浸透圧(しんとうあつ)
溶液を半透膜(混合物中の特定の成分だけを浸透させる膜)を隔てて溶液を接触させると、半透膜を通って溶液中に拡散していく現象を浸透といい、逆に溶液の浸透を阻止し、平衡を保つためには溶液の方に余分な圧力を加えなければならず、この圧力を溶液の浸透圧という。浸透液は溶液の濃度や温度によって変化する。
ドイツの植物学者、W.べッファー(1845〜1920)によって実験的に認められ、その後、最初のノーベル化学賞を受賞したJ.H.ファント・ホッフ(1852〜1911)によって1886年に理論付けられた。
塩は浸透圧の作用が強く、材料にしみ込みやすい。生物体の水分を強く外に吸い出す働きもある。この状態を端的に表すのが“青菜に塩”であり、なますを作る際に刻んだ大根やニンジンに塩をふって、水けを絞るのもこの現象を利用したもの。
ヒトの体内で血液にまじって全身をめぐって細胞内の古いものを新しいものに入れ換える、いわゆる新陳代謝を促したりするのも塩の大事な働きで、他に置き換えられない物質であり、塩がヒトや動物にとって必要不可欠なものである所以。















新陳代謝(しんちんたいしゃ)
生物体内で物質が化学変化を起こすことをいう。物々代謝、物質交代ともいう。
その過程は「合成」と「分解」に大別され、それらを「同化作用」、「異化作用」と呼ぶ。大部分の過程(化学反応)は多くの酵素によって触媒され、制御される。




















脊椎動物(せきついどうぶつ)
脊椎を身体の基軸として体躯を支える動物。体は左右対称。頭部・胴部・尾部・四肢の別があり、頚のあるものもある。内臓をもち、生殖孔・肛門などがある。骨格と神経は頭部に集積している。動物分類学上は1門。
生物史上ではもっとも新しい動物群で、もっとも複雑な体制、高度な機能をもっている。その証拠に、遺伝子が無脊椎動物が1万〜2万個に対し、5万〜10万個あると推定されている。





















羊水(ようすい)
ヒトを初めとする哺乳動物など脊椎動物が妊娠した際、胎児を保護する膜(羊膜)を充たす液。胎水ともいわれる。胎児を衝撃や温度変化などから守る役割を果たす。
成分は98%以上が水分で、残りの2%以下が胎児の成分。胎児がこの“羊水プール”にいる感覚が人類が海中から誕生したものに共通するとされている。
羊水を包む羊膜は古代ギリシャ語の「アムノス」(羊のいけにえ)という言葉に由来し、古代ギリシャでは羊を神に捧げる時、柔らかい皮袋に入れたため、この袋を胎児を包む膜にたとえて羊水とよばれるようになったという。




















5000人の参加者にあいさつするスローフード協会のペトリーニ会長
=奥原 潔さん撮影
スローフード
1989年に設立された国際的なNPO「スローフード協会」が進めている運動。
地域文化、味覚教育、生物多様性、環境に配慮した農業を支持・支援している。具体的にはハンドブック、ガイドブック、レシピなどの出版活動、世界中の高品質の食品を振興するイベントの開催、忘れられてしまった味覚を取り戻すためのプロジェクト、食分野の新たなプロを育成するための「食の大学」など多面的な活動を展開している。
本部は北イタリア、ピエモンテ州ブラにあり、ローマにファーストフードの代名詞のマクドナルドが進出することに反対して、ワイン愛好家たちの組織「アルチ・ゴーラ」が提唱し、1989年12月9日、パリで国際スローフード協会設立大会を開いた。
創設者であり会長を務め、近く来日予定のカルロ・ペトリーニは「和食こそ日本のスローフードだ」としている。
















参加者の入場を待つメイン会場 様々な国の人たちが丸テーブルで和気あいあいに語り合う
=奥原 潔さん撮影
テッラ・マードレ (Terra Madre)
スローフード協会が実行するイベントの一つで、2004年10月、トリノで開催された。「大地の母」という意味で、ラテンアメリカで信仰されている大地の母・パチャママのこと。
世界中のクォリティの高い食品を伝統に則った方法で生産している農業・漁業・畜産の広範囲にわたる小規模生産者約5000人を招いて行なわれたもので、今回はもう一つの「サローネ・デル・グスト」(Salone del gusto=食の祭典)と併催され、日本からは20グループ・73人が参加した。
















アグー
「和ミート」ホームページより 九州沖縄農業研究センターホームページより
顔はイノシシそっくり。体型はみるからに丈夫そう
沖縄で飼われていた在来の豚の呼称。品種としては黒豚に位置付けられる。名の由来は明らかでない。
いまも沖縄の人たちの「食」は豚を抜きにはできないが、意外に豚の導入、飼育の歴史は確定されていない。これまでの研究では14Cに当時の明から持ち込まれ、これが在来種につながっていると考えられているが、「島」という地理的な条件から雑多な豚の集まり(掛け合せ)というのが事実のようだ。
粗食に耐え、丈夫なアグーだが、DNA的には多産でなく、戦後、純系のアグーの復活の試みは試行錯誤を繰り返し、戻し交種などにより、現在約150頭が存在しているとみられる。しかし白豚に比べるとコレストロール値は4分の1で、沖縄の長寿食の要素を備えている。


【参考文献】 九州沖縄農業研究センター












有機JAS規格
有機日本農林規格。JASは Japanese Agricultural Standard の略号。
農林物資について品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化、使用または消費の合理化を図るため法律(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律=JAS法)により農水大臣が定めるもので、規格には「一般JAS規格」と「特定JAS規格」の2種類がある。
有機JAS規格は特定JAS規格に分類され、2001年4月に改正、施行された法律により、国が定めた認定機関の検査に合格しないと「有機」という表現ができなくなった。
認定審査は、「自然循環機能の維持推進を図る」、「収穫前3年間、使用禁止農薬などを使っていない」、「環境負荷を可能な限り低減した栽培方法」などが厳しく審査され、合格した暁に「有機JASマーク」が付与される。
有機栽培〇〇とか有機△△とかオーガニック□□などと勝手に表示し、社会問題化してきたが、この法律の施行によって消費者が安心できる有効な目安ができたことになる。
JASマークには以下の4種類があり、左から3つ目が「有機JASマーク」。認証された有機農産物および有機農産物加工食品に添付が許される。
一般JASマーク 特定JASマーク 有機JASマーク 生産情報公表JASマーク













畠山重篤 (はたけやま・しげあつ)
1943年、中国・上海で生れる。
高校卒業後、家業のカキ、ホタテの養殖業に従事。2代目として受け継いだ当時は環境面で何も問題はなく、カキや貝類の収穫は順調で安定した生活を送っていたが、少しずつ海の汚染が進み、危機感をもつ。その頃、フランスのロアール川河口を視察した際にカキの生育がよいことを知り、川の上流へ行ったら広葉樹の大森林地帯があることにヒントを得て、森と海は一体だと気づき、1989年に「牡蠣の森を慕う会」を結成、気仙沼湾の海を守るために植林運動を始めた。植林運動は11年目に入っているが、いま全国各地に同様な動きが広がっている。
畠山さんは一方で山間地に住む子供たちに海を知るための体験学習を行なっており、その数はすでに5000人を超えているという。また、活動ぶりは小学校の国語と中学校の社会科の教科書にも紹介されている。
著書に『森は海の恋人』(1994年/北斗出版)、『リアスの海辺から』(1999年/文藝春秋)、『漁師さんの森づくり―森は海の恋人』(2000年/講談社)などがある。
また、1994年には朝日森林文化賞、1999年には「みどりの日」自然環境功労環境庁長官表彰、2000年には環境水俣賞、2004年には第52回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。














『沈黙の春』 (Silent Spring)
レイチェル・カーソン(Rachel Carson=1907〜1964年)が海洋生物学者(身分は漁業局所属の公務員)生活から作家生活に転じて10年後、雑誌『ニューヨーカー』に連載した農薬の害を先駆的に告発した作品。化学物質の過剰な使用が生態系を破壊することを論証したバイブル的著作。
執筆を始めたのは友人からの「蚊の撲滅計画として沼沢地に農薬が空中散布された結果、多数の鳥が死んでしまった」という手紙がヒントとなり、1939年に殺虫効果が発見されて以来、アメリカで大量に使われていたDDTやBHCなどの有機塩素系殺虫剤が自然の生態系を破壊するだけでなく、残留毒性もあるとして警鐘を乱打した。化学物質を無秩序に使った結果、春が来ても鳥も鳴かず、ミツバチの羽音も聞こえない“沈黙の春”を迎えるという寓話で始まっており、題名にもなっている。
センセーショナルな内容に連載中から全米で大きな反響をよび、とくに農薬を製造していた化学メーカー側からの批判や中傷などのキャンペーンが行なわれた。単行本は1962年9月27日に出版されたが、発売初日に1万部売れたという。『沈黙の春』が社会に与えた影響は大きく、ケネディ大統領が科学諮問委員会を設置、同委員会の調査の結果、“危険農薬”とした「ウィズナー報告書」が出され、製造・販売が禁止され、カーソンの評価も確定的になった。
他に、『潮風の下に』(1941年)、『われらをめぐる海』(1951年)、『海辺』(1955年)や死後に出版された『センス・オブ・ワンダー』(1965年)などがある。
*出版元
  新潮社 (〒162−8711 東京都新宿区矢来町71、TEL 03−3266−5111)
  1974年2月(改版版)、394ページ、文庫サイズ、\660(税込)
  2001年6月に単行本、403ページ、19×13センチ、\2520(税込)
















『複合汚染』
『紀ノ川』や『香華』などですでにその地位を不動のものにしていた小説家・有吉佐和子が1974年10月〜1975年6月の間、『朝日新聞』に連載した新聞連載小説。
実名で登場する政治家の選挙運動から話が始まり、日本の社会で様々な環境破壊、環境汚染が行なわれていることを「複合汚染」という流行語にもなった4文字で表わし、農薬、化学肥料、防腐剤などの化学物質が引き起こす問題や『沈黙の春』を書いたレイチェル・カーソンより前に「農薬の害」について警告を発していた奈良県の開業医の話、さらには合成洗剤、PCBなど水の汚染、排気ガスが起す大気汚染など正に公害・汚染を複合的に、複眼的に捉え、小説に仕立てた。連載中の社会的反響(賛否とも)は大きく、一部の御用学者などは小さな間違いを針小棒大に取上げ“反論”出版するなどの社会現象も起こった。
文学者が科学(化学)技術の弊害を足を使って、多くの実例を上げた空前絶後の作品と言ってよい。
*出版元
  新潮社 (〒162−8711 東京都新宿区矢来町71、TEL 03−3266−5111)
  1979年5月、621ページ、文庫サイズ、\820(税込)


















タラソテラピー (thalassotherapie)  
「海洋療法」と訳されている。ギリシャ語のthalasa(=海)とフランス語のtherapeia(=療法)を合わせた造語と言われ、1867年、フランスの医師、ラ・ボナルディエール博士によって確立された療法で、海辺に滞在して海洋気候のもとその景観を楽しみながら海水、海藻、海泥を用いた様々な療法を行なうという自然療法。
確立されてからかなりの年月を経ているわりには日本ではあまり注目されずにきたが、近年、アトピー、肥満、生活習慣病などや事故後のリハビリに効果があるとされ、脚光を浴びている。フランスではリハビリセンター(タラソ病院)は社会保険の対象になっている。
治療法は水を使う水治療法(ハイドロテラピー)と使わない海泥療法(ファンゴテラピー)などがある。

















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