市町村と高齢者住宅事業 B
今後、絶対的に不足するのが、『低階層〜中階層』で『中度〜重度要介護程度』の高齢者を対象とした高齢者住宅です。
現在でも特別養護老人ホームは、『要介護4・5などの重度要介護』『独居高齢者』等の高齢者を優先とされています。しかし、独居の重度要介護高齢者だけでなく、介護虐待・介護放棄等が今後ますます増加すると予想されており、これらの緊急対応も必要となことから、重度要介護高齢者にとっても、今以上に狭き門となることは間違いありません。
毎月、20万円近い利用料を支払うことができるのであれば、民間の介護付有料老人ホームへの入居も可能ですが、低所得者・中階層を対象とした要介護高齢者に対する住宅施策は、ほとんど検討されていないというのが現実です。
市町村が考えなければならないのは、この『低所得者の要介護高齢者住宅』です。
ターゲット・商品内容イメージ
n 高齢者の介護施策、低所得者施策、住宅施策の充実
n 対象者は要介護2〜要介護5(自宅で生活できない要介護高齢者)
n 要介護高齢者対応の建物設備とし、家賃補助、住宅扶助が可能な借家権
n 住宅サービスと生活サポートサービス(介護等)の分離
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建物・設備は要介護高齢者に対応できるものとし、介護サービスは、要介護度割合の変化に対応できるような可変性の高いシステムを構築すべきだと考えています。
入居一時金ではなく、毎月の支払いを基礎とした価格設定にすべきです。ただ、支払い可能な高齢者には相応の負担を求めるべきですし、低所得者には減額できるような価格設定が必要です。そのため、居住権については、家賃補助や生活保護の生活扶助が受けられるように、検討すべきでしょう。
行政管理で高齢者住宅を増やすには3つの方法が考えられます。
一つは、特定施設入居者生活介護の指定を前提とした公募です。
基本的な指針やターゲット、サービス内容、価格設定、指定枠、入居基準等について行政(市町村)が示し、これに対して、事業希望者がそれぞれに事業計画を策定、市町村は事業リスク、事業者のノウハウ、事業者の安定性等を慎重に審査し、指定事業者を決定するというものです。建物の所有権は、事業者にあります。
二つ目は、ケアハウスでも行われたPFI手法の検討です。
最初の公募方式と大きくは変わりませんが、事業者が決定すると、事業者が建物・設備を建設。竣工後は事業者が市町村に建物を売却し市町村が所有。市町村は、事業者へ建物・設備を賃貸借し、事業者が運営・建物設備の維持管理を行います。『BTO方式』と呼ばれるもので、民間の企画力によって総事業費を削減し、かつ事業の安定性を高める一つの手法です。市町村(第三セクター等含む)が所有・管理する土地に、事業者が建物を建てるということもできます。
この手法はケアハウスの民間企業参入検討の中でも行われましたが、ケアハウスは福祉施設であることから、事業性が乏しいことに加え、運営にあたって特定施設入居者生活介護の指定が求められたことから、あまり活発化しませんでしたが、事業者独自の相違・工夫が可能な高齢者住宅に適用するには優れた方法だと考えています。
もう一つは、運営委託です。
建物設備は、市町村が建設し、実際の運営を地域の社会福祉法人や医療法人に委託するというものです。いわゆる要介護高齢者を対象とした市営住宅です。入居者募集リスクを考えると、運営事業者に対して一棟貸しとするのか、部屋単位や入居率によって賃借料を検討するのか、家賃だけは市町村が徴収するのか等については、ケース毎に検討すべきでしょう。
当然、この事業者候補には、地域の社会福祉法人・医療法人等だけでなく、事業公募やPFIの場合、民間の介護サービス事業者も含めたコンペになりますから、価格を抑え、サービスを向上させるための、様々にアイデアが持ち込まれることになるでしょう。外部サービス利用型特定施設を利用し、全体の運営管理は民間企業が行うが、介護サービス提供は社会福祉法人が行うといった方法も考えられます。
ただし、どの手法をとるにしても、それぞれの事業性や事業リスク、運営事業者の事業ノウハウ・経営の安定性等、正確に把握することが求められます。また、開設後も、当初の指針が守られているか、順調に運営されているか等についての、定期的なチェックが必要です。
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