1.Two years latter






4月1日、2回目のパプアから帰国。

即引越し&新学期が始まった。

新たなバイトも開始し、

ロドリの「岸釣りスター誕生」企画も大詰めを迎えつつある日々の中、

その中でGWの関西遠征を皮切りに

俺は西に通い続けた。

そのコトの顛末と、

明かされていなかった真実・・・。

今回の旅に多大なる影響を与えた、一連の日本での出来事を

今回の「ユーラシア放浪偏」の第1章として

国内編を綴ろうと思う。

それは(後述するが)日本は海外に劣るものではないことの確認でもあるし、

自分への戒めでもある。



書き足したいことがいっぱいあるのだが、

そうばっかり言ってるといつまでたってもアップできないので

不本意ながら「とりあえず」という形でアップする。

ユーラシア編が全て終わった後で、

もう一度通して読み直していただければこれ幸い、といったところである。


ではでは、そろそろ、本編へ。

お待たせさまでした・・・(笑)












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










・・・って書き出しが重い浮かばねぇわい!(汗)


とりあえずつらつらいくべ。













・・・思い返せばGW、

初めて「聖地」池原ダムを訪れ、





関西某所では琵琶湖大鯰に挑んだ。



「岸スタ☆」で知り合った福井や埼玉の友人達との初対面・・・






それはそれで真であり、楽しく感慨深かったのだけれども

それだけが真ではない。


俺もハタチの男の子ですから(笑)






第1回のパプア前、変わった子に疲れ果ててた時に応援してくれたメール。

アフリカ前、旅の安全と成功を祈って送ってくれた御守り。

「世界行脚釣行録」を支えてくれた“友達”・・・


ぶっちゃけ「釣り」なんて口実である(笑)








しかし・・・・


話は急転回・・・


人生とはうまく行かないもので・・・

輝けば輝くほど、その花の寿命とは短いもので・・・

俺は桜の花のような男なもんで・・・(笑)


幸せの神様よ、俺になんか恨みでもあんのかよ!?(笑&汗)




















6月下旬、

千葉で行われたロドリの取材に惨敗&敗退を自覚した


海ほたるにて



その翌週

俺は関西にいた。



ここにももうひとつ、直接俺からピリオドを打たねばならないと思ったから。



釣りって言うのはいいもんだ。

水のせせらぎがすさんだ心を緩ませる。

川の流れは憂鬱すら流し去ってくれるかのようで。

「ヨーロッパオオナマズの練習」

そんな“建前”に焦燥を押し殺し、

俺はゴールデンウィークに惨敗した川辺に立った。




「鯰」にこだわったこのころ。5月の秋田でも鯰修行にいそしんだ。武兄>毎度ありがとうございます!















程なく空が破けた。冷たい夏の雨だ。

流れが怒りに狂う前のその一瞬。

竿先が何者かの捕食を伝えた。

即アワセを叩き込んだあとのあの重量感。至福と焦りが入り混じるあの瞬間。

「釣れたよ。琵琶湖大鯰だ」



文句なしにうれしかった。

この時だけはすべての憂鬱や重圧がどこかに行っちゃった。

はじめて見る白と黒のだんだら模様。大きくせり出した下唇。


小さいながらも、それは間違いなく本州最強の純日本淡水魚。

バスだのギルだの、外来魚をも懐に収めて生き続けるこいつらが、

俺はとても誇らしかった。








「釣れるまで釣りつづければ必ず釣れる」、テントを用意して長期戦を決め込んだ今回。

予想に反して到着から数時間、

あっさり日本の三大怪魚(大鯰、魚鬼、赤目)の1つ目をとりあえず達成した俺は

もう1つの怪魚に挑むべく本州を離れた。



初上陸した四国。

高知県某所。

月明かりの静寂をみだす大量のベイトフィッシュ

みなものモジリ、時折響く爆烈捕食音

「月をも吸い込んだカ?」

“畏怖”

恐ろしくも気持ちいい、そんな時間。

孤高のターゲット、赤目。

何度か竿先に生命感を感じた。

赤目か?それともただ小魚にぶつかっただけ?

俺に出来ることは、ただただ竿を振り続けるのみである。



・・・その夜、ひとつの物語が終わった。



俺がアカメとなった頃、空が白んできた。

もちろんオールナイトのせいだよ。クソッ!

昔の彼女に慰めてもらってちゃ世話ないな。クソッ!


クソッ、クソッ、クッソ〜〜〜!!



2年間のアメリカ留学が決まったよ♪」

初めてそう聞いた時、なんとなく感じとったコト。



お日様が顔を出した。水面に静けさが戻った。


・・・その日も“当然”何も起こることはなかった。

「アカメはこんな女々しい男に釣れていい魚じゃない。」

俺は仙台に戻った。

ひとつの誓いを胸に。



その時の高知で上等兵さんがGETしたアカメ。凄い!!
はじめて見て、実際に触れたアカメ、
“幻”が現実味をおびた瞬間。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













7月、出国まであと1ヶ月

忙殺・・・。

もう、何がなんだかわからない忙しさだった。

忙しいことは美徳ではない。自分の要領が悪いだけ。

やたらと手帳を予定で埋めたがる奴がいるが、「忙しい」=「充実」ではないはずだ。



何だ?このレポートの量、テストの日程は・・・汗


やるべきことを後回しにしてきた自分を悔やむ。

今まで何度味わってきたかわからない後悔だ。


だからこそ、自分が「これ!」と賭けたものにはストイックになるべきだ。



「時間がなくて、ちょっと・・・」

これもよく聞く虚しい言い訳だ。

いつまでそんなことを言い続ける?

「“寿命までに”時間がなくて、ちょっと・・・」

年老いた後、そう言って生きいそぐつもりかよ?笑






学生としてやるべき全ての業務を凝縮&消化し、俺はもう「3日間」という時間を作り出した。





いざ、出発!!








 
仙台駅東口の高速バス乗り場。見送りに着てくれたサトル、まんた、ワタル、ニッシー&俺(右から順に)
意味なくビールで乾杯、俺が出発したあと余った3本の一気飲みを強要されたワタルは原付でこけて満身創痍になったとか・・・お疲れ(汗)











新宿での乗り換えの際に見送りに来てくれた二人。
モンスターキスを通して生まれた人とのつながりを、とても大事に&うれしく思っています。


















ヒロイックに感慨に浸ってる場合ではない。

挑むのはもちろん“四国の畏怖”である。




あの夜、高知の水辺で自分に立てた誓い。

“携帯”を投げそうになり、踏みとどまってポッケに押し込んだ“モノ”。


「何かの縁だ。お前が帰ってくるまでの2年以内に俺は必ずや“幻”を手にしよう」



言った以上やり遂げる。

20年以上そうして生きてきたら、こんなに“重い”男になっちまった(笑)



アホとも意地ともキ○ガイともとれるこの行動に、

これまたクレイジーな2人の兄貴たち(敬意をこめて)が付き合ってくれた。

上等兵さん&曹長さん、ほんと毎度世話になってます(笑&汗)

















時に集中し、時に珍魚と戯れ気分転換しながら

時間はあっという間に流れ去った。


強烈にS字が効いた。
「牙魚=ジョイクロ」の方程式が出来た瞬間。
鮎邪ジョインテッドクロー148(ガンクラフト)にて








ボラもこれくらいになると楽しいです。











ひとつ、強烈な印象として残っていることがある。




それは高知の夜のこと・・・


ローカルな「達人」と話をさせていただいた。


殺気ゼロ。


むしろ仲間達との談笑を楽しむばかりで竿など握ってすらいない。


これが「極めた」人というものなのか?


確固たる理論と洞察、


それを押し込めて笑う余裕。


前回6月の高知訪問の際もお会いしたけれど、


計4晩合わせて俺の目の前で行ったのはわずか一投。


それで全て悟った。


年間何十匹と赤目を釣ることが、どれほどのことであるかを。


「アカメ釣り禁止」


宮崎ですでに決定し、高知でも揺れているこの時勢の中で、


釣りとは「道」であり「文化」でもあるのだとはっきり思った。


「保護」と対極にある釣りという名の「殺戮ゲーム」


しかし、ハンコを押す役人さんより、


講釈たれる学者さんより


この達人は何十年にも渡り、誰よりも多くのアカメを見てきたのだろうナ。


俺はその行政判断を肯定も否定もしないし、出来ないけれど、


達人はこれをどう思っているのだろう?


またにっこり含み笑うだけ・・・か?





達人の談

「でっかい“ミノウオ”が足元(水中)でえさ食うとな、

あのおちょぼ口であのでっかいエラ広げて水吸い込むで、

爆音とともに水面に洗面器ほどの穴が開くんよ〜。

その急な水圧変化だけで80ポンドリーダーが一瞬で切れることもあるで」






・・・絶句、悶絶、ただただ驚愕。

名魚には伝説がつき物だ。

それを起こし続ける人がここにいる。

「禁止」とされる前に、1匹は釣っておきたい。

それが俺の偽らざる本音である。







最後の夜が明けた。

明日には日本を後にする。





「来年、また・・・」


そんな言葉が脳裏をよぎりそうになる。



けど・・・



“いつか”という言葉は嫌いだ。

そこにどこか“逃げ”の匂いを感じるからだ。

自分に課したタイムリミット。・・・2年後、two years later・・・。


太陽が高く上がってきた。

タイムリミットまであとわずか。

南国、高知に夏の日差しがさんさんと降り注ぐ。

今日も昨日と変わらず、明日もまた・・・。








!?



!!!!!!


いた!!!!!!



小さいけれども、そのとがった唇、うちわのような尾びれはまさに紛う事なきアカメである。



が・・・



消えた・・・・



「お、終わった・・・」



でも



「まだいるかも?」



・・・似たようなポイントを探し、歩きまくった。



その時、携帯が鳴った。



上等兵さんからだった



「拓矢くんがさっき見つけたアカメ、同じ場所に戻ってきとるで〜」



急いで引き返す。



・・・まだいた。



さっきより浅いところにいる。



手を変え品を変え、タイミングをはかり・・・、



けして得意ではないサイトフィシング



アカメのサイトなど、セオリーなどありはしない。



GWでの池原修行や、今までの全ての経験を総動員し、



そして何より“直感”を大事にして。



体色が変わった。



えらが怒っている。
(人間で言うところの肩で息をしている状態)



そしてバイブレーションのフォールに終にバイト!!



が、甘噛み&キスバイトで痛恨のミス。



そのままどこかへ行ってしまった。



「終わった・・・完全に」



・・・。



・・・・・・・・(放心で数十分経過)。



あれ?



戻ってきた!



しかも(さらに小さいけども)もう1匹を引き連れて。



2匹ともすでに幼魚斑の浮き出た興奮色に変わっている。



しかしながら見えるレンジではやはり警戒して反応が薄い。



2匹がギリギリ目視できなくなる水深まで沈むのを待ち、



進行方向を読んで先ほどバラしたルアーを投入。



フォール中に糸フケが不自然にとまった一瞬、体が反応した。



ファイト時間などものの1秒もあったかどうか?



気づくと見慣れぬ魚が足元でピヒピチあばれてた。



やった、終にやった。















「女は女、1匹は1匹。己を誇れや!」
そう言ってくれた上等兵さん。本当にお世話になりました&ありがとうございました。




















ちいさい、果てしなく小さい(笑)

「ミノウオ」と呼ばれる大魚とは程遠い。

しかしイトウすら管理釣り場で釣れ、養殖物が野に放されるようになったご時勢で

“日本最後の畏怖”

野生の結晶は俺の手に落ちた。


どんな小さな魚でも、どんなグロテスクな魚でも

初めての1匹というのは皆うれしいものだ。

その中でも特に震えるほどの感動をくれる「名魚」がいる。

琵琶湖大鯰 & 赤目

・・・心が揺れ動く魚は日本にもまだいるんだ。

気が触れるほどの絶叫はまだこの大和の国でも轟くだろう。

海外、海外、と高慢になっていた自分を恥ずかしく思った。



でも、だからこそ、今、

海外で決着をつけてくる。



上等兵さん&曹長さん他、

ありとあらゆる面でお世話になった皆さん。

最高のハナムケを手に、行ってきます!!!




・・・2年後、two years later・・・

“約束”は果たした。小さな赤い目に“涙”と“意志”が写った。


「ありがとう、“ミノウオ”になってまたおいで」




ロッドはエクセージ。小6の時から使い続ける「護身刀」である。
リールは同じく小6に買ってもらったバイオマスター98のスプール(本体は東南アジアで紛失)に、
コウスケさんのバイオマスター2000の本体を合わせたもの。
初めて手にしたバスタックル、この相棒達にこの魚の魂が刻めて感無量。
誕生日プレゼントに買ってくれた親父に感謝。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・











出発の朝、神戸港。

快晴とはいえない空が、なんとなく今の気分に馴染んでいるようで。

動き出した船、プチプチ切れていく紙テープ。

今まさに離岸したその時、ポケットの携帯が震えた。



1本の赤いテープが舞い上がり、ヒラヒラ落ちていった。







出船の汽笛が高々と鳴り響く。

首にはアフリカの前にもらったお守りが。

――――― 帰国した時、この番号は通じないんだなぁ。



髪を掻きあげる潮風、汽笛の空気振動、左右に揺れる手のひら・・・。

携帯を潮騒に掲げ、言った。

「聞こえるか?今まさに鳴ってる船出の汽笛が・・・?」






“旅立ち”にいちばん似合う言葉、

もしかするとそれは “サヨナラ” なのかもしれない。









昼と夜の境目。
赤と青が交わって、紫に抜けていく。
しばしお別れの日本の夕焼けは物悲しくも美しい。




←前へ Home 次へ→