【コラム】 “って なあに?”
天草の“環境3事業”

■羊角湾埋立事業■
熊本県と河浦町が同町久留地区で進める埋立て事業。
1999年、河浦と県、九州農政局が策定したもので、干拓事業で着工後に事業廃止となったのは全国でも初めてとなった「国営羊角湾干拓事業」に代わる計画。
当初は旧干拓予定地の50ヘクタール内で既存護岸の沖合約100メートルに新たな護岸を建設し、その内側約7ヘクタールを埋立てるというもので、総事業費47億8000万円をかけ、2000年に事業採択、2010年度までの完成を目論んだ。
しかし、2001年度に県の環境アセスメント条例の改正で、同事業がアセスメントの対象に入ったため着工を延期、さらに公共事業の見直しで埋立て規模を5ヘクタールに縮小、総事業費も17億5000万円に縮小され、完成予定も県は2025年ごろ埋立て終え、町は2028年ごろからサッカー場などの施設の建設に入るという計画。
我が国で初めて中止になった国営羊角湾干拓事業の“遺物”となった排水樋門は今も風雨に曝されている 大潮になるとその異様な姿を水面上に現わす捨石(中央の黒い線)は羊角湾の汚染に影響を与えており、地元住民は撤去を求めている =松本基督さん提供


樋島護岸整備事業
熊本県が上天草市龍ヶ岳町樋島に、農地保全などを目的に、外平海岸に530メートルの護岸や人工砂浜を整備するという計画。2007年度完成を目指し、これまで173メートルの護岸や砂止め突堤が完成している。
当初予定では、この11月中にも残りの357メートルの階段式護岸工事に着工する予定だったが、地元住民などが「自然の砂浜を残して欲しい」、「自然を復元するような海岸整備に改めて欲しい」などの要望が出され、12月17日、県−市−地元住民などで構成する意見交換会で、県側から“環境共生型の工法”で整備する方向が打ち出され、さらに「将来は撤去も含め検討する」との“画期的な回答”を受けて、地元住民らは「早期撤去が望ましい」としながらも一応評価している。
地元環境NGOの要望で樋島外平海岸を初めて訪れた宇井純さんは「こんなきれいな海を潰すのか!」と語り、同行したマスコミは翌日いっせいに報じたため、さりげなく同事業を進めようとしていた市当局は着工を休止。そして今日の“環境共生型工法”への方向転換のきっかけになった。 この日、外平海岸は息を飲むような美しさを保っていた。城島(左手前)、黒島(右奥)の島影も美観そのものだった。
=ともに2003年11月12日


中央のV字谷(色を薄くしてある逆三角形の部分)が姫戸ダム建設予定地 =植村振作さん提供
■姫戸ダム建設計画■
上天草市姫戸町の岩下川上流に建設が予定されている利水などの多目的ダム計画。
旧姫戸町の上水道水の確保と治水を目的に計画され、1951年に事業採択された。当初の予定総工費は約31億円だったが、その後49億円に膨らみ、県が約90%、市が約10%負担することになっていた。
これに対し、旧姫戸町は今年2月から県営八代工業用水から1日当り1000トンの導水を開始しており、これまで1日1000トンの水需要はなかったとして、「水は十分にあり、地元住民はこの計画はなくなったと認識していた」として、地元から不要論が出されたばかりでなく、当の上天草市も県への回答を保留するなど、計画推進は宙に浮く状況になったが、12月20日、市議会は「建設推進」を絶対多数で決議したため、財政難からやりたくない市当局と年明けからせめぎあいが行われる事は必至の状況になった。


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