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第5章 職場のCS対策

(2017年 4月15日 UP)

目次
〔1〕1年目の対策(2009年)〜有害度レベル5+++からレベル4へ

〔2〕2年目・3年目の対策(2010〜2011年)〜有害度レベル4からレベル2へ

注:この章では、2011年に書いた原稿を2017年にアップロードしています。

*CS:化学物質過敏症、ES:電磁波過敏症


〔2〕2年目・3年目の対策(2010〜2011年)〜有害度レベル4からレベル2へ


○再び気温が上昇
 冬の間はアレルギー症状も少なく、体の負担をあまり感じずに過ごすことができたのですが、2010年の春になって、また様子が変わってきました。4月になって気温が上昇してくると、再びアレルギー物質の影響が出てきました。アレルギーの原因となる微生物の活動が活発になってきたようです。目や鼻のムズムズした感じ、皮膚のかゆみ、呼吸困難の症状が出てきました。冬期間はレベル3だったオフィスは、再びレベル4になってしまったのです。対策が十分ではなかったもうひとつのオフィスの方は、一気にレベル3からレベル5に上昇しました。ほんの一瞬でもオフィスに入ると、ひどい症状を起こしてしまいます。さらなる対策が必要でした。

 前年の対策で、合板の家具と流しの排水溝のカビについては影響を抑え込むことができていました。それでもなお反応が起きるのは、前のオーナーから引き継いだものから発散するアレルギー物質が原因のようでした。これは私にとってかなり反応性の高い物質であり、ごく微量でも強い症状が出ます。そのような物質が事務所のあちこちに配置されているので、各々から発散された有害物質があわさって、症状を起こさせているのだと思います。

 前オーナーからは多くのものを引き継ぎましたが、その中には有害度の高いものとそうでもないものとがありました。有害度の高いものを優先に対策していこうと思いました。仕事上必要なもので、処分するわけにはいかないものも多くありました。重要度を区別する必要がありました。処分するものは代替品を探さなければなりません。

○有害物質を分類
 部屋中に散在している原因物質。その1つ1つを嗅いで有害度を確認していくのは、体に大きな負担になってしまうと思いました。それで、前年と同じように、部屋の写真を撮って分析してみることにしました。部屋中を切れ目なく何枚かの写真に納めます。部屋にあるものは、持ち込まれた時期によって分類することができます。こげ茶色に変色した白いカーテンのことを思い出すと、前オーナーの自宅の環境は、私の化学物質過敏症やアレルギーには有害度が高いものだったようです。一般の人には問題のない環境でも過敏な体質の私には強い症状を起こさせてしまいます。

 汚染源に直接触れなくても、汚染源と一緒に置いてあったもので、有害物質が移ってしまったものにも、強い反応を起こしてしまいます。この匂いが移ってしまった物質を二次汚染源とすると、さらにそれと同じ場所に置いておいた三次汚染源にも、私には大変強い反応を起こしました。さらに三次汚染源に接したことのよる四次汚染源にも反応が出ていました。

 図を書いて説明してみます。

一次汚染源

前オーナーの自宅の環境

レベル5+++++(推定)直接接したことがないので、正確な有害度はわからない。

二次汚染源

前オーナーの自宅においてあったもの。家具・カーテン・カーペット書籍など。開業時にオフィスに運び込んだもの。白い粉がまぶっている。

レベル5+++

三次汚染源

前オーナーが会社を開業時に現在のオフィスに購入したもの。本棚・家具・電話・ファイル用品・書籍など。白い粉がまぶっている。

レベル5

四次汚染源

 私たち夫婦が引き継ぎ後、対策して二次汚染源を撤去したあとに購入したもの。書類・ファイル用品・文具・書籍など。

レベル4〜5

  前オーナーがもともと住んでいた場所というのはどういうところかはわかりませんが、カーテンやカーペットの状態を見ると、タバコやペットの影響があった場所ではないかと思います。家で使っていた家具やカーテンやカーペットを、2007年の開業時にオフィスに運んだそうです。運び込まれた家具類からは、もともと設置してあった場所の成分が染みついていて、少しずつ発散しています。それは2009年に、私たちが会社を引き継いだときにも、強い有害成分を放っていました。レベル表示でいえば、レベル5+++と表現すべき強い有害性でした。

 前オーナーは、開業後に必要なものを購入してオフィスに置きましたが、二次汚染源であるカーテンや家具などから、この物品に有害成分が移りました。これらの物品からも強い有害成分の分散がありました。2009年に引き継いだあと、気温の上昇とともに私を悩ませたのが、これらの二次汚染源と三次汚染源です。私は2009年7月までに、主に二次汚染源を撤去したり封入したりして、部屋の空気をレベル4の有害度まで下げました。それでもなお、部屋の中がレベル4であるのは、三次・四次汚染源から発生する有害物質が、部屋の空気を汚染していたためと思われます。

○対策の計画と準備 
 私は部屋中を撮影した写真をプリントアウトして、1つ1つのものに汚染レベルを書き込んでいきました。部屋の中にはたくさんのものがありましたが、すべてもれなく分類していきました。たいていのものは三次汚染源か四次汚染源でしたが、中にはまだ二次汚染源も残っていました。二次汚染源はもれなく対策すること。三次汚染源もほとんどすべて対策すること。四次汚染源については、上の2つを対策したあと、改めて検討してみることにしました。オフィスに入ると匂いにやられて具合悪くなってしまい、思考力も根気も低下してしまうので、自宅で写真を見ながら、それぞれの物質にどのような対策を施すのかを計画していきました。

 対策のために、各種サイズのビニール袋(ゴミ袋)やチャックつきビニール袋をたくさん買いました。そしてオフィスに行って対策を始めました。有害なものを引っ張り出して処分するなり、封入するなりしていくのですが、その時どうしても有害な空気を吸ってしまいます。作業を進めていくと症状が強くなってきて、具合が悪くて続けられなくなる恐れもあります。対策中はつらすぎて、気力が萎えてしまうこともあります。覚悟を決めて、気をしっかり持って、続けなければなりません。作業の前にあらかじめ、何をどうするのか事細かにかいたメモを用意します。それを見ながら作業を進めていくと、思考力が落ちたり気力がしぼんだりしたときも、何とか最後まで続けることができます。

 作業中、思いもよらなかった事態に見舞われることもあります。予想もしなかった汚染物質にあって、強い症状が出たりする場合です。そのような事態もある程度想定しておき、どのように対処するのか、心づもりをしておきます。このときのメモでは、「意外な有害物質に出会ったとき、私はすぐにその場を離れる。夫を呼んでビニールに詰めてもらう。ビニールの口を縛ってもらう。有害性が高いときはビニールを二重にする。ビニール越しに見ながら、どう対処するのかじっくり考える」と書いてありました。

 オフィスの様々な品物を次のような観点で分類していきました。

●有害度 ・・・二次汚染源(レベル5+++),三次汚染源(レベル5),四次汚染源(レベル4〜5)
●必要度・・・ 重要,必要,あれば便利,どちらでもない,なくてもよい,不要
●対策法・・・ 捨てる,ビニール詰めにする,洗う,代替品を探す


必要性でいえば、会社内には全く不要というものは、ほとんどありませんでした。有害性が高すぎて部屋には置いておけないが、仕事に必要なものは、代わりのものを探さなければなりません。それがないと、一日も仕事にならないというものは、あらかじめ代替品を用意してから、処分することになりました。

○いただきものの難しさ
 会社には待合室のスペースがあり、ここには雑誌や子供向けのおもちゃなどが置いてありました。すべて処分したいのですが、「待合室を空にしてしまっていいものなのか・・・?」「お客様はどう思うだろうか・・・?」と悩みました。対策後、不足分はリサイクルショップで購入したり、知り合いに分けてもらったりして補いました。知人にいただいたものは、実物を手にするまでは落ち着かない気持ちでした。せっかく譲ってくれたものに対して、私は強い反応を起こすかもしれないからです。すでに、前オーナーから譲っていただいたものに対して、反応を起こしているように・・・。このとき知人からいただいたものは、ほとんど反応を起こさないものだったので、安心しました。いただき物というのは難しいです。そこには義理や恩、その人との関係性などが関わってきます。せっかくいただいたものを有効に活用できないことがあると(私の場合、そういうことは多い)、相手に対して申し訳ないと思うし、がっかりさせてしまいます。このとき、物を譲ってくれた方には、私の体質のことは、少しお話ししていました。その方も花粉症があるので、アレルギーや過敏症のことはある程度理解してくれました。しかし、私の過敏性の高さは想像の範囲を超えているようで、驚いたことも多かったようです。私は人にこまこまと自分の体質の話をしないことが多いです。説明が長くなって時間がかかるのと、相手にとって負担になるのではないかと心配するからです。「説明が長くなる」という点については、このサイトを読んでいる読者の方は実感してくださることでしょう! このサイトの文章は長々と書いていますが、病気の実態を説明するためには、これだけの量は必要なのです。

○実際の対策
 さて、準備万端整えて、いざオフィスの対策を始めましたが、それは困難な道のりでした。夫も休日出勤して手伝ってくれました。しまってあるものを取り出す度に、有害な空気が発散して、症状を起こしてしまいます。二次汚染物質は夫にお願いして、すべてビニールに入れてもらいました。これは、そのまま処分することになりました。三次汚染物質は必要度によって、処分するもの・とっておくものを分けていきました。捨てないものは、洗ったりビニール詰めにしたりします。本棚の書籍で捨てられないものは、1冊1冊チャックつきビニールに入れました。私自身は触れませんが、使うときは夫が代わりにビニールから出して中を見てくれることになりました。受付や待合室にあるものなど、絶対に必要というわけではないが、なくなると不便になるものには、特に悩みました。とりあえずビニールに入れていき、封入したことによって、部屋の空気がどのくらいよくなるのかを見ることにしました。夫と2人で手分けして、次々ビニールに入れていきます。夫にも部屋の写真をプリントアウトしたものと、計画メモを渡してあるので、どんどん作業が進みます。私はだんだん有害物への反応が重なっていき、具合悪くて頭がボンヤリしてきてしまいました。

 ほとんどすべてビニールに入れ終わると、部屋の空気は驚くほどよくなりました。それまでの作業で、鼻の穴や呼吸器に有害物質が付着してしまったので、しっかりと判断できないのですが、レベル3くらいまでには下がったのではないでしょうか。ようやく一息つくことができました。

 たくさんのビニールに入ったものを眺めながら、私は疲れで呆然としていました。このビニールを全部開けると、もとの有害度の戻るのかと思うと、不思議な感じがしました。これらのものをどうしたらいいのか?と悩みました。あまり必要がないものは捨てるとしても、中にはまだ使いたいものもあります。少しくらいなら戻しても大丈夫だろうか、などとボンヤリする頭で考えました。私は、夫にはっきりしない見通しをぐずぐずと語っていたのですが、夫の考えは全く違っていました。「これ全部処分する! あとのことは改めて考えよう!」と宣言するなり、すべてのビニールを次々と会社の倉庫に運んでしまったのです! 私はあっけにとられて見ていました。事務所は物がなくなったので、とても殺風景に見えました。この日は疲れて家に帰りました。

○対策の効果
 結果として、夫の判断は正しかったのです。次に事務所に出勤したとき、部屋の空気は見違えるほど良くなっていました。部屋に入った瞬間、肺を圧迫するような粉っぽい空気がなくなっていました。目も鼻も、ムズムズするようなかゆみがなくなりました。安心して息ができるようになりました。夫には、今でも感謝しています。夫は、それまでの私の体質や生活ぶりを見ていて、すべて処分するのが一番だと判断してくれたようです。私は症状や対策の疲れから決断力がなくなっていたので、代わりに決断してくれた夫に感謝です。

 殺風景になってしまった待合室には、安全な材料で手作りしたおもちゃなどを置きました。お客さんからは、「部屋が整頓されてすっきりした」「きれいになった」と、かえってお褒めの言葉をいただきました。

 空気がきれいになってみてわかったのは、部屋の空気を汚染していたのは、部屋に置かれていた物に付着していた有害物質であり、部屋の内装や建材ではなかったということです。私が恐れていたのは、「物」の他に、建材からの汚染でした。壁紙や床材から有害物質が出ているのであれば、もっと大がかりな対策が必要になります。ところが、会社のオフィスは建材にはほとんど問題がないようでした。

 前オーナーの話では、この部屋は以前ある会社が借りていたが、5年程ほとんど使わず、無人のままになっていたそうです。その後、前オーナーが借り、私たちが引き継ぐまで約2年。もし前の会社が借りるときに壁紙を貼り替えていたとしても、それから7年はたっていることになります。また、5年間無人だった上、前オーナーが経営している間も、喫煙者はいなかったということですから、タバコの影響も残っていないわけです。そのような意味では、建材については恵まれた物件だったといえます。

 部屋の空気がよくなったので、かすかな汚染源もよくわかるようになってきました。部屋の中を移動しながら空気のよいところ、悪いところを検討していきます。今回の対策前は、部屋全体の空気が悪くて、とてもこのようなことはできませんでした。探っていくと、天井の点検口の辺りから、カビ臭い空気が流れているのがわかりました。ここをセロテープで目貼りします。真ん中の通気口は透明な梱包テープでふさぎました。夫は以前、仕事で天井裏に入ったりすることがありました。夫の話によると、天井裏は、ホコリやカビがいっぱいあって、空気が悪いということです。点検口は点検の時にしか開けないので、ふさいでしまっても大丈夫なはずだと言っていました。

 話が前後しますが、1年前の2009年の春にCS対策をしたときに、このオフィスの換気扇をビニールで封入しています。ここからもカビのような有害な空気が流れ出てきていたからです。また、ベランダに通じる通気口も、透明梱包テープでふさぎました。外気が悪いときに通気口が開いていると、室内に流れ込んでくる恐れがあります。この通気口は手でスライドさせることで開閉を切り替えられますが、「閉」にしてもすきま風が入るので、テープで完全に封入してしまいました。換気をしたいときは窓を開けて、空気を取り込むようにしています。

○別オフィスの対策
 受付のオフィスの空気はとても良くなりましたが、社員たちが使うもうひとつのオフィスは、まだ空気が悪いままでした。2010年の春から秋の気温が高い時期はレベル5となり、私は入ることができませんでした。部屋の中の原因となりそうな物を順次撤去していきましたが、なかなか空気がよくなりません。2010年の4月には、この部屋の合板の本棚もビニールで包むことにしました。仕事のない日に会社に行って作業をしました。中の本をすべて取り出して本棚をばらします。本は一時的に押し入れに入れました。1年前に受付オフィスの本棚をビニールで包んだのと同じ手順でラッピングしていきます。1年前にやったときには、1台あたり5時間以上かかりました。しかし、人間何事も熟達していくようです。このときは、1台まるまる2時間半で終えることができたのです。作業中は、合板の匂いを吸って具合悪くなってしまい、途中からはつらくてしかたがなかったです。それでも淡々と作業を続けていれば、いつかは終わりが来ます。作業中、何度か「やめたい」「この場から逃げ出したい」と思いましたが、何とか続けて、休みなく2時間半で終えました。最後に本棚を組み立てて、棚板に段ボールを乗せて完成です。

 本棚をビニールで包んだ結果、このオフィスの空気は格段によくなりました。やはり、有害物質を遮断・封入する方法は、はっきりとした効果があります。ところが、押し入れにいったんしまって置いた本を出してきて本棚に並べたら、なんと、部屋の空気はもとの有害度に戻ってしまいました。本棚の合板の匂いより、本から発散されている物質の方が何倍も有害度が高いようです。それは、受付オフィスの本から発散しているものと同じでした。これらの本は、この会社を開業してから買いそろえた本ですが、家具やカーテンなどから発散された有害な成分を付着させてしまったようです。本棚を包む作業が徒労に終わり、がっかりして家に帰りました。

 家に帰ってからは、1年前に本棚を包んだときと同じ一連のコースを辿りました。翌朝には回転性のめまいがありました。指先がボロボロに荒れて1週間ほど治りませんでした。

 本棚よりも本の方が有害。しかし、その本は仕事に必要なもので、毎日社員たちが使うものです。処分したりビニールに包んだりはできないものでした。どうしていいかわからず、何ヶ月もそちらのオフィスには入れない状態が続きました。

○スチール本棚を設置
 2011年の3月に、私は抜本的な改善を行うべきだと考えて、扉つきのスチール本棚を買うことにしました。それまでの合板の本棚は扉がなく、本が室内にむき出しになっていました。扉つきのしっかりとした本棚があれば、有害物質の発散を抑えることができます。社員が本を使うときは、一度に2〜3冊しか使わないので、それ以外の本は本棚の中に収まっていることになり、有害物質の影響が外に出ません。

 私は第1章、第4章でも書いたとおり、電磁波過敏症を発症してから、金属製品にも反応を起こすようになっていたので、スチール家具を買うことに抵抗がありました。金属による反応は、空間中の電磁波と関連があるようで、私の認識力をもってしては、結果を予想することはできません。買って設置してみないと、大丈夫かどうかはわかりません。心配でしたが、一歩前に踏み出すことにしてみました。

 夫と一緒に、中古のスチール家具店に本棚を見に行きました。店に入るのには勇気がいりました。店内には大量のスチール家具が置いてあり、中には金属粉が散っていたり、サビが出ているものもあるでしょう。金属の粉末や鉄サビに接触すると激しい目の痛みが出てきてひどい発作を起こすので、恐ろしくてたまりませんでした。勇気を出して店内に入ってみると、目の痛みと頭痛が出たものの、ショック症状を起こすような激しい発作にはならなかったので、安心しました。目の痛みと頭痛を我慢しながら、本棚を見ていきました。めぼしいものを見つけたけれど、目の痛みのため判断力が落ちてしまったので、いったん家に帰ることにしました。

 シャワーを浴びて着替えたら、目の痛みは治まっていきました。私たちが買おうと目を付けた本棚は、それ自体は特別有害な感じではなかったけれど、店内の目の痛みを起こさせる物質と相まって、うまく判断することができません。また、それまで金属製品については、売り場で見ている分には大丈夫なのに、家に運び込んで設置すると反応するなどという経験もあり、購入するのに勇気がいります。設置場所や金属製品の角度などにより反応が変わってくるようです。

 私はずいぶん悩みましたが、2週間後にその本棚を買うことに決めました。運ばれてくる日の前の晩は、緊張のあまり悶々としていました。この日の日記を読むと「これまで金属製品でうまく行ったことはないので、今回もダメかもしれない。あまり期待せずに行ってみよう」などと書いてあります。
 翌日午前10時にスチール家具店の人が本棚を配達してくれました。あらかじめ元の本棚は廊下に撤去しておきました。本は押入に入れました。配達してきた家具店の人たちの体からは、目の痛い物質が発散していました(レベル4)。これは店内の匂いが服などについたものと思われます。本棚を設置して、店員さんたちは帰って行きました。

 ここからが緊張する場面です。私はこの本棚が体に害を及ぼさず、使えるものかどうか判断しなければなりません。本棚の表面には、店内の有害物質がついているだろうから、それをまず取り除くことにしました。私は強い反応を起こすのが恐ろしかったので、こわごわと本棚を眺めていました。「これを使えないかもしれない」というプレッシャーを、ひしひしと感じました。「ダメだったら困るな」と思うと、胸が押しつぶされそうな感じがします。新しいものを購入するときは、いつもこのようなプレッシャーがあります。夫は私の様子を見かねて、「自分が掃除する」と言ってくれました。この日はまだ冬の寒い日だったけれど、窓を開け放して、本棚の掃除機かけと拭き掃除をしてくれたのです。本体と扉、棚板の1枚1枚を丁寧に掃除機・雑巾がけしてくれました。それによって、表面に付着している金属の粉や化学物質は取り去られました。長時間、大変な作業をしてくれた夫には本当に感謝しています。

 掃除後、部屋をよく換気して本棚を見に行ったら、目の痛みもなく、その他の症状も出ず、使えそうでした。本当に安心しました。この本棚に本を入れて扉を閉めたら、本から発散される有害物質はうまく封じ込められて外に漏れません。部屋の空気が良くなりました。

 こちらのオフィスも受付のオフィスと同じように、天井の点検口や換気扇・通気口を目張りしました。さらに部屋の空気は良くなったように感じました。このような対策で、もうひとつのオフィスも環境が改善されてきました。

○3年目の対策
 2011年の春から、また気温が上昇してきたら、徹底的に対策したはずの受付オフィスは、それでも少しだけ有害度が上がりました。木製品の匂いがしてきたので、木製テーブルの裏面(塗装が施されていない面)にビニールを貼りました。クローゼットの扉も裏面は塗装がないので、ここから木の匂いが強くしていました。ここにもビニールをきれいに貼って封じ込めることにしました。木製の家具は木の匂いや薬剤処理の匂い、塗料の匂いがするので、できるだけ使いたくないと思っています。オフィスにもともとあった木製家具はすべて買い換える財力がないので、そのまま使っているものもあります。いろいろと対策を施すと、木製のものでも何とか使っていけるようになります。

 他に、元々このオフィスにあった家具で、プラスチック製の折りたたみテーブルや椅子があり、これらはほとんど匂わないので、重宝しています。プラスチック製の椅子は一部に金属が使われていますが、座面にほとんど金属がないので、座っていて楽です。パイプ椅子のように座面の縁を金属のパイプが取り囲んでいるような構造だと、座ったときに、ももの裏にパイプが接触して、(衣類越しでも)影響が出ます。パイプが接触している脚の辺りの痛みが強くなってきて、座っていられなくなります。電磁波過敏症による症状ではないかと推測しています。現在オフィスにあるプラスチック製の椅子は、身体に接触する部分がプラスチックで、金属の骨組みは一部に使われているだけなので、症状を軽くすることができています。

 その後、化学物質やアレルギー的に気になるものが見つかる度に、ちょこちょこと対策しています。引き継いだばかりの頃の、あの激しい有害性は去りました。当時と比べると、天と地ほどの違いがあります。「なせばなる」という言葉が頭に浮かびます。

 2010年の秋に、私たち夫婦は会社のオフィスがあるマンションに引っ越しました。引っ越した部屋はCS的に少し問題があるので、よく対策を施した会社のオフィスで過ごすことが多いです。

 次章では、引越に至る経緯と、引越後の暮らしについて書いていきます。転居したいと思ってもCS患者には負担やリスクが大きすぎて、躊躇してしまう人も多いと思います。そういう人を始め、すべてのCS患者の参考となるように、具体的な経緯を記していくつもりです。

 

まとめ 受付オフィスの問題点と対策



まとめ 受付オフィスの空気の状況と対策効果

対策

部屋の状態

有害度のレベル

2009

 

3/5 会社を引き継いで経営をスタート

レベル3〜4

   

4月 室温が上がって有害度が増す

レベル5

 

4/3 合板の本棚ビニール包み

 

レベル5

 

4/17 合板の本棚ビニール包み

 

レベル5

   

5月 室温が上がって有害度が増す

レベル5+++

 

5/15 本棚撤去・リサイクルショップで代替品を購入してビニール包み

 

レベル5

   

5月 室温が上がって有害度が増す

レベル5+++

 

5/21 流しの下をビニールで封入。床と壁の間を目張り

 

レベル5

   

5月 室温が上がって有害度が増す

レベル5+++

 

5/26 カーテンを洗濯

 

レベル5+++

 

6/13 カーペットを除去

 

レベル5

 

7/1 押入、戸棚をビニール貼り

 

レベル4

   

7〜9月 窓を開けていたので、有害性が減る。

レベル3

   

10月 室温が下がって、有害性が減る。

レベル3

2010

 

4月 室温が上がって有害性が増す。

レベル4

 

4/5 天井を目張り

 

レベル4

 

4/14 有害なものを撤去

 

レベル3

2011

 

5月 テーブルの裏にビニールを貼る。クローゼットの扉の裏にビニール貼り。

レベル2


 
まとめ かかった費用(税抜価格)
○本棚ビニール包み
(幅90×高さ180×奥行30cmの本棚1つあたり)
30リットル透明ビニール袋 1袋(10枚入) 100円
養生用ビニールシート 家にあったもの
マスキングテープ 1巻 230円(*調べる)
セロテープ 適量(家にあったもの)合計 330円
◇全部で本棚を4台包んだので、1320円かかりました。

○ばらせない本棚を撤去、中古品をリサイクルショップで購入。 4000円

○クローゼット、台所収納にビニールがけ
養生用ビニールシート 家にあったもの
ホチキス針 家にあったもの (新しく買うとしたら約100円)
マスキングテープ 家にあったもの
透明梱包テープ 家にあったもの
合計 0円

○物の撤去・処分
札幌市指定ゴミ袋 20リットル×10袋入 400円
半透明ゴミ袋 45リットル 10枚入 100円
合計500円

○天井点検口・通気口・換気扇を封入
セロテープ 家にあったもの
透明梱包テープ 家にあったもの
ビニール 家にあったもの
合計 0円

○カーテンを漂白・洗濯
酸素系漂白剤 家にあったもの
液体洗濯石けん 家にあったもの
合計 0円

○木製テーブルの天板の裏にビニールがけ
養生用ビニールシート 家にあったもの
ホチキス針 家にあったもの
セロテープ 家にあったもの
合計 0円

総計 5820円


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