001:人造人間
「なぜ、一番最初が人造人間なんだ?」
「ここは、もし○○だったら………という仮想現実を取り上げたページゆえ、もともと人間の我々に、人間だったら、という仮定は成り立たないからだろう。」
「う〜ん、それはそうだが…………で、もし人造人間だったらどんな気分だと思う?」
「嫌だ。」
「即答だな。 で、どうして?」
「人として、人であるお前を愛したいからだ。」
「……!」 ← 真っ赤!
002:家元
「家元って、なにかの流儀とかの創始者とか一番の実力者のことだろ。」
「うむ、華道、茶道、武道などの流派の正統としての権威を持ち、その技芸を守り継承するのだ。」
「ふ〜ん………それならこの場合は i f じゃない。 俺は現に家元だ。 ただ、その定義の前半は問題ないが、後半に難があるな。」
「お前が家元とはなんのことだ?」
「うん、俺ってカミュ天然鍾愛流の家元だから。 」
「えっ?!」
「お前を愛する作法・手順・動作を真に追及しその奥義を極めていることにおいて俺にしくものはない!
だが、」
「………だが?」
「その技芸を継承することには異論がある! 俺が弟子を採って、その男がいかに人並み優れた人格高潔な人間で眼も眩むばかりの美しい体躯の持ち主だとしても、他人にお前を愛する奥義を伝えることはできない相談だ!
お前もそう思うだろうが。」
「ええと………それは確かに。 そんなことをされては迷惑だ!」
「で、お前はなんの家元?」
「えっ? あの………私は…?」
「ふふふ、俺に完璧に愛される家元だろ♪ 作法・動作その他について自分で認識できてないなら、今夜はっきりと確認させてやるよ♪」
「あの…」
「いいから、いいから♪」
003:王
「これこそ i f ではあり得ない。 昭王、すなわち俺だからな。」
「うむ、2300年前といえども、お前が王であったのは紛れもない事実だ。」
「一国の王というのはたしかに気分がいい、それは確かだ! しかし、」
「しかし?」
「しかし、自由がなさ過ぎる。 かりに隣国の王女が、」
「あの時代は公主という。」
「仮に隣国の公主がお前だったとして、めでたく俺と婚姻を結んだとしよう。」
「……え? まあ、いいだろう、仮定の話だからな。」
「で、燕に輿入れして天勝宮に住んでも一緒には暮らさないんだぜっ、あの芳春殿とかいうのが妃の住まいなんだろう?
冗談じゃないっ、どうして国中から祝福されてめでたく正式に結婚したのに別々の建物に住まなきゃいかんのだっ!!
俺はお前と一緒に住んで、朝に夕に抱き締めたりキスしたりしたいっ♪♪」
「無理だ。」
「あのなぁ………もう少し哀しげに切なくしみじみと、悔しいがそれは有り得ないのだ………、とか言ってくれないか?
俺だって、あれほど取り巻きが多い昭王が人目も構わずキスするなんて思っちゃいない。 そんなのは昭王じゃないからな。
でも、お前と一緒に暮らしたいじゃないか! 寝るときも別なんだぜ、あんまりだとは思わないか?
あんな状況じゃ、お前を抱こうと思ったときには、先触れだの取り巻きだの面倒なしきたりに縛られて、天勝宮中に、昭王と妃は今夜はご一緒にお過ごしになるのだ、とか周知徹底されてやっと一緒になるのが見え見えだ。
宮廷中の耳目が集まるんだぜ、涙が出てくるね。」
「そういう時代だからな、やむを得ぬことだったのだろう。」
「だから………」
「え?」
「その埋め合わせに毎晩一緒に寝てくれるだろ♪ 」
「埋め合わせって………私は公主ではないし…」
「だから王の男にしてやるよ♪」
「えっ?!」
「いいから、いいから♪」
004:ピアニスト
「これもすでにクリアしてるな♪ サティを弾いたのは伊達じゃないぜ、あれこそ俺のお前への愛の賜物だ。」
「うむ、あの時は驚いた。」
「言わせてもらうが、俺のピアニスト度はお前よりはるかに高い。」
「ピアニスト度という基準は初めて聞いたが、その意味するところはわかる。
しかし、その気になれば私もピアノくらいは弾けるだろう。」
「ふ〜ん、そうなんだ! じゃあ、やってみて♪」
「えっ、いきなり?」
「だって、弾けるんだろ?」
「ええと………その気にならなければ無理だ。 最初からその前提をつけてある。」
「じゃあ、その気にさせてやるよ……♪」
「あっ………ミロ! なにを……!」
「だからお前をその気にさせてやるんだよ………どう?」
「その意味ではなくて………あ………ミロ……」
「ピアノでなくてもピアニッシモでもいいぜ。 俺のためにいい音楽を奏でてくれる?」
「………ああ…………い…や……」 ← ピアニッシモ
「ふふふ♪」
005:探検家
「つまりインディ・ジョーンズみたいなのを思い浮かべればいいのかな?」
「いささか現実離れしているが、間違いではなかろう。」
「すると、探検しに行く先は、密林とか、砂漠とか、坑道とか、カタコンベとか、遺跡とか、氷河とか…」
「…氷河?」
「え?…いや、その氷河じゃなくてさ、本物の雪山の地形の氷河のほう。」
「……ああ、そうだろうな。 氷河をどうやって探検するのかと驚いた。」
「俺が理解するところでは、お前が氷河を探検するよりは、氷河がアイザックと一緒になってお前を探検するケースのほうがずっと多いような気がするが……」
「なんのことだ?」
「いや、なんでもない! 気にしてくれるな! そんなことより、あの映画では、蛇のうじゃうじゃいる穴に放り込まれたり、ムカデや得体の知れん毒虫が体の上を這い回るシーンがあったがそういうのに耐えられるか?」
「冷気で活動できなくするのでなんら問題はない。蛇のいる穴など、数秒でかたがつく。」
「じゃあ、悪霊は? 『 失われたアーク 』 でナチスドイツが出たときのラストは凄かったぜ!」
「シャカの天空破邪魑魅魍魎よりはるかにレベルが低い。」
「そりゃそうだ。 それじゃ、食べ物は? インドのマハラジャのパンコット宮殿の晩餐は迫力がありすぎると思うが。」
「断食する。」
「マハラジャ相手に通用するかな?」
「押し通す!」
「まあ、いい。 俺も食べたくはないからな。すると、俺とお前が探検家になるのになんの不都合もないってことだ。
ふふふ、密林や砂漠を二人っきりで秘宝探しの探検か♪ ワクワクするね! 昼間は協力して困難に立ち向かい、夜はお互いの肌を合わせて緊張に疲れた身体を癒す♪♪」
「ちょっと待て!」
「え?」
「私は寝ない。」
「………えっ?」
「野外はお断りだといってある筈だ。 仮にテントがあっても、そんな布一枚で、さあ、室内だから安心だ、などと言われても受け入れ難い。
よって、探検中はプラトニックを堅持する。」
「そ、そこを何とか! 俺はお前を探検したいっっ!」
「断る。」
「ああああああ〜〜っ!」
006:死神 ◆漫画 「デスノート」 の話です。 わからない方、ごめんなさい。
「死神というと………」
「やはりあれだろう! デスノート!!」
「うむ、それしかなかろう。」
「で、お前、死神になりたい?」
「いや、御免こうむる。」
「そうだろうな、俺としてもお前が死神になるのは嫌だ。」
「では、今日はそういうことで。」
「………いや、、待てっっ!!」
「え?」
「デスノートに出てくる死神のリューク! お前、あれになれっ!」 ※ リューク ⇒ こちら
「な・ぜ・っっ?? せ、せめて月に!」
「落ち着け! 月は死神じゃないだろうが。 ふふふ……リュークの見かけにだまされるなよ、実はリュークには決定的に重大なお前との共通点がある!」
「私とっ?! いったい、私とリュークの何処が似ているというのだ……っ!」
「お前、リュークの好物を知ってるか?」
「好物って………あ……」
「そうだ、リンゴだ! リュークはリンゴをしばらく食べないでいると身体を無闇にひねったり逆立ちしたりという禁断症状が出る。
それほどリュークにとってリンゴは必要不可欠のアイテムなんだぜ!」
「リューク………私がリューク……」
「ミロがギリシャ語でリンゴを意味するのは周知の事実だ! とすれば、リンゴをこよなく愛するリュークはお前以外の何者でもあるまい!
どうだ?」
「リューク……私が……この私が……」
「お前だって、しばらく俺に会わないでいると禁断症状が出るんだろう? ふふふ………知ってるぜ♪
そんなとこも可愛いけどさ♪」
「私がリューク………」
「あ……」
「……」
「あの………カミュ……俺はなにもそんなつもりで…」
「ミロ………」
「ごめん………悪かった…………大事なお前を困らせることを言った………カミュ……」
「私は………私は死神なんかではなくて………人間としてお前を愛したい………」
「わかってる………わかってるから………俺の大事なカミュ………」
「………」
「こんなに………こんなに愛してる……」
「やっぱり 人間って面白っ!」 ( by リューク ) ← リンゴかじりながら一部始終、見てた
※ リュークのアップルクッキー ⇒ こちら
007:家庭教師
「家庭教師といえば 『 先生と弟子 』 というお前に定番のシチュエーションが思い浮かぶが、このお題の78番目に
『 先生 』 という項目があるので、ここではそれは考えない。」
「では受験生か?」
「いや、都合よく仏蘭西物語に家庭教師が出てきたじゃないか。 アルベール家で一歩も外に出られなかったお前が子供の頃から家庭教師を呼んで教育を受けてた。」
「あ、そういえば。」
「現代よりもあの頃の方が家庭教師も優雅だな。 音楽に学問、馬に剣。 なにしろ貴族だから金に糸目はつけない。
音楽だって、チェンバロ ・ リュート ・ フルート ・ 歌、どれも別々の家庭教師を呼んだのに違いない。
当時の作曲家には著作権も楽譜やCD出版も無縁だからな。 あのシューベルトやモーツァルトだって貴族の家の家庭教師をやって収入にしてたんだぜ、思えばすごい贅沢だ!」
「私は学問の家庭教師なら今すぐにでもできる。 特に教科は定めないが、理科系が向いているように思う。」
「お前の教え子なら東大理三だって現役合格間違いなしだ。 俺は現代よりは中世フランス、あの仏蘭西物語の世界の方がいいな。 なんといっても男は剣と馬だ。 貴族の邸宅に呼ばれて、そこの子女に手取り足取り基本から忠実に教えてゆく。 俺の教えがいいもので、人並み優れた技量を持つようになった教え子はめきめき頭角を現わし宮廷でも世間でも重きをなしてゆくんだよ。」
「うむ、よい話だ。」
「で、教え子との親密な関係はその後も続き、ついに或る夜、想いが嵩じて甘い一夜を共にすることになる。 どうだ、いい話だろう♪」
「えっ?!」
「なにを驚いている?」
「お、お、お、お前は家庭教師という優位な立場を利用して、いたいけな幼い子供をたぶらかしそのような愛憎の泥沼に引き込んで………!」
「……はぁ? あのなぁ、この場合の教え子ってお前のことなんだけど。」
「……え?」
「決まってるだろうが! 俺は仏蘭西物語の話をしてたんだぜ! カミュ・フランソワ・ド・アルベール、お前自身にミロ・スコルピーシュ・ド・トゥールーズが剣と馬を教えるんだよ、そう言わなかったか?」
「あ………あの………そういえばそうかも…」
「愛憎の泥沼って………昼の連ドラでも見すぎたんじゃないのか?」
「連ドラとはなんだ?」
「いや、なんでもない。」
「気になるな。」
「お前が見るようなものじゃない。」
「ではお前なら見ても良いのか?」
「いや、そうじゃなくてさ………お前にはN響アワーとか新日曜美術館とかを見てて欲しいんだよ、俺は。 それでいいじゃないか。 そういうのが好きだろ?」
「それは確かに。」
「で、そのあとは芸術的にやさしく抱いてやるからさ♪ 」
「い、いきなりなにをっ!」
「だから愛の家庭教師ってやつ、俺とお前の定番だよ♪ アルベール家でもそうしたし。
いいだろう♪」
「でも………」
「いいから、いいから♪」
008:ホスト
「ホスト?寄生生物の宿主という意味もあるが、それは一般的でない。 客を迎える主人側のことだろう。」
「いや、この場合はそうじゃないだろう。 ホストクラブのホストのことだと思うぜ。」
「ホストクラブとはなんだ?」
「え〜と………昨今 流行りの………女性を歓待する男性を擁している、主に酒類を提供する店のことだ。………この説明で間違ってないよな?」
「人に説明するのに自信がないのは良くない。 ネットで検索してみよう。」
「いや、待てっ、その必要はない! この説明で100%合っている。 要するに、店に来た女性客に気持ちよく酒を飲んでもらうなどして楽しく過ごしてもらうことを心がける接客のプロということだ。
だから女性客が好ましいと感じるような容姿・心遣いのある若い男性が多いのが特徴だ。」
「すると、私たちがもしホストになったら、ということについて検討すればよいのだな?」
「そういうことだ。 俺は自信があるぜ。 まあ、黄金なら誰でも及第点をはるかに凌ぐに違いないが。」
「そういうものか?」
「そうだよ! 黄金12人がホストクラブに勤めてたら5年先まで予約で埋まるのは間違いない!
黄金を束ねるんだからオーナーはシオンがふさわしいだろう。 こき使われそうな気もするが、ほかに適役がいないからな。
指名も凄いだろうな、う〜〜〜ん、誰に集中するんだ? 年齢的に成熟して巷でも人気の高いサガなんかトップをキープするんじゃないか?
で、ちょっとアウトローっぽいのにルックスはサガと瓜二つというカノンもいいところに行きそうな気がする。
アイオリア、あいつも人をそらさないからな、熟年客に安心感を与えて引っ張りだこという可能性ありだ。
シュラは真面目なくせにニヒルな眼差しが売りだ。 デスは世間慣れして女性客に喜ばれそうな話題が豊富だし、実はかなりの二枚目だ。
ムウは腹の中ではなにを考えているのかわからないのに人当たりは実にいいからな、やはり人気が出る。
シャカは透き通るような金髪と閉じた瞳が神秘的とかで指名が多そうだ。 アフロは常にバラに囲まれていてそのままベルバラの世界を演出してる。老師は………この場合は童虎のほうがいいだろうな、人間が一番光り輝く十八歳というキャッチコピーで断トツの若さを誇示なさるに違いない。
アルデバランは包容力と誠実さにおいて最高の安心感を与えるんだろうな、間違っても浮気をしそうにないから案外理想の男性像かもしれん。」
「ずらずらと並べてくれたが、お前の特徴はなんだ?後学のために聞かせてもらおう。」
「俺は 『 豪奢な金髪と人をそらさぬ笑みで魅了する 』 ってとこかな♪」
「で、私は?」
「え? お前? むろん、店には出ない。」
「なぜっ?!」
「当たり前だろ! どうして大事なお前を接客なんかに出せるんだ? 世界に冠たる黄金のアクエリアスがホストなんかになったら世界が、いや、銀河が震撼するぜ!」
「………しかし、このコンテンツでは 『 もし、○○だったら 』 という仮想現実について論議するのではないのか?」
「だから、もしお前がホストになったら銀河が震撼するから、なっちゃだめなんだよ。
お前だって宇宙の構造を根底から揺るがしたくはなかろう? 下手したら世界が崩壊するぜ。
そいつはまずいんじゃないのか?」
「………え? ………それは確かに……」
「だからお前はホストにはさせない。 簡単な理屈だ。」
「念のために確認させてもらうが、サガとか お前がホストになっても世界は崩壊しないということか?」
「するわけないだろう? どこの誰だって、ホストやってるサガに違和感はいだかないし、俺がやってもはまり役だと評価されるに決まってる。
でもホストやってるお前を想像してぴったりの職業選択だと思う人間はいないぜ。」
「そういうものか?」
「そういうものだよ、だからお前はホストにはならない。 俺が大事にしまっとく♪」
「???」 ← 論理性に疑義があるような気がするのだが、突破口を見い出せない状態 (笑)
009:将校
「将校とは少尉以上の武官のことだ、士官ともいう。」
「すると一番理想的なのは、やはりベルバラ、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェだな。
時代背景・容姿・性格、どれをとっても申し分ない。」
「うむ、私も同感だ。」
「さらに特筆すべきは制服の魔力だ!」
「制服の魔力とは?」
「将校がきりっと凛々しく見えるのはその制服の威厳・規律正しさに負うところが多い。
あのオスカルさえ私服のときは普通の美しい貴族にしか見えんだろう? ところが金色の肩モールをつけた緋色の将校の制服を身につけ、胸には数々の軍功と階級を示す勲章や何かを飾っていることにより、いっそうの凛々しさと近寄りがたいほどの威厳が生まれる。
これが制服の魔力だ!」
「そういえばそうかもしれぬ。」
「そうだよ! 制服とは違うが、俺たちの黄金聖衣もそうだぜ。 あれを身につけると小宇宙も究極まで高まるが、お前の美しさ幽玄さが際限なく際立ち、黄金以外は10メートル以内に近づくことさえできなくなるほどの威厳を放つ。
そして、そのお前をこの腕にいだけるのはこの俺だけなんだと思うと胸の鼓動も際限なく高まろうというものだ。」
「オスカルとはだいぶ話がずれているようだが?」
「そうか? ともかく制服の魔力についてはお前も認めるだろう? 俺が聖衣を身に纏っているところを想像すれば理解できるはずだ。」
「うむ、それは確かに。」
「………あっさり肯定しないで、少しは赤くなったりしろよ。 蠍のしっぽがチャームポイントだとは思わんか?
」
「ええと……」
「ともかく、お前がオスカルと同じ時代に生まれてあの制服を身につけたら………ああっ、たまらん!!」
「たまらん、とは?」
「俺はお前と同じ近衛の将校で、ひそかにお前に恋焦がれ、ある日とうとう想いを打ち明ける。驚いたお前は最初は拒むが、やがて俺の真摯な恋心を受け入れてくれるんだよ。
で………ふっふっふっ♪」
「その笑いはなんだ?」
「二人でブーローニュの森に遠乗りに出かけ、ついに俺はお前を抱く!」
「なにっ! ま、また野外で?!」
「人目につかない森陰の若草の上に横たえたお前の制服のボタンを一つ一つはずしながら口付けて、やがて凛々しい制服に隠されていた真っ白い肌を俺はこの手でかきいだく。
この、制服を脱がせることろがまたいいんだよ、神の与えたもうた芳醇な至福の瞬間だな、そうは思わんか?」
「あの………私にはよくわからないが…」
「もちろん俺も制服だ。 遠慮せずにお前も脱がせてくれていいんだぜ♪」
「そ………そんなことは……」
「ふふふ、照れるお前も可愛いぜ♪ しかし!」
「え?」
「現実の俺たちはオスカルみたいな制服を着ることはない。 だから黄金聖衣で今からやってみようじゃないか!」
「そ、そんな勝手なことを!」
「だって、最近ちっとも着てないぜ! このままじゃ聖衣が俺たちに見限られたのかと不安に駆られるかもしれん!
デスマスクとは逆の例だな。 聖衣と聖闘士は常に一心同体でなくてはならんのだ!
これからは週に一度は聖衣を身につけて究極の小宇宙を再確認するのが聖闘士としてのあるべき姿だと思う。
お前もそうは思わんか?」
「え? ええと………」
「じゃあ、決まりね♪ 今日は土曜日だからこれからは毎週土曜日には聖衣を纏う! 6月16日は和菓子の日だからちょうどいい!
で、互いにその艶姿を再確認し、充分に美しさ凛々しさに納得がいったらゆっくりと………」
「………ゆっくりと?」
「ふふふ、合言葉はブーローニュの森だ♪」
「ばかもの………」
010:芸大生
「東京・上野公園内にある東京藝術大学を芸大と称し、そこに在籍する学生を芸大生と呼ぶ。
日本唯一の国立芸術大学で入試難易度は最高ランクともいわれる。」
「……藝術?」
「藝は芸の旧字体だ。 美術学部と音楽学部に分かれている。」
「俺はピアノにも興味はあるが、ここはやはり美術のほうだな。」
「ほぅ、私もだ! 氷の彫刻に興味があるので彫塑の方をやってみたい。」
「俺は絵画だな! 彫刻はお前に任せるよ。」
「油彩か?」
「油絵でも水彩でも、どっちでもいいんだけどさ、重要なのはデッサンだ。」
「なるほど、美術の基礎はデッサンに違いない。」
「基礎もなにも、俺がやりたいのはデッサンそのものだから。」
「では素描か? 静物、人物、風景画、それから…」
「ええと、つまりさ………ヌードデッサン♪」
「…っ………甘いなっ! なにを期待しているのかは知らぬが、教室内は不必要な私語禁止!
モデルが若くて美人とは限らない! 静寂の中で全員が真剣に取組んでおり不埒なことを妄想する雰囲気ではないと聞いている!プロのモデルは堂々としており、学生の方が恥ずかしがるというのが常識だ!」
「そう不機嫌そうな顔するなよ。 俺はそういうのは考えてなかったが。」
「…え?」
「デッサンは重要だ。 対象を正しく見て正確に描写する。 抽象画だろうとなんだろうと、始まりはそれだ。
基礎を正しく習得しなければ、表面だけの作品しか生まれない。」
「うむ、その通りだ。」
「だからデッサンのモデルは完璧に完成された美を有していなくてはならない。
不完全な美、不均衡なバランスは芸術性の追究を阻害する。 ゆえにモデルはこの世で最高の美を誇る存在、つまりお前でなくてはならないのだ。」
「えっ!」
「しかし、お前の裸体を一般の芸大生の視線に晒せるわけがないだろう! そもそも美しすぎて目がくらみ、畏れ多くてなにも見えないに決まっているが。 ゆえに、人体デッサンは俺の私室のたっぷりとしたゆとりある空間を使って行なわれる。 マンツーマンでお前の至高の美を紙上に写し取ってやるよ♪」
「ええと………しかし……私としては…」
「むろん、俺たちは恋人同士だからなんの障害もない。 俺の画家としての大成を願うお前は、俺が言わなくても進んでモデルになってくれる。
そうだろう?」
「ええと………あまりに突然の話で、どう考えたらいいのか…」
「むろん、お前だけではない。 俺もお前のデッサンのモデルになってやるよ。
なにしろ俺の身体バランスはどこをとっても黄金率 1 : 1.618だからな、お前の期待に100%応えてやれる♪
お互い、最高のモデルを使うんだから出来栄えも折り紙つきだ。 教授連の評価もさぞかし素晴らしいことだろう!」
「いや………あの………私は…」
「俺はダビデ像のポーズでいい。」
「えっ!! ダビデってあのフィレンツェの…」
「で、お前のポーズは これ ね♪ なかなかいいと思わないか? 俺の見た中じゃ、サテュロスと双璧をなしてるな。
この像はルーブルにあるんだが、何年か前には上野にも来てる。 心配するな、俺も芸大生だから妙な下心は起こさない。
ちゃんと芸術の名のもとにお前の美を称えることに専念させてもらう! お前が俺のデッサンをするときにもよろしく頼むぜ! どの方向から描きたい?
あれっ? カミュっ、カミュ〜〜〜〜〜っ?!」
これで10題まで連続コンプリート。
ミロ様が乗り気なので今のところは順調です。
………で、次は 「奴隷」 なんですけど………
「なにぃっっ♪!」
「………」