工程について

 製造工程の要点は極端な言い方をすると、牛乳(原料乳)中の水分を抜き、牛乳の固形分をいかに濃縮し、好ましく醗酵を継続させるかということです。以下に代表的な工程について順に説明してゆきます。

@殺菌

 原料乳の中の有害な細菌を殺します。通常 利用される方法は二つです。

 (1)低温殺菌(LTLT)

   原料乳を63〜65℃で30分間保ちます。

 (2)高温殺菌(HTST)

     原料乳を72〜75℃で15秒間保ちます。

 この工程で大切なのは原料乳を攪拌(かき混ぜ)しながら、できる限り迅速に目標温度まで到達させ、必要な時間、温度を維持することです。必要以上温度を上げないように注意しましょう。

A冷却

 次の工程のために乳酸菌が醗酵できる温度まで、攪拌しながら間接的に出来るだけ迅速に原料乳の温度を下げます。通常30〜32℃まで。

Bスターター(乳酸菌)添加

 チーズに風味を与え、乳酸菌が乳酸を作り出すことによって工程を進行させる目的で原料乳に添加されます。チーズによって添加量は異なりますが、一般的には液状スターターであれば原料乳に対して0.2〜0.5%の範囲で添加されます。新鮮で活力のある乳酸菌が望ましいとされています。

 添加されるスターターには大まかに二つのタイプがあります。

1.中温菌スターター

 通常、適度に2〜4種類の乳酸菌が混合されているものです。主に半硬質・硬質チーズに利用されます。添加時の原料乳温度は30〜32℃で使用されます。

2.高温菌スターター

 エメンタールなどのように高い温度まで加温されるチーズに利用されます。添加時の原料乳温度は中温菌スターターと同様です。

 いずれのスターターにしても、添加時には充分に攪拌してスターターを分散させることが重要です。

C静置

 添加したスターターを増殖させ、乳酸の生成を促がすために行なわれます。温度をスターター添加時のまま保つ必要があります。通常30分間〜1時間行なわれます。震動や光は避けましょう。

D塩化カルシウム添加

 HTSTのような比較的高温で殺菌した場合に、減少したカルシウムを補う目的で行なわれます。利用しなければ、次の工程がうまく進みません。(LTLTの場合は必要としない工程です。)

 原料乳に添加したら、充分に攪拌して分散させることが重要です。

Eレンネット添加

 原料乳を豆腐状に凝固し、水分を除去しやすい状態にする目的で添加されます。原料乳に添加したら、充分に攪拌してレンネットを分散することが大切です。攪拌後、原料乳の流れを停止させます。

F静置

 添加したレンネットを原料乳に作用させるために必要な工程です。ここでも原料乳の温度を保つ必要があります。通常、30分間〜1時間で次の工程へと進みます。

Gカッティング

 最も注意を必要とし、チーズの出来に大きく影響する工程です。凝固した原料乳をサイコロ状に切断します。目的は凝乳が切断されることにより、表面積が増し、凝乳中の水分をより排出されやすくすることです。カッティングのサイズはチーズによって異なります。凝乳が引き締まるに従って、ホエー(乳清)と呼ばれる黄緑色の液体が増えてくるはずです。

H静置

 カッティング直後の凝乳は非常にもろいため攪拌できる状態になるまで、カードを放置する工程です。2〜3分程度でもかなり凝乳が引き締まってくるのがわかるはずです。

I攪拌

 凝乳から更に水分を除くために、カード(凝乳)とホエー(乳清)を共にかき混ぜる工程です。

J加温

 攪拌だけでは充分な水分を除くことが出来ない場合に行なわれる工程です。カードとホエーを共に攪拌しながら、温度を上げてゆきます。 硬質・超硬質チーズでは、まず行なわれないことが無い工程と言ってもよいでしょう。通常は、30分〜1時間程度行なわれます。

Kホエー排除

 ホエー(水分)とカード(固形分)を分離するために行なわれる工程です。一般的には、カードの温度を下げないように迅速に行なわれます。カードの温度が高いほうが次の工程が順調に進行します。

L型詰

 凝乳をチーズの形に成形する工程です。金属やプラスチックでできた円盤形や球形の蓋つきの型に凝乳を詰め込みます。

M圧搾

 チーズの水分の調整と成形・組織形成のための工程です。前の工程の型ごと徐々に圧力をチーズに加えます。圧搾に要する時間や圧力はチーズによって異なります。

N成形

 型から取り出したチーズの形を、ナイフなどで整える工程です。表面の凹凸などがなくなるように出来るだけ滑らかにします。

O加塩

 チーズに塩味をつけ、熟成中に有害な菌が繁殖することを防ぐために行なわれる工程です。

 加塩には2種類の方法があります。一つは飽和食塩水(水に溶ける限界までの食塩を溶かして作った食塩水)に漬け込む方法です。塩分は漬け込む時間により調整します。もう一つは食塩を直接チーズに擦り込む方法です。

 どちらの方法にしても、加塩後のチーズ表面の水分を清潔な布でしっかりとふき取る必要があります。

P熟成

 チーズ本来の味を引き出すために重要な工程です。チーズの種類によって、熟成条件は異なりますがまず温度10〜13℃・湿度80〜90%ぐらいの環境が整えられれば熟成は可能です。

 毎日反転しながら、4〜6ヶ月熟成できればチーズ特有の味は出てくるでしょう。

 熟成中には特に他の細菌・カビによる汚染に充分配慮する必要があります。そのため、工場などでは熟成前にワックスをかけたり、真空包装をしたり、表面を乾燥により硬化させたりして汚染を防ぐ方法が工夫されています。

 

 以上が、一般的にどのチーズにもおおよそある工程です。もちろんチーズによってはかなり特徴的な工程もあります。文面を長くしないためと分かりやすさのために出来る限り専門的な部分は削ってあります。


チーズの分類


製作にあたってT


製作にあたってU


製作上の注意


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