第4章 across the line〜人間不信と時流を乗せて〜





バスが走っていく。


西の空に茜がさしている。











今朝は砂漠の中だった。


現在、小雨の山道を走っている。


俺はリュックからジャケットを取り出した。





島から本土に戻った俺

あの怪物の死に際を見れたこと

それだけで“暴君”は充分だった。


そして俺には獲らねばならない魚がいた


“龍”
ポリプテルス
こんな魚
近々イラストかくか、行きつけの熱帯魚屋で自分で写真とってきます


アフリカ熱帯域に生息し、
幼魚は鰓が外にとびだし、例えるならウーパールーパーのような様態
すなわち魚類から両生類の進化の過程に位置し、
白亜紀(ティラノサウルスやトリケラトプスの時代ね)の地層からも発見された魚。
すなわち1億年以上姿形を変えることなく暗黒大陸に命をつなげてきた

真の“生きた化石”

“龍”に最も近い魚
(近々おれがイラスト添えるけど、WEBで検索すれば熱帯魚マニアのHPがいっぱい出てくるから知らない人はみてみて!
まんま“龍”だから)




ルアーで釣ったなんて情報は当然なかった。

この魚を狙った釣り人の話など、聞いたこともなかった。
(熱帯魚屋は追い込み漁で獲りに来ているらしいが・・・)

「この辺にいる」・・・それは世界地図単位での情報

“他人も見ている夢じゃない、僕一人だけの夢である”

リンク先、上等兵さんの言葉を胸に刻み、俺はこの魚を追って聞き込みを開始した。











・・・・結果、有力情報は得られた。
しかし・・・


「ライフル担いだガートマンを1日3人雇い、
警察の敷地内で寝る」



龍がひそむのはゲリラの多発地帯の真ん中だった。








俺は迷った。

ガードマンの雇う金は・・・チャーターする車は・・・

以降の旅が苦しくなるが、ぎりぎり何とかならないこともなかった。







しかしそれは“釣旅”であろうか?

3本の銃口を周囲に向けながら竿を出し、楽しいだろうか?

夢と命の天秤

「臆病者」 「夢を追いきれぬ負け犬」 そう叫ぶ、もう一人の自分がいた

「死んでも釣ってやる!」
・・・・でも、そうは思えなかった。





やっぱり俺は笑顔で釣りしたい!
大好きだから、マジだから、だからそこには笑みを・・・












ただ、ただ、夢を追うその障害が

己の体力や気力ではなく、

治安ということが


最後に挑むべきが、

自然ではなく人だということが

そんなん、がっかりだ!







人類愛?そんなもんクソクラエ!

世界平和よ!俺と、俺の夢のために訪れよ!


















・・・・そしてもう一つ・・・・


「島」へ渡してくれた船員たちのことだ。


「竿を置いてけ!日本でも代わりは買えるだろ?」

「時計くれ!」   「ライトくれ!」   「チップくれ!」


ふっかけてくる船賃、口さえ開けば金、金、金・・・



「とりあえずせがんでみる、もらえりゃもうけもん。それがアフリカだ」

とあるアフリカ紀行文でそう言っていた。

「ボッたくり、セビりはお決まりの挨拶みたいなもんで、気を悪くしちゃいけない」

そう言っていた。

けど、だけど・・・・

ザくらしいんだよ!ムカつくんじゃ!ボケが!!




決していい気分じゃないんだ。


そうさ、彼らはわかってんのさ。外国人は金持ちだって

そうさ、俺もわかってんだよ。超えられぬ一線があるって。





でも、だけど・・・













そして思い返すは島の夜のこと・・・・


砂の上に船の帆を広げただけのベッド。

星空の下、船員達と俺は仰向けに転がった

船員の一人がふと口にしたこと・・・

「30万Ksh(ケニア・シリング)・・・」


日本円で45万円

それがケニアの大学の年間授業料だそうだ。
(公立か、私立か、など詳しいことは不明)

「息子に大学に行かせたい。ただ、稼ごうにも仕事も、仕事に就くための教養もない」





祖国から遠く離れ、一人

星流る砂漠の夜



金の価値を見極める難しさ

人を信じる怖さ


いつか俺も父となったとき、
我が子のためなら恥もプライドもすてれるのかな?
汚れたやり方でも、人を騙してでさえも・・・



小ナマズを狙った置き竿
その先端の鈴が、哀しい風を伝える。

少し冷たい風を。




















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

























人間不信を乗せ、憂鬱を抱いたトラックは南下する

エジプト、ケニアときて、俺の心はすさんでいた。

一刻も早く違う国へ、タンザニアへ行きたかった。


何か変わってほしかった。


景色は砂漠は高山へと変わった。

昼飯休憩に停まった小さな村。


「Hey、一緒に飯食うか?」


同乗してた一人の黒人(といっても回りは当然みんな黒人だけど)に声をかけられた。

いままで出会った人物みんなが「金、カネ、かね・・・」

人間不信、警戒オーラだしまくり、そんなすさんだ俺の心に、

その人の目はある人物を想起させた

「ジョ、ジョージさん・・・」

それは遥かパプアで出会った、あのジョージさんと同じ、優しく、深い目をした方だった。












その方の名はMr.エマニエル。

それから翌朝まで、彼と行動をともにした。

エマニエルさんは33歳、現在、パソコン関係の情報技術者。

それでなんとあのマサイ族なのだ!

「牛の放牧だけじゃ・・・ね?」


とケニア首都の有名理系大学を卒業したエマニエルさん。

今回は諸用で田舎に足を伸ばし、首都のナイロビまでの帰り道でへんな日本人と出会ったというわけ。

夕食時にはケータイをとりだし、首都の自宅の奥さんと息子さんへラブコールである。




現在、マサイ族は90万人の少数民族。

ケニア=マサイのイメージが強いけど、実際はマサイはマイノリティー。
「赤の戦士」と呼ばれ、草原に生きてきた彼らにも現代社会の波は訪れた。
聞くところによれば現在、マサイの4分の一が近代教育を受けている。
彼らは草原での生活で培ったその卓越した視力と、
昼夜問わず、牛をライオンから守るために鍛えた強靭な肉体と勇敢さで
主にガードマンなんかとしてこの“近代”に溶け込む道を模索してる。
「変わんないで」ってのも俺達“先進国”エゴなんだな〜なんて。
ケータイをピコピコやるマサイのエマニエルさんになんとなく不思議な感じ。
でもこれが、今の、現在進行形のアフリカなんだ。


300円の安宿に宿をとり、エマニエルさんと夕食を食いにちかくの安食堂へ。


さて、良く聞かれるんだけども、アフリカで何を食べてたのかって?
それではここらでアフリカの雑学を。
感想激しいこの地帯、おもな家畜はヤギである。
俺が思うに、まず第一に乾燥帯のここらで一番強いのはヤギである。
ヒツジや牛なんかより、ヤギって乾燥に強いんだ。
(ちなみに、牛もいるんだけど、その牛はコブ牛。日本みたいな赤牛やホルスタインをイメージしちゃダメよ。
ラクダみたいに肩の上に養分や水の詰まったコブがあるやつ。そこらへんもアフリカの気候の過酷さを物語ってるよね)
加えて冷蔵保存技術が未発達なアフリカにおいて、
このヤギってのは実に便利な家畜なんだと思う。
大きさ的にも大きな犬ほどで、
ちょっとしたバスでも、ピックアップトラックでも運ぶ時は“生きたまま”で乗せられる。
当然生きたままなんだから“鮮度”もばっちりだ。
ちなみに、アフリカで高い肉から順位をつけると
1位:ニワトリ、2位:牛、3位:ヤギ。
鳥が一番高いって、なんか意外な感じがするけどこの“輸送”の面でより卓越してるからなのかな、って思ってたりする。
(豚はイスラムの影響でかあんま食われない。特にイスラムの影響の強いタンザニアでは)
それをジャガイモやトマトと一緒に煮込む。
この“トマト煮込み”、これは今後おとづれたタンザニア、ザンビア、マラウイ、モザンビークとどこでも一緒だった。
肉であれ、魚であれ、とにかく何でも“トマト煮込み”
んでこいつが副菜で、主菜が
「ウガリ」とよばれる、トウモロコシの粉を熱湯でコネた、いわばソバガキみたいなもん。
釣り師の俺から言わせれば“あったかい練り餌”
「ウガリ」は主にケニアやタンザニアでの呼び方で、
それ以南では「シマ」って呼ばれてる。
作る人、地域によっても微妙に硬さが違う。
手で握って、トマト煮込みに浸してたべる。
毎日毎日、津々浦々トマト煮込み・・・さすがに飽きるゼ。

さてさて話を本編に戻そう!

いつものようにトマト煮込みと、
ちょっと奮発して主菜は「ワリ(ご飯)」にした。
(アフリカにも米はあるのよ。ウガリよりちょっと値段が高いけど)

ケニア産のビールを飲みながら、とりとめもない話をした。
あ!もう一つ雑学を言うと、ケニアじゃ断らない限りビールを頼めば
ぬるいビールが出てくる。
「ザケんな!」
と思ったが、ケニア人いわく・・・
「冷たいビールは腹を壊す。温いビールは体に良い」のだそうだ。
・・・ムチャクチャな理由(笑)
でもその理由がわかったような気がする。
アフリカの人々って、すべてのことがスワヒリ語で言うところの“ポレポレ”、
“ゆっくり、ゆっくり”すすむのね。
日本みたいにビールをキューッとなんて飲まない。
ビンからチビチビ、チビチビ、ゆっくり時間をかけて飲む。
冷たいのを頼んでも、そのうちすぐ温くなっちまうんだわ。アフリカ式に飲むと。

・・・っていけねぇ!軌道修正!
酔っ払ってたこともあってよく会話の内容は覚えてないけど、
アフリカに来て、初めてほんとに心の底からくつろげた。
ジョージさんを思い出させる優しく、落ち着いた口ぶり。
知性と信念。
またカッコイイ人に会えた。
しかもメシおごってもらっちゃったし・・・汗


そんなこんなで翌朝エマニエルさんと別れた。
朝食までおごってもらっちゃって・・・。



そんなこんなで俺は地球の裏側にマサイ族のメル友をGET!!


人間不信になってた俺に、もう一度優しい力を満たしてくれたエマニエルさん。


俺、なんとか旅を続けられそうです!




SKY HIGH!!トラックの荷台で。
ツルカナ族の若い女の子2人も伝統衣装で乗ってきたんだけど、
写真はNG・・・でも笑顔が可愛かったです(笑)
「伝統衣装ではパンツはいとんのかぁ〜〜〜〜??」
って妙なことに気になった私は隙を見てパンチラ・・・(汗)
A:はいてました。ブラジャーはつけてなかったけど。←何やってんだ、俺・・・
ヤギとともに押し込められたぎゅうぎゅう詰めの荷台・・・そのうちイラストかくよ!
このクソヤギがくしゃみして、奴の鼻クソが俺のかばんにこびりついた!プンスカー!!(怒)




蛇足だけど・・・・
「エマニエル」って思いっきりEnglishな名前だよね。
彼だけではない。
名前を聞けばみんな「スティーブ」だの「ピーター」だのと言うんだぜ?
黒い肌に、どことない違和感・・・
それはパプアでも同じ事で、旧植民地時代の名残。
(ケニアは旧英国植民地、パプアはオーストラリアの旧信託統治領)
名前が母国語じゃないって日本でそんな感覚考えられる?
俺、自分が「ロバート」(仮)とか名前だったらやだな・・・
ってこんな感じに“大和魂”感じること自体、“ゆりかご島国日本”なんだろうけどさ。
でもね、反面そんな植民地政策のおかげで、つたないなりに英語で会話できるわけで・・・。
(いくつか村での名前と“表”の名前と使い分けてんのかも・・・)

もう一つ言わせてもらえば「ドコカラキタ?」と聞かれて「ジャパン」と答えるの、俺はヤダな。
「ニホン」と「NIHON」と言えばいいんじゃ!
なんでこの国は“自称”と“他称”が違うんだろうか?
なんとなく名前間違われたときのように、軽くバカにされてる気がするのは俺だけ?
「拓
」を「拓」と間違われ続ける俺のトラウマかしら?





















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

























そして俺は無事国境を超え、3カ国目のタンザニアへ入国した。

(ビザは国境であっさり取れた)







向かったのはアフリカ最大の湖、レイク・ビクトリア

面積で言えば琵琶湖の100倍、アフリカ1の、世界3位の巨大湖だ。



残念なことにここは世界的な生物多様性崩壊のモデル湖となってるのだ!

大学でそのような生態学について学ぼうと思っている俺は、

是非ともこの湖を自分の目で見てみたかったのだ!





湖畔にて


湖畔のティラピア売りのおねぇさん。
スナック感覚で干物のから揚げが売られてる。
「 I LOVE YOU〜」とからかわれた。
「だからティラピア買って!」
・・・参りました(笑)




市場に行ってみた。

そこには7割がたのナイルパーチと2割のティラピア、1割の雑魚が並んでる(目測)。

てか、
取れた魚の7割近くがもとはいなかった魚って・・・・おい!

しかもナイルパーチはほとんどが輸出用。

日本でも「白身魚の〜」って出てくる料理がこの魚ってことは多い。

目の前の皿に載ってる料理の影に、知らず知らずに地球の裏側の自然ぶっ壊してんだゼ?


個人的にはプロトプテルス(肺魚)の干物があったりでびっくりおもろかった。
あの大きさなら、生きてるのを日本で売ったらいくらになるんだろ?・・・なんて下衆のかんぐりいれてみたりして。








むか〜しむかし、そのむかし
“ダーウィンの箱庭”とよばれ、

シクリッド類他、約400百種の魚たちが生息していたこの湖。

しかしながら50年前に商業目的でとある魚が移入された。

それが前の章にでてきた“暴君”ナイルパーチ

食物連鎖の頂点に立つ奴等の影響度は恐ろしく、

瞬く間に
約半分の200種ちかい魚が絶滅した・・・。




生物多様性、

超簡単に言えば
自然界が安定していく上で必要不可欠な基盤であり

この先、この星が命であふれた青い星であり続けるための最低条件
である。




今、日本でも同じようなことが起ころうとしている。

代表がブラックバスであり、ブルーギルだ。



いちバス釣り人としては微妙な立場だとは言え

俺はどちらかといえば“駆除派”だな。

フナ釣りだって、トンボとりだってすきだし、それに何より

“今のやり方”じゃ駆除しきれないことがわかってるから・・・
(鯉ヘルペスみたいに人為的に病気を誘発すれば可能かもとも思います。
・・・ま、対性を持ったミュータントが出てくるでしょうがネ 汗)




その悲劇はヒトがグローバル化とともに避けられないことなのかもしれない。

マレーシアには南米からピーコックが、

パプアニューギニアには亜細亜からライギョが・・・・

このアフリカにだって、ブラックバスが・・・

世界のどこでもきっといっしょなんだ。


それは淡水域だけではない。

貨物船バラスト水のヒトデ拡散問題・・・


それは水中だけではない

日本国内だけでもアライグマ、タイワンザル、ハクビシン・・・
















グローバル化だと?!

何でもかんでもバカの一つ覚えみたいに・・・・

そんなもん、アメリカかぶれ達だけで叫んでろ!






生物界じゃグローバル化も、画一化もいらねぇ

金子みすずさんよ宜しく、

みんなちがって、みんないいんじゃっ!!わかったか!






痛キモい「バス命〜」なヤロウも
頭がコンクリでできたような駆除論者も
・・・










あ〜うざっ!











































































毒吐きすぎたかな?(汗)






















ちょっとだけビクトリア湖で竿を出してみた。

この湖古来の、草食性の魚に会いたかった。













岸に生えてる藻を餌に、俺は玉ウキを眺めた
























ウサギの鼻みたいにウキがヒクヒクして









小さなティラピアが釣れた。




















そして、終に激減したビクトリア・シクリッドが!!















うわぁ〜きれ〜や〜






























お前ら、絶対に絶滅すんじゃねぇぞ!!

がんばれ、がんばれ、がんばれ!!















ビクトリア湖の夕日
中央の人が手投げ釣りをして、仕掛けを頭上で回している。
小さなティラピアが釣れていた














・・・Fish on in KENYA & TANZANIA   

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