7.Dreams come “Toru”

〜 いよいよ始まる鬼退治。キビ団子もなしに
出国1週間前にいきなり旅を共にすることが決定したテルさんとの
バカタレサバイバル生活 in チョロート川・・・That's “平成の倭寇” 〜





・・・単純に地図がでてくるとワクワクしないか?俺だけか?












翌朝、テルヒンツァガン湖に朝日を拝む。

今日はいよいよ出発の日!

いざ、“鬼の住む川”へ!











ゲストハウスのある湖畔からタリアット村までは少年に送ってもらいました(笑)
アクセル、クラッチ、ブレーキだけをオヤジに任せ、
ハンドルは少年に握ってもらいました。
こうやって生きる力をはぐくんでくんだな。
免許、危険性・・・広すぎるモンゴルでは細かいことなど言いっこなしだ。
日本で言う「生意気なガキ」とは違う、
モンゴルには、日本と比較したら本当の意味で大人びた、頼もしいガキが多かった。
バイルッラ!













ハイ、お決まりのロリコンです(笑)
娘さん、だってかわいいんだもん♪

























































タリアット村の出口、

ウォッカで大地の神に旅の成功を祈願し、出発。

あと60キロ、これまでの旅の行程を振り返ればもうすぐそこ。








ウオッカを大地に捧げる。
右薬指に酒を浸し、
デコピンのように3回、頭上ではじき、大地に祈るのがモンゴル流。
・・・日本の水辺で川の水で俺が同じことしてても「あ〜モンゴルのお祈りね」と思ってください。
「釣れてなくて神頼みなんだな」って、
生暖かい目で見守ってやってください・・・。



















しかし…





























神のおこぼれ、

ドライバー共々残ったウォッカで飲み会に発展した俺達。

飲酒運転全快でラフロードを超えてチョロートに到着したころにはゲロ酔い状態となった。

「何をやっているんだ、俺は…。」
































左、俺たちをチョロートに送ってくれた方。
右はその友人で、小憎らしいくらい俺のやりたいことを全て先手を打ちやがるライバル「高橋歩」に似てるぜ(笑)
タリアット村の入り口にて「出陣の儀」をはじめる。
























結局飲み会になりました…。
ウォッカストレートの無限ループは
下戸のテルさんには相当きつそうです・・・。
俺もこの時点でだいぶ出来あがってきました・・・汗





















話はわかった

とりあえず行こうぜ・・・笑




















開高先生の「オ−パ、オーパ!!」の104&105頁





ヤクに列を成させ、何かを引っ張る光景を激写。
タイヤはゴムに変わったけど、開高先生の時代と変わらぬ暮らしがモンゴルにはあったよ。
チョロート川の川原には、流されてきたと思われる木で出来た車輪(上写真と同じ)があった。
だいぶ腐って朽ちてきていたところに哀愁をみた。
写真を撮り忘れたのが残念だYO! 笑





























































むっかし〜むっかし〜浦島が〜

助けたテルに連れられて〜

鬼たいじ〜に きてみれば〜

目〜にもとまらぬ美しさ♪








っと♪































う〜ぃ



































ゲフッ
























































































・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さよなら○○子ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




























































































目覚めたとき、はるか崖の下、既に川は青くそこにあった。


「魚偏に鬼と書いてイトウと読む―――。」


モンゴル入国から約1週間、ついにここまで来た!

鬼の住む川、大地の裂け目に終に立ったのだ。








過去、文豪:開高健も竿を振るった有名ポイント。

現地人なら誰もが知る有名ポイントにジープをつけてもらう。

まぁ細部は違うかもしれんが、初めての場所、意味わかんねぇモンゴル語だし、何より・・・








酔ってたからね(笑)








思考がとまってしまった俺は、

履いていたサンダルのまま、ふらつく足元で落差100m近い崖を下った。




期待と酔いで「ドキがムネムネ」、

心臓が口から飛び出しそうだった。




岩にぶつけたのだろう、爪が割れ、血が噴出していた。

まったく痛みはない。

「これは夢幻か?」







いや、目の前の流れに“鬼”が住む、それは間違いのない真実。






耳が遠くなっていた。頭の奥のほうでせせらぎが聞こえる。


酔いか?酒に?




いや、この場所に。










まだ見ぬ怪魚と初めて対峙する時、俺は“無”となる。

わからない、すべてわからない。

だからこそ思い焦がれた相手に自分の“波長”を合わせるだけ。



直感が最も正解に近いことは今までの経験で知っていた。














 小雨と強風、釣りには決していい状況ではない。

海外といえども“魚が湧いている”そんな状況はなかなかないのだ。

有名ポイントからどんどん釣り下る。



テルさんは去年もこのポイントは来たらしいが、いろいろ忘れている。

何かに突出した人は、何かが欠乏しているのだ。

この人も一瞬一瞬に生きているタイプの人。


「ここ、去年もきた・・・様な気がする」





まぁいい。

そっちのほうがやりがいがあるってもんだ。






タイメン(モンゴル語で「トル」と呼ばれる)からの反応はないまま日が傾きかけたその時、

足元まで引いてきたルアーに赤い影が襲い掛かった。





「釣れた。イトウだよ。」




初めての“トル”は60センチをいくらか超えた程度のまだまだ“鬼”とはいえない魚だったけれど、





1匹は1匹、イトウはイトウである。










イトウで釣ったイトウである(笑)

(メガバス・ビジョン110にて。賜:万世)
マス属は驚くほど早く弱るので、セルフで急いで撮影。
結果的にズレたけど、周囲の雰囲気が写りこんでそれはそれでイイカンジ。













空には虹が出ていた。




































崖の上に戻ると、遥か下流に虹が出ていた。
見えにくいけど、珍しい2重の虹だ。
「虹の下に行くと夢がかなう」って聞いた。
明日は下流へと向かおう。






























その夜は近隣の遊牧民の翁の家に居候させていただくことに決めた。


明日もある。明後日もある。

釣れるまで釣り続ければ必ず釣れるのだ。















夕方、マレーシアからのお客さんを連れた武さんの車と遭遇した。

“ガイド”と“旅人”、こういう形でここで出会うとは思ってもみなかった。




想像以上に、チョロートという川のポイントは限定されているらしい。





「お客さんの後でもいいので、ガイドお願いしますよ〜!」ともう一度聞いた。

本日の釣りで、チョロートは厳しいことを知っていたからだ。




「悪いけど無理だよ。来週も韓国からお客さんが来ることになっちゃったし…」



「それにその後は事情があってすぐ日本に帰らなきゃならない。
・・・悪いけど今年は運が悪かったよ。」










「・・・ここまできてそりゃないっすよ・・・」














俺のこともHPを通して知っていてくれたらしい“マレーシア軍団”の方々(素直に嬉しい)によれば、

チョロートは今日も火を吹いたらしい。

それぞれがそれぞれに満足の釣果をあげ、

そして武さんは120という“開高越え”を、お客さんの目の前でやって魅せたという。





「マジック!」

そのときのことを、どなたかがそう表現した。


「言われたとおりの岩に、言うとおり投げれば釣れマシタ。ガイド様さまさまデスネ。」






































チョロートが釣れなかったのではない、俺が釣れなかっただけなのだ・・・









































チョロートの覇者 Takeishi Noritaka




すべて、沈む岩1個まで記憶している。

自身&お客さん、すべてのヒットポイント、サイズ、ルアーを記録している。

チョロートの覇者がチョロートの覇者である由縁だ。





過去5年分、

年により微妙に変わる流れ、石の配置をすべて記載&修正し続ける、

「チョロートMAP」

と呼ばれる門外不出のノートを、日本にいるときサラッと見せてもらったことがある。




俺にもそのすべてを見せてくれないソレは、

パッと見だけでも、ひれ伏すに十分だ。




氏の使う「開拓」という言葉は、俺なんかが使う「開拓」という言葉とは

重みが違う。








「精神論などたわごと。結果がすべて。」







ここまで言い切る。

・・・だからこそ、俺はこの人、この川に憧れたんだ。




































氏の圧倒的釣果は、一朝一夕にしてなるものではないこと、

すべて“必然”なのだということを


おそらく最も氏の怪魚釣りを見ている俺は知っている。

海外での氏は、本当にカッコイイ。


酒に呑まれてさえいなければ・・・笑



































蛇足だけれど、来年以降チョロートに行く方は、

氏の協力があれば、釣果は確約してもいいだろう。

“師”の絶対は、本当の意味で絶対だ。



まぁ酒に呑まれてなければの話だけれど・・・笑

















だからこそ俺は雑誌取材の依頼を承諾し、

「“絶対”釣ります」と言い放ってこの地に来たのだ。

が・・・。












































そして物腰柔らかく、周囲の遊牧民のみなさんとも仲がよい。

まぁこれは酒に呑まれた結果なのだろうけど・・・笑




チョロートに生き、チョロートの一部となって、

それは正にチンギスハーンの若かりし日、

Mr.テムジン

そのものなのだろう。














「マレーシア&韓国・・・かぁ」


氏の今までの“釣旅”が行き当たりばったりのものであった以上、

世界のいろいろなところで、いろいろな人に助けてもらった結果であった以上、

日本人以外のお客さんには特別な“何か”があるのかもしれないな。









もう、頼るのはやめよう。

「勝手にやれよ」

それは俺への信頼なのだろう。






































俺はただ、


“たわごと”と呼ばれた精神論に、結果という色を塗るだけ。


俺にはそれしかできないから。
























































本日

ポッと出の俺には小鬼一尾。

氏いわく、「今年のトータル最小サイズ」らしい。



テルさんはこの日ボウズ・・・。









やはりMr.テムジンの協力無くして“鬼”の捕獲は厳しいのは現実。





















「仕事中だからさ・・・」


そういって去っていった氏に一抹の寂しさを思いながら、

今晩の居候先、遊牧民の翁の小屋へ帰る。






夕焼けがきれいだった。

かなしい色してた。









「Mr.テムジンのチョロートでの“伝説”、実際に見たかったなぁ〜」


がっくりトボトボ歩きながら、そうボヤいた俺にテルさんがボソっと言った。


「ひとつだけ方法があるよ」






















































「武さんより大きい鬼を釣ればいい。そうすれば武さん動く。絶対に。」







































































「まさか・・・」











紅すぎる空が、その無謀さを浮かび上がらせた。

極論だが、正論。

・・・しかし、その道はあまりに険しいことは今日1日で知っている。





木枯らしが冬の足音を鳴らす。

「夕焼けは雨、もしかすると雪になるかも・・・ハハ。」








自虐的に嘲笑した俺は

この時、翌日に起こるドラマを想像すらしなかった―――。


























・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



























翌朝、起床。




蒼天は今日も苦笑いを浮かべている。

曇り、時々小雨。

しかし釣りには申し分ないコンディションだ。

隣ではすでに一仕事終えた翁が双眼鏡をのぞいていた。

翁は居候させてくれた遊牧民一家の主人。

いつも壊れて片方だけになった双眼鏡で遠くを見ている。

360度、地平線内で起こるすべての事を見ている。




聞くところ、開高先生がこの地に来る前、偵察隊として派遣された日本人の一行を案内したのは彼だという。

偵察隊は見事118cmの“鬼”を仕留め、小説家を呼び寄せた。





















































翁の雄姿

初めて翁(おきな)に会ったとき「あれ?」って思った。
もう8年も前になるケド、ばぁさんの葬式のときに会った爺さんの弟さん(いまだ健在、だと思う)にそっくりなのだ。
俺の生まれる前、母さんが15の時に、もう45年も前に死んだ爺さん。
タイ編やパプア編1のエピローグにも出てくるけど、
ずいぶん昔に死んだから、俺が爺さんを見たのは、残ってる1枚の写真でだけ。
それは戦争の時、軍服きて馬にまたがった写真だ。(おそらくビルマで撮影)
あとは膨大な数の、床に敷き詰められた黒鯛の写真・・・。

海に程近い富山の「雨晴」という土地に住んでいた爺さん。
一本櫓を操り、夏の海水浴での水難事故では周囲を指示&先頭を切って捜索隊を行っていたという爺さん。
黒鯛釣りの達人で、釣りのしすぎで肺を悪くし、結果、心臓の血液逆流という当時は治療法のなかった病死で死んだ爺さん。
発作の時は相当痛かったはずだが、娘(母)たちの前では死ぬ2週間前まで「腹痛」と言い張り、ほんと急に逝ったという・・・。
死後も「あいつの家族なら・・・」と、病弱で寝こみがちの母(俺のばぁちゃん)を気遣い、
俺のかぁさん家族を近所の人が野菜やら何やいろいろ助けてくれたそうだ。
近所の子供たちにはスキーを作ってやったり、釣具を作ってやったりと、何だりと、人気の面白ろオジサンでもあったらしい。
山菜&キノコ(松茸含む)狩りの達人でもあったが、「危険な場所」と周囲には決して場所を漏らさず死んだ。
「松茸より数段旨かった」そう母が懐かしそうに言う黄色い幻のキノコも、爺さんの死後食べられてないという。
いつか、俺が探し出したいと思っている・・・。
そんなわけで「無念・無信・無想」・・・3無い主義を掲げる無宗教者の俺だが、
(無理・無駄・無謀バージョンもある。俺も強いて言うなら自然崇拝、先祖崇拝かな?笑)
そんな“粋”な爺さんを、俺は自分の“守護神”、“釣りの神”と崇め、そして人生の目標としているのだ。

そんな爺さんにかぶるのだろう、おかんは俺の釣り&野生児ぶりには反対なのだ(笑)
爺さんたちが引き上げた真っ白の「どざえもん」の姿を思い浮かべると、モリをもって水中に消えていく俺&弟が気が気でないという
ばぁちゃんの葬式では、当時の爺さんをしる遠い親戚みんなが「拓矢ちゃん、爺さんに似てきたな」というぐらいだし。
まぁ母の言うことも一理あって、俺が中学時代までは、特に富山の夜釣りは“北”の恐怖があったでね。
富山の俺たちにしてみれば、釣りであれキャンプであれ、幽霊よりも、近づいて来る懐中電灯のほうが怖いのだ。
実際、オカンの知人がズタ袋に入れられかけた“未遂”を受けているから、
オカンはより俺の釣り、更に言えば夜釣りには大警戒だったのである。
だが、血は争えないもので、
爺ちゃんには会った事もないけど、別に親父はそんなに釣り好きでもないけど、
「雨晴」でキジハタを釣ったことをきっかけに、俺はこうなりましたとさ♪
「黒鯛&1本櫓」
「パプアンバス&1本オール式カヌー」
俺がパプアに強く惹かれるのは、この辺の“血”が原因なのかもしらん。


・・・さて“翁”、「馬に乗った姿を撮影したい」という(というか“伝える”)と、
川の水で髪の毛を整え、七三わけにして馬にまたがる翁。
結構オチャメな方でした(笑)
爺さんもきっとこんな人だったのでしょう(笑)

写真見たのもかなり前だから記憶があいまいだけど、
イメージの中ではホントにこの写真のままだよ。

「爺さん頼む、俺を“漢”にしてくれ!」
デジカメの液晶に、俺は大真面目にそう祈った・・・。












・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








































翁(おきな)の朝は早い。



家畜の羊を檻から放ち、氏の一日は始まる。

夜に野放しにしたままではオオカミに食われるのだ。

家畜大国のこの国は、世界でも稀有なオオカミ大国でもある。









自分自身が“オオカミ少年”になりませぬよう、


大地の神よ、どうか1匹。












“鬼”を、我に。



















ここでかる〜く&ダークに

「翁」という人物にについて触れておかねばなるまいて。



去年、後述の“蒙古の三平”アナック君(彼は学生のため、多少英語が話せる)

ひょうんなことから知り合い、共にこの川を“旅的”釣行していたテルさん。


そしてこの翁のゲルの付近にもやってきたのだそうだ。





昨年、翁は重度のアル中だった。





テルさんはモンゴル語は当然わかるわけもなく、のんきに釣りをしていた。


崖の上のゲルの中、


何事かをモンゴル語で翁と話したアナック少年、








いきなりテルさんのところにすっ飛んできて


「テル・キル テル・キル〜!」


号泣しだしたという。










「 TERU KILL TERU KILL 」

とにかくなだめて&たどたどしい英語で事情を聞けば

事情も理由も脈絡もなく

アル中翁が「テルを殺さなければならない」と言い出し、





銃に弾をつめて準備しているそうなのだ。






















開高先生の「オーパオーパ」によれば

遊牧民はプレーリードック(現地名タルバガン。旨い)の毛皮を取るため、毛皮の価値を下げぬため、

おもちゃのようなボロ銃でも、20m先の小動物に

確実にコメカミを打ち抜くという。


そんな翁が、崖の上からテルさんを銃で狙っているというのだ




チョロートというのは、後々更に詳しく写真で見せるけど、

“草の海”の中に突然現れた大地の裂け目、

悠久の侵食により落差100m近い峡谷を刻み、俺たちはその崖をおり、釣りをしている。




崖の上から狙われては、ひとたまりもない。

抵抗も出来ない。

しかも相手は、この蒙古で半世紀以上を生き抜いてきた生粋のモンゴル人

超人的視力の持ち主・・・。


















去年はまぁやはりアル中の気の迷いだったってことで事なきを得たらしいけど


そんなわけでテルさんは今年も翁のことを超気にしていたのだ。






テルさんのタリアット村の知人、

俺たちをツェツェレグ→タリアット村→チョロートまで送ってくれた方によれば



「家族の手荒い“制裁”により、翁はアルコールを取り上げられ、正常な心優しき草原の民に戻った」

という。














しかし・・・

まぁ俺もそうだからわかるけど

一回マジな生命の危機を感じると、ホントに用心深くなるもんだ




(俺も2回目のパプアでは木刀を持参し、首都ではいつでも抜刀できる状態に帯刀していた。
・・・異常警戒してたでしょ?>万世)





まぁ、これは俺にとっても同じ問題なわけで・・・。








「様子を確認&ご機嫌取りに向かおう!」


と、先手を打ってこちらから翁宅に送ってもらった俺達。











手土産に持っていったのは、やっぱりウォッカだったんだけど・・・。




























やはり話は本当だった。

翁は気のいい遊牧民にもどっており、

久々の酒なのだろう、ずいぶんと気をよくして、

「泊まっていけ」


とまで言ってくれた。











「まずは第一関門突破・・・」



俺とテルさんは胸をなでおろし、眼を閉じた。

超乳製品臭い小屋の中で、寝た。


























〜そんなわけで一晩の居候の末の朝の話に戻します〜





















夜、狼から守るため“柵”に羊を入れていたのを、

日が上がったので放し、自由に放牧させ、彼は朝の一仕事を終えた。






そんな翁がとっておきの場所に連れて行ってくれるという。

「荷物をまとめろ」とジェスチャーでいう。


「行くぞ、アホ釣り師ども。」

そう、眼がいう。









またしても話がトントン拍子ダ(笑)

成り行きにまかせて欲望を開放しましょうゼ、奥さん。



・・・じゃなかった、テルさん(笑)







なんと左のちっちゃい方の子は男の子らしいんです。超美形で髪も長いし、女の子だと思ってました。
去年はフルチンで走り回ってたとはテルさんの談。
嬉しいだろうな、テルさん…。
俺もパプアのレンちゃんに会いに行きたくなりました。
後ろに見えるのが本文中の“柵”
昼間は基本好き勝手に遊牧させる家畜たちも、
夜は狼から守るために柵の中に誘導します。






















































荷物を荷台にくくりつけ、ヤクにつないだ。

ヤクとはチベットから持ち込まれたのであろう寒さに強い毛長牛だ。

これから始まるサバイバル生活。夜には氷点下になる。

荷物は限界まで絞ったけれど、テントや寝袋…

なんだかんだで約20キロ。

人力で担いで移動するにはあまりに厳しい。







翁の孫?たちとヤク。










俺はいつでも布製の赤い竹刀袋に竿を入れて旅してます。
2ピースロッドにはちょうどよいです。バズーカーはダルい・・・。
高校時代はこれに竹刀を入れて暴れてましたが、
今やこいつは全5回すべて、12カ国を旅した竹刀袋になりました・・・
今回はグリップ脱着の雷魚竿も持っていったため、竹刀袋からはみ出し裸で移動させるハメに・・・
そんな無茶苦茶やっても前5回の旅で移動で竿が折れたことはありません。
ガイドが曲がったぐらい、気にしません。曲げなおします。
ひび割れたガイドフットは瞬間接着剤をちょいと垂らすだけ・・・無茶苦茶だ(笑&汗)
足元は市場で2000円で買ったモンゴルブーツ。
足場の悪い崖くだり&土砂の浸入を考えると、
いつでもどこでもMyマストのコンバースオールスターハイでも、今回はあまりに荷が重かった…。
















 翁の奥さんがヤクを引き、ヤクは面倒くさそうに荷物を引き、

足が弱った翁は馬にまたがった。







ホーミーが聞こえてきそう。悠久の大地を行くのだ。
「人工物はヒトの糞だけ」
・・・かつての上等兵さんの言葉が身に染む景色が、いつまでもどこまでも続くのでした

何だろう、この写真を編集している今、
バッチギの主人公の歌う「イムジン川〜♪」って歌が頭を流れました。
無駄に沢尻エリカの「アホっ!」っていうハニカミ笑顔も・・・。





























とぼとぼ歩くこと数時間。

うねる草の海を渡り、谷(崖)を越えること2つ。






















崖の降り方を検討する翁
逆光にて色調補正したら、
夕焼けみたいなことになっちゃった。ゴメンナサイ




































ご、強引だ・・・




















































釣り師は傷を抱えて釣りに出かける。しかしその傷が何であるかを知らないでいる(開高健)
竿とともに高原を行くテルさん。






































そんなこんなで3時間ぐらい歩いたか?

どうやら“翁の秘密ポイント”に着いたようだ。




















川辺までヤクを下ろせる場所を探し、崖を下る。

またも超強引に(笑)




川岸までたどり着くと、下から見上げるそこはまさに大地の裂け目、


両側を崖に閉ざされた岩の世界である。


「ここらはどこでも釣れるよ。」とは翁。





遊牧民の視力の脅威はこれまでに思い知っていた。

彼らには100m近い崖の下の水中でも、魚がいるかどうか“眼”でわかるのだ

翁がいるといえばいる。

いないといえば、いない。






「ここにはいる」と言っているんだ。それだけで充分だろ?







細かいポイント指導は無用。

それを見つけることが俺の最大の楽しみだから。






翁に礼を言い、別れた。

「足で釣る」そんな自分が最も得意とするスタイルが存分に発揮できる場所。

テントを設営し、カマドを作る。


大水でも流されないだろう位置にテントを張ると、一目散に水辺に降り立った。







「あれ〜、ここ、去年も来た様な・・・来てない様な・・・」


まだ寝ぼけたようなことを言ってるテルさん。

どうでもいいっすよそんなこと。

ただ目の前にチョロートが流れてるんすから。










一気に5時間、川を釣り下った。


ひとつだけ人より優れているだろう自分の能力、

それは健脚である。





誰が呼んだか「岩走り」

普通の人がただ歩くより早いスピードで岩場を走り、ラン&ガンを繰り返す。

「ランガンではなく、お前のは“ランラン”だ」

そういわれたこともある。



一緒に釣りした人は必ず言うと思う。

「あいつ、一瞬で消える・・・」























基本的に1ポイントで1投以上しない。

本当のハニースポットには一投で反応があるものだからだ。





「開拓」に反芻はいらない。

ポイントはいくらでもある。

















「一魚一会」






俺はただ1匹に会えればイイだけだ。

感性のおもむくまま、次々に現れるポイントを、

“精神開拓”していく。

















予想よりはるかに川は細かった。

フルキャストすれば余裕で対岸に届く。

岩魚釣りとまでは言わないまでも、山女をやるような渓相だ。




冬近く、減水してタイメンの着き場が限定されてくるというこの晩秋。

“鬼”を狩るべく俺はこの時期を選んだ。







打って、打って打ちまくる。

行けるトコまでいく。

全部打つ。









バリバスの“アバ70”は気持ちよく伸び、

ルアーはここぞという岩のえぐれ、よどみに吸い込まれる。

白線流し…目視性のよい白いラインはともすれば根掛かり多発のこの流れにメンディングを容易にし、

完璧なコース&ポイントで川の絶対奥義「Uターン」を打つことができた。





ガングラフトの鮎邪。

一見すると急流での使用に不向きに見える「S字系」、

しかしリップが無いことによるピックアップ時の軽抵抗は急流での大きなアドバンテージ。

そのボリューム感からくるピンポイントでの強烈なフラッシング効果は淵など大場所に強い。



シャローのラン&ガンにはグレイズのジョルトSWを使用。

「SW」とは本来ソルトウォーターの略だがサブジェクト・トゥ・ワールド(世界征服)の意味もこめられている(らしい。笑)

小粒でかっ飛び、もぐらず&根掛からず、大型フックに変えても動きが弱まらない…。



まさに対怪魚用の“世界征服”という名に恥じぬ開拓性能、

前回のパプアでも世界記録を叩き出したルアーだけに、生産中止が悔やまれる。


















…てなわけで「恩返し」はこの辺にして(笑)、話はオーパの世界へ―――。







































この2つの連合釣法で釣り歩くこと約15キロ。

(テントまで歩いて帰るのにかかった時間3時間×時速5キロ)



しかし、タイメンの反応は無い。

時折レノック(コクチマス)が遊んではくれるけれど…









テルさんがレノックをGET
初めて見るレノックは、体高&厚みがあり、何より美しい色彩に驚いた。
これは残念ながら絶対写真には写らないんだ。
韓国なんかじゃ専門に狙う立派なターゲットになってる理由がよくわかる

ペラつきジタバグ、この「キュルキュル」って音が虫っぽくて、
そしてこの周辺でメインで捕食されているであろう
「ボバリングするバッタ」(開高先生の表現を借用)
が水面でもがく音にに酷似するのだろうナ。
・・・なんてことを思いながら、俺も釣りてェって思いました。











てなわけで





俺もレノック初ゲット!
もっと簡単に釣れるかと思ったけど、かなり苦心して釣った感があるよ(汗)
ホント、ウグイみてぇな口した魚だな。
それでも外道と呼ぶには美しすぎる色彩してやがるのは、やっぱマス族の誇りなのか?
ちなみに俺のチョロートはタイメンもレノックも、
全部この“酷使無双竿”サイラス&コンク200&アバ70だ。
“酷使無双竿”という割には、日本でもバス釣りに使っている普通のバスタックルだ。

「そんなんで大丈夫?」って?
・・・新しいタックル買う金などあるかボケっ!笑











万世作「釣具業界」
製作コンセプトは “エ○グリを3馬身差で追うメ○バス” だそうです・・・。
お前、メ○オタじゃなかったのか!?笑
まぁおいといて、このレノックという魚(和名:コクチマス)は、
ワイドウォブリングの水面波動系が圧倒的に強いのでした。
みんな仲良くやればいいのにね。
「オールメガバスタックルのイマカツ VS オールエバグリタックルのユキ・イトウ」
そんな企画をどこかの誌面で見てみたい、お互いがお互いの製品をどう客観評価するのか聞いてみたい。
そんなこと思うのは俺だけでしょうか?
「・・・ってな高尚な思想があっての作品、だよな万世?笑」
こんなことを書きたくて、無理して俺は釣ったぜ!笑。ルアーなんて何でもいいよ。気持ちがノルか、それだけだっ!
楽しく行こうぜ〜所詮アソビなんだから。一般消費者にとってはよ。
ウエの都合など知るかっ!






















タイメンは殺したくない分、

こいつらは重要な食料だ。

タンパク源は現場調達が“釣り旅”の基本。

基本の「キ」である。わかったかっ!笑

(尊敬する上等兵さん風に言ってみました…パクリ表現すいません・・・)










え・・・
荷物を減らすべく網も持ってきて無いので、焼き魚は焚き火が一段楽した後に熾火に乗せるだけ・・・。
国内無人島編の「カニ」の教訓が、まったく生かされておりません(笑)
真っ黒になったソレを、皮をはいで食べます。これでもけっこう旨いです。
1年間、バイトでありながら飲み屋の厨房を一人で切り盛りしていた“Mr.谷口シェフ”ことワタクシの、
渾身の作品でございます♪
奥がレノック、手前は枝です。ご機嫌です♪
・・・でも9章で、更に上を行くテキトー料理人“アナック”が現れることになる・・・


















あァ・・・
「ナマでも死にやしないよ♪」
って究極テキトー料理を更にテキトーに行う俺に
「しっかり焼こうよ!」と悲哀の目で俺を見上げるテルさん・・・

俺のせいでどんどんテルさんが疲れていきました・・・笑
皆さんの生気を吸い取って、俺一人だけでも元気に生きていこうと思っています♪
・・・でも“ナマ”はやっぱあぶないっすよ、テルさん・・・
ナマだといつか死ぬことになるかもしれません・・・笑
























俺の立っている岸が、崖にぶつかった。

このときすでに午後6時。

物理的にも、時間的にも今日はこの辺が限界だろう。




夏のモンゴルは9時過ぎまで日があるとはいえ、

戻って薪を集め、メシを作る時間を考えると一刻も早く帰らねばならない。






行けるところまで釣り下った後、

開拓した中で良さそうなところだけをかいつまんで打ちながら、急いで岐路に着く。





そしてひとつ、どうしても打ちたいポイントがあった。
























「あそこで、最高のタイミングで、最高のルアーを通す。それだけだ」






































・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

























































全打ち&時間差ピンポイント爆撃





アフリカでも日本でも変わらぬ、

いつもの岸釣りスタイル。


とりあえず全部打つ。思わぬハニスポがあるかもしれないからだ。

そして記憶に残ったところ、なにか引っかかったトコロを

時間差で、ベストタイミングで入る。



俺はあまりルアーは気にしない。

いるべき時間に、いるべき場所に

俺が水辺に立っているかどうかだけ。





時間帯&ポイント選択こそ、俺のすべてに近い。



ランガンは昼間の暇つぶし運動&下調べ。
(昼間のだれ具合&最初の1匹釣るまでの執念とその後のだれ具合は、一緒に釣りした奴ならわかると思う。笑)


勝負は、朝まずめ&夕まずめ、極論この2つ。





とくにこのような、“小場所”、ピンポイントの釣りではそれが顕著。

パプアのような“エリア”と呼べる広さならいざ知らず、

落ち込み、カーブ、瀬、淵・・・

食うか食わないかはともかく、

相手は1投目で確実にルアーに気がつく、そんな場所の場合、

俺は1ポイントあたり、第一投からの3投以内で勝負は終わると思っている。




だから極論、朝と夕方


それぞれホントのベストタイミングには1箇所にしかいられないから



合わせて計6投。


それが俺の全カードとなる。




そこに完全に集中する。






無駄打ちを無くす




言うならば上等兵さんのアカメ釣り、ナカジマ曹長さんの池原ロクマルハンティングだ。



1投1投、時間をかける。



ゆっくり巻くのではない。



30分に1投、

鳥の動き、えらの動かし幅・・・



「フっ」とした直感、タイミングでのみ投げる。



またも剣道的言葉で言うなら、「間合い」




時間的間合い、距離的間合い・・・













モンキスを通じて実際に出会えた

数々の達人、奇人・・・









武さんの「開拓」、

上等兵さんの「信念」、

ナカジマ曹長さんの「我流」、

テルさんの「情熱」、

スエちゃんの「美学」、

黒田の「理論」、

万世の「愛のチカラ?」、

ユッシーの「無垢」、

堀内さんの「笑い」、

コーゾーさんの「感謝」、

エディーの「哀惜」、

ワビル&ゴードンの「本能」・・・














一緒に水辺に立って感じた、、

一緒に竿を振って学んだ、

各人の“釣道”ともいえる、そんなモノ。




「俺は一人で旅に出た。だから俺は一人じゃない」




そのすべてが俺の中にある。















武さんのように手持ちポイントは多くない。


師匠の譲りのランガンスタイルで見つけた場所。


今日見つけた、1個だけにして“絶対”と思えるポイント。



「ここにいなければ、この川にはいない」



そんな場所。

















俺の場合、いるべき場所に竿を出せれば、勝負は圧倒的に早い。











































日が傾いてきた。


修羅の刻、


“鬼”が現われる時間と、みた。




















チェックした10数キロの中で最強と思われる、そのポイント。


















“鬼門”


























そう名付けたその場所、

その荒瀬に、

俺は最高のタイミングで舞い戻った。























釣り下ってる際、1回だけアタリらしき反応があった“鬼門”

あとで聞いた話だが、川岸に木がありキャストしにくいココ。

俺とちがってザッと流すわけではなく、おいしそうなところに結構粘るタイプのテルさんが、

「釣り下る際には回り込んでスルーしたかもしれない・・・」という。





…全ての条件がそろってたってわけだ。






















白のアバ70がメンディングできる程度にラインが見え、


それでいてお互いが見えなくなるローライトコンディション。
















これ以上は感覚の問題だが、


とにかく俺の想像し得るベストな“タイミング”を待った。



























煙草で一服入れる。




あせるな、気配を消せ。





















「今だろう」



























心を落ち着けてからの1投目、




アップストリームに強い鮎邪への信頼…

















しかし反応はない。




















鬼がいるなら、確実に気づいたハズだ。













警戒と興味
















その両方に、“何か”がともされたハズだ。










































しばし静寂を待つ。






針を研ぐ。






大きく息を吸った。









己を落ち着けるため。








そして“炎”に充分な酸素を送るため。












































心・技・体

気・
竿・体

守・破・離


















































その全てに抜かりなし

































ダウンストリームに強いジョルトに変えて第1投。










反応なし。










コースを変えて第2投










鮎邪と合わせての3投目。










持論の中でのリミットライン。















必殺技「Uターン」が最高のポイントに決まったその瞬間―――































































































―――“鬼”が目覚めた。―――



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