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印刷物
 

 本や雑誌や新聞などの印刷物は、紙やインクの匂いがCS症状を起こさせます。私は農薬に対する反応がとても強く、それに比べれば印刷物に対する反応は軽い方です。
 
[これまでの印刷物との関わり]
 重症化する前(〜2001年)は、それほど反応しなかったので、割と自由に印刷物に接することができました。紙やインクのにおいもそれほど気になりませんでした。むしろ図書館の本は、カビやホコリの影響の方が大きかったです。カビくさい本で、よく目が痒くなったり、息苦しくなっていました。(これはアレルギー反応です。) この頃は、白黒の印刷物はほとんど平気でしたが、カラー印刷物の新しいものは、インクの匂いがツーンとして、頭が痛くなりました。特にビニール袋の封筒に入っている通販カタログなどは、頭痛が強かったです。これは、誰か他の人に一回読んでもらうと、すべてのページが一度空気にさらされるので、においは少し薄くなります。しかし、先に読んでもらう人がいない場合は、なるべく顔を離して、風上に座ってみるようにしていました。1回でも目を通してしまえば、においがとんで、2回目からはかなり楽になります。印刷物に対する過敏性がそれほど高くなかったので、こういった方法で読めるようになっていました。もっと過敏性が高い場合は、ビニールに入れて読むとか、専用の箱をつくるとか工夫しなければなりません。一般に、新品のものは化学物質の濃度が高く、時間がたつにつれて減少してきます。新しいものより使い古したものの方が、有害性は下がります。しかし、封入して読む方法だと、いくら読んでも外気に曝されることがないので、においが減ることがないのです。重症度に合わせて方法を選択するべきです。重症化する前までは、私は封入しない方法を選んでいました。

[症状の季節差]
 この頃、文章を読むときに、行をうまく追えないとか、視線がガクガク揺れて読みにくいという症状が起きていました。これは、私の場合、印刷物から揮発する化学物質による症状というよりは、もともと神経が不調になっているためだったようです。夏になると、農薬に接触する機会が増え、長期間、常に神経がやられたような状態になります。冬には読める本が、夏になると読みにくくなることが多かったです。読みにくいのは本の化学物質だけが原因なのではなく、農薬の影響を大きく受けていたようです。

 新聞は本にくらべて読みやすいものでしたが、季節によって読みやすさに変化がありました。冬は割と楽に読めるのですが、夏は読みにくかったです。これは原因が2つ考えられます。

(1) 冬は夏に比べて、環境中の農薬の量が少ないので、体調がよくなり、新聞を読めるようになった。
(2) 冬の新聞は、夏の新聞よりも刺激が少ない。夏の新聞は製造段階で農薬の成分が付着している可能性がある。(例えば、印刷工場が農地の近くにあるなど。)

どちらが原因かはわからないのですが、季節差は大きかったです。

[図書館の本]
 逆説的なのですが、私は新刊書より、図書館の本の方がずっと有害性が高いと感じていました。図書館の本の方が年数がたっている分、インクや紙の化学物質は揮発して減少しているはずです。しかし、それにもかかわらず、図書館の本より新刊書の方が読みやすかったのです。私は新刊のインクや紙のにおいにはかなり耐性があります。一方、図書館の本はそれまで読んだ人の生活環境の匂いが本に染みついてしまっています。香水をつけている人が読んだ本、防虫剤のにおいが強い部屋で読んだ本、農薬を散布した近くで読んだ本など、図書館の本には実に様々な匂いがついています。特に農薬・防虫剤のにおいがついた本は有害で、目の神経がやられてうまく読めなくなってしまっていました。図書館の本は、いろいろな人に読まれるので、次第にインクや紙や糊のにおいは減少していきます。その代わりに生活臭がついてしまうのです。白黒の印刷物は、表面が粗い紙を使っているので、よくにおいがつきます。カラー印刷物は紙の表面がツルツルで、全体にインクがのっているので、あまりにおいはつきません。図書館の本で、カラー印刷物は、白黒のものよりずいぶん楽だと感じていました。

[重症になり印刷物が読めない状態に]
 2001年に、CSが重症化してからは、あらゆる化学物質に過敏になり、体調が悪くなって、とても印刷物を読んでいられないという状態になりました。生活用品のあらゆるものが刺激を帯びているように感じました。本にも強い刺激を感じ、2年くらいほとんど読めませんでした。

 2003年春頃から体調が回復しはじめ、再び本を読めるようになりました。うれしかったです。その後も少しずつ体調がよくなり、だんだん本を読みやすくなりました。1年前に読んだ本を読み返してみると、当時は体調が悪くて、内容の半分くらいしか理解できていなかったことがわかります。自分ではちゃんと読んでいたつもりなのですが、注意力や思考力が、今と比べると低かったことがわかります。

[印刷物を読むための工夫]
 有害な印刷物を読めるようにするために、私が行ってきた方法を紹介します。私はもともと本を読むのが好きで、体調が悪いときも何とか本を読めるようにしたくて、いろいろ工夫しました。まず、外気に曝してにおいを飛ばす方法ですが、これはあまりうまくいきませんでした。ベランダや外に本を干しておくと、空気に曝されている部分のにおいはよく抜けます。しかし、空気に触れない部分はほとんど抜けません。本は1ページ1ページを外気に曝していないと、においが抜けず、読めるようにならないのです。外で何度もパラパラとページをめくってみましたが、それぞれのページが空気に触れる時間が短いので、ほとんど効果がありませんでした。熱をかけてみたらどうかと思い、電気ストーブの前でパラパラとページをめくってみましたが、これもほとんど効果がありませんでした。(本が熱に曝されている最中に、強い刺激臭が上がります。それを吸い込むと、けっこうぐあい悪いです。) 

 干す方法がダメなら、覆って有害物質の揮発を抑える方法を試してみようと思いました。化学実験の時に、透明な箱の中に手を入れて試薬を扱っている場面を、テレビか何かで見たことがあります。(「グローブ・ボックス」という名称らしいです。) それを参考に、本を読むための箱をつくってみました。本体は段ボール、のぞき窓はプラスチック板(塩ビ板)です。(私は、塩ビにはそれほど強い反応を起こしません。) 最初はガラスを使ってみましたが、光の反射がきつく、また、厚みがあるので、文字が2重に見えて、とても目が疲れました。薄手のプラスチック板の方がずっと楽でした。段ボールに手を入れる穴を2つあけて、そこにビニール製の手袋(使い捨て)を貼りつけました。読んでる最中に手がむれてくるので、綿の手袋をしてから、ビニール手袋に手を入れました。手袋が2重になるのでページはめくりにくかったです。

 この箱は、割と効果がありました。本のにおいでぐあい悪くなるのが減りました。しかし、本体が段ボールで気密性が低いために、有害性の高い本を入れると、有害物質が漏れ出てしまいます。また、読み終わったあと箱を開けると、中に充満していた有害物質が一気に出てくるので、これはずいぶん怖い思いをしました。また、何冊も読んでいるうちに、箱の中に有害物質が付着して、どんどん有害度が上がっていきます。そのため、何度か使ううちに、箱のふたを開けたり閉めたりすること自体が難しくなってきてしまいました。

[ビニールを使う方法]
 次に試したのは、ビニール袋を使う方法です。これはとても簡単な方法です。ビニール袋に本を入れて口を輪ゴムで縛ります。縛り口から右手を入れて本のページをめくります。ビニールは汚れてきたら取り替えられます*1。本を読み終わったあとは、右手をよく洗います。袋から本を取り出すときに、中に充満していた有害物質が一気に出てくるので、屋外に出て行うとよいです。長時間読んでいると、手からの発汗で、ビニール袋の中が曇ってきます。 このときは、室外でいったん本を出して、中の空気を入れ換えるようにすると曇りが取れます。また、ビニールに光が反射すると、とても読みにくいです。目が疲れます。電灯と本の角度を工夫すると少し楽になります。

 2005年3月に、さらに新しい方法を試してみました。これはとても便利な方法です。ビニール袋に本と消しゴム1つを入れて、口を輪ゴムで縛ります。ビニール越しに本を読みます。ページをめくるときは、ビニール越しに消しゴムでページの端をこすると、1ページだけ浮き上がるので、めくれます。この方法だと、手をビニール袋に入れなくてよいので、手に有害物質が着かないし、ビニール袋の中が曇ることもありません。消しゴムは化学的なにおいがしますが、ビニール袋の中に入れてしまうので、それほど害になりません。この方法は、夫がある本に書いてあるのを見つけてきてくれました。*2

[紙を干す]
 冊子は干してもにおいが取れないので上記のような方法をとります。しかし、1枚1枚分かれているような印刷物は、干す方法が有効です。靴下などを干すときに使う小物干し(洗濯ばさみがいっぱいぶら下がっている物干し)を使うと干しやすいです。しかし、それだと大量に干せないので、私は自分で印刷物専用の物干しをつくりました 。

この物干しの枠は塩ビの水道管パイプです。*3。 ひもは荷造り用のひもです *4。 塩ビの枠に、荷造りひもを何列にも渡して、巻きつけます。そのひもに、洗濯ばさみで紙をとめつけます。この方法は割と有効なのですが、干す場所の空気が汚染されていると逆効果になります。私は、夏の間は農薬が心配で、あまり干せませんでした。また、有害性が高いものは長期間干さなければならず、干している間にホコリや汚れがついてしまうのにも困りました。また、いつまで干せば読めるようになるのかがわからないのも問題でした。むしろコピーした方がよかったです。コンビニやお店によってコピーの紙やトナーの種類が違い、私にとって刺激の強いところと弱いところがありました。セブンイレブンのコピー機はよかったので、ずいぶん利用しました。しかし、コピー代がかなりかかるので、上記のビニール袋を使う方法を見つけてからは、もっぱらビニールに入れて読んでいます。

*1 使い始めはビニール自体のにおいが気になったので、1日干してから使いました。
*2 「続続続続続 伊東家の食卓 裏ワザ大全集 2004年版」日本テレビ/刊 (意外なものを使ってお風呂で本が読めちゃう裏ワザ)
*3 塩ビが苦手な方は、木で枠を作ってみるといいでしょう。私は塩ビより天然木の方が苦手なので、塩ビを使いました。
*4 ビニールひもの素材が苦手な人は、梱包用の紙ひもを使うという手があります。

(2005.3.22)

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