【ミニ・ルポ】
養殖真珠工場を訪ねる
真珠養殖に壊滅的打撃を与えた羊角湾の汚染

小規模ながら再生・回復を願う工場の人々

かつては自身が経営陣の一員だった環境NGOの松本基督さんの案内で、渦中の河浦町にある九州真珠有限会社広浦工場を見学させてもらった。
栄華を極めた羊角湾の真珠養殖も海水の汚染により大幅な縮小を余儀なくされた。羊角湾の自然の再生と景況の回復を待つ現場の人たちの表情は真剣そのものだった。




一連の写真は真珠つくりの中核となる核入れ作業の一連の工程。真珠の基となる核−「ドブガイ」という淡水産の貝を丸く研磨したものをアコヤガイに挿入する作業で、髪の毛の先の狂いもさえ入れる場所がずれると高品質なものはできないという、極めてデリケートな作業だ。

姉妹工場だった亀浦工場と広浦工場はほとんど同じ作りだった。ピーク時には亀浦と広浦の両工場で核入れと細胞切りで2工場あわせて100〜120人が従事していたという。 =『覚田真珠の50年』から
貝を上げるベルトコンベア(右側)がついている核入れ作業場への桟橋
核入れ作業の様子。少しでも明るくして貝の中がよく見えるように、作業員1人ずつ蛍光灯をつける。1日1人800〜1000個という数量もこなし、正確さも要求される、集中力が必要なデリケートな作業だ。
栓差し作業:開口器と呼ばれる器具でアコヤガイの口を開けて、プラスチック製のくさびを差し込むことによって、貝柱の筋肉が緩む。後で行う核入れ作業をやりやすくするための作業だ。
栓差し作業が終わり、棚に並べられて核入れを待つアコヤガイたち。
核入れ作業:右が核入れ済みの貝。中央が核入れ前の貝。左が衰弱などしていて、核入れに適さずはねられた貝。ばねのついた金具で貝をはさんで、作業がしやすい角度に調節して行う。左奥の小さく区切ってある箱の中の白い玉が核。
「細胞切り」作業:核入れ作業と並行して行われる。核を入れる貝とは別の貝の外套膜を切り取り、マッチの軸くらいの大きさに切り分け(細胞と呼ぶ)、挿入された核に貼り付ける。こうすることで細胞が分裂し、核を包み込みそこに真珠成分がはじめて分泌される。外套膜はすしなどでいう「ひも」とか「ヘビ」に相当する部分。
核入れ作業を後ろから見た様子。開口器で開いたアコヤガイに核と細胞を入れる。寸分の狂いも許されない精密な作業が要求される。
開口器で開けたアコヤガイ内部を小さなメスで所定の位置まで切っているところ。生殖腺の中に核を入れる。少しでも狂うと肝臓を圧迫したり、神経を傷つけて貝が死んでしまう。
【工程解説:松本基督さん】
=2004年7月3日、羊角湾で

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