベタッとした脂肪酸(油)が残るはずです。油が取れない上に、せっけん由来の油が加わることになります。肌の状態は悪くなるのではないか?と予想されました。

 亜硫酸カルシウムの方式にせよ、ビタミンCの方式にせよ、塩素を取りつつせっけんの洗浄力を維持するのが難しいことがわかります。

・亜硫酸カルシウム
せっけんがカルシウムイオンと結びついて金属せっけんの白い粉が出る。洗浄力が落ちる。

・ビタミンC
お湯が酸性になって、せっけんを脂肪酸に分解。洗浄力が落ち、油でベトベトになる。


○自作のシャワーシステムをつくる
 市販のビタミンCシャワーも諦め、独自の方法で対策してみることにしました。部品を自分で用意して、組み合わせて自作のシャワーシステムを作りました。



 ためたお湯に適量のビタミンCを入れ、塩素を除去します。そのお湯をポンプでくみ出して、シャワーにします。

 容器は15リットルの縦長型ゴミ箱を使っています。我が家はユニットバス(洗い場なし)なので、浴槽内に入れてもコンパクトなものを選びました。(もし同じようなことを試す方で、お風呂に洗い場がある場合は、浴槽にお湯をためビタミンCを入れて、ポンプで汲み上げる方法も考えられます。しかし私が買ったポンプは、水位が低いと汲み上げてくれなくなるので、浴槽だとかなりの量のお湯をためなければいけないかもしれません。その場合も、縦型の容器を使うと汲み上げやすくなると思います。)

 ホースはホームセンターで量り売りしてもらいました。2m。シャワーヘッドは散水用のものです。ポンプはホームセンターで買いました。洗濯機に風呂の残り湯を汲むためのものです。

 縦型ゴミ箱は、15リットルでは少なくて、途中でお湯をため直さなければならないので、もっと大きめのものを買えばよかったと思いました。

 費用は、(だいたいの金額で)、容器(ゴミ箱)1500円+ホース150円+シャワーヘッド400円+ポンプ1200円で、全部で3250円で新シャワーシステムが導入できました。

 15リットルのお湯に対して必要なビタミンCは15mg(1000分の15g)です。これはかなり少ない量です。買ったビタミンCに付いていた計量スプーンは1gのものなので、その約70分の1になります。とても測れるものではありません。それで、ぬらした爪楊枝の先に粉を少量つけて、水に溶かしています。嗅いでみて塩素の匂いがなくなれば、除去できているのがわかります。

 ビタミンCは最初は通販で、1kg1000円くらいの食品用のものを買ったのですが、なぜかこれに目の痛みを起こし、使えませんでした。「ビタミンCはダメなのかな?」と諦めかけたのですが、ドラッグストアで日本薬局方のアスコルビン酸(ビタミンC)を買ったら、これは大丈夫でした。300g3000円と、食品用の10倍の値段がしますが、使う量が少ないので、ランニングコストはそれほどかかりません。1年半くらい使っていますが、まだ3分の1も使っていません。このペースで使うと、一瓶で4年以上持つのではないかと思います。

 こうして独自のシャワーシステムを構築し、塩素除去のシャワーを浴びられるようになりました。とは行っても、ごく微量とはいえ、ビタミンCが入っており、液性はわずかに酸性となっているようです。せっけんの泡立ちにくさや分解された脂肪酸の問題もあり、このあともずいぶんと試行錯誤を続けることになりました。この続きは、「スモール・データ・バンク2 洗剤」で書く予定です。

〔まとめ〕
 市販の浄水シャワーヘッドは、主に3つの方式があります。
(1)活性炭(抗菌)
(2)亜硫酸カルシウム
(3)ビタミンC


 (2)(3)はせっけんと併用すると、いろいろと問題が出てくるので、選択するとしたら、(1)だと思います。私は銀イオン抗菌と活性炭そのものに反応するので使えませんでしたが、大丈夫なら手軽に導入できることでしょう。活性炭の浄水シャワーが使えない場合は、ためたお湯にビタミンCを微量入れる自作シャワーシステムを作ってみるのもいいかもしれません。他にも工夫すれば、様々な方法があると思います。

(2017年11月)

「洗剤」へ続く
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