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結婚式

 

[結婚式は苦手なものがいっぱい]
 CSの人にとって、冠婚葬祭は敷居の高いものだと思います。大勢の参列者、礼服(防虫剤やクリーニングのにおい)、ローソクや線香のにおい・・・できれば近づきたくない状況です。

 1993年、まだ自分の病気がCSだとはわかっていなかった頃、兄の結婚式に出席しました。この時は、あまりのぐあい悪さに、披露宴の途中で退席しました。今ふりかえってみると、会場の空気や参列者の服装のにおい、タバコの煙に耐えられなかったのだろうと思います。このように、結婚式は、CS患者にとっては、負担の大きな行事です。

 しかし、私はCSなのに、自分の結婚式を敢行してしまいました。今、思い返してみても、どうしてそこまでやったのか驚きです。

 結婚式はCS患者にとってはハードルだらけなので、会場の人とよく話し合って対策を決めていきました。重症度が2Bくらいまでの人なら、うまく対策すれば挙式できるのではないかと思います。強烈に「結婚式をしたい!」と思っている人は、諦めないで欲しいです。以下に私の体験を書きます。

[ひょんなことがきっかけで]
 私は1999年11月に入籍し、住むところが決まらないまま、2000年10月に挙式しました。そして、夫と同居できたのはそれから1年半後の2002年5月です。

 1999年にCSだとわかったときは、どだい結婚式など無理だろうと思っていました。私はもともと結婚式にあこがれたりする気持ちがなく、お金がかかるし、見せ物みたいだし、わざわざやるほどのものではないと思っていました。

 しかし、夫の両親の「挙式して欲しい」という気持ち(情熱)はとても強かったです。その気持ちに応えたいとは思いましたが、どうやったって無理です。例えば、ウェディングドレス。貸衣装はクリーニングのにおいでダメだろうし、新品はとても高価です。そんなわけで、はなから諦めていました。

 ところがふとしたことがきっかけで、結婚式に向けて大きく動き出すことになりました。2000年2月に夫とショッピングモールを歩いているときに、偶然レンタル・ウェディングドレスの処分市に行き当たりました。これまで貸衣装屋がレンタルしていたドレスを、もう使わないので売りに出していたのです。見てみたら、いい感じのデザインのものがあったので、冷やかし半分で試着してみました。けっこう似合っていました。(ウェディングドレス姿は、買い物客の目を引いたようです。人がたくさん集まってきて、ちょっと恥ずかしかったです。「おめでとう」と言ってくれる人もいました。) たった5000円だったので、はずみでそのドレスを買ってしまいました。

 このあたりから、結婚式はがぜん現実味を帯びてきました。衣装は、何ヶ月か干せば、においがかなり抜けそうです。またまた半分本気、半分冷やかしで式場探しをしました。条件は、「窓を開けられて外気を取り入れられる会場」でした。市内に2軒そのような会場があったので、下見に行きました。この時も、「CSだから無理だろう」と思いつつ、会場の人に事情を話して相談してみると、「できるだけ対応させていただきます。」との返事でした。それでもう、本当に結婚式をすることになってしまいました。

[CS対応の結婚式作り]
 結婚式に際して行ったCS対応は次のようなものです。

花嫁の衣装


ウェディングドレスは8ヶ月干し、クリーニング・防虫剤のにおいを抜きました。

ベールは布を買ってきて3ヶ月干し、自分で作りました。

メイクは無香料の粉おしろいと眉墨のみ。口紅は合うものが見つからなかったので、日本画の顔料を配合して色を作り、油で溶いて自作しました。この自作の口紅は、どんなに工夫して作っても、塗るとムラになって困りました。でも、プロの美容師さんはさすがです。ブラシでムラにならないように、きれいに塗ってくれました。

ヘアメイク、メイクアップは、当日の朝、美容師さんに自宅まで出張してもらいました。(会場の美容室に入れないので。)

お色直しは、階段の下のスペースに屏風を立てて、そこでしてもらいました。(美容室に入れないため。) お色直しは衣装替えはなしで、ヘアメイク、ブーケの交換のみでした。ベールを取って髪型を変え、色鮮やかな花を飾りました。ブーケも白が基調のものから色鮮やかなものに交換しました。これだけでも、がらっと印象が変わります。

新郎の衣装

手持ちの礼服を1ヶ月よく干して使用しました。お色直しの衣装は、手持ちのスーツの中で仕立てのよいものを1ヶ月干して着ました。(貸衣装はクリーニング臭が強くて無理でした。)

シャツ、タイはフォーマルなものを新たに購入しました。これだけで、ぐっとあらたまった雰囲気になりました。

会場


会場は窓を開けてもらい、十分外気を取り入れるようにしました。

会場の空気の流れを考えて、ひな壇の位置を決めました。会場(ホテルのレストラン)に換気扇がないと聞いてびっくり。窓際にひな壇を設け、式の間中、窓を開けることにしました。

ひな壇に飾る花は、通常の1/3に減らしました。(農薬の害を減らすため。) 残りの花は、参列者の各テーブルに飾りました。

会場の外の芝生は、通常では週2回除草剤を撒いているというので、挙式日から1週間前の撒布を中止してもらいました。

会場内は完全禁煙としました。会場の外に灰皿を設置し、そこで吸ってもらうことにしました。

式は人前式とし、披露宴の前に同じ会場で行いました。複数の会場を使う必要がないので、その分リスクが減ります。

参列者


参列者は、「平服」で参加してもらうことにしました。和服・礼服を着た人が多数参列すると、私はぐあい悪くなってしまうからです。

案内状を出すときに「お願い」の文書を同封しました。

文面(大意)
「新婦は化学物質過敏症で、防虫剤、クリーニング溶液が苦手なので、式に着てくる服は1週間前にタンスから出して室内干ししてください。」

どれだけの人数が実行してくれたのかはわかりませんが、何もやらないよりマシです。

上記の文章を、さらに挙式1週間前に参列者全員にはがきで送り、お願いしました。

 礼服はめったに使わないものなので防虫剤、タンスのにおいが強いですが、平服ならば、普段使いのスーツなどなので、かなり負担が減ります。女性はみな洋装で、ワンピースなどを着てきました。「和服より準備が楽でよい」とおおむね好評でした。日本の結婚式は、女性の親戚は黒留め袖、男性はみな黒の礼服。会場全体が真っ黒です。「平服」にすると、会場の色合いがソフトになり、色数も増えて、華やかな雰囲気になりました。

[挙式敢行!]
 以上の対策を行って挙式当日を迎えました。花嫁はとても緊張するものらしいですが、私はそれまでの準備で疲れ気味で、むしろ開き直った気分でした。前日まで口紅が用意できず、夜中まで試行錯誤して自作していたので、当日まで何とか間に合ってよかったと思いました。目標は、「素敵な思い出を作る」などというものではなく、「最後まで倒れずにやり通す」というものでしたから、一般の結婚式とは趣が異なっていました。

 式はやってみて本当によかったと思いました。たくさんの人が集まってお祝いしてくれました。うれしかったです。結婚式には、もともとそれほど大きな期待はなかったのですが、思ってもみない大きな満足がありました。「夫とこれから一緒にやっていくんだ」という決心ができて、みんなの前で誓うことができてよかったです。

 最後まで式・披露宴をやり遂げることができましたが、CS症状はけっこう出てしまいました。でも、最後まで気を張っていたので務まりました。当日のビデオを見てみると、最初の5分くらいが経過したところで、私はすでにめまいを起こしていることがわかります。(眼球がキョロキョロと泳いでいます。) また、後半は頭痛がひどくて、我慢するのが大変でした。人々を見送ってから、ほっと一息つきました。

 夫の両親はとても喜んでいました。(私の両親もです。)結婚式をして本当によかったと思いました。

 これから結婚予定のCS患者の皆さん、工夫すれば結婚式をできるかもしれません。参考にしてみてください!!

(2006.2.5)

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