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園芸

 

 2003年の春に「家庭菜園で無農薬野菜を作ろう!」と思い立ちました。うちで野菜を作れば、安全だし、新鮮だし、楽しいし・・・いいことずくめです。

[培養土で反応]
 我が家は借家で、庭に砂利が敷いてあります。野菜の栽培には向きません。プランターで栽培することにしました。 園芸については全く知識がないので、図書館で本を借りたり、人に聞いたりして栽培の計画を立てました。初心者は「培養土」を使うと手軽で失敗が少ないというので、まず土を買いにいきました。

店で培養土を買ってきてプランターに入れた瞬間、私はぐあい悪くなってしまいました。土から強い刺激臭が立ち上り、目や鼻が痛くなりました。あっという間に目の前が暗くなり、フラフラして立っていられない状態になりました。すぐに家の中に入り、そのまま寝込みました。この頃はまだ、このような「ショック症状」を頻繁に起こしていました。

 私がウーンウーンとうなりながら寝ている間に、夫が後始末をしてくれました。プランターの土を袋に戻し、それを隣家の人にあげたそうです。それで、我が家の庭の刺激はいったん収まりました。しかし、翌日隣家の人が、その土を庭に入れたので、刺激が我が家の方に流れ込んで来るようになりました。隣家から我が家の方に風が吹くたび、私はぐあい悪くなって困りました。それでも、土を隣にあげたのは正解だったと思います。隣とはいえ距離があるので、自分の家の庭にあるよりずっと刺激が少なかったからです。隣家の庭の刺激は、2〜3日たつと少しずつ薄れていって、そのうち気にならなくなりました。私たち夫婦の手元には、空のプランターだけが残りました。なぜ培養土に反応したかはよくわかりません。土に残留している農薬が原因なのではないか、とか、肥料の成分が合わないのではないか、などと推測してみましたが、はっきりした原因はわかりませんでした。

[安全な土を手に入れることができた]
 その後、刺激の少ない土を求めて園芸店をまわったのですが、なかなかよいものが見つかりませんでした。売っている土はビニール袋に入っているので、外から嗅いだだけではよくわかりません。園芸店に入るだけで、すでにぐあい悪くなっていたので、判断するのは容易ではありませんでした。

 ある時、園芸店の店先に使いかけの培養土の袋が置いてありました。袋の口が開いていて、中には1/2ぐらい土が入っています。中身をじかに嗅げるチャンスだと思いました。袋の中をよく嗅いでみると、刺激がなく使えそうです。それで、その培養土を1袋買って帰りました。家でプランターにあけてみたら「問題なし」です。さらにもう1袋買ってきて、プランター4つを満たしました。

 この頃は、まだ私の過敏性は高かったので、何をやるにもそのつど関門があって、それを乗り越えていかなければなりませんでした。

 その後、ホームセンターの苗売り場に野菜の苗を買いにいきました。苗売り場は全体が農薬の臭気に包まれていて、ぐあい悪くなってしまいましたが、なんとか買うことができました。野菜の苗のコーナーより、花の苗売り場の方が農薬のにおいは強かったです。花の苗の方にはなるべく近づかないように気をつけました。そうして、買ってきた苗をプランターに植えて、ようやく我が家の家庭菜園はスタートしました。

[使える肥料が見つからない]
 毎日水やりをして少しずつ成長していくのを見守りました。はじめの頃は、培養土に含まれている養分を吸って植物たちはよく育ちました。しかし、2ヶ月ほどすると、成長が鈍ってきました。追肥をしなければならない段階になったのですが、今度は私が使える肥料が見つかりませんでした。何種類か試してみたのですが、どれも刺激があってダメでした。有機肥料は独特のにおいと刺激があって苦しいものが多かったです。それで結局、追肥をするのを諦めてしまいました。

 肥料をやらずに育てたものの、野菜は少しずつ成長していきました。そして、夏には弱々しいながら少しずつ実をつけました。葉物は案外よく育ったので、たくさん食べられました。しかし、実のなる野菜は少ししか実らず、寂しい収穫となってしまいました。2003年の夏は天候が悪く、気温が上がらなかったのも、不作の原因でした。

[天候不順の夏]
 本当に寒い夏でした。何日も雨ばかりが続き、肌寒い日ばかりでした。そのため、我が家ばかりでなく近所の家庭菜園でも植物が育たず、夏の初めに野菜が実をつける時期になっても、ほとんど実りませんでした。実のならぬまま腐ったり枯れていったりするものもありました。そのため近所の家庭菜園では早々と農作業をやめてしまい、畑を放りっぱなしにするところが出てきました。平年なら夏中せっせと殺虫剤などをまくところを、この年はほったらかしです。そのため私にとっては、それまでになく体が楽な夏となりました。この時は、回復して体調がよくなったために、農薬をあびても症状が出なくなったのだとばかり思っていました。実際は、農薬の濃度自体が低かったのです。翌年、猛暑が来た時は、近所の家庭菜園では平年以上に農薬を使用したようです。私の体は農薬に反応して、一夏ずっと体調が悪いままでした。

[肥料が見つかる]
 2004年度は前年の経験を生かし、種まき、苗植えまではうまくいきました。しかし前年と同様に使える肥料が見つからなくて右往左往しているうちに、植物が栄養不足で弱ってきました。あちこち探し回って、何とか使える肥料を見つけて来ました。それを与えてやったら、植物はみるみる元気になっていきました。この年の収穫は前年と比べればうまくいった方だと思います。肥料は、自然に近い形の有機肥料だと、においをとても強く感じます。「においが少ない」などと表示してある、やや人工的なタイプのものの方が、私には負担が少なかったです。「有機肥料は安全」と考えられているようですが、実際にはどういう由来のものかわからないものが多いです。例えば、鶏糞はどんな餌を食べた鶏の糞なのか、と考えてみると、どこまで安全性を信じていいのかわからなくなります。完璧な安全性を求めると話が難しくなるので、私は「ほどほどの安全」を目標にしています。

 植物はプランターで栽培すると、あまりよく育たないので、やはり地植えにするのがいいようです。私の家の近くに、近所の人が共同で野菜をつくっている空き地があります。敷地をいくつかの区画に分けて、一軒ずつ割り当てて使っています。2003年の春に、その空き地の一角を我が家にも貸してくれることになりました。とてもありがたい申し出だったのですが、私は断ってしまいました。前の年に、その畑で次々と殺虫剤をまいているのを見ていたからです。その度に畑とその周辺の空気が農薬で汚染され、私はぐあい悪くなってしまっていたのです。その畑には、一夏近づくことができませんでした。私が同じ場所で農作業をできるとは、とても思えませんでした。せっかく誘ってくれたのに残念でしたが、丁寧にお断りしました。それで、我が家は今でもプランター園芸を続けています。

今年も園芸シーズンがやってきました。「2005年はどんな野菜を作ろうかなー? 」と今から楽しみにしています。

(2005.5.30)

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「換気」へ続く
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