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換気

 

 「化学物質過敏症・シックハウス問題には換気が重要」ということをよく耳にします。換気について私のこれまでの経験と考えたことを書いていきます。

[外気に注意]
 換気が有効となるのは、室内よりも外気が正常であることが大前提となります。外で農薬を散布していたり、ものを燃やしていたりすると、有害な空気が一気に入ってきてしまいます。私は換気をするときは、外気の状態をよく確かめてから行うようにしています。

 24時間換気システムの場合はどうなのでしょうか。24時間絶えず外から空気が入ってくるわけですから、外気の有害物質も一緒に入ってきてしまわないか心配です。私は24時間換気のことはよく知らないのですが、多分吸気口にフィルターのようなものがあって、外気を漉してから取り入れる構造になっているのではないかと思います。

[換気の効果]
 シックハウス対策として「換気をすれば建材のにおいが薄くなって住めるようになる」という方針を耳にします。本で調べてみましたが、実際には「換気をして住める場合」と「換気をしても住めない場合」とがあるようです。*1, *2 次のような場合は住み続けるのは難しいようです。

○室内の化学物質の濃度が高すぎるとき
○患者の過敏性が高すぎるとき

このような場合は、窓を全開にして24時間換気扇を回しっぱなしにしても患者が耐えられるレベルまで室内汚染物質濃度を下げるのは難しいです。スモール・データ・バンク「リフォーム」の項にも書きましたが、私が1999年にシックアパートで経験したのがまさにこのケースでした。3ヶ月間換気扇を回しっぱなしにし、家中の窓を開けっ放しにしても、室内汚染物質濃度は、私が耐えられるレベルには下がりませんでした。最大限に換気をして何とか耐えられるレベルになったとしても、実際に暮らしていくには、現実問題として困難な場合も考えられます。常に窓を全開にして換気をするのは、夏であれば実現可能かもしれませんが、冬になると寒くて無理です。私のシックアパート体験も真冬だったので、室温が2度まで下がってしまい、夜はとても眠れませんでした。また、窓を全開にするのは防犯上の問題もあります。このようにみてくると、換気の問題はケースバイケースだと思います。シックハウスに関しては、「換気して住めるようになるか」「換気しても住めるようにならないか」をよく見極めて、対策を立てていく必要があります。換気して住める可能性があるなら、住み続けることを選択するべきです。しかし、いくら換気しても住み続けられそうになければ、他の方法を選択するしかありません。先のことを見極めるのはとても難しいことですが、この区別をつけた方が方針を立てやすくなると思います。

 換気の威力を実感した体験を1つ紹介します。知り合いの医師が日曜日に特別治療をしてくれるというので、病院に出かけていったことがあります。休業日なので電灯も換気扇もついていない病院に入っていきました。入ってすぐ私はトイレを借りました。それまで何度かそのトイレを使ったことがあるのですが、その時はにおいは気にならない程度でした。しかし日曜日に入ったトイレは、それは強いにおいがしました。建材や設備、長年の汚れやホコリのにおいです。私はとてもトイレの中にいることができず、用を足さずに出てしまいました。この時は、換気扇は室内汚染物質の濃度を下げるのにものすごい効果があるのだと実感しました。

[換気とエネルギー消費とのかねあい]
 人が集まるような公共の建物やオフィスは単位時間当たりの換気量の基準が決められているようです。だから締め切っていることの多い一般住宅に比べて、においが抜けて行きやすいのだと思います。私は、商品をたくさん置いてある(化学物質の総量が多そうな)デパートよりも、一般住宅の方がずっと有害に感じることが多いです。(建材の違いにもよるでしょうが。) また、同じ年数たった建物でも、一般住宅より公共の建物の方が室内空気汚染濃度が低いように感じられます。このように換気量が多いところは室内汚染が少ないのです。そのため、シックハウス対策=換気という構図ができあがったのだと思います。しかし、十分な換気量を得ながら、快適な住空間を保とうとするには、エネルギーが必要です。暖房をしている部屋で換気をして大量に外気を取り入れたら、その分室温が下がります。その分よけいに暖房を焚かなければなりません。現在シックハウス対策として、すきま風がある家が推奨されていますが、すきまの多い家でよく換気すると、膨大な冷暖房エネルギーが必要になります。そこが現実問題として、難しいところです。

 この問題をユニークな方法で解決して例を1つ紹介します。「健康な家に住みたいな!」(外丸 裕/著 PHP研究所/刊) という本です。この方は、奥さんの化学物質過敏症、ご自身とお子さんのアレルギーを治すために方法を模索して、高気密・高断熱・高換気量の住宅を建てました。この方の考え方は次のようなものです。

○高気密にして外からの有害物質(化学物質、アレルゲン)を防ぐ。
○高断熱にして冷暖房を最小限に抑え、体への負担を少なくする。
○高断熱にして家中温度を均一にして結露によるカビを防ぐ。
○換気量を大きくして室内汚染物質の濃度を下げる。吸気はフィルターで漉して清浄にする。


これまでの化学物質過敏症・シックハウス対策とは全く逆の方針ですが、一理ある方法だと思いました。この家に住んでから、一家の化学物質過敏症・アレルギーは大きく回復したということです。興味を持った方は本をご一読ください。著者は、1つ1つの建材や家の仕組みについて徹底的に調べ、業者と交渉し、自分なりの信念で建築を進めていきました。その様子が詳しく描写されています。同じ方法で家を建てようと思わない方でも、建築についての説明が素人にもわかりやすく書かれているので、一読の価値はあると思います。著者が、ひたむきに自分のアイディアについてよく調べ、実現していく様は、胸を打ちます。

 このようにみてくると、換気とエネルギーの問題は切っても切れない関係にあります。エネルギーの問題を考えずに換気の推奨をしている情報がけっこうたくさんあります。現実的な対応をしたいと思えば、複数の情報源に触れて、よく考えてみる必要があります。

[我が家の換気事情]
 我が家の換気の話を書きます。我が家は築30年の木造住宅です。上記の家とは正反対の低気密・低断熱住宅であり、すきま風ですごく寒いです。換気は換気扇(スイッチは手動)と窓開け換気を行っています。外気の状況を確認しながら換気をします。

 この家に引っ越してきたときに驚いたのは、トイレ・浴室・脱衣所に換気扇がなかったことです! 「北海道だから?」「乾燥した気候だからカビが生えないの?」などと考えてみましたが、「そんなことはないはずだ」と思い、自分で換気扇をつけることにしました。借家なので、工事をするわけにはいかず、窓用の換気扇を買ってきて取りつけました。これは窓を少しスライドさせてはめ込むだけなので、工事が必要ないし、借家を出るときにきれいに取り外せます。参考までに紹介しておきます。

東芝換気扇(窓用)
型名:VFM−15X2


換気量は大きくないので、入浴後長時間回しておかないと、湿気が抜けません。でも、ないよりはずっとマシです! いつも換気扇を回しているのに、それでも少しずつカビが生えてくるので、もし換気扇がなかったら大変だったと思います。

*1 「シックハウス 予防と対策」井上雅雄/著 日刊工業新聞社/刊
*2 「シックハウスがわかる」大阪府建築士会/著 学芸出版社/刊
*3 熱交換型の換気扇というものがあるみたいです。どんなものなのでしょう・・・? 使ってみたことがある方は情報をお寄せください。

(2005.8.11)

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