第9章 不死鳥死なず〜Phenix in the sky〜
地名を照らし合わせてね!チロモの隣町がバングラ。
前章と少々話は前後するが了とされたし。
Chiromoでの惨敗の翌朝、
それでもシレ川をあきらめきれない俺は「シレ川下流の“Marka”という街にはボートがある」
漁師達からそんな情報を得て、Markaへ行こうと考えた。
もはやここまで偏狭ではバスなど無い。
所用で南下する車の荷台に便乗するか、ヒッチのみ。
とりあえずBangulaの街でMarkaへ南下する車を探していると、小さなイミグレーションオフィスが目に付いた。
イミグレーションオフィス:通称イミグレ。
パスポートやビザの管理等、移民や旅行者関連の仕事をする政府機関である。
国境やおもな都市毎にある。市役所みたいなもんだね
こんなところでも何かしら情報がつかめるかもしれない。
「Excuse me・・・」
・・・そしてわかったこと
@Markaには確かにモーターボートがあるが、
それは公的所用の際に使われるもので、
個人が、それもただの旅人の俺が借りれる物ではない
AMarka国境ではビザを発行していない!
→この経由でのモザンビーク入国は不可。
遠回りしてZOBUEという国境の町に行くしかない。
ビザ:外国人に対しての入国許可証。といってもパスポートへのスタンプ。
一定料金を払う他、国ごとに、下手すれば同じ国でもイミグレごとに条件が変わり、
その取得についてはアフリカに関していえば流動的。
政情不安定などの理由にビザを発行しない国や、
または役人の気分次第で発行したり、しなかったりと、その現地国境での取得は確実性がない。
今回自分が旅した東部&南部アフリカはまだ比較的政府機関が機能しているほうなので何とかなるが、
西部や中部では役人がワイロを公然と要求し、ほんとに“役人の気分”と“裏金”でビザがとれるかどうかが決まってくる(そうだ。西部を旅した方の話より)。
アフリカを旅するにあたり、このビザの取得と国境越えは難所であり、大きなイベントである。
だから長期旅行者達はネットカフェなどで「(同じ国でも)どこの国境で、どの役人ならビザがとれるか」という情報を交換し合っている。さながら情報戦である・・・。
密入国は留置所行きなので、確実に移動したければ、在日の各国大使館で日本出国前にとって行くか(大概現地で取得するより高い)、
現地でも首都など“一応しっかりしたとこ”でとっておくのが望ましいネ。
川を南下すればそのままモザンビーク!
シレ川がザンペジ川に流れ込む場所で勝負だ!
・・・とは簡単にはいかないのだった。
俺はブランタイヤに一旦戻り(軽く100キロ以上ある)、その後西へ移動して、
Zobueという地の国境からの入国を余儀なくされるのだった・・・。
ブランタイヤへ北上するトラックを見つけ、荷台に乗り込む。
アフリカの交通事情はどこでも同じで、満員になるまで発車しない。
Time is No money
「時は金なり」と対極に位置する時間の使い方だ。
ぎゅうぎゅう詰めとなり、当然過積載。
まともな整備などされているはずもない車、
(日本の中古車が本当に多い。3rdユーザー、4rdユーザー以上が当たり前)
何とか発車したと思えばエンスト。
夜、真っ暗なサバンナの中で立ち往生したこともあった・・・。
(ただしアフリカといえどライオンがごろごろしてるわけでもない。動物達がいるのはほぼ国定公園内とその周辺に限られるようだ)
「フェニックス作戦をあきらめるわけには行かないんだよ!」
といいながら、あまりにうまく進まない物事に
疲労とイラ立ちは増す一方。
何度もめげそうになる
気が弱くなるたび、サハラで死んだ上温湯さんを思い出し、克を入れた。
「大陸縦断、横断、一周」
ただ“移動”だけで充分な快挙となるアフリカの旅事情を思う。
アフリカ旅基準で言えば2ヶ月間という“短期間”の今回の旅、
俺のあせりは尋常ではない。
ブランタイヤへの道は川とほぼ平行線を取りながら走っているが。
時折シレ川に近づいたときは川の様子を見たりした。
しかしながら、人影は無く、川岸は葦でうめつくされている。
裸一貫の俺が何とかできそうな気配はなかった。
荒涼とした景色が続く。
例えるなら
悟空とフリーザが戦ってるような景色。
巨岩ゴロゴロ、
荒涼と悲哀、感傷と葛藤・・・
すじばったマンゴーをかじりながら、
また1日が移動だけで消えていった。
ブランタイヤに戻ったのは金曜日の夕方、
即、先日泊った宿にイミグレのオッサンの言の確認を取る
「本当にZobue国境でビザは取れるのか?」
白人の女性スタッフの答えは・・・
「Zobue国境はビザの発行をしていない。
土日を待って、月曜日にここブランタイヤで取得してから行きなさい・・・」
話が違うやん!
嫌な言い方だけど、現実に「黒人より白人の言うことの方があてになる」
けれど俺はBangulaのイミグレの黒人のオッサンを信じた。
「2日も足止めなど食っていられるか!当たって砕けろ、国境で直接交渉だ!!」
(前章参照)
よく早朝、国境までのミニバスに乗った。
(ミニバス:ワゴン車にぎゅうぎゅう詰めに乗るアフリカで最も使用頻度の高い交通手段)
ここからさらに約60キロ、
俺はあせる気持ちを押さえながら、マラウイ側国境のイミグレで役人に精一杯の笑顔を作った。
「Visa 、please〜(^_^)」
つたない英語で交渉する・・・・
・・・取れた!
以外にあっけなくモザンビークビザをGET!!
「白人のババァ、いい加減なこといいやがって・・・・」
(※彼女がいい加減なわけではなく、それほど状況は流動的なのです)
しかし、そんなことはどうでも良くなるほど高揚していた。
これからモザンビーク側の国境イミグレまでは7キロ。
足元を見たかのようにふっかけてくるタクシー。
・・・俺はマラウイ・モダンビーク間大型大型バスにこっそり忍び込んだ。
「これだけ人数いれば・・・多分ばれんやろ?」
・・・ただ乗り成功(笑)
「黒人だらけの中で紛れ込んだ黄色い猿に気付かないとは・・・やっぱりアホやな」
必殺“営業スマイル”でモザンビーク側のイミグレでも無事入国スタンプをGETした俺は、
意気揚々、6カ国目:モザンビークの地を踏んだ。
トンチンカンなポルトガル語の国へ・・・。
ここから更に約100キロ
目指すはTete
ここからの1本道とザンペジ川の交差点に、
またしても待っていたかのように大き目の町があったのだ。
そしてもう一つ
偶然にもテテ行きのトラック乗り場(?)でTeam Daiwa のキャップをかぶった男を発見!
Team Daiwaとは、日本で、いや世界でのリール(釣具)シェアを独占する2大メーカー(ともに日本の企業)の一角。
俺はもう一角のシマノ派であるが、これも何かの前兆か?!
地球の裏側で偶然見つけた“釣り”の面影。
ちょっとしたことが勇気になる。
「“牙”さえ抜ければダイワに鞍替えしてもいい!何でもいいから釣れてくれ〜!!」
アップはハズいので目隠しを(笑)
偶然ってあるんやね!
Tete行きのミニバスを何とか探して乗り込んだ。
簡単なことすら、英語がほとんど通じないのだ。
飛び交う現地語(何語かは不明)と公用語のボルトガル語の響きの中、
国境を超えれた安堵と疲労感で、いつしか俺は眠ってしまった・・・。
強がりを、憎まれ口を絶やさぬように。
今度立ち止まれば“次”は無いような気がする。
実際、いっぱいいっぱいだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
肩を叩かれた。
目を開くとそこはどこかザンビアの首都:ルサカのようで。
・・・思いもかけない近代的都市の真ん中で俺は目覚めた。
「ここはどこ?」
運転手に尋ねる
「お前が言ってたテテの町だ」
「・・・。」
とりあえずえずミニバスを降りなければ。
ミニバスは走り去っていく。
俺はコンクリートジャングルにポツンと取り残された。
・・・放心、非現実感。
日は傾いている。夕暮れは近い。
「とにかく宿を探さなきゃ・・・」
しかし、俺はここで大きな過ちを犯していたのだ。
「現地通貨を持ってない・・・」
国境で暴利をふっかけてくる闇両替人から両替するのがいやで、闇両替は近くの町までのバス代程度にとどめ
「ま、町まで行けばばどこかに・・・」とタカをくくっていたのだが、今日は土曜日。
銀行はどこも閉まっていた。
モザンビークは思いのほか物価が高く、いろいろ探し回ったものの
バス代の残りでは最安値の安宿ですら払えなかった。
「月曜日までの2晩どうしよう・・・」
とぼとぼと宿を探し回る俺。
気がつくと周囲より一段高い丘の上に来た。
そこからはザンペジ川が見えた
・・・泣けてきた。
川はあまりにでっかくながれてた。
その川岸は薮に覆われ近づけそうにない。
僅かにある水辺に近づける場所は現地人が洗濯と水浴びで占領している。
川幅は絶望的に広く、
とりあえず見える範囲には、頼みのボートの影はなかった。
うまく言えないが、釣り暦18年の直感
それは釣れない川の匂いだった。
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近代化した都市、公園の一角のベンチ
目の前で揺れるブランコを眺めながら、俺は絶望感と敗北感で死にたくなった。
「アフリカくんだりまで来て、このまま負けて終わるのか?」
「いいじゃん、ツルカナ湖で一応タイガーフィッシュは釣ってんだし」
「多くのものを犠牲にし、バイトに励んだこの半年って一体・・・」
「もう充分だよ。誰もお前を責めはしないよ」
・・・・・・・
橋が見える。
とりあえず渡ってみようとおもった。
「泣くなら川の真上で・・・」そんなおかしなことを思いながら。
橋の真ん中まで来た。思ったより風が強い。
川はとうとうと流れる。終に泣けてきた。
「波乱は無しだ・・・」
何でだろう、頭の中にスラムダンクの湘北VS山王戦がフラッシュバックする。
俺は既に「負け」の2文字に侵されていたのかもしれない。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」安西先生の言葉が頭をよぎった。
「ウソツキ・・・」
悪魔の声だ
「カリバ湖でフゥッシングガイドサービスを使おう。」
「ガイドを雇ってとりあえず魚を手にしよう。もう二度と来れないかもしれないし・・・」
でも、また心の中で語りかけてくるもう一つの声
「お前、何のためにアフリカに来た?
誰も“旅的”に釣った事のない土地だから、あの開高さんでさえも来たことのない場所だから
前例がないから、だからやるんだろ?
今回の旅は下準備無し、候補地無し、完全に“旅的”にやり遂げるってのは嘘だったのかよ?」
「ううぅ・・・」
自分自身にすらも顔向けできない負け犬は歩き出した。
蓄積した疲労感を引きずって・・・。
橋の上にて竿入り竹刀袋と。
乾季とはいえこの水量。
「船無しで俺にどうしろと・・・?」
橋を渡り終えた。
こっちは対岸と違い、地元民の居住区。
遠くに川辺で洗濯している女性達が見える。
「水辺に行きたい」
釣り人なら理解してくれるであろう、そんなことをふとおもい、
岸に近づけるところを探してとぼとぼと歩いていた。
発狂したかったが、その元気はなかった。
と、一台のトラックが横に停まった
白人が荷台に乗っている。
「こんなところでどうした?」
「釣りしようにも釣り場所がない。宿に泊まろうにも金がない」
「・・・。」
「今から俺たちは近くのキャンプサイトに滞在してるのだがだが、そこまで乗せて行ってやろうか?」
なにもする予定がなく、第一なにもできない俺はその言葉に
植物のような顔をして荷台へと乗り込んだ。
キャンプサイトに着いた。
アフリカは旅人のためのキャンプサイトが結構ある。概して安宿より安い。
ホテルや安宿の庭に格安でテントを張らせてもらえることもある。
欧米人はキャンピングカーなんかで優雅に旅してるし、
日本人でも「年」単位で旅してる長期旅行者はテントを持参している
50日間という微妙な期間の俺は荷物を減らし機動力確保&資金不足という2つの理由でテントを持参してなかった。
管理人さん(現地人)が出てきた。
そして俺の第一声は・・・
「水をください・・・・」
管理人さんも何かおもうことがあったのだろう、
気前よく水を分けてくれた。
俺は2リットルぐらいがぶ飲みした(朝から何も飲まず食わずだった・・・)
基本、自分でキャンプ用品、水、食料を持参なのだが、
事情を理解してくれた管理人さん(モザンビーク人)は隣接する自宅の物置を整理し、
農業用のズタ袋をひいて寝床を用意してくれた・・・。
このキャンプ場は教会の付属施設とかで“貧しき者には施しを”と言ったところか。
「こんな奴は君が初めてだからな・・・お代も君のas you likeでいいよ」
水を飲んだら気分も少し落ち着いてきた。
数日前にマラウイで買った食パンとビスケットがかばんに入ってるのを思い出した。
・・・カビていた。ビスケットは粉々に粉砕されていた。
でも食うものはこれしかない。
だんだん赤みを増す太陽。
俺はかびたパンを水で流し込んだ。
「うぅ、ひもじぃ・・・」
と、みかねた(のか?)、先ほどこのキャンプ場へつれてきてくれた白人(オーストラリア人)が
食事に呼んでくれた。
キャンピングセットで優雅に食事、
彼の家族に囲まれ、美人の奥さんと娘達にビールやワインまで振舞われ・・・
鳥のオイスターソース炒め&ライスというシンプルなメニューだけど
久々に食う“アフリカ式トマト煮込み”以外の料理、
残飯処理機と化した俺は大食いの白人もびびらせるほどの大食いっぷりを見せ、たらふく食いだめした。
「アローイです。エッソです。サンキューです・・・もう意味がわかりません・・・」
ちょっと元気が出てきた。
まだ日は完全には落ちていない。
「釣りしにきたんでしょ?その辺でちょっとやってみたら?」
美人の奥さんに言われ、酔いも手伝って洗濯場から竿を出した。
「洗剤が溶け残ってるし・・・釣れる訳ねぇじゃん・・・でも・・・」
1キャスト、
2キャスト・・
・・ってオイ!!!
ピックアップ寸前、草陰から赤い尾をした魚が飛び出してきた!
サイズこそ40センチ前後とはいえ、それはまさに・・・・
「いるんじゃん!岸釣りでも何とかなるんじゃないか!?」
・・・しかしその日、牙の面影は二度と姿を表せなかった・・・でも・・・
「俺の命運はまだ尽きてはいない!!」
「あきらめたらそこで試合終了ですよ?」
頭の中の安西先生が、今度は少し微笑んだように見えた。
俺はかび臭い物置の中、ズタ袋に包まり目を閉じた。
「俺の体力も限界にきている。明日中に勝負をつける・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝、まだ暗いうちに起床。
俺の行動は早かった。
キャンプサイトで働いているらしいバイト君とともに洗濯場、水浴び場をラン&ガンしていく。
というのもそういうところでもないと、現地の藪の笹はムカつくことに葉の先端が丸まり、
角質化して(植物にこんな表現使うのかな?)棘となってヤブ漕ぎは不可能。
いつものスタイルだ。回遊待ちなんかじゃない。テクニックでもない。
足で釣る、そんな俺の岸釣りスタイル。
誰も来てない処女地へ・・・
そんな釣りをしていたら、いつのまにやらアフリカまで来ちまった。
もう迷ってる余裕はない。
「円は閉じなきゃ円とは言わない。思いは貫くためにある」
(上等兵さんの“亜細亜釣行記”より抜粋)
民家の庭を突っ切り変な顔をされ・・・女性用の水浴び場に紛れ込んでしまい・・・・汗
それでも流れと障害物の絡み合う旨いポイントを投げまくっていった。
何度か魚が追いかけてくるのが見えた。
しかし、どれも小さく、食いつくには至らない・・・
太陽が高くなってきた。
肌はジリジリ音を立て始めた。
意識が朦朧としてきた・・・。
一旦キャンプサイトに戻り、給水。
ここまできて干からびるわけには行かないのだ!
(このとき昨晩お世話になったオーストラリアの一家とお別れした。
お世話になりました。「Good Luck !!」の言葉、必ずや・・・)
仕切りなおし。
撃て、撃て、撃ちまくれ!!
一箇所でシコシコやってても埒があかねぇ。
魚は足で釣るんだよ!!
流れが抜ける葦原の一角
「!?」
黒い尾が水面に現れ、ゆっくり消えていった。
まるで水族館のイルカショーのように。
これはは幻覚か、それとも何かの前兆か?
俺は半信半疑でルアーを投げた。
・・・・・そして終にその時はきた!!!
その一投目、
流れ、もだえされたルアーを、終に牙は襲ったのだ!
「ガツン」という明確な衝撃、
次の瞬間、水中でプラチナ色が輝いた!!!!
竿が引き込まれる!!!
「フィッシュオン!!!!!」
が・・・・
すっぽ抜けたルアーは勢いよく俺に向かって飛んできた。
「うぉおおおおおおお!!!!!!!」
どう見ても60センチは軽くあった。
俺は絶叫し、地団駄を踏み、のたうち、転げまわった。
いままで何度か追いかけてきたサイズの魚とはその太さが決定的に違っていた。
「うぅ、うぅ・・・・・」決定的な魚を逃した。
今度はへなへなと座り込む俺。
バイト君が「もう一度やってみろ」とせかす
「あのな、お前は釣りしたことないからわかんないだろうけど、
一回針がかりした魚はその日はもうほぼ無理なんだよ・・・」
ふと口から外れたルアーを手に取った。
「!?」
情けないことに、追いかけてくるサイズが小さいため、
通常の日本で使うブラックバス用のハリをつけた小型ルアーを使っていたのだ。
しかしながらあれだけ強烈なバイト&バラシにもかかわらず、針はちっとも曲がってなかった。
その代わりにその木製ルアーは穴だらけ・・・
「間違いない、“牙”の仕業だ。
・・・・そして、もしかするとその牙で貫通したルアーが抜けなくなっただけだったのか?」
「針に掛かってないのなら勝機はある!ような気がする・・・・」
俺はバス用のヘボい針ではない、遠征用の強針を仕込み、
サイズの割りに3フックシステム搭載のルアーに賭けた!
「行け!!その9個の針先で牙をすり抜け、その顎に一発カマしてやれ!!」
それは1投目だった!
激流を横切らせたルアー。
先ほどと全く同じ場所に通りかかったそのとき、リールをまく手に抵抗が消えた。
「?!食いあげたか?」
そのとき、確かに紅い尾が見えた!!
「・・・・うぁ!!!!見えた!!!魚だ!!!」
俺は急いで糸ふけを巻き取る。
流芯を紅い尾が切り裂いていく。
糸にテンションが戻った。のけぞって大アワセをくれる。
次の瞬間、“牙”は水面を割った!
灼熱の日差しに、プラチナ色が飛び散った!
「うりゃぁああああああ!!!!!!」
日差しを跳ね返すその跳躍。真っ赤な尾が切れ込んでくる。
「ギャァアアアアアア!!!!!」
・・・・そこから先は覚えていない。
記憶が飛んでしまった。
気がつくと例のバイト君がなれない手つきで陸を跳ね回る牙を押さえつけていた。
うぉおおお
叫べ、踊れ!!!
終に、終に俺は牙を抜いたのだ!!!
「ドラマがおこらねぇのは初恋だけで十分なんだよ!」
これが釣り旅だ。
俺が信じた“セイシュンノカタチ”
“世界行脚釣行録”を立ち上げ、“天上天下唯我独尊”を掲げた俺の誇りだ。
付き添ってくれたキャンプ場のバイトくん。
ただただ共にDance & Shout
・・・・そしてSmile、いつまでもSmile
気づけばいつの間にか人だかりができていた。
一緒に喜んでくれる人がいる。それが嬉しかった。
俺はひとりで旅に出た。
だから俺は一人じゃない。
白き灼熱 暗黒大陸
・・・・志は 死なず
叫び、転がり、飛び跳ね・・・・淵の上であまりに跳ね回ったため、土砂崩れを引き起こし、
俺は土砂もろともそのまま川に転落したのだった・・・(笑)
びしょぬれの俺。がっちり握手。
最高だ。最幸さ。
「バイト君、ちなみに名前は?」
「・・・エマニエル」
「えっ!?」
遥か北、赤道の真下の笑顔がフラッシュバックした。
人間不信から立ち直らせてくれた、あの優しい笑顔、マサイのエマニエルさんを。
目の前でもう一人のエマニエルが微笑んでいる。
「信じてみてもいいですか?“運命”ってやつを・・・」
ここに“フェニックス作戦”は成功&完結。
Phenix in the sky
不死鳥は空を舞った。
SKY HIGH!!
空は今日も Blue Blue Blue・・・。
Fish on in Mozambique
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