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[薬が合わない体質]
 CS患者は、薬を飲むとぐあいが悪くなる人が多いのではないでしょうか。私も体に合わない薬が多くて、苦労してきました。同じ薬効の薬でも、メーカーが違うと、体に合わない場合があります。体に合わない薬を飲むと、息苦しさ・眠気・だるさ・ふらつき・胃の痛みのような副作用が出ます。副作用が出たときは、たいていぐあい悪くて起きていられず、寝込みます。そのため新しい薬を飲むときは、はじめは、ほんの少しずつ試していくようにしています。副作用が出ない薬でも、メーカーによって効く薬と効かない薬があります。不思議なものです。

 医師の処方箋が必要な薬の場合は、医師に自分の体質について説明し、説得しなければならないのですが、なかなかうまくいきません。薬を飲んでぐあい悪くなってしまったときや、効果の現れないときは、別メーカーの薬を飲むと副作用なく効くことがあります。医師にそのことを説明しても、わかってもらえないことは多いです。たいていの医師は「メーカーが違うだけで成分は一緒だから、別メーカーのものを出しても同じはず」というのです。私の場合、薬の主成分だけではなく、添加されている成分に反応している可能性が考えられます。

[理解を示してくれた医師]
 仙台にいたときは(〜2002年)、私の特殊な体質をよく理解してくれる医師がいたので、とても助かりました。この医師は、「同じ薬効の薬でも、メーカーによって違いが出るのは当然」という考えを持っていました。ご自身も同じような体質をお持ちだったようです。この医師は何種類もの薬を試させてくれました。抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤は10種類くらい試したと思います。私が飲めたのはそのうちの1種類だけでした*1。1種類しか処方しない方針の医師であれば、私は自分に合う抗ヒスタミン剤を見つけることはできなかったでしょう。また、この医師は隣接の調剤薬局に置いていない薬でも、取り寄せて処方してくれました。本当に助かりました。

 「薬は対症療法だから根本治療にならない」とか、「薬は化学物質だから有害だ」という人がいます。そういう考えにも一理あるのかもしれませんが、私は「使えるものは使う」という考えでやっています。西洋医薬は苦しい症状を見事に取り去ってくれる、私にとっての強い味方です。根気よく探せば、副作用が出ずに効く薬は見つかります。

 札幌に引っ越してからは(2002年〜)、同じような医師には巡り会えていません。そのため有効な薬を手に入れられない生活が続いています。

[体質の違いはどこから来るのか]
 現在、薬学の分野では「人によって薬の副作用の出方が違うのはなぜか」という研究が進んできています。従来の副作用情報は、薬を集団に投与してみて、どのくらいの割合の人に副作用が現れるのかを調べたものです。同じ薬を飲んでも、副作用が起きる人と起きない人がいます。その仕組みは謎でした。個々の患者に副作用が起こるかどうかは、飲んでみなければわかりませんでした。

 最近の研究では、副作用の発現の有無は、遺伝的な体質の違いによるのではないかと考えられています。個体によって体内での代謝酵素の状態が違っており、ある種の薬をうまく代謝できない人がいます。その人が代謝できないような薬が体内に入ってくると、血中濃度が上がりすぎて全身に様々な副作用を起こさせます。普通に代謝できる人と、代謝が遅い人の間では、血中の薬物濃度が100倍もの違いになることがあります。薬物は代謝されて化学構造が変化しないと排泄されないので、排泄のスピードが遅くなり、血中濃度が上がってしまうのです。(→「代謝」の仕組みについては、第4章「 効果的な解毒方法とは」に詳しく書きました。ご参照ください。)

 ここ数年で遺伝子解析の技術が発達してきたので、いずれはこのような体質の違いを診断できるようになるかもしれない、ということです。*2

 私はある種の抗うつ剤で、かなり重い副作用が出たことがあります。この薬品を代謝する酵素がうまく働かないために、このように重い副作用が出たのかもしれません。この先、研究が進めば、いずれ遺伝子から各人の代謝の性質がわかるようになり、副作用をうまく避けながら薬を服用できるようになる日が来るかもしれません。

 CSのメカニズムを考えるときに、代謝酵素の個体差が原因となっているという仮説が考えられることがあります。ある種の代謝酵素が欠損していたり、働きが悪いために、CSが発症するという考えです。この研究は始まったばかりのようなので、この先何かがわかってくるかもしれないと期待しています。*3

 将来、遺伝子解析によって、CSになりやすい人となりにくい人が区別できるようになるかもしれません。

*1 抗ヒスタミン剤「ゼスラン」(旭化成)
*2 「薬物代謝学 第1版」加藤隆一/編 東京化学同人/刊
*3 「CS支援第18号」、「CS支援第20号」 CS支援センター/刊

(2005.7.11)

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