【コラム】 “って なあに?”
回分式畜舎排水処理システム

自然循環型の畜舎排水処理システム。宇井純・沖縄大学名誉教授が30年前、ヨーロッパ留学中にオランダでこのシステムの原型を考案した国立衛生工学研究所のパスフィーア博士の下に4ヵ月滞在し習得、帰国後、沖縄の気候条件も加味した「沖縄型」を完成させた。
このシステムを一言で表すと、糞尿や排水を貯めて処理するための池(溝)を作り、水車を回して空気を吹き込み(ばっ気という)、水を動かし、そして止めて沈殿させ、上澄みを取り出すというもので、微生物の働きをフルに活用するところが特徴。
すなわち、ばっ気した時に酸素が好きなバクテリア(好気菌)が活発に働いて有機物を食べて分解し、沈殿させた時にこんどは酸素が嫌いなバクテリア(嫌気菌)が有機物を食べて分解するという繰り返しで、これにより汚水が処理されるというもの。一つの池(酸化溝)でばっ気と沈殿を繰り返すところから「回分式」と命名された。
このシステムの最大の特徴は、一つの池を作るだけで(宇井純さんは本当はコンクリート製、ブロック製でなく、昔の土間のように土を固めて“タタキ”状態にするのがベストとしている)、高度・高価な装置をつける必要はなく、したがって管理も簡便、さらに畜舎から出る排水をそのまま利用できる(宇井純さんは水で希釈する方法は水資源が乏しいところではすべきではないとしている)という、言うなれば安上がりで、手間がかからず、余計な水を使わずに処理出来るという、いまの世の中によりフィットしたプロセス、システムと言える。
さらに、上澄みを農業用に再利用(すでに沖縄では実際に多くの効果を上げている)出来るというまさに循環型で、かつ、スローライフ精神にもマッチした最新技術と言っても過言ではない。
2004年11月からは法律(「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」)が施行され、野積みや素掘り、適切な処理をしないでの排出は違法行為で、処罰の対象になっただけに、このシステムは“すぐれもの”としてさらに脚光を浴びそうだ。
このシステムを宇井純さんが分り易く書き下ろし、絵入りのブックレットが「沖縄環境ネットワーク」から発行されている。1部¥500(税込)
* 沖縄環境ネットワーク
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分りやすい内容で、サイズもハンディ
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