宇井純亡き後、最大の“嬉しい話題”がこのほど明らかになった。
会社勤めをし、一児の母でもある長女・美香さんがこの4月から東京大学工学部都市工学科の3年生に編入、学士入学するというのだ!
高校時代の多感だったころ、「父親が暴れている同じ大学に入るのはゼッタイいや」と反抗心丸出しにしていたが、結局、東大理学部地学科地理コースを卒業。結婚後、夫君の転勤にともないニューヨーク住まいを経て、帰国後は会社勤めをしていたが一念発起。昨年10月に編入試験に合格していた。
美香さんに最近の心境をメールで聞いたら相変わらずの切れの良いコメントをくれた。
写真:告別式で父との思いが走馬灯のように駆け巡ったのだろうか。一筋の涙が光った
=2006年11月16日、桐ヶ谷斎場で


「回分式酸化溝を勉強してほしい」という父の希望と自らの好奇心が結合した

― 失礼ながら41歳になられ、仕事と家庭を両立させている中で、敢えて復学を決意させたものはなんでしょう?

美香 頭の中身が時代遅れになってきたことを痛感したことが一つ。勤め人として、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)という「時代」の言葉になじめなかったことがもう一つ。父がすることを望んだのが一つ。
初めて、勉強したい、という意思が出てきたのが不思議ですが、実際、好奇心に近いものです。家族のことを考えたら、学べるのは今しかない、という時期的な面もありました。

― 父上には若い頃、かなり反発していたのに、「環境運動は出来ないが、都市工学の意を継ぐことは出来る」と考えたからでしょうか?

美香
 かなりイエスです。

― 都市工学の“現役学生”に編入して、どういう方向の研究を目指そうとお考えでしょうか?

美香 現状の技術の体系を見たい。自分の研究としては人が減り、限界集落を畳んでいく時代の、技術のありように興味を持っています。

― ところで、父・宇井純さんが逝って、社会的に様々な反響を目のあたりにされたと思いますが、いま改めて心境を伺うと………。

美香 家族を振り回し続けたひとでしたが、あっちこっちで振り回してたんだなあと思いました。でも、率直に言って、時代と歯車があってた人でもあったと思っています。

因みに、復学について純さんに伝えたのは亡くなる少し前だったとか。その時、一言「よかった」と言って、微笑んだという。そのシーンを思い出してか、「最近、ようやく寂しくなってきました」の一言が印象的だった。

写真:宇井さんが人前に出た最後となった場であいさつする際、マイクを調整する美香さん
=2006年5月13日、東大・弥生講堂で 【撮影・提供:桑原史成】