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 崩壊する場当たり的『福祉国家』

 

最近、予算の概算請求に対する『事業仕分け』に関するニュースが増えています。長い間、『前例踏襲主義』『あれもこれも』で、ふくらみ続けた国家予算を個々の事業ごとに見直し、その事業の必要性やあるべき姿を、公開の場で議論し、再考していくものです。『予算の無駄遣いを徹底検証する』と言って政権を取った民主党の最大のアピールポイントです。あまりにも国民の視点から離れたところで多くのお金が使われているという現実を見ると、頑張っていただきたいと思います。

これまで、自民党政権は『景気回復策』と称して赤字国債を発行し、不要な公共事業を重ねてきました。景気回復策として公共工事に意味がないとは言いませんが、本当に役立つものであれば、公共工事によって景気が回復し、発行した国債以上の税収がリターンとして戻ってこなければなりません。しかし、現在の国・地方の抱える借金は、右肩上がりで増えており、国家財政破綻の危機が叫ばれるまでになっています。

日本の土木・建設が戦後の復興を支えたのは事実です。しかし、無駄な公共工事を国が作り続けなければならなければ生き残れないということは、現在の数の土木・建設業者は必要ないということです。経済の成長過程において産業構造を変化させなければならなかったのですが、経済原則やマーケットの自浄作用というものを全く無視し、自民党利権政権の中で、選挙のためだけに建設業を無理に残してきたというのが現実です。建設業者を生かすためだけに、不要な公共工事が行われ、談合が行われ、それが赤字として積み重なってきたのです。

今でも、景気が悪化すると『補正予算を・・』『工事の前倒しを・・』と言う古いタイプの政治家がいますが、すでにカンフル剤を打ち続け、無駄な贅肉で太りすぎている日本経済には、その薬効はほとんどありません。前年度を上回る赤字国債を増発することが当たり前となった日本の行く先は、デフォルトかハイパーインフレしかありません。

前回の選挙で、この政治体制にストップがかかりました。民主党政権の掲げるキャッチフレーズは、『コンクリートから人へ』です。『土建国家から福祉国家』へと言い換えることもできるでしょう。私は仕事の上で、多くの建設業の方ともお付き合いがありますが、異口同音に『建設はこれからますます厳しくなるでしょう』『これからは福祉の時代ですね』と言われます。小泉政権下で作られた『骨太の方針』による社会保障費の抑制を撤回しており、民主党政権の誕生を喜ぶ、医療・介護サービス事業者は少なくありません。


しかし、そう単純なものではありません。

私は、現在の社会保障のあり方に非常に危惧を抱いています。それは、現在の社会保障政策が、巨額の税金を使うことには変わりなく、長期的視点に立っていないために、政策の目的や方向性が全く見えてこないからです。

社会保障は、国の憲法に定められた国の義務です。しかし、それは『困った人を助けよう』といった単純なものではなく、どこまでが国の責任なのかというセーフティネットの基準を明確にして行われなければなりません。次の選挙や政治の駆け引きの道具に使うようなものではありませんし、また、国の義務だからと言って、その借金を後の世代に付回し続けるようなことが、いつもでもできるわけではありません。

しかし、それは誰も指摘しません。高齢者介護や高齢者住宅に関するシンポジウムに出席しても、すべての人が『社会保障の充実』『介護報酬のアップ』を求めて拳を振り上げています。介護だけでありません。いまや『あの人もこの人も困っている』『あれにもこれにも国の支援が必要だ』ということになり、『人に優しい政治を』というキャッチフレーズで、社会保障はどんどん充実しています。

鳴り物入りで始まる子供手当は社会保障ではなく、景気対策の一部のように捉える人もいます。その結果、福祉を利用するということに対して『あっちが得だ』『こっちは損だ』『どうすれば生活保護を受けられるか』『効率的に雇用保険を受けるにはどうするか』と言った、モラルハザードが起きています。『本当にもらえるかわからない』と、国民年金の未納率が高くなっていると聞きますが、年金がなくても生活に困ると年金額以上の生活保護費がもらえるとわかれば、払わない人は更に増えるでしょう。『福祉に対するスティグマ(恥の意識)』も問題ですが、『福祉を受ける方が得だ』『どうしたら福祉を多く受けられるか』と考える人がふえる社会は、更に問題です。

この社会保障という制度は追加することは容易ですが、削減することは非常に難しいものです。その金銭的な補助を受けているということが、生活の基礎となって生活設計がなされるからです。子供手当しかり、生活保護しかりです。しかし、この状況を20年先から見れば、私達は、これから生まれてくる子供に支払いのツケを回しながら、生活を維持しているにすぎないのです。

このようなバラマキによって、表面的には景気が回復すると考える人も多いのですが、それは長続きしません。社会保障費は2007年で90兆円を越え、この数年で10兆、20兆円と増えていきます。このままで行くと、高齢化が進む中で、2025年には150〜160兆円になると想定されています。今後10年、15年で確実に国の財政を食いつぶします。今の社会保障政策は、『景気浮揚策』として赤字国債の乱発で行われた公共工事と何ら変わりません。国・自治体の借金が1000兆円を超えるような状況の中で、夢物語のような『エセ福祉国家』が続くはずがないのです。


『無駄遣いか否か』という議論では行き詰ることがわかった今、これからの財政運営では、『効率的に財政運用されているか』、そして『選択と集中』という視点にシフトしていくべきだと考えています。それは、爆発的に増加する社会保障も同様です。

社会保障を削減すると、『この人はかわいそう!!』『憲法25条は・・・』という論調に走る人も多いでしょう。しかし、来年度の国債発行は40兆円、これからの税収と予算額を比べると、その差はますます広がっていきます。進む道は、デフォルトか大増税しか残っていません。恐らく近々に、どこかで、誰かが必ずやらなければならないことですし、また、遅れれば遅れるほど、その見直しによる削減は急カーブを描くため、歪は大きくなります。

セミナー等で話をすると、『あなたはどの立場で話をしているのか』と叱られることがありますが、当然『経営コンサルタント』としてお話をしているつもりです。言い換えれば『制度変更リスク』の視点です。また、私は社会福祉士ですから、福祉の視点としても重要だと考えています。今後、消費税の大幅な値上げは不可避ですが、それでも財政が好転するということはありません。大きく舵が切られ『全体的に大幅に社会保障費削減』ということになれば、本当に困っている人にお金が回らないということになります。そうなると、今の団塊の世代が、要介護高齢者になった時、多くの人が悲惨な老後を送ることになるでしょう。

国や経済なくして、社会保障も社会福祉もないのです。日本が、本当の超高齢社会を迎えるのはこれからです。財源、人材が限られる中で『効率的な財政運用』『選択と集中』によって、これからの日本の社会保障のあり方を、早急に検討しなければなりません。『介護報酬アップ』ではなく、長期安定的な制度を築くために、どこに介護力・財源を集中させるのかという議論に向かうべきなのです。そのセーフティネット・基準を明確にすることによって、すべての国民が、それに応じた老後の生活に対する準備ができるのです。

次回からは、現在の高齢者介護施策の問題点についてのべていきたいと思います。

 


 

 

 


 

 

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