第2話 ・・・・・ ボトル


 ところがこんどは反対がわのポケットから

「じゅあ、これはどうだい。」

といってべつのボトルをルミルミの目の前に出したのです。

もうまわりはうすくらくなりはじめているのに、

そのボトルの中はお昼のまっさおな空をそのままつめたように

青く青くすんだ水がはいっていました。

「わあ、きれい。

これをのむと、こんどはどうなるのかしら。」

ルミルミがふしぎそうにボトルをみつめていると、

おばあさんはルミルミのかおをのぞきこむようにして言いました。

「こんどのボトルはね、幸せになるボトルだよ。

でも、つらいことや苦しいこともたくさんあるけどね。

それにたえられたらのはなしさ。」

そうしてねんをおすように

「おまけに、そのボトルをのんでものまなくても、

もっているだけでききめありさ。どうするかい、ルミルミ。」

ルミルミはちょっと考えこみました。

つらいことがたくさんあるのもこまるし、でも幸せにはなりたいし……。

 しばらく考えてルミルミは決心しました。

「わたし、このボトルもらってかえるわ。つらいこと、がんばってみる。

くるしいこともがまんする。そうして幸せになるの。」

最後にもう一度ボトルをにぎりしめて

「ぜったいに幸せになるわ!」

と自分に言いきかせるように言いました。

おばあさんはしわくちゃの手をさしだし、

「じゃあ、約束するね。」

と言いました。

ルミルミは小さい両手でおばあさんのしわくちゃの手をにぎり、

「おばあちゃんとふたりだけの秘密の約束ね。」

と歌うように言いました。

 まわりはすっかりくらくなりました。

森の中は早く日がくれるのです。

********

 それから一年がたちました。

ルミルミの部屋には、あの空色の水がはいったボトルがかざられていました。

ルミルミはおばあさんと約束したとおり、

なにをする時にもいっしょうけんめいやりました。

きらいな勉強もけっしてあとまわしにしたりしませんでした。

お母さんからたのまれていやいややっていたお手伝いも、

いつのまにか自分からすすんでやっていました。

にがてだったかけっこもお父さんからとっくんをうけて、

運動会のクラスマッチの選手にえらばれました。

こまったおとしよりを見つけたら、自分からかけよって

助けてあげるのでした。

 そのほかにも、つらいことや苦しいことがたくさんありました。

つらいことや苦しいことばかりおおいようでした。

というのも、幸せになるには、だれよりもたくさんのつらいことや苦しいことに

たえなければならないと思ったからです。

みんなとおなじではあの空色のボトルのききめはないはずです。

だからルミルミはじぶんからすすんでひとのいやがることをやったり、

つらい勉強やれんしゅうもがんばりました。

 でも、おばあさんがいったように、本当に幸せがやってくるのかなと心配になりました。

「いつになったら、幸せになるんだろう。

それとも、まだがんばりかたがたらないのかしら。」

空色のボトルをながめていたルミルミはとつぜんそのボトルを手にとりました。

「よし。おばあさんにもう一度あってこよう。

そうしておばあさんにたしかめるの。」

とたちあがりました。

いまから、空色のボトルをもってあの森へ出かけて行くのです。


              (
つづく 次回をお楽しみに


このページのトップに戻る

第1話にもどる

第3話に進む

「なぞのルミルミ目次」にもどる

おとぎ村にもどる

豊徳園トップページに戻る





豊徳園おとぎ村(オリジナル童話)なぞのルミルミ