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〔3〕対処法“私の方法”  買い物の手順 (2000年作成)

買い物メモ
出かける前にメモをとる。
今日は、○○スーパーと区役所。

××ビルの前、工事中。○○通りの方を通ること(迂回)。

服装は、白カットソー。フレアースカート(11/2に着たもの)。
このメモを忘れずに持っていくこと!!

出かけてから帰るまで、1時間を目安とする(目標)。
スーパーが先、区役所があと。(注:区役所の方が空気が悪いから)
区役所すいている時間、午後3時頃行く。
出発2:30。

スーパーに着くまで、他のものに気をとられても寄り道しないこと。
ウロウロするなら、帰り道ですること!!

スーパーで買うものリスト
塩1、豆乳2、バター1、パン1、鶏肉200g、豆腐1、油揚げ1、だし昆布1、春雨1。

スーパー、まず、調味料売場 → パン売場 → 乾物(売場のにおい注意) →
乳製品売場(冷却装置のあたり注意、近づかない)2分以内! →
豆腐売場 2分以内!→
肉売場 鶏肉、うどん・そば用、カットされたもの200g。
それがないときは、親子丼用。
それがないときは、ムネ肉かたまり。

目的のものがないとき、迷ったときは、いったん肉売場を離れること! 
離れて考え直してからまた戻る。

あまりにもぐあい悪いときは、買い物カゴを置いて、いったん外に出て考えること。
2階のトイレに行ってもいい(←空気マシ)

肉売場、総計1分以内としたい。(←ムリか?)
肉に限らず、品切れで手に入らないときは、
その場で代替案を考えずにいったん家に戻ること!! しきりなおし。

レジに並ぶとき、前に並んでいる人のにおい気をつける。
並んでる最中、めまいがひどいときは、カバンから何か出してそれを見つめること。
(注:間近のものを見つめているうちは、めまいは少なくてすむ。)

袋詰め。鶏肉におうときは、ビニールで三重にすること。
口をちゃんとしばる。
荷物忘れずに持ったか確認。
財布、カバンに戻したか確認。確かめること!!
傘かくにん。

区役所、短時間ですませること!
1階のトイレに近づかない。(芳香剤)
用紙をもらったら、いったん外に出て記入する。
ぐあいが悪くなったら、用紙を持って家に帰り、後日あらためてくること。

呼ばれるまで待っている間、がまん。

帰り際、証明書、印鑑、カード、財布、全部そろっているか確認する。
忘れ物に注意。
傘!!忘れないように、指さし確認。

××ビル工事注意する。迂回する。

家に帰ったら、すぐに着替える。
買い物したもの冷蔵庫(メモつくって貼る)。
↑疲れてもがんばってやる。

○このメモについての解説
 メモをつくること自体にものすごいエネルギーを使いました。過去の記録を読みながらプランを立てました。何もないところから予定を立てるのは無理でした。途中でメモをつくっていること自体を忘れてしまうこともありました。メモを持っていくのを忘れてしまうこともありました。外出先で、メモを忘れたことに気づきます。

 買い物途中で、メモの存在を忘れてしまいます。あとは、ぼんやりしたまま何となくものを買って帰ってきます。買い忘れや、「何でこんなもの買ったの?」というものがいっぱい。それと、注意が足りないので、いらぬ曝露を受けて、CS症状を起こしてしまうことも多かったです。

 当時の思考力では、メモがないと、スーパーのあとに区役所に行くことを思い出すのは不可能でした。後日、あらためていくことになります。

 ぼんやりして自分の意識が薄れている中で、珍しいものや新しいものに目をひかれ、そちらに行ってしまうことがありました。あてもなくウロウロしたり、予定とは別の場所に足を伸ばしてしまいます。CS的安全を確保するためには、これらの行動を統制する必要がありましたが、自分の行動を管理するのは難しいことでした。

 予想もしないような事態に出会うと、頭が真っ白になってしまい、対処できませんでした。スーパーの売り場の一部が改装工事をしているような場面です。いつもとは違う状況に適応できず、どう行動していいのかわかりません。建材のにおいが強いときは、すぐにその場を離れなければならないのに、うまく気持ちを切り替えられませんでした。その売り場で買う予定だったものに、気持ちがとらわれてしまい、予定変更することができません。適切な判断ができず、いたずらに化学物質に曝露してしまうことが多かったです。このような状況のときは、すべての予定を取りやめて、家に帰ることにしていました。

 買おうとしていた商品が品切れだった、というようなささいなことでも、頭が真っ白になりました。予定どおり行かないと、どうしていいのかわからなくなってしまいます。代替案はすぐには浮かばないので、一度家に帰るようにしていました。その場でいろいろ考えて、あまりに精神力を使いすぎると、疲れ切って家に帰ることすら忘れてしまいます。いったん家に帰って、よく考え直してから、また出かけることにしていました。

 家に帰り、心が平明になるのを待って計画を立て直します。しかし、化学物質に曝露されたあとなどは、何時間も意識が平明にならないことがありました。この頃は、頭がちゃんと働いている時間というのが、平均で1日2時間程度しかありませんでした。一つのことをやりなおしたりやり遂げるのに、膨大な時間がかかりました。

 外出の用事は、1回に2つまでが限度でした。それ以上は覚えていられません。2つの用事をすませたら、家に戻ってしきりなおしをして、また出かけるようにしていました。

 持ち物をよく忘れました。傘、カバンなど、気づくとどこかに置いてきてしまいます。いつ自分の手を離れたのか、全く思い出せません。荷物の数が2つ以上になると、覚えていられません。常に2つ以内に制限するようにしていました。傘は、ひもでカバンにつないで分離しないようにしていました。財布を忘れると大変なので、財布とカバンをひもでつないでいました。「指さし確認」をよくやっていました。しかし、タイミングよく確認できないので、出かけている間ずっと神経を使わなければならず、とても疲れました。(今、回復してみると、これは大変な労力でした。)

 2000年当時は、身体感覚が弱かったと思います。だから、荷物が自分の体のどこにあるか、ということや、その存在感を感じにくかったです。いつの間にか、自分の体から離れていってしまっても、それに気づきません。また、注意力をうまくコントロールできませんでした。常に注意を保っていることもできないし、注意力を発揮しなくていいような場面で力を抜くこともできませんでした。

○回復した状態とは
 精神症状が出ていない人にとっては、私の当時の障害・不自由さがわかり、正常に精神が働いている状態との比較ができたことと思います。しかし、読者の中には、現在、当時の私と同じような精神症状が出ている人もいるでしょう。その人たちは、きっと「正常な状態」というのが、どういうものなのかわからないだろうから、ここにそれを書き記したいと思います。

買い物に行く(現在の私の状況)
何を買うかは、あらかじめ軽くメモしていく。

出かける。
何かのついでに買い物をすることもある。(出かけた帰りにスーパーに寄るなど。)

売り場に行く。
目的の品をカゴに入れる。
その間に、予定していたものとは別の商品にも目をやって、よさそうなものを買う。
このとき、この先3食くらいの献立を頭に思い描く。組み立てる。
当初予定していたものとは違う献立になることもあるが、変更内容に合わせて買うものを変える。

買い物をしながら、ときどき周囲の環境(化学物質)に目を配る。
あくまで買い物がメインで、周辺視野でチラチラと見ながら注意する。
それ自体に心を奪われることはない。

どちらの商品を買うか迷うようなときには、
2つの商品の違い(値段、品質、使う目的、今後の自分の予定に合っているかなど)を頭の中で考えて、組み立てて結論を出す。
あまり考えず、直観で決めてしまうこともある。

レジでお金を払い、袋詰め。
これは、無意識のうちにやっている動作で、以前のように、そのことに激しく注意を向ける必要はない。
他のことを考えながらやっている。

買い物の最中、ずっと自分の荷物の状態に目を配り、落としたりなくしたりしないか注意している。
しかし、これは、リラックスしてごく自然にやっていることであり、他のことをしながら、ときどき注意を向けているにすぎない。
そのことにエネルギーを使うことはない。
荷物に異変があったとき(落としたりしたとき)だけ、特に注意が向けられる。
時間の流れも、わざわざ意識しなくても、だいたいどのくらいたったのかがわかる。

----以上のことは、健康な人であれば当たり前のことなのに、2000年頃の私には、思いもよらない世界でした。
 

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