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 高齢者住宅のルール作り 〜資金移動〜

 

5点目は資金移動に関する基準作りです。

高齢者住宅事業に限らず、介護サービス事業は、社会保障費で運営されている事業であるという面と、利益を確保するための自由経営という、相反する二つの側面を持っています。自由競争であるという側面を損なわないようにすべきですが、同時に経営が不安定にならないように、経営に、一定の縛りをかけることは必要ではないかと考えています。

これは、事業の特殊性から見ても重要です。

例えば、入居一時金経営を行っている有料老人ホームでは、ある程度の入居者が集まると償却期間内には『前受金』として大きなキャッシュフローが入ります。現状においては、その資金が同一企業内の他の赤字の事業の穴埋めに利用されたり、新しい有料老人ホームの開設資金として転用されることもあると聞きます。ただ、そうなると、他事業の負債のために運営企業が倒産し、当該有料老人ホームも共倒れになるというケースも発生します。このような、経営を不安定にさせるような『資金が他の事業に流れていないか』という一定の規制は必要です。

また、第一部で述べたように、入居一時金によるキャッシュフローは一時的なものであり、利益がでているように見えても『潜在的な長期入居リスク』がありますから、当初の数年は表面的な利益である可能性は否定できません。そのリスクを無視して『一部の経営陣が高額な報酬を受け取っていないか』『高額な配当がなされていないか』といったチェックも必要でしょう。

経営が悪化してくると、コンプライアンスの意識は確実に低下します。乱脈経営の結果、引き取り手まなくなり、入居者や家族だけが取り残されるということは、避けなければなりません。

これは、有料老人ホームの入居一時金の問題だけではありません。介護保険財政は、保険料だけでなく半分は公費(税金)で運用されているのですが、その資金が、他の一般の事業に転用されることが、本当に適切なのか否かという議論は、必要だと考えています。

特別養護老人ホームでは、『経営の安定性を図る』という視点から、資産の流用や運用は厳しく限定されています。例えば、他事業への流用はもちろんのこと、短期貸付も事業年度内で返還されなければなりません。余剰金の運用も、国債や銀行預金等、元本が保証されているものに限られています。

福祉施設とは目的が違うために、同列で扱うべきではありませんが、営利目的の民間の高齢者住宅でも、安定経営が不可欠な『高齢者の住処』という点では同じです。その他の営利目的の一般事業と同列に扱うのではなく、『どのようにして経営を安定させるか』『どこまで経営の自由度を認めるか』という視点での議論は必要です。

 

 経営に関する基準検討 

 

 @     高齢者住宅事業に関する資金の移動に関する一定の制限

 

 A    役員報酬・株主配当に関する一定の制限(または指導)

  

以上、ここまで『居住権』『入居一時金』『価格・サービス改定』『情報開示』『資金移動』の5つのポイントについて、高齢者住宅経営のルール作りについて、考察しました。

私は、介護サービスを以前の『福祉施策に戻せ』『行政管理を強化しろ』ということを行っているのではありません。また、経営が冷え込む中で、『マーケット至上主義への反省』『過剰な競争による疲弊』等という論調が高まっていますが、私はそれぞれ違う業態のサービスを、一方向で捉えるべきではないと考えています。

ただ、このような社会性・公共性の高いサービス、生活の根幹をなすサービスについては、一定のルール・基準を設定し、全体の底上げを行った上で、自由競争を行うべきなのです。

この問題は、遅れれば遅れるほど、歪が拡大し、修正することが難しくなっていきます。超高齢社会が到来し、高齢者住宅で暮らす高齢者が増えるのはこれからです。早急に問題点を整理し、基準を策定し、官民一体となって、長期安定的に成長する産業として育てていくという視点が必要です。

 


 

 

 


 

 

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