製作にあたってT

 家庭での製作を前提に、製作上生じる問題点や工夫について、工程に添って説明してゆきます。

@原料乳

 はっきり言って原料乳の品質が悪いと手の施しようがありません。それだけチーズは原料乳の品質に大きく影響されると言えるのです。そのため、新鮮で高品質の牛乳を手に入れなくてはなりません。

1)小売店から入手する

 現在の市場に流通しているノンホモ(非均質化)低温殺菌乳(LTLT・HTST・パスなど様々な表記があります)であれば、まず問題はないでしょう。ですが、同じようにスーパーに並んでいても超高温殺菌乳では半硬質・硬質チーズの製作は不可能ですのでパッケージに書かれている殺菌温度を良く見て購入して下さい。(殺菌温度が75℃を越えるものはいけません。)殺菌の工程を必要としませんが、割高になるのが難点です。

 ここで例外が一つあります。クリームチーズだけは75℃を越える殺菌温度であっても、製作は可能です。(工業的には牛乳とバターから脂肪率を調整した再生乳を作り、充分に生産できます。)

2)酪農家から入手する

 ご近所の酪農家に交渉して入手します。酪農家では通常朝夕の2回搾乳をしています。事前に牛舎を見せてもらって、格別にひどいと思われるような飼育環境のところでなければ、さほど問題になる乳質ではないでしょう。それでももし不安なようでしたら、ヨーグルトでも作って特におかしな味や風味が出なければ、まず問題はないはずです。

 洗浄しやすい容器を事前に用意して、分けてもらいましょう。すぐに製作に取り掛からない場合は必ず冷却しておく必要があります。

A殺菌

 保存している原料乳が二層に分離(ノンホモタイプの牛乳であれば冷蔵しておくと、まず間違いなく分離します。)しているときには、容器ごと30℃程度の水につけ攪拌して分離を解消します。(上層はクリームと呼ばれる脂肪分の高いところです。容器にこびり付くと勿体ないのです。)

 用意した原料乳が入る大きさのステンレス(ホウロウでも)の平鍋かボウルを用意します。(アルミは腐食するので不適当です。)容器から原料乳を加熱用容器に移します。

 加熱には2種類の方法があります。直接火にかける方法と一回り大きい鍋を用意して湯煎にかける方法です。温度を調整しやすいのは湯煎のほうかもしれません。どちらの方法も余熱があるので温度の上がり過ぎに注意が必要です。絶えず攪拌しながら、加熱します。

 殺菌の方法はLTLTがお勧めですが、30分間維持するのが面倒だと思う方はHTSTで殺菌を行なって下さい。ただし、HTSTで殺菌を行なった場合は後で塩化カルシウムを添加する必要があります。(添加しなければ、レンネット凝固がしにくくなります。)

 殺菌済みの原料乳を用いる場合は、この工程は必要ではありません。

B冷却

 鍋ごと流水の中に入れ、攪拌しながら所定の温度まで冷却します。原料乳の中に冷却水が入らないように注意しましょう。(冷却に氷を利用しても構いません。)温度に到達したら、水から鍋を取り出し、大型の発泡スチロール容器などの保温材に鍋を入れて、保温できるようにします。(原料乳の量が多く、気温が20℃前後であれば保温は特に必要としないかもしれません。)

Cスターター添加

 中温・高温菌スターター共に液状タイプと凍結乾燥粉末タイプがあります。保存性と使い勝手の良さからは凍結乾燥粉末タイプがお勧めなのですが、家庭向けに少量を分割して販売する法人がまだ国内には無いようです。近くに小規模の製造所でもあれば交渉してみる価値は充分にありますが難しいように思われます。

 無難な入手方法は蔵王酪農センターです。液状スターターを販売しているようです問い合わせてみて下さい。

 もっと簡単に済ませる方法は市販のヨーグルトを利用してみることです。

 いずれのスターターを利用するにしても、活性を保つために入手後はできる限り早いうちに使用するのが望ましいのは間違いありません。たとえ冷蔵・凍結していても保存期間が長くなるとそれだけスターターの活力は低下するからです。

D静置

 いったんスターターを添加したら、出来る限り振動を与えないようにして、光をさえぎり温度を保つことが必要です。保温には大型の発泡スチロール容器などの保温材を利用するのが良いでしょう。

E塩化カルシウム添加

 通常、原料乳に対して0.005〜0.01%の比率で10倍量の温水に溶解して添加されます。塩化カルシウムはそれそのものが苦味をもっているので、添加量は最小限に控えるほうがチーズに苦味を与えません。

 塩化カルシウムは決して高価なものではありません。薬局などで常時在庫があるところは少ないと思いますが、食品添加用のものを注文して入手してください。

Eレンネット添加

 市販されているものは液状タイプと粉末タイプのレンネットがあります。家庭用として利用しやすいのは、液状タイプのものでしょう。添加量はそちらの説明書を参照して下さい。レンネットのNet販売はこちら。

 添加時は蒸留水や脱イオン水などで10〜20倍程度に希釈すると分散しやすいようです。原料乳への分散は充分にさせてください。分散が充分でない場合は凝固ムラが生じチーズの出来に致命的な悪影響を及ぼすことになります。

 チーズによってレンネットの添加量や原料乳の凝固時間は異なります。単純には添加量が増えると凝固は速くなり、添加量を減らすと凝固は遅くなります。しかし、多量なレンネットの添加はチーズに苦味を与えることになるので、必要最小限の量を用いるようにすることが望ましいとされています。

 購入したレンネットは乾燥した冷涼な場所(家庭では冷蔵庫内)で保存し、光や高温多湿な環境を避けることが大切です。

F静置

 添加後は原料乳の容器にフタなどをして、震動を与えないように配慮しましょう。レンネットは光や震動を嫌います。

 なお、凝固は速すぎても遅すぎても次の工程へのタイミングの判断が難しくなります。30〜1時間での凝固を目標に、添加するレンネットの量を調整するとよいでしょう。

 


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