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 ここではスモールマウスバスに関する作者独自のデータ・体験談を紹介しています。釣果アップを目指す方には残念ながら参考にはならないでしょうが、裏磐梯での釣りをオモシロクしたい方には少し参考になるでしょう。「ふ〜ん。」程度の内容です。

裏磐梯での「釣り時」 水温とスモールマウスバスの行動
スモールマウスバスの捕食圏 スモールマウスバスの体色と生息環境
スモールマウスバスがハイになる時 追跡する魚-スモールマウスバス

- 裏磐梯での「釣り時」 -

 魚がたくさん釣れる時期(時間)も「釣り時」ですが、魚のコンディションが良く、その魚本来のファイトを堪能できる時期もまた「釣り時」です。
 魚のコンディションを知るには肥満度(=太り具合)を調べる方法があります。裏磐梯の湖沼に棲むスモールマウスバス(以下「スモール」)の場合、その平均値は0.0135で、痩せている魚の肥満度は0.012以下、太っている魚の場合は0.015以上になります。数字で表すとその差は小さいように思えますが、0.002違うと外見もファイトもまるで違います。

肥満度のグラフ

 図1はスモールの肥満度を月別に表したものです(産卵に関与しない24cm以下の魚のデータは除外してあります)。5月は発達した卵巣を抱えるメスが釣れるため肥満度は平均以上ですが、6月に産卵することにより7月に最も痩せた状態になります(ただし産卵に関与しない小型魚はこの限りではありません)。7月に釣れる産卵後のスモールのファイトは当然ながらイマイチで、スタミナもありません。しかし、8月になるとコンディションを回復させて、秋には丸々と太った状態になります。秋のスモールは、その横幅と体高もさることながら内臓脂肪を蓄えていますから、7月に釣れる魚とは比べ物にならないパワーとスタミナを見せてくれます。数字だけを見れば5月の肥満度とほぼ同じですが、秋の肥満度の上昇は生殖巣の発達ではなく筋肉の発達によるものであることに加え、水温がスモールの適水温となるため平均サイズの魚でも引き味は十分です。
 以上の理由から、スモールの本来のパワーを体験するためには秋に釣ってみることをおすすめします。ベストタイムは秋のターンオーバーが始まる前の9月下旬です。この頃に釣れるのは30cm前後の魚であることが多く、運が良ければ40cm以上の大物にも出会えるでしょう。まさに「これがスモールなのか!」という強烈な引きを堪能できます。

- 水温とスモールマウスバスの行動 -

 スモールマウスバス(以下「スモール」)が棲む裏磐梯の湖沼の表面水温は、0〜26℃の範囲内で変化します(湖沼の季節変化参照)。このうちスモールの活性が高い水温(トップウォーターで良く釣れる水温)は16〜23℃で、ベストは20℃前後です。例年5月下旬〜7月下旬と9月上旬〜10月上旬が16〜23℃になります。この水温の範囲内ではスモールの行動も比較的安定していますから、初めて裏磐梯を訪れる方でも大ハズレということはないでしょう。6月、7月、9月が狙い目となるのも納得できます。では、それ以外の水温ではどうでしょうか?
 まず、8℃以下の低水温下では活性は非常に低く、動きの速いルアーには反応してきません(池で飼っていた魚も、この水温では餌のミミズに突進することはありませんでした)。この水温では餌を求めて回遊することは稀で、視界に入った動きの遅い餌生物を捕食する程度だと推察されます。なぜなら代謝が不活発な時、魚は多くの餌を必要としないからです。裏磐梯では多くの釣り人が訪れるゴールデンウィーク前半がこの水温なので、この頃の釣りは初心者の方には全くおすすめできません。
 次に10℃前後ですが、この水温では相変わらず活性は低いものの、水温が上昇または安定している時はサスペンドミノーやメタルルアーなどに反応してきます。場所によっては岸からも釣れますから、10℃あれば釣りになると考えて良いでしょう。少なくとも越冬場所からは離れると推察されます。ただし、ファイトはイマイチですから、スモール本来の引きを楽しむことはできません。
 そして10〜15℃ですが、この水温帯ではスモールは大きく移動するらしく、初夏にしろ秋にしろ、夏のように湖全体に魚が分散しているということがありません。上級者の方なら群れの居場所を探して釣ることができますから、連続ヒットを体験できることでしょう。しかし、いつでもどこでも同じ釣り方しかしない方(私のようなトップウォーターファン)は苦戦することのほうが多いと思います。ルアーの色など細かいことは重要ではなく、「いかに早く魚の居場所を見つけるか」が、この水温帯で良い釣りをするためのカギとなります。天候による水温の変化に注意し、柔軟に対応する必要があります。
 最後に真夏の24℃以上の場合ですが、これはマークするべき水温ではありません。それより下にある水温の低い層に狙いを絞るのが正解です。ただし、20cmに満たない小型魚は岸寄りにいて、しかも湖全体に分散していますから、バスフィッシングを始めて間もない方や、とにかく1匹釣りたいという方は夏休みを利用して狙ってみても良いでしょう。
 このようにスモールの適水温はラージよりもやや低めという程度であり、多くのトラウトのように冷水を好むわけではありません。「低水温の環境にも適応できる=冷水性」ではないのです。スモールを「イワナやヤマメと同じ冷水性」と扱うのは大きな間違いですから注意が必要です。

- スモールマウスバスの捕食圏 -

 これには生息する水域の透明度が大きく関係しますが、ステインウォーターの場合でも水面に浮く(水面を移動する)ルアーからの距離が水平方向で3m以内ならスモールマウスバス(以下「スモール」)は確実にルアーを認知し、活性が高ければアタックしてきます。つまり直径6mの円内は捕食圏となるわけです。バズベイトやトップウォータープラグにアタックしてくる様子から、これは間違いありません。ならば垂直方向の場合はどうでしょうか?
 ある程度水深のある場所では、ライズやボイルをする魚を、あらかじめボート上から見つけることはほとんどできません。実際の釣りでは、どこからともなく現れるという感じでルアーへ向かってス〜ッと浮上してきます。つまりスモールは水面で餌を捕食する場合でも水面直下を回遊するわけではなく、常に1mより深い層を回遊し、餌を見つけた時のみ水面へ浮上してライズ(またはボイル)をするのです。そして捕食後はすぐに潜行し、また視界から消えてしまいます。これを繰り返す時もあるのですから、スモールが水深5m以深の層を回遊して頻繁に浮上と潜行を行うとは考えにくく、垂直方向の捕食圏内は水面から1.5〜2m(深くてもせいぜい3m程度)ではないかと推測されます。この範囲内ならば浮上と潜行に伴う水圧の変化も気にならないのでしょう。

捕食行動の一例

 以上のことを釣りに応用すると、スモールの活性が高く水面にも関心が向いている場合は、5〜6m間隔でキャスティングを繰り返せば効率良くポイントを探れることになります。湖にボートを出したものの広すぎてポイントを絞りきれない場合や、スクールが点在していると考えられる場合は、このようにラフに探ってみるのも有効な手段です。この間隔で引かれるルアーにスモールが気づかないということはまず考えられませんから、反応がなければルアーや釣り方を換えて同じ場所をじっくり攻め直すか、そのまま探り続けるかを選べば良いでしょう。
 最後に非常に興味深いエピソードをご紹介します。私は流れ込み近くの底質が砂泥の場所で、25cmほどのスモールがコイのように砂泥に口を突っ込んで何かを捕食しているのを見たことがあります。私はバスは動くものや水面に浮かぶものしか捕食しないと思っていたので、非常に驚きました。これ以前にスモールの胃から灰色のドロドロしたものが出てきたことが何回かあったので、これはトビケラの幼虫か何かを巣ごと捕食しているのではないかと思いました。しかし、これについては未だに判明していません。

- スモールマウスバスの体色と生息環境 -

 裏磐梯で釣れるスモールマウスバス(以下「スモール」)を体色で大別すると、褐色の個体、オリーブグリーンに近い個体、そして黒っぽい個体の3つに分けることができます。

明褐色のスモール オリーブグリーンのスモール 黒色のスモール

釣れる割合もこの順で、黒っぽい個体は非常に少なく、めったに釣れません。体色が黒っぽい個体は「居着き型」であり、その体色は保護色とも考えられていますが、私は単なる個体差だと考えています。なぜなら15cmほどの黒っぽいスモールが1〜2匹、同サイズの群れに混ざって泳いでいるのを何度も見ているからです。通常は群れで行動するこの大きさでありながら、ある時群れを離れて居着き型として一定期間を過ごして成長し、体色が変化してから再び群れに戻ったと考えるには無理があります。黒っぽい個体だけで構成される「居着き型」の群れがいてもよさそうですが、見るのは決まって通常の体色の群れ+黒っぽい個体1〜2匹というパターンです。その場所の底質は砂礫が主体なので、黒っぽいスモールは他の個体と比べて非常に目立ちます。若令のスモールにとって、目立つというのはどのようなメリットがあるのでしょうか? なぜ体色を変化させたなら「居着き型」としてずっと過ごさないのでしょうか? 成長するに従い行動が多様化して「居着き型」の個体が増え、その結果大型魚ほど黒化した個体の割合が増えるというなら、まだ理解できるのですが・・・
 以上のことから、スモールの体色の差は後天的なものではなく、先天的なものだと思われます。池で2匹のスモールを1年以上飼育したことがありますが、どちらも泳ぎ回らないにも関わらず体色が変化することはありませんでした。

- スモールマウスバスがハイになる時 -

 ある日の早朝。私は桧原湖にボートを出して、いつも通りトップウォーターゲームを楽しんでいました。釣り始めて間もなく、30cm弱のスモールの一団がこちらへ回遊して来るのが見えました。その群れは5匹で構成されていましたが餌を探しているらしく、人が歩くくらいのスピードで水面直下を泳いで来ました。私がじっと動かずにいると、その群れは私とボートの存在を無視するかのようにボートの近くを横切って行きました。そこで、群れの進行方向にすかさずペンシルベイトをキャストし、ポーズをほとんど入れないドッグウォークアクションを加えると、ボートから5mほどのところで群れの中の1匹がヒット! 私は他の4匹は仲間の異変に驚いてすぐに逃げると思ったのですが、逃げるどころか何と4匹全てが周りで一斉にボイルを始めたではありませんか! まるで養鱒場のニジマスのように・・・。ルアーの近くに本物の小魚がいたわけではないので、これは明らかにルアーを食った1匹に刺激され、連鎖反応を起こしたのだと思います。餌もないのに一斉にボイルする。これはスモールがハイになったとしか考えられません。ヒットした1匹を釣り上げると残りの4匹は私に気づいてあっという間に姿を消し、その後、ルアーにアタックしてくることはありませんでした。

- 追跡する魚-スモールマウスバス -

 その日の桧原湖は珍しく風もなく、鏡のような湖面に静かに雨が降っていました。もちろんトップへの反応は良く、私は次のターゲットを見付けるために、ボイルが起こらないか湖面を見回していました。すると、30mほど先でさざ波がランダムに動き回っていることに気づきました。さざ波の正体はワカサギの群れだと直感したので急いでエレキを動かし、驚かさないようにある程度の距離を保ってそのさざ波を追跡すると、案の定それは40〜50匹のワカサギの群れであることが分かりました。岸から50mほど沖でのことです。さらに水中を良く見ると、群れの後方1mほどの所に30cm弱のスモールが1匹。そのスモールはワカサギの群れにピッタリとついて、同じ速度で行動を共にしていました。
 面白そうなので私はルアーを投げずにしばらく両者を追ってみると、そのスモールは唐突にワカサギの群れに襲いかかりました。何がきっかけでボイルしたのか私にはさっぱり分かりませんでしたが、再び静寂が訪れた時にはワカサギもスモールも水面から姿を消していました。
 人が歩くくらいのスピードで回遊するワカサギを1匹でずっと追跡し、そして突然襲うというスモールの行動を見たのは初めてだったので、この出来事は強く印象に残りました。私には「オレにはダッシュ力も持久力があるから、ワカサギなんて食いたい時にはいつでも食えるんだ。」とスモールが言っているかのように思えました。

 

福島県では2001年6月1日よりブラックバスとブルーギルの移植が
禁止になりました。違反すると懲役2ヶ月以内または罰金10万円

裏磐梯バスフィッシング情報 〜桧原湖とスモールマウスバス〜