床下換気扇
[危機]
2000年に、夫の実家で、床下にシロアリ駆除剤を撒くことになりました。当時、私たち夫婦は一緒に住むところが見つからず、それぞれの実家に住んでいました。もし、夫の実家でシロアリ駆除剤を撒けば、私にとっても大きな脅威となります。シロアリ駆除剤は、私にとって大変毒性が強いものなので、夫の着ている服や持ちものににおいがついてしまうと、夫と会えなくなってしまう可能性が高かったのです。
[業者との交渉]
夫とよく話し合って対策を考えました。話の発端は、害虫駆除会社の人が営業に来たことでした。前回シロアリ駆除剤を撒布してから時間がたっているので、そろそろ撒いた方がいいというのです。
まず、本当に床下にシロアリがいるのかどうか確認することが先決です。業者に床下の点検をお願いすることにしました。点検の際に、シロアリがいるかどうかをビデオカメラで撮影するようにお願いしました。本当にシロアリがいるのかどうか、目で確かめたかったのです。
点検の結果、シロアリはいないことがわかりました。業者の説明によると、「現在は、まだシロアリはいないが、床下が湿気でかなり傷んでいるので、いつシロアリが繁殖するかわからない」とのことでした。
そこで、夫と私で薬剤を使わないシロアリ対策をよく調べ、業者と交渉してみました。業者からも、薬剤を使わない方法を提案してもらいました。その結果、次のような方針が決まりました。
・ 床下にゼオライトを敷いて湿気を吸着する
・ 床下換気扇を設置して床下の通風をよくする
これで、薬剤散布の危険は去りました。本当にホッとしました。
[床下換気扇の効果]
工事は順調に行われ、床下換気扇は運転を始めました。夫の両親の話では、床下換気扇を運転し始めたときは、床下からカビくさい空気が一気に出てきたそうです。そのにおいは、日がたつごとに薄れていって、気にならなくなったと言っていました。
その後の義母の話では、床下換気扇の思わぬ効果が出てきたと言うことです。家中がジメジメしていたのが、カラッと乾燥して過ごしやすくなったといいます。以前は、押し入れに湿気取り(水が溜まるタイプのもの)を置いていると、すぐに水がいっぱいになっていましたが、床下換気扇をつけてからは、ほとんど水が溜まらないのだそうです。初めは、湿気取りに水がぜんぜん溜まらないので、不良品だと思ったそうです。それだけ、床下換気扇の効果があったということです。
[かえって裏目に出ることも]
このように、床下の乾燥に効果のある床下換気扇ですが、場合によっては害をもたらすこともあります。以下は、私が本で読んだ事例です。
隣家がシロアリ駆除をしてから体調を崩した女性の話です。ある日、隣家でシロアリ駆除剤の撒布を行い、同時に床下の通風をよくするために床下換気扇をつけました。その換気扇の排気が、この女性の家の方に向かっているのです。そのため、床下のシロアリ駆除剤が、高濃度でこの女性の家の方に流れてきます。それを毎日吸い込んでいるうちに、この人はどんどん体調が悪くなってきてしまいました。隣家と交渉したもののうまくいかず、この女性はとても苦しい思いをしています。*1
これを読んで、私はとても他人事ではないと思いました。この事例が強く心に残っているために、家を建てて定住するのではなく、環境の変化に合わせて臨機応変に移動できる賃貸住宅に住むことに決めました。化学物質過敏症だと気づいた当初は、人によく「自然住宅を建てたら」と勧められたのですが、この事例を知ってからは慎重に考えるようになりました。
*1「床下の毒物 シロアリ駆除剤」植村振作/著 三省堂/刊
(2005.9.15)