生理用品
女性であれば、何十年にもわたっておつきあいしなければならない生理(月経)。CS患者の場合、それを処理するための生理用品についても、材料の制約を受けます。綿や布、ビニールなどに反応する患者は、使える生理用品を見つけ出すのに苦労します。私はこれまで何度かメールで、過敏性の高いCS患者の方から深刻な相談を受けたことがあります。また、このサイトの掲示板でも、何度か話題になっています。なかなか表立っては語りにくいテーマですが、ここで生理用品について取り上げてみたいと思います。 私自身、2007年に入ってから、これまで使っていた生理用品が使えなくなり、新しいものを試してみなければなりませんでした。前半は、私が生理用品をいくつか試した体験を書きます。後半は、生理用品の歴史をひもとき、「CS患者にとって負担の少ない生理用品とは何か」について、考えてみたいと思います。
まず、私自身の体験を書きます。私は生理用品の素材について、特別CS的に過敏性が高いということはないようなのですが、他の人と比べて、CSとは別の意味で生理に対して過敏だといえます。皮膚や粘膜が大変かぶれやすいということと、生理に対する不快感が強いことです。2007年12月から、様々な文献や資料を調べましたが、私のように過敏な人は数少ないことがわかりました。だから、その点あらかじめ考慮に入れて、読み進めていっていただきたいと思います。また、私のように過敏な方は、私の体験がいくらか参考になるのではないかと思います。
[生理・私の経歴]
初経は1983年、12歳のときでした。使い捨てナプキンを使いましたが、当時は綿を不織布で包んだフワフワとした感触のナプキンでした。これは肌触りがよかったですが、活発に動き回ると、ナプキンがずれて血液がもれやすかったです。私は、もれないようにとても気を遣いました。 生理期間中は、とにかくお腹が痛く不快で、ナプキンを当てたところがしけっぽくジメジメするし、肌がかぶれるし、本当に嫌なものでした。血液が排泄される感覚も、特に不快でした。こうやってこの先何十年も、生活の4分の1の期間(4週間のうちの1週間)をこんな状態で過ごすのかと思うと、絶望的な気持ちになりました。今、資料を調べて、他の女性の体験をひもとくと、私の生理痛はそんなに強いものではないようです。量も、他の人に比べれば、むしろ少ない方。それにもかかわらず、不快感は大変強く、毎月生理が来ると憂鬱でした。
私の不快感は、触覚に関するものが主なものでした。液体が何日間にもわたって排泄される感覚、湿ったものが皮膚に当たっている感覚、皮膚の痛みやかぶれ、そういったものが、生活を根本からおびやかすくらい、つらく感じられました。アトピー性皮膚炎がある方は、感覚的にわかるのではないかと思いますが、皮膚に刺激があると、そこがかぶれやすくなります。そのため、日常生活で刺激を与えないように気を配ると、だんだん炎症が治まってきます。しかし、生理期間中は、1週間近くにわたって皮膚に刺激が与えられて、切れ目がないので、歯止めがきかず炎症が続きます。防ぎようがありませんでした。
生理期間中は、血液がもれるのを防ぐために、ナプキンと組み合わせてサニタリーショーツをはきます。これは、普段はいているショーツよりピチッとして締めつけられる感じがあり、不快でした。また、素材が化繊のため、肌へのあたりが強く、静電気や湿気がたまりやすく、それもとてもつらかったです。
生理の間は、ナプキンを替えるタイミングをはかることや、もれないように気を配ることで、相当のエネルギーを使いました。今ふり返ってみると、多分、中学校・高校には、トイレに「パラゾール」(パラジクロロベンゼン)が設置してあったはずです。そのため、トイレに行くごとに気分が悪くなってしまい、生理中は頻繁にトイレに行かなければならなかったので、その不快感を増したのではないかと思います。
[新しいタイプのナプキン]
高校生のとき、羽根つきのナプキンが発売されました。確か、1986年頃ではないかと思います。これで、「血液がもれるのではないか」という心配は軽くなりました。羽根なしのナプキンとは大きな違いです。活発に動き回っても、もれにくくなりました。私はとても喜びました。
この製品には他にも、これまでの製品にない特徴がありました。血液を吸収する部分の表面が、「ドライメッシュ」というサラサラとしたさわり心地のものになりました。これは、表面をよく見てみると、小孔があいていて、肌に密着しないのでべとつかないし、一度吸収した血液が表面に戻るのを防ぐので、むれない製品だということです。また、このとき業界で初めて、吸収体に綿や紙ではなく、化学的な合成物である「高分子吸収体」が使われるようになりました。その結果、ナプキンは、それまでよりずっと薄くなりました。この「ドライメッシュ」タイプが、私にはよくなかったのです。これは、従来のナプキンに比べて、とても皮膚・粘膜にしみました。そして、かぶれが強くなりました。もれにくいナプキンがほしいという気持ちで、羽根つきタイプを選んでいたのですが、この頃から生理の不快感が格段に強まったように感じます。
当時、読んだ少女漫画に、次のような話がありました。*1 とても生理痛の重い少女(高校生)がいて、生理が来るたびに寝込んでしまい、学校も休んでしまうことになります。この少女は決心して、婦人科の病院に行き、子宮を摘出してもらえないか相談しようとします。毎月のあまりにも強い生理痛のことを考えると、将来子供を産めなくなってもいいから、子宮を取ってしまいたいと考えたのです。私も同じ気持ちでした。本当に毎月毎月憂鬱で、生理のために人生の大半の喜びが損なわれているように感じたのです。さわやかに毎月の生理を乗り切っている女性も多い中で、私のこの悩みは、誰にも言えない、行き場のないものでした。
[タンポンとの出会い]
20歳の頃のことだったと思います。私の生活に大きな変化が訪れました。私は当時、本か何かで、タンポンに関する記事を読みました。「これだ!」と思いました。それまで私はタンポンを使うことなど、考えもしませんでした。小学5年生のときに、生理の処置について授業を受けたときも、紹介されたのは使い捨てナプキンだけだったし、母から教わったのもナプキンだけです。タンポンという生理用品があることを思いつきませんでした。
当時読んだ記事では、「タンポンは生理が来ていることを感じさせないくらい快適である」と書かれていました。もれる心配はないし、むれたりかぶれたりすることもない。動いても違和感がなく、入浴、水泳にも差し障りがないということです。その構造を調べてみると、タンポンは体内に入れて血液を吸収するので、血液が体外に排泄されず、私を悩ましていた触覚的な不快感を解消できそうでした。
私はさっそくタンポンを買ってきて、試してみました。それは私の人生のターニングポイントになりました。「これまでの悩みは何だったのか」というくらい、生理期間中を楽に過ごせました。本当に、タンポンの記事に書いてあった通りの使用感でした。このときから、私は毎月訪れる生理を不安な気持ちで待つことがなくなり、生理期間中の憂鬱もなくなっていきました。肌はほとんどかぶれなくなりました。
タンポンの場合は、サニタリーショーツをはかなくていいので、綿100%の普段使いのショーツをはき続けることができるようになり、不快感が減りました。私はふつうのショーツに、手製の小さな布ナプキン(ライナー)を併用しました。これは、タンポンを替えるタイミングが遅れたときに血液を受けとめるのに役立ちました。タンポンを使い始めた当時、1991年頃は、布ナプキンはほとんど知られていなかったと思います。私はまったく自分の思いつきから、布ナプキンを作って使うことにしたのです。自分で縫ったものを両面テープでショーツにつけて使いました。メインはタンポンなので、布ナプキンは小型の薄いものですみました。これを毎月、洗濯して使いました。
私はその後何年も淡々と、毎月訪れる生理期間を過ごしていきました。生理の間もそのことを意識せず、いつの間にか始まって、いつの間にか終わっているものになりました。私の生活をおびやかすものではなくなっていたのです。
[タンポンによるCS症状]
次に、CS的な観点から、タンポンの素材について考えていきます。私がタンポンを使い始めた当時、1991年頃には、私はすでにCSを発症していましたが、自分の病名がCSであることに気づいていませんでした。生活の中で、体に合わない化学物質が数多くあったはずなのですが、その害に気づいたのは、反応しているもののごく一部でした。それ以外のものについては気づかず、無防備に使ってしまっていました。
1999年(28歳)に、自分がCSだと気づいたとき、身のまわりの生活用品を1つ1つ点検して、体に合わないものは、別のものに変えていきました。そんな中で、タンポンは特別CS的な問題を感じなかったので、そのまま使い続けることができたのです。これは、とてもありがたいことでした。
私は当時、「タンパックス」のタンポンを使っていました。私が住んでいた地域(仙台市)で容易に入手できたのは、「タンパックス」と「ユニチャーム」のタンポンです。私は「ユニチャーム」のものより「タンパックス」の方が、化学臭が少なく、体に負担が少ないように感じていました。しかし、2001年、日本で「タンパックス」の輸入販売を行っていた商社が取り扱いをやめたため、日本全国の薬局から「タンパックス」製品は一斉に姿を消しました。
それで、やむを得ず「ユニチャーム」のタンポンを使いました。他のタンポンは手に入らなかったからです。これは、少し化学的な匂いがして、粘膜にしみる感じがありました。しかし、強い反応はなかったので、使い続けることができました。
タンポンにいかなる化学物質が使われているのか、その詳細はわからないのですが、10年以上使い続けていると、だんだん粘膜に影響が現れてきたように感じます。タンポンを入れるときに、ときどき痛みを感じるようになり、入れている間に少ししみるような感じがしてきました。私のCS症状が進んだせいもあるのかもしれませんが、2004年頃からスーパーサイズ(量が多いとき用で、レギュラーサイズより大きいもの)を使えなくなりました。痛みが強いためです。それで、レギュラーサイズをこまめに交換して使っていました。多分、タンポンそのものの素材も、時と共に変わっていったのではないかと思います。以前より刺激があって、粘膜に影響のある成分に変わっていったのかもしれません。
2007年になると、明らかにタンポンの成分が変わりました。嗅いでみると、刺激のある匂いがしました。これを使って大丈夫なのかと心配になりました。しかし、当時はそれまでの習慣で、そのまま使っていました。他のメーカーのものが手に入らない以上、「ユニチャーム」のものを使い続けるしかないと思ったのです。私はナプキンに戻す気はまったくなかったので、そのままタンポンを使い続けていました。
2007年の後半になると、タンポン使用中に、なんともいえず不快感があり、粘膜のしみる感じや下腹部の鈍い痛みが出るようになりました。それは、生理痛とは別の痛みでした。そして、頭に重い痛みがあって、全身がだるく、気持ち悪い感じになっていました。私の頭の中のイメージでは、タンポンを入れているところの粘膜から化学物質が吸収され、血液に乗って全身に広がっている感じでした。その結果、全身症状が出るように思えました。
私はタンポンの成分が本当に変わったのか、私の体質の問題なのかを調べるために、3年前のタンポンと現在のタンポンを比べてみることにしました。3年前にスーパーサイズのタンポンが使えなくなってしまったので、当時のものがまだ家にあります。包装を取って現在のものと嗅ぎ比べてみると、2007年のものは2003年のものに比べ、明らかに刺激が強かったです。それで、これをこのまま使うのは体に負担が大きすぎると考えて、新しい生理用品を模索することにしました。
[布ナプキンを試す]
インターネットで調べてみて、特に評判がよいのが、布ナプキンです。私が1991年に手作りしたときに比べて、この世界は格段に進歩していました。今では、数多くのデザイン、製品を見ることができます。また、手作りで布ナプキンを作る人も多くなっていて、これなら自分の大丈夫な布で作れるので、CSの私にもできそうだと思いました。
洗いざらしの布を使うのだから、化学物質の点ではまったく問題がないようです。しかし、十分な量を吸収できるのか、もれやすいのではないか、夜間の使用感はどうか、など気になる点がありました。
その悩みは、多くの人々の体験談を読んで払拭されました。とにかく使用感がよいというのです。ネット上には、布ナプキンに変えてどれだけ快適になったか、生理痛やかぶれが楽になったかということが、情熱的に語られていました。その言葉は、心の底から出たもので、私の心を動かしました。
2007年12月、手製の布ナプキンをいくつか作り、生理の日を迎えました。ナプキンのデザインは、ネットで見たものを真似て、自分なりに作ってみました。手作りの手軽さで、まずは試してみて、問題があるなら作りなおしていけばいいと思いました。
布ナプキンは、確かに市販の使い捨てナプキンよりは格段に快適でした。サラリとして、肌へのあたりがよいし、化学臭がないので、粘膜への負担も少ないと感じました。もし、現在市販の使い捨てナプキンを使っている方がいれば、ぜひ試していただきたいです。
この先は、私の特殊な体質によるものなのでしょうが、私にとっては、布ナプキンであっても心地悪さを感じました。使い捨てのナプキンよりはむれにくく、かぶれにくいとはいえ、体外に排泄された血液と皮膚がじかに接触することにより、私の肌はかぶれてきてしまいました。また、湿った感じ、液体がふれている感じは、とても不快でした。これは頻繁にナプキンを交換しても、解消できませんでした。
そして、タンポンのときより生理痛がずっと強いのです。生理痛というのは、子宮が収縮して、血液を体外に押し出すときに現れる痛みだということです。私は大学生のとき、医学に詳しい友人に教えてもらいました。だから、頭痛の痛みと違い、鎮痛剤が効きにくいのだそうです。布ナプキンを使っていたときの生理痛は、確かに子宮が収縮するような痛みでした。タンポンのときには感じなかった痛みです。タンポンは子宮口の近くに入れるので、強い力で押し出さなくても、血液がすぐに吸収されるのではないでしょうか。それは膣の自浄作用という点から見れば、体によくないことなのかもしれませんが、とにかくタンポン使用時の生理痛はとても軽いものでした。少し下腹部に鈍い痛みがあるだけで、ほとんど気になりません。しかし、ナプキンにすると、とても痛みが強くなりました。
私は12月の生理をナプキンだけで過ごしましたが、結果はさんざんなものでした。かつての不快感が一気によみがえりました。それは、長い間まったく忘れていたものです。私はこれまでずっと、私の生理生活を快適に守ってきてくれたタンポンに対して、感謝の気持ちでいっぱいになりました。もしずっとタンポンを使わずに来たら、これまでの人生がどれだけ暗いものになっていたでしょうか。布ナプキンはいったん終わりにして、またタンポンに戻すことにしました。
[ オーガニックタンポンを試す]
2008年1月には、オーガニックのタンポンを試すことにしました。オーガニックコットンが原料のものです。私はオーガニックコットンの布に反応を起こしてしまうので、タンポンを使えるかどうか自信がありませんでした。試したのは、「ナトラケア」のオーガニックタンポンです。これは、このサイトの掲示板で、その存在を知りました。書き込みしてくださった方、ありがとうございます。*2
通販で注文し、家に届けられた荷物を開けて、さっそくタンポンの匂いを嗅いでみました。これまで試してきたオーガニックコットンの布は、綿の植物性の匂いが強く、喉や鼻の粘膜がいがらっぽく、からみつくような感じがしました。すぐに息苦しくなってしまいます。それで、オーガニックタンポンにも同じ反応が出るのではないかと身構えました。しかし、タンポンの方は、そのような刺激がなく、また化学臭もないので、体に負担を感じませんでした。
生理が始まったので、さっそく使ってみると、これが実に快適なのです。それまで使っていた「ユニチャーム」のタンポンと違って、粘膜のしみる感じや刺激がありません。また、重苦しい頭痛や、全身のだるさ、気持ち悪さもまったくありません。生理痛もほとんどなく、生理であることを忘れてしまうような快適さです。本当にタンポンを使用していることもまるっきり意識しないような、自然な使い心地でした。
夫が言うには、毎月の生理期間中、私は精神的に余裕がなく、神経質になって、ピリピリとした緊張感を漂わせていたそうです。それに比べて、オーガニックタンポンの使用期間は、精神的にとても穏やかで、端から見てもその違いがよくわかるということです。私にも、それははっきりとわかりました。生理中のホルモンバランスの関係で、神経質になっていたのではなく、タンポンの化学成分によって症状が出ていたようです。
私はオーガニックタンポンの使い心地をすっかり気に入ったので、これからもこれを使い続けていくつもりです。唯一問題となるのが価格で、これは「ユニチャーム」のタンポンの3倍以上の値段です。オーガニックタンポンは、通販の送料も合わせると、1本あたり75円くらいの計算になります。これを高いと見るか、快適さへの正当な対価と見るかは、人によって変わってくるでしょう。私にとっては、十分見返りのある対価であるように思われました。
2008年1月から6月まで、オーガニックタンポンを使い続けてきましたが、半年間、問題なく過ごしています。
私の体験はこのようなものでしたが、CS患者の皆さんには、まず布ナプキンを試してみるようにお勧めしたいです。私のような特殊な過敏さを持っている人でなければ、布ナプキンで十分快適に過ごせるのではないかと思います。特にかぶれやすい方や、不快感の強い方は、ぜひタンポンを試してみるようにお勧めします! こんなによいものを知らずに過ごしている人がいるのだとしたら、もったいないことです。
しかし、タンポンは体内に入れて使うものなので、体への影響がいくつか心配されるのではないでしょうか。(このことについて詳しくは後述します。) 様々な情報を勘案して、自分に最も適した生理用品を見つけていってほしいと思います。
[ トキシックショック症候群(TSS)について]
タンポンを使用している中で、いちばん心配なのがトキシックショック症候群(TSS)です。これはタンポン使用者にまれに見られる疾患で、膣内で黄色ブドウ球菌が大量に増殖するために起こります。菌の毒素が粘膜を介して血液に入り、全身に廻ることで、重篤な症状を起こします。急な発熱、吐き気、日焼けのような発疹、失神または失神に近い症状、筋肉痛、めまい、意識の混濁、
下痢。重症になると死亡する場合があります。*3
この問題がクローズアップされたのは、1970年代に起きたP&G社の「リライ」タンポンのショック死事件でした。当時、このタンポンを使っていた人の中に、突然の発熱から死に至る人が続出したのです。遺族がメーカーを相手に裁判を起こし、何年にもわたり争った結果、メーカー側は敗訴しました。(この経緯は、「11番目の戒律」という本に詳しく載っています。裁判の経過は、遺族側にあまりに過酷で、涙なしには読めないです。)*4
このタンポンは、新しい素材の高分子吸収体を使用したもので、この素材が黄色ブドウ球菌の増殖を格段に早めるものだったのです。そのため、タンポンを使用していた人の膣内で大量の毒素が産出され、死に至ったものです。メーカー側はこの製品を回収し、以後、黄色ブドウ球菌が繁殖しにくい素材でタンポンを製造するようになりました。だから、当時のような大きな危険は現在のタンポンにはなくなっています。TSSを過剰に恐れる必要はないと思います。それでも、タンポンの使い方を誤れば、TSSを発症する可能性があるので、注意する必要があります。
TSSを防ぐためには、とにかくこまめにタンポンを取り替えることです。長時間使用すると、黄色ブドウ球菌の増殖を招きます。量が多い日は、頻繁に交換するのですが、少ない日や生理期間の終わりかけのときに、長時間入れっぱなしにしているのがよくないです。生理の終わりに取り忘れるのが、最も危険です。ふつうの頻度で交換している分には、危険は少ないのではないかと、私は考えています。私はなるべく頻繁に交換し、長時間タンポンを入れっぱなしにしないように気をつけています。
[生理用品の歴史−現代への応用 ]
ときどきCS患者の方から、生理用品の相談を受けます。あまりにも過敏性が高く、布も紙も使えないような人からです。トイレットペーパーやティッシュペーパーも使えないので、生理の処理に困っているという相談です。このような方は、他の面でも生活用品の使用に窮乏していることが多く、生活はギリギリのところで維持しているような人です。重症度でいうとE(生活必需品にも事欠く。ライフラインが確保できない)にあたる人です。私はそのような窮乏状態に対し、これまで適切なアドバイスをできずに来てしまいました。しかし、相談を受けるたびに少しずつ生理用品について調べるようになりました。これまで長い歴史の中で、人々はどのように月経処理をしてきたのだろうか。200年以上前には合成の化学物質はほとんどなかったのだから、天然の素材を使っていたはずです。その中に解決のヒントがあるのではないかと考えました。
生理用品の歴史は、表だって文書に記録されることはほとんどありませんでした。長い歴史の中で、女性はなるべく目立たない形で処理してきたのであり、公の文書に残ることはなかったのです。(そのような文書を作るのはたいていは男性でした。) そのため、明治になるまでは、ほとんど資料が残っていません。私が調べて参考になったのは、「アンネナプキンの社会史」(
小野清美/著、
JICC出版局/刊 1992年
)という本で、出版されている本の中で生理用品をメインテーマにしているのは、これだけのようです。インターネットでも調べてみましたが、たいていの情報がこの本をもとにしているらしく、どこでもほとんど同じことが書いてあります。(出典の明記があるところとないところがあります。) それで、この本の内容を参考にしながら、CS患者の生理用品について考えてみたいと思います。
生理用品は、これまで大きく分けて2通り、ナプキンタイプとタンポンタイプがありました。この本の著者は、下着の形態などから(これは記録が残っているので)、過去の生理用品の形態を推測しています。タンポンタイプはつめものをするので、吸収体があればOKですが、ナプキンタイプはそれを保持しておくための下着が必要です。自然の成り行きとして、「タンポンタイプがナプキンより早くから使用されていたのではないか」と著者は推測しています。ナプキンを当てるための下着も、いろいろと工夫されてきたようです。
タンポンタイプにせよ、ナプキンタイプにせよ、血液を吸い込む吸収体が必要です。この素材について、調べてみました。工業的に管理されていないものを体内に入れるのは、TSSの問題などもあり心配なので、ここではナプキンタイプにしぼって話を進めます。
これまで生理用品として使われてきた吸収体には、次のような素材のものがありました。
@ シート状のもの
布、(綿、麻、絹)、紙(和紙)、木の葉、植物など。
A スポンジ状のもの
綿(わた)、海綿など
B 粉状のもの
おがくず、米ぬか、灰、炭の粉など
@、Aのものは、そのまま当てて血液を吸収させることができます。木の葉というのは、第二次世界大戦中の日本で、物資が少なかった頃に使われたようです。吸収力がどのくらいあったのかはわかりません。布か紙があれば、たいていは処理できたようです。重症のCS患者の中には、それも使えない人がいるので、大変苦労なさっていることと思います。
@の分類で、現在手に入るものは、布や和紙、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどです。
Aのスポンジ状のものは、綿(わた)や海綿があります。現代の素材では、ウレタンやセルロースのスポンジがあります。脱脂綿や手芸用の綿(わた)などからも、よいものが見つかるかもしれません。
Bの粉状のものは、飛び散らないように入れておくための袋が必要です。歴史的には、和紙や布の袋を使ったようです。中に入れるものは天然の素材で粉状のものであればたいてい吸収します。本を読んでいて、私がとてもよいと思ったのは炭の粉で、これは消臭効果があるので、血液の匂いも少なく快適なようです。化学物質の匂いも吸収するので、CS患者にはいいかもしれません。中の粉は使い捨てにします。袋は、和紙であれば使い捨て、布なら何度も洗って利用できます。
現代の生理用品の概念にとらわれなければ、この他にも使える素材は見つかるかもしれません。本当に困っている人への明確な答えにはなっていないかもしれませんが、いくらかでも解決のヒントになれば、と思って書いてみました。
*1 「赤すいか 黄すいか」 大島弓子選集(8)、大島弓子/著、朝日ソノラマ/刊
*2 「化学物質過敏症 私の方法」 旧掲示板 No.[664]http://www14.plala.or.jp/margarita/kako_keijiban05.htm
*3
トキシックショック症候群(TSS)についてさらに詳しく知りたい方は、このサイトが参考になります。
社団法人 日本衛生材料工業連合会
http://www.jhpia.or.jp/standard/tss/tss1.html
*4 「 11番目の戒律〈上〉―汚されたアメリカンドリーム」 アレシア・スウェージー/著、 岸本 完司/訳 、アリアドネ企画/刊(1995)
(2008.7.7)