011:奴隷
「ふっふっふっ………♪」
「いきなり笑って、なんだ?」
「だって、考えてもみろよ! 奴隷だぜ、奴隷っ!!」
「奴隷。 人間としての権利・自由を認められず、他人の所有物として扱われる人。 所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡・売買の対象とされた。」 ← 大辞林より
「……え?」
「これのどこが笑いを誘うのか、お前の考えを聞きたい。」
「どこって………」
「奴隷制は人類史上 最も恥ずべき行為の一つに位置づけられる。! 笑う点など一つも見い出せない悪行だ!
それをなぜ笑う? 答えろ、ミロ!!」
「いや、あの………そんなシベリアモードにならなくても………」
「私は奴隷などになりたくない。 お前もなりたくないに違いないのに、なぜ笑うような真似をする?」
「あの、俺が言ったのは歴史上の奴隷のことじゃなくて、もっと比喩的なもので。
いわゆる愛の奴隷って奴だけど? 俺がお前に労働を強制したり、第三者に譲渡・売買なんかするはずがないだろうが!
そうは思わんか?」
「………愛の…奴隷?」
「え〜と、つまり、愛する気持ちがあまりにも強いのでどんな無理なことも無条件で受け入れたいと心から思ったり、相手のためなら身を捨ててでも尽くしたいと思っているような状態になっているとき、人はそれを愛の奴隷と呼ぶ………と、かつて老師にお聞きしたことがある。」
「………ほんとに?」
「いや、老師にお聞きしたというのは冗談だ。 お前のシベリアモードに対抗して、ちょっと廬山モードになってみた。 いくらなんでも老師とそんな話をするほど酔狂じゃない。 しかし、愛するあまり、なんでも言うことをきいてしまうという状態を指すことは間違いない。」
「そんなことがあるものかな………」
「あるさ! 具体的状況の提示は避けるが、たしかに有り得るね。 そして、俺はお前の奴隷になってもいいぜ、むしろそんな状況に俺を置いてくれたら嬉しいよ。」
「お前が私の……奴隷に?………ええと………よくわからないが。」
「お前だって、俺の奴隷になりたいって思える日が必ず来るよ、うん、来させて見せる!
」
「私がお前の奴隷に?………え?」
「まだわからなくてもいいんだよ。 う〜ん、ちょっと高度な会話だったかな。」
「お前の言うことはさっぱりわからない。」
「いいんだよ、まだわからなくても……そんなお前が大好きだ………いつまでも俺と一緒にいてくれる?」
「ん………もちろんだ…………でも、奴隷って………」
「その言葉に引っかかるなら、相手のために自分を捨てて誠心誠意尽くす、って考えればいいんだよ。
それと同じことだ。」
「それなら良い。 それならすでにできている。」
「うん、そうだな………俺もとっくにできている。」
「でも………黄金が奴隷でいいのだろうか?」
「だから、これは俺たちだけの秘密だ。 ほかには洩らさない……… いい?」
「わかった……それにしても私が奴隷に……?」
「大好きだ………カミュ…」
「ん………あっ、思い出した!」
「…え? なにを?」
「………スレイブ・レイア!」
「えっっ!」
「ミロっっ!!」
「……っ!」
※ 参考 ⇒ こちら
012:ナース
「以前は看護婦という名称だった。 しかし男性でこの職に就く者も増えてきたため2002年3月から看護師という名称に変わっているが、まだ一般には浸透していないと思われる。」
「そんなことはいいけどさ、白衣の天使っていう言い方があるだろ。」
「白衣の天使? 」
「病気や怪我で入院すると、人は誰でも不安になる。 そのときに慰め励ましてくれるのが、しばしば病室を訪れるナースだ。 心細い身としては頼れる存在で、『 大丈夫ですよ。 』 とやさしく声を掛けてもらうとまるで天使のように見えてくる。 で、制服が白いので白衣の天使ってわけ。」
「天使はキリスト教の概念だから、仏教徒なら地獄で仏というところか。 すると病室にシャカが現われてやさしく声を掛けてくれるということになる。」
「………え?」
「有り得ない。」
「俺も激しく同感だ! 『 私の顔が引導代わりだ! 迷わずあの世へ行きたまえ!』 なんて言う奴だぜ!仮にそんな決め台詞を言わなくても、病室に奴が現われただけで緊張のあまりモニターの数値が跳ね上がり、ナースや医師が駆けつけてくるに違いない。即刻強心剤を打たれるんじゃないのか?」
「シャカの法衣は白衣 ( びゃくえ ) と称するのだろうが、白衣のシャカ……」
「そんな不吉なことを考えるのはよそう! 俺はお前に病室に来て欲しい!」
「え? むろん、お前が入院したら見舞いに行くが。」
「いや、そうじゃなくてさ。 黄金が入院なんてみっともないぜ、俺の言うのはちょっと具合を悪くして天蠍宮で臥せってるときの話♪」
「確かに。私も外部の医療機関に入院はしたくない。」
「だろ♪ でも、白衣じゃなくて聖衣で来てくれる? 黄金の天使が望みだな♪」
「えっ? 聖衣で?」
「ほら、このごろ聖衣を着てないからよくないって言っただろ。 いい機会だ、俺にお前の聖衣姿を見せてくれたら病気なんか銀河の果てに吹っ飛ぶよ。」
「そういうものか?」
「そうだよ。 で、勇気百倍で即座にヒットポイント全回復だ!あ〜、早く病気になってお前の見舞いを受けたいっ! で、そばに来たお前の手をぐいっと引いてベッドに引き込んでそのあとは………ふふふふふ♪」
「なっ、なにをばかなことを想像しているのだ、お前という奴はっ!」
「だって、勇気付けて励ますために来たんだろ、当然だね♪ お前が宝瓶宮で臥せっているときにも黄金の天使になって訪問看護してやるから待ってろよ♪
存分に癒してやるぜ♪」
「そ、そんな恥ずかしいこと…っ!」
「いいから、いいから♪」
013:闘牛士
「闘牛といえばスペインを連想するが、フランス南部、中南米、ポルトガルでも闘牛は行なわれている。
最終的に牛を殺すものであり、いくら仮想現実でも自分が闘牛士になるという設定はどうも………」
「うん、それはわかる。 どの国にも独自に発展してきた文化があるから、その国に生まれ育った者には当然でも、まったく違う国に育った人間には容易に受け入れがたいものだ。
といって、何百年もの歴史ある文化を一概に動物虐待だと非難することはできないな。
」
「うむ、キツネ狩り、捕鯨、闘鶏など、他国から見れば非難の的になるものも、それぞれに成立してきた歴史があるのだ。」
「で、それはそれとして、」
「え?」
「闘牛士の衣装! あれはいいぜ! 金糸で豪華な刺繍が施され、実に俺たちにふさわしい!
広い肩幅、きゅっと締まった腰、厚い胸板、しなやかな身のこなしを強調する最高の衣装といえる!」
「いささか派手だが儀式用と思えば当然かも知れぬ。」
「なんといっても金刺繍だからな、俺たちにはふさわしい! ちょっと空想の翼を広げて、俺があんな衣装を身につけているところを想像してくれないか?」
「え?………………ん………実にいい…」 ← 脳内に画像展開!
「だろ♪」
ああ、ほんとに、ミロの豪奢な金髪と黒地に金の総刺繍の衣装はどれほど似合うことだろう………
そんな姿で街を歩かれたら大勢の女性の視線が集中し、きっと私は嫉妬してしまうに違いない!
………いけないっ、この私が嫉妬など………もっと自分を高く律しなければ!
こんな卑小なことを考えていると知ったら、ミロは私に愛想を尽かしてしまうのではないだろうか………
「ん? どうした? 真面目な顔して、なに考えてるんだ?」
「えっ、………ええと…あ、あのぅ………と、闘牛はスペインだからシュラで…」
「………は? そういえばそうだな。」
「それでアルデバランは牡牛座だから………」
「うん?」
「よって、闘牛はシュラ×アルデバランだ。 うむ、間違いない♪」
「………お前………自分がなに言ってるか、わかってるのか?」
「……え?」
「どこの誰が、シュラ×アルデバランなんて想像できるんだっ! お、お、俺は想像しないからなっ、忘れるっ、忘れることにする!
お前も二度とは言うな! 気の効いた比喩だと思ってるんだろうが、とんでもない!!」
「あの………ミロ…」
「お前はそんなことは考えなくていいから、俺に抱かれてればいいんだよ♪ ………ほら、こうやって……」
「あ……」
「闘牛士みたいに攻めて焦らして可愛がってやるからさ♪」
「あ……あの……私が闘牛士になる設定は?」
「ん〜、そんなのは考えなくていいから♪ やっぱりこの世はミロ×カミュだぜ♪」
「…え?」
「いいから、いいから♪」
014:バーテンダー
「バーテンダーってバーテンとも言うよな。」
「うむ、省略されることが多い語だ。」
「今まで深く考えたことなかったが、バーはわかるよ、Bar のことだろ。 じゃぁ、テンダーってなに?」
「え?」
「俺さ、英語が苦手だから。 いいか、笑うなよ! ついさっきまで Bar 店だ、っていう気分でいたんだが、どう考えてもそんな筈はない。 」
「………Bar 店だ??………それって……」
「だから笑うなって言ってるだろうが! テンダーが、やさしい、とかいう意味なのは知ってる。
でもこの場合はそうじゃないだろ? バーテンダーってそもそもどういう意味だ?」
「ああ、わかった。 笑ってすまなかった。 tender とは、やさしい・若い・感じやすいなどの意味を持つ形容詞だが、名詞として、世話をする人・看護人・番人・監督などの意味も持つ。
ということは tend という動詞があることになる。 ここまではわかるか?」
「ああ、なんとか。」
「そして tend は、病人・子供などの世話をする、看護する、育てる、栽培する、(店・バーなどの)仕事を(管理)する、という意味の動詞なのだ。」
「あ〜、それか! 仕事の管理! Bartender は、バーの管理をする人間ってわけね!」
「そういうことだ。」
「で、それはそれとして、」
「え?」
「俺とお前がバーテンダーになったら、客が引きも切らないぜ! 毎晩、女性客で大盛況だ。」
「そうか?」
「だって、そうだろ? 心をとろかすような俺の微笑と お前のクールな美貌とで、一度来店した客のハートを鷲づかみだ! リピーターで行列のできる店になること請け合いだね!」
「しかし、私はお前と違って人前に立つことは好まない。 悪いが、その役は降りさせてもらう。」
「え〜〜〜っ、お前以外に誰がやれるって言うんだ!」
「それなら適役がいる。 シャカだ。」
「シャカっっ!! なぜっ!!!」
「バーテンダーは、私の理解するところではカウンターの向こうでカクテルを作ることが多い。」
「ああ、そうだな。」
「だから………シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ」
「お前ね………俺がシャカと i f をやってもしかたないだろうが!」
「しかしシャカだから。」
「奴だってバーテンダーなんかやらんだろう!」
「いや、前例がある。」
「まさかっ!」
「では、これ を見てもらおう。」
「あ………ほんとだ…」
「ではそういうことで。 シャカにもすぐに固定客がつくことと思う。 お前の微笑とクールビューティーなシャカのコンビで夜の巷の話題独占だ。」
「いやだっ!」
015:魔女
「魔法か! 子供の頃に読んだ童話に憧れたのを覚えてる! いいね!」
「小宇宙と違い、魔法に論理的な根拠があるわけではないが、その存在は古来から語り伝えられている。 現実に存在するとは思わないが、夢があるものだ。 」
「空を飛ぶとか、ご馳走を並べるとか、人を小鳥に変えるとか、宝石をたくさん出すとか、悪いドラゴンをやっつっけるとか……♪
ハリー・ポッターとかガンダルフとかもいいな♪」
「……待て、ミロ!」
「え?」
「魔法使いのことだと解釈していたが、065:魔法使い、という項目がある!」
「え?………あ、ホントだ! すると魔女そのもので考えるのか。………ええと、俺たちが魔女になるってことで………ふうん…!
文献によるとだな、魔女とはホウキにまたがって空を飛ぶ。 悪魔の力を借りて作物や家畜に被害を与える。
水に沈められても悪魔の力を借りて浮かび上がる。 女が悪魔と交わって魔女となる。
魔女集会で悪魔と乱交する……え?」
「不愉快だっ! 私は帰るっ!!」
「あっ、カミュっ、カミュ〜〜〜っっ!!」
面白いけど、これではあんまりなので
016:狩人
「愛の狩人とか、HUNTER × HUNTER とか、いろいろ考えたんだが、」
「お前のことだ、どうせ森の中で道に迷った狩人が古い屋敷に辿り着き一夜の宿を請う。 そしてその屋敷に住む美貌の青年に心を奪われてついに契りを結ぶ、とか言うのだろう。」
「あれっ? ずいぶんなストーリーテラーじゃないか! ふうん、そいつも悪くない♪
しかし、お前が自分のことを美貌の青年と形容するとはね♪ 」
「っ……私は何も自分のことを言ったわけではなくて………! そ、それに、私が狩人という設定もありうるではないか!」
「それならそれでいいんだよ。 俺のことを美貌の青年って思ってくれてることがわかって、さらに嬉しいね♪」
「……っ」
「でも、俺が考えた狩人はそういうのじゃない。 ウィリアム・テルを知ってるか?」
「なるほど! 悪代官に、自分の息子の頭の上に置いたリンゴを射抜くように強要され、見事それを成し遂げたスイスの伝説的人物だ。確かに狩人に違いない。 弓矢の名人だ。」
「愛の狩人も確かにいいけどさ、こっちの方がはるかにかっこいいし、だいいちリンゴだぜ、リンゴ! リンゴといえば俺の代名詞でもあるからな、ウィリアム・テルは、はずせない。」
「黄金で弓矢の名人といえば、やはりアイオロスか?」
「う〜ん、たぶんそうなんだろうが、俺自身はアイオロスが弓を射たところを見たことがない。
それよりも、お前、テルとその息子のどっちのほうになりたい?」
「え?」
………ええと………弓を射たことがないので、うまくいくかどうかはわかりかねる
もしリンゴに命中しなかった場合、頭上を越えてゆけばともかく、万が一、ミロの顔面を射抜いたら………!
それに比べて、ミロは燕の昭王として、並ぶもののない弓の名手と謳われていたという実績がある
ここはやはりミロがウィリアム・テルになるのが安全確実な選択だろう
「検討した結果、お前がテルで私はその息子になるのがよいと思われる。」
「ふうん………お前に向けて俺が真っ直ぐに矢を射るんだぜ! 頭の上のリンゴといえば眼の上僅か20センチといったところだろう。 いくら黄金でも怖くない?」
「案ずることはない。 お前の腕に万全の信頼を置いている。」
「嬉しいね、なんだかゾクゾクするよ! 俺が弓を構えるとき、お前はどんな気分なわけ?」
「それは………ハラハラしてさぞかし心拍数があがると思われる。」
「でも俺の腕を信頼してるんだろう? 平常心じゃなかったのか?」
「いや、それは、よい意味での緊張だ。」
「するとワクワクする?」
「お前がリンゴを狙うときに限りなく高められた小宇宙が私に働きかけて、矢を射るまでの数秒をこの上なく楽しむことができるだろう。」
「お前って………Mなのな♪」
「……なに?」
「だからお前がMで俺がS。 そうとしか思えんだろうが! 恋しい俺に命を奪われかねないという瀬戸際の究極の緊張を楽しむなんて、誰にでもできることじゃない。
そいつは正真正銘のMだぜ♪ 慈悲深いスカーレットニードルのせいで俺がSだとは前から言われていたが、そうか、やっぱりお前はMなのか♪
ふむふむ♪」
「なっ、なにを一人で勝手に納得しているっっ!! SだのMだの、なにをわけのわからないことを言っている!」
「あれ? わかんないわりには妙に顔が赤いぜ? いったい、どうしたのかな♪」
「そ……そんなことは…」
「俺一人で納得することが嫌なら、二人で納得することに路線変更ね♪」
「あっ、ミロ! なにを……!」
「いいから、いいから♪♪」
017:秋葉系
「秋葉原って、なぜアキバハラじゃなくてアキハバラって言うんだ?」
「えっ? 」
「だって、アキバハラって読めるぜ! おまけに秋葉系はアキバケイって読むんだろう。
それならアキバハラって読んでも不思議はあるまい。」
「そのことならば私も考えたことがある、。 江戸の地名としては○○原という場合は○○ハラ、もしくは○○ッパラ、と読むのが通例であり、秋葉原もアキバハラと読んだと思われる。 この地には火除けで有名な秋葉神社があったのだが、現在のJR秋葉原駅ができる際に台東区松が谷に移転している。
本来は秋葉神社の原っぱという意味のアキバハラであったはずが、なぜか駅の名称がアキハバラとされたために、誤用が広まり正式な地名になっていったものらしい。」
「ふうん、そいつは迷惑な話だな。 しかし、お前の名前だって誤読されてないか?」
「え?」
「だって、誰もお前を 『 かみゅ 』 って言ってないぜ。 みんな 『 かみゆ 』 って読んでると思うんだが。」
「私はとくに気にしていない。 日本語の母音は、方言は別として、ア、イ、ウ、エ、オの五つだが、フランス語の母音は最大で16個ある。 その全てを正しく発音することを日本人に要求するつもりは毛頭ない。」
「そういえば、日本人はどんな外来語も カタカナ表記を読むつもりでしゃべっているからな。マクドナルドとかトマトとか。
お前が 『 かみゆ 』 でもよければいいんだよ。」
「ああ、かまわない。 ところで秋葉系とはなんだ?」
「俺の解するところでは、昨今の秋葉原で急速にその勢力を伸ばしつつあるアニメ・フィギュア・ゲーム等のジャンルをこよなく愛し、秋葉原のその手の店舗に足繁く通ういわゆるオタク系の人間を指す言葉だと思われる。
メイド喫茶も大流行してる。 いまや秋葉原は昔からの電気街というイメージから、オタク文化を世界へ発信する拠点へと様変わりしてるってわけだ。」
「え? あまりよくわからないが。」
「え〜と………噛み砕いて言うと、漫画とかゲーム大好き人間のことを秋葉系というんだよ。 秋葉原に専門店が多いからだ。………これで間違ってないよな??」
「では、私は秋葉系ではない。」
「お前が秋葉系だと思う奴なんて、この世に一人もいないよ。 でも、待てよ!
青色発光ダイオードを買ったとき、ロボットを見に行ったじゃないか! 」
「ああ、そうだった! では、私もロボットに関しては秋葉系だ。」
「俺は………ええと……」
「お前はプレイステーションが得意ではないか。 ドラゴンクエストとか、ファイナルファンタジーとか、ときめきメモリアルとか、アンジェリークとか。」
「ちょっと待てっ! 俺はときメモなんかやってないし、アンジェリークに至っては女性向の恋愛シミュレーションだ!
どうしてそんなのを知ってる? 省略しないで正式名称で呼ぶところは、いかにもお前らしいが。」
「ロールプレイングゲームやシミュレーションのジャンルから著名なものを選んだまでだ。
ゲーム好きなのだからお前も秋葉系といえるのではないか?」
「え〜と………そんなもんかな? でも、俺はオタクじゃないからな! それだけは言っておく!」
「オタク?」
「あ〜………お前はそんなことは知らなくていいんだよ。 そうだっ、それよりロボットのこんな面白い催しがあるぜ、いってみないか! これ が去年の様子だ。」
「ほぅ、これはよい! ぜひ行きたいものだ!」
「そう言うと思った♪」
「では楽しみにしている。 私たちも立派な秋葉系だな♪」
「まったく、まったく♪」
018:パイロット
「パイロットって飛行機の操縦士だろ。」
「うむ、戦闘機でも旅客機でも該当する。」
「とすると、今どきのボーイングとかトライスターなんかより、俺は紅の豚を推奨するね!」
「ポルコ ・ ロッソか! それは考えなかった!」
「黄金の俺たちが現代の航空会社のパイロットはないだろう? フライトアテンダントと休憩時間にしゃべっててどうするんだ? 男なら腕一本で賞金稼ぎだ! ポルコの生き方はかっこいいぜ、憧れるね♪」
「弱きを助け、強きをくじく。 現世には執着しないが、名誉や誇りを重んじる。」
「それで女にはもてるが、それに満足することを潔しとしない。 いいね、こういうのこそ真の男だよ。
考えても見ろ、それまでの映画じゃ、ヒーローは全て好男子、 性格は様々だが長身で美貌の青年とか少年だ。 ところがポルコは自分に魔法をかけて太った豚の姿になっている。 しかしこれが実にかっこいいんだな!
見ている誰もがそう思う。 あれは大人のための映画だよ。」
「不思議なことだがほんとうだ。 あんなふうに生きたいと誰しも思うものだ。」
「ポルコの声は日本では森山周一郎、フランス語版ではジャン ・ レノが当てている。 ぴったりだね!」
「あの渋さが、さらに個性を引き立てている。」
「だけどさ、」
「え?」
「俺が豚になったら、お前も困るだろ?」
「……ミロが豚に?」
「うん。 俺がもしも豚になったら、お前、愛してくれる?」
ミロが豚に………ポルコのような?
すると、黄金の豚か?………………いや、そういう問題ではないだろう
「ポルコは大事な友人達を失って、その経緯は語られていないものの、自らに魔法をかけて豚になったのだ。
そこには生き残った者の贖罪という彼の明確な意思があるように思われる。 お前が豚になるとすれば、それなりの理由があった筈だ。
私には止めようもなく、また、それができる状況にはなかっただろう。 でも………」
「……でも?」
「もし、私が生きていて、その上でお前が豚になるというのであれば、私も自分の意思で豚になることを選択する。
二人とも豚なら、なんら問題はない。 」
「ポルコみたいにかっこよく生きることが条件だぜ! それならお前と一蓮托生だ。」
「妙な結論だが、そういうことだ。」
「いいんじゃない? たまには♪ あの映画のヒロインはシャンソン歌手だ。 名曲 『 さくらんぼの実る頃 』 をお前の声で聴きたいね。」
「考えておこう。」
「よろしく!」
019:海賊
「海賊かぁ〜、ワクワクするね!」
「今どきならパイレーツ ・ オブ ・ カリビアン。 古いところではピーターパンのフック船長、リボンの騎士の海賊ブラッド、ひょっこりひょうたん島の海賊ガラクータ、その他有名な海賊は枚挙に暇がない。」
「う〜ん、迷うね! かっこよくて強くて統率力があり歴戦の勇士で…」
「しかし、海賊は罪もない民間船を襲って人を殺す。」
「…え?」
「私は無辜の人々の命を奪い金品を強奪する輩に与することは出来ぬ。」
「でも、それじゃ話にならないぜ!」
「いくら仮想現実でも海賊稼業は私には向かぬ。 お前はスカーレットニードルが持ち技ゆえ、血には免疫があるのではないか?
海賊はお前に任せる。」
「任せるって言われたってなぁ………お前がいなきゃつまらないし……。 つまり正義感あふれる海賊ならいいんだろう? 」
「それはそうだが。」
「で、悪党は成敗してもいいじゃないか! これも地上及び海上の平和を守るためだ、必ずやアテナもお許しになる。
小宇宙を使わないだけで聖闘士と同じだぜ、この世には滅ぼさねばならない邪悪があるのだ!そのために俺たちで力を合わせて誠心誠意努力しようじゃないか!
これなら文句はあるまい、どうだ?」
「うむ、それならよい。 で、具体的にどんな海賊に?」
「決まってる! ワンピースの麦わら海賊団だ!」
「……え?」
「えっ……て、知らないの? あのワンピースを?!ルフィやサンジやゾロやチョッパーや…」
「知らぬ。」
「あ…そう………ええとだな、ルフィたちの目的は宝探しだ、船を襲うことじゃない。
その旅の途中でいろいろな土地にゆき悪い海賊に襲われてる村を救ったりするんだよ。
明らかにいい海賊だ。 きっとお前も賛同するさ♪」
「ああ、それなら良い。 」
「面白いんだぜ♪ 中心人物のルフィはつい間違ってゴムゴムの実っていうのを食べてしまって、体がゴムのように自由自在に伸びるんだ。
で、トナカイのチョッパーはヒトヒトの実を食べて人間としての能力を身につけた。
ニコ ・ ロビンはハナハナの実で体の各部を花のように咲かすことが出来る。」
「……え? 意味がわからないが。」
「悪魔の実っていうのがいろいろあって、うっかり食べるととんでもない能力が身につくんだよ。 スベスベの実なんていいぜ! 身体とあらゆるものとの摩擦係数がゼロになる。 美容効果も絶大だそうだ! ふふふ、これをお前が食べたら、ただでさえ美しいのに、そのたぐい稀なる美質がさらに…!」
「摩擦係数ゼロということは、お前は私を抱くことができないということだ。」
「…え?」
「まず、手を握れない。 キスしても唇の感触がまったくわからない。 それ以前に唇をとらえることが出来ないと思われる。 抱かれたくても、服も脱げない。 摩擦がないから床もベッドもすべて上滑りして転倒するのが目に見えていて危険きわまりないのだ。
むろん入浴すら命がけだ、というより不可能だ。 一瞬で転倒した私を抱き起こすことさえお前にはできないだろう。 浴室の隅に全裸で転んでうずくまったまま放置されることになる。
私は自分をそのような立場におくことを好まないので、海賊になるのは御免蒙る。」
「えっ! そんな短絡的な…! なにもスベスベの実を食べなくたって海賊にはなれるんだが! おいっ、カミュ!
カミュ〜〜〜〜っっっ!!」
020:陰陽師
「陰陽師は好きだ。」
「安倍晴明だろう! 知ってるぜ♪」
「私が晴明になる。 お前は博雅でよいな?!」
「えっ? よいな、カミュ、って言うのは俺の台詞だが。」
「では決まりだ。 晴明カミュ、博雅ミロでやらせてもらう♪」
「やらせてもらうって………i f だから、俺が陰陽師になるっていうパターンは?」
「それはない。 では位置についてもらおう。」
「お前って案外強気なのな……………攻めタイプだったりして?」
「ばかものっ!」
「こんなところでどうだ?」
「ええと………なかなかいいんじゃないか、気に入ったよ♪」
「それはよかった。 では今日はこれで。」
「おっと、待ったぁ〜〜!」
「え?」
「陰陽師の続編を忘れちゃ困る! 俺は笛を吹くだけで終る気はないぜ♪」
「あっ、ミロ……」
「式神なんか呼ぶなよ………こんなところを蜜虫に見られたくはなかろう?」
「あ………あの…」
「いいから、いいから♪」