第3章 太古の王が風に畏怖を重ねた日













静寂



そして爆発



脂汗が凍る



次の瞬間



たぎる血が、興奮が、




内からその氷を打ち砕いた





















「パーン!」








正に足元だった。







水中にルアーが見えた瞬間、銀色の爆発が起こった。














小さいけど、これがアフリカの王、暴君“ナイル・パーチ”だ!!
ルアーはやはり無敵のCDマグナム・ホットタイガー!(賜 上等兵さん)










































時間は前後するが、了とされたし















先日












島に着いた俺はよろよろになりながら島を開拓した。






どこまでもシャローが続く






ことごとく、浅い。





俺は少しでも水深のある場所を探して島を探検した




















数十分も歩いただろうか?






あった!







切り立つ崖






昔、THE FISHING(釣り番組)で初めてナイルパーチを知った日



TVの中で村越正海さん(釣り界の有名人)が立っていたような



俺のイメージの中での“ナイルパーチ”な場所が



そこにはあった。

























しかし既にあたりは薄暗い。



「暗くなると毒蛇が出る」

とは島に渡してくれた船乗りたちの助言だ。
(彼らは俺の挑戦に付き合って島に居座った)



帰り道のことも考え、その日は早めに切り上げ床に着いた



ま、床といっても砂の上に船のマストを広げただけなのだが・・・。





不思議と蚊がいない。

プラネタリウムの中、俺は眠った。


















・・・・そして朝一、狙い済ましたように冒頭の1匹と出会ったのだ。













その後、俺はその崖を開拓した。




しかし、いくら外国とはいえ、そう簡単に釣れるものではない。




釣りたいだけならフィッシングツアーを使えばいい。




おそらく、ナイルパーチ狙いなら、エジプトのアスワンハイダムにいくのが確実だろう.





だがしかし俺は自ら苦行の道を選んだ。




究極の自己満足




それはオナニーにも似た、変態的釣欲を満たすため。















これまでの経験、勘を総動員し、




日が暮れるまで闘った。













陸からはいくら周囲より深いといっても限界がある。




崖の沖合いをトローリングだ!




といっても、アブラギッシュな金持ちデブ釣り師じゃあるまいし、




エンジンボートでのトローリングじゃない。










手漕ぎ、風任せトローリング。











沈むルアーである程度水深を把握しながら、


2本の竿で違う水深を流していく。














ただワインを飲んで待ってる“松方弘樹式トローリング”じゃないゼ!




















船首の方向を指示し、


スピードを指示し、


時には俺自身もオールを操り



崖から少しずつ離していく


















でかすぎる湖



俺はこの崖の沖だけにエリアを絞った。











I WANNA BE SO BEAUTIFUL ! ! ! !








5メーターライン


10メーターライン・・・・




刻んでいくのだ。



近づいていくのだ。


















































































































































・・・・この日終了(汗)



















































しかし翌朝・・・











昨晩俺達が沖合いに仕掛けたはえ縄

(はえ縄:生餌付きの針が何本も着いた仕掛けを一晩中沖に仕掛けておく漁法。マグロ漁他、主に大型の魚相手に行われる)




111センチのナイルパーチがヒット
(正確には俺が釣ったんじゃないので写真は控えめ 笑)






















俺は燃えた。


























昨日の惨敗



























もう迷いはない!


























































オカッパリだ!
(オカッパリ:岸から釣りをするの意味。バス釣り用語「陸っぱり」と書く)





























































いつものスタイルだ!

























































































岸釣りスターに俺はなる!!←爆笑
(ワンピース風味・・・笑)  






















































らいらいらいらいら〜〜〜〜!!!
(↑ テンション爆裂、野性に帰った状態の俺の脳味噌効果音)






喝っ!
男ならベイトでラパラでしょ?
やはり最強のSシャッドラップ(賜 曹長さん)
こんなチビサイズはごぼう抜きじゃ!

































































































それでも






































































憤っ!!
現地人が「イエロータイプ」と呼んでいた全体的に黄色い固体。
めっちゃきれいやで〜!!同じくSシャッドラップにて。






























































同じ魚だけどアップをもう1枚。
ほんま体高があってキレイな魚やったな〜
現地人に撮ってもらうとこの写真は尾っぽ切れてるし、
上の写真はブレてるし・・・いい写真撮るのに苦労しますネ(汗)

神風吹かすゼ、Baby ! !

























































殺人太陽の元



俺は竿を振り続けた。




肌がジリジリ鳴っている。



全てが白く見える。



暗黒大陸だと?!






俺はアフリカに“白”というイメージを持った。






白き灼熱は俺のオキニのTシャツの色を奪っていく。






たった1日しか着ていないのに、だ。







全ての色を奪っていく。










俺の気力と体力も共に・・・





















リアル、死ねる・・・・

(多分60歳以上の人なら10人に3人は死ぬでしょう。断言!)


















しばし休息

























休息?!















ティラピア。
タイ製スピナーにてGET(賜 上等兵さん)

















いくら雑魚釣りとはいえ、

珍魚ハンターの俺はやっぱりマジになる。


魚の体系や口の形、他には自分で食ってみた時の筋肉の種類、筋肉つき方などから

魚の泳ぐスピード、捕食スタイル等の習性を予想する。


後はバス釣りで学んだことを応用すればいい。


クソ広い湖でも必ず魚がつく場所はある。


沈み石を水面の水ヨレで見つけ、

その周りをレンジ、スピードを変え、狙い打った。




釣りなんて、基本は全部一緒だ!




結果は必ずやってくる!

















アフリカの“トゲ”
とりあえず「タイガーフィッシュ」と分類される魚は釣ったゼィ!
こいつもタイ製スピナーにてGET










釣師の休息とは雑魚釣りのことを言うのだ!

日陰でビールなんて飲んでる場合じゃないゼ!



・・・ってあれば絶対飲むけどね(笑)









































































俺は沖に浮かぶ岩周りをどんどん攻めていった。


















































!?
























































さっきこんなところに岩があったっけな?
















































































































































































隊長〜!前方にワニ発見であります!!!









か、軽く4メートルはありますぜ、旦那!





立ち込む瞬間をマジ狙ってますね。





ア、アドベンチャ〜・・・
















































しかしその直後































ワニなんてどうでも良くなる、とんでもない事態が起こったのだ!!!























































































遥か沖合いで波が砕けた。



















































って、波じゃない!!!





















































足元のロープ(直径5ミリ)が湖に吸い込まれていく。














































魚だ!











本物の王だ!!!










はえ縄に暴君が食いついた!!!























遥か沖また波が砕けた。














いや
それは波じゃない。









「しんじらんねーーー!!!





俺達は交代でロープを握った。











数人掛りの綱引きだ




































































































そして・・・・







































































ん〜じゃこりゃぁああああ!!!!!

肉は干物に加工され船員たちの小遣い稼ぎとなりました。
てか
肉ついてたら持ち上げられないっす!(汗)推定50キロオーバー!!















神風ははえ縄に吹きました・・・。












俺達みんなで仕掛けたはえ縄なんだけど・・・

俺が釣ったって言っちゃっていいのかしら?笑
(Ans:ダメです。)
















ま〜、も〜、
全てがどうでも良くなるネ!














手前のようなロープでのやり取りとなりますです。
島へ渡してくれた帆船の船員一同と
(まんちゃんのホガグリップははまらず!)

戦慄の旋律




有鱗淡水魚の王者

“暴君”ナイルパーチ







この魚はまだまだでかくなる。

過去に捕獲されたものの最大記録は400キロとも言われている





“旅人”のとして持ち運べる装備には限界がある。

いつか旅人ではなく、釣り人として、

世界最強の装備でもって、この魚の最大クラスに挑もう。




それもトローリングではなく、できればルアーキャスティングで




一つ夢が増えた。



























111センチの魚はは俺のやる気に火をつけた。






だけどこいつは・・・ね?














逆にやる気失っちゃったよ(笑)



















生きたこいつを見れただけで満足だよ。















もう、釣りなんてどうでもよくなってきた。





























小さな子供くらいなら食われるでしょう。
あへあへ〜












































































その日初めて、俺は魚相手に“恐怖”を感じた。

















戦慄
















ただただ、偉大ナリ


















俺ってなんてちっちぇ〜んやろな〜




あへあへ〜





ぴーひゃら ぴーひゃら




あへあへ〜




頭のネジが飛んだなり〜




あへあへ〜



























ツルカナ湖に日が沈む・・・




































その日、戦慄の旋律が鳴り止むことはなかった

























































帰り道

砂の中に何かを蹴飛ばした。

黒い、小さな灰皿ほどの塊



それは骨だった。

石化し、黒光りする“王”の化石だった。



太古の昔からこの湖を泳ぎ、暴れた王



今は化石となり砂の中、

現れてはまた埋もれ・・・・




全ては風の気まぐれだ。





そうだった

正に此処、サハラ砂漠南端のツルカナ湖周辺は人類発祥の地だ。

まだ体毛が残り、猿人と呼ばれていた頃の我々だ。


何百万年もの昔から、きっと王は畏怖であり

時には至高のご馳走となり

この砂漠に命をつなげてきたのだろう。















ズボンのポケットに押し込んだ化石が、歩くと互いにぶつかり合って音を立てた。






















上質の備長炭どうしをぶつけたような





澄みきった音






















舌に乗せた真っ白のグラニュー糖みたいに





やさしくなじみ、しみこんでくる音。























猿人から原人へ、そして現世人へ





人々のため息や歓声も



王の瞳の妖しき色も・・・







現代と太古


俺の足音、化石の音





全てを抱いた“やわらかな化石”が

砂を運び、湖面を揺らして吹き去っていった。




















そこにもう一つの音を重ねて。
































超えて、届け!
!?)














・・・Fish on in KENYA  

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