“水俣病はメチル水銀中毒で、グローバルスタンダード”

=ニ宮・熊大大学院助手らがホームページ開設=

原因、歴史から魚の食べ方まで紹介




「水俣病」というローカルな問題を「メチル水銀中毒」というグローバルスタンダードの問題に広げたい、そしてメ チル水銀中毒という視点で「水俣病」を確認していきたいという認識から熊本大学大学院医学薬学研究部助手の二宮正さんが中心になって、これまでの研究実績を満を持す形で一般の人たちもアクセスできるホームページ「水俣病から メチル水銀中毒症へ」が開設された。
水俣病から メチル水銀中毒症へ
開設されたホームページのトップページ(同ホームページから)

ホームページは―

1.水銀と環境
2.身近な水銀
3.水俣病の発生と拡大
4.不知火海環境汚染 過去
5.不知火海環境汚染 現在
6.沿岸住民の健康障害 疫学調査
7.水銀の種類による病態
8.神経系 メチル水銀中毒症の理解のために

9.末梢神経は傷害されるか?
  水俣病感覚障害の責任病巣

10.感覚障害の再評価
11.メチル水銀中毒症 皮質傷害から見直す
12.水銀摂取の規制
13.魚の食べ方 総論
14.魚の食べ方 各論

―の14のメニューに分れているが、水銀と人々の暮しとの関わり、水俣病の歴史や被害拡大の原因、さらには具体的な研究データを掲げ、水俣病は「大脳皮質の傷害であり、全身性の感覚障害である」との新たな病像を位置付けるなど一般の人たちから研究者まで幅広いニースに応じられるものとなっている。ホームページの開設は同大の学外発信の一環で、学術資料調査研究推進室の取り組みの一つ。

同ホームページのURLは
http://www.lib.kumamoto-u.ac.jp/suishin/mercury/index.html

放置された水銀は消えない。「メチル水銀汚染」が中心軸だ

中心になって構築した二宮さんは≪環っ波≫の問いに次のように答えてくれた。

関西訴訟判決後の環境省交渉で切り込む
二宮さん(2列目、立つ人)
    =2004年10月16日、東京・霞ヶ関で

「水俣病」というローカルな問題を「メチル水銀中毒」というグローバルスタンダードの問題に広げたい、そしてメ チル水銀中毒という視点で「水俣病」を確認していきたいというのがこのホームページの基本方針です。それは関西訴訟で打ち出した方針と同じです。最高裁で勝って、ようやく日本でも、水俣病がメチル水銀中毒症になると思っていましたが、あいかわらず「水俣病」です。
水俣病もイラク病もカナダ病もあるいは、フィリピン病もおおのおのの事情がありますが、「水俣病」も「メチル水銀」からおこったという事実を、もっときっちり認識したいという気が強くします。
「水俣病を二度とくりかえさない」と海外にむかって呼び掛け、重症水俣病のひとの写真やビデオをまわすのは、ひとつの手段ですが、では具体的にどのようにしたらよいのかといわれるとき、「ゴミを20種類以上に分別して、蛍光灯や電池はリサイクルにまわす」「埋立地で能をおどる」というだけでは、あまりにも情けない気がします。
患者をふくんだ我々(どこまでが、「我々」の範疇かは明確ではありませんが)は、ゴミ問題でもない、村社会の崩壊でもない、高度成長の犠牲でもない、「環境汚染によるメチル水銀中毒症」を経験したということを、もっと中心にすえる必要があると思います。
いくら、海がきれいになろうと、市民の絆がもどろうと、放置された水銀は依然として埋め立て地と、不知火海のなかにあるという「事実」、なにが変わって、何が変わっていないのか、「将来」に向けてなにをしたらいいのかを「メチル水銀汚染」を中心軸にして考えていこうと思っています。


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