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トイレのリフォーム

 

[緊急事態発生!]
 2008年2月中旬のことでした。夫がトイレから出てくるなり、深刻な顔で言いました。
「大変なことが起こった。トイレのタンクが割れてる」
すぐに見に行ってみると、タンクの上から下まで、一直線に亀裂が入っていました。

 よく観察してみると、タンクの他の面にも亀裂が入って、タンク全体が今にも崩れ落ちそうです。タンクの蓋を開けて中をのぞいてみると、中は氷で満たされています。タンクにたまった水が凍って膨張し、タンクを破裂させたようです。



  そもそも、このような事態を防ぐための方策は取っていました。我が家は私のCSのため暖房が貧弱なので、冬は家中とても寒いです。(→スモール・データ・バンク「暖房」参照)トイレは、ストーブを焚いている部屋から離れているので、室温がとても下がります。ほとんど屋外に設置してあるのと同じ状況です。そのため冬になると、昼間でもトイレの水道が凍ってしまいます。凍ったときに一時的にとかして開通させたとしても、またすぐに凍ってしまうので、どうにもなりません。それで、冬の間は一日中、トイレの元栓を閉めておくことにしています。冬の初めに元栓を閉めてしまい、開けるのは春になってからです。(我が家では毎年「トイレ終了の儀式」と「トイレ開通の儀式」をやります。「トイレ終了の儀式」には悲壮感が漂い、「トイレ開通の儀式」には喜びが満ちあふれています。)

 冬の間は用を足すたびに、暖房をたいているLDKの水道からバケツに水を汲んでいって、流しています。2007年の冬までは、次回使う分をバケツに汲んで、トイレに置いておきました。しかし、2008年の冬は特別寒さが厳しく、汲んでおいた水が凍ってしまいます。汲み置きができないので、1回ごとに汲んでいっていました。

 このように、冬の間はタンクには水がたまらないはずなのに、どうしてタンクは割れてしまったのでしょうか。

[破裂の原因]
 今回タンクが破裂した経緯は次の通りです。12月に「トイレ終了の儀式」をしてから2月まで、元栓が開かれることはありませんでした。2002年にこの家に引っ越してきてからずっと気になっていたことですが、元栓のハンドルがとても固くて、なかなかしまりません。渾身の力で回しても、最後まで回しきれずに残ってしまうような感じがありました。1年ほど前からさらに固くなり、そのため元栓を閉めても、少しずつ水が漏れ出てくるようになっていたようです。

 2008年1月中旬から寒波がやってきて、トイレは室温が低い状態が続きました。この間、元栓から漏れ出てきた水は、水道管の中で凍ってたまっていたのではないかと思います。それが2月中旬に暖かい日が2〜3日続いたときに、とけて少しずつタンクにたまり、タンクをいっぱいに満たしたのでしょう。その後、また寒い日がやってきて急激に気温が下がったときに、水が膨張してタンクを破裂させたのです 。



 すぐに対処しなければなりませんでした。割れた直後は氷が固まり、かろうじてタンクをつなぎ止めていましたが、氷がとければタンクは崩れ落ちてしまいます。そうなれば、トイレ中が水浸しになってしまいます。少しの猶予も許されませんでした。

[水道業者に相談]
 すぐに水道屋さんを呼んで、相談しました。このようなとき、どんな業者を選べばいいのか、迷うものです。我が家では、2002年に札幌に引っ越してきてから、ずっと同じ水道業者にお願いしてきました。この業者と出会ったのは、偶然のようなものでした。2002年に水道の蛇口を交換するときに、どう選んでいいものかわからなかったので、電話帳を見て、何となく電話をかけてみたのでした。ところが、いざ工事をお願いして、CSの事情を相談してみると、この方は実にのみ込みがいいのです。CSに対する心理的抵抗もなく、こちらの要望も受け入れてくださったので、スムーズに工事が進みました。それ以来、ずっと同じ水道業者にお願いしています。

 水道屋さんに割れたタンクを見てもらうと、「タンクと便器を交換して、床も張り替える必要がある」とのことでした。我が家のタンクと便器はとても古いものなので、タンクだけ交換することはできないということです。古い便器に合うタンクがないからです。また、新しい便器をつけると、排水管の位置が変わるので、床材をはがして工事をする必要があるということでした。「タンクの交換だけですめばいいのに…」と思っていたのですが、予想していたより大規模な工事になりそうでした。これだけの大工事は、この家に引っ越してきて以来、初めてです。自分の体にどのような反応が出るのかわからず、心配でした。

 これまでインターネットや本を見て、CS対応の住宅リフォームについて、ある程度は知識があるつもりでした。一般的なリフォームのしかたでは化学物質による影響が大きいので、なるべく安全な建材を使う必要があります。また、一般的にCS患者に安全と考えられているものでも、私は反応してしまう可能性もあります。それを防ぐためには、サンプルを取り寄せて嗅いだり、ショールームに確認に行く必要がありました。しかし、今回の事態は緊急のもので、すぐに対処しないと大変なことになります。徹底的に検討するには、時間が足りなそうでした。

 また、我が家は賃貸住宅なので、好き勝手にリフォームするわけにはいかず、大家さんの許可を取る必要があります。予算も大家さんと相談して決めなければなりません。完全にCS対応のリフォームをすると、通常の2〜3倍の費用がかかるだろうから、その分をどうやって都合つけるのか…など、考えなければならないことがたくさんありました。

 水道屋さんが「この機会に、暖房便座やウォッシュレットにしてみたらどうですか?」と勧めてくれたので、もともとウォッシュレットに憧れていた私は心が動きました。これまでも何度かウォッシュレットをつけようかと検討したのですが、便器の型が古いので、つけられずにいました。今回、便器が新しくなるのだから、ウォッシュレットをつけるチャンスだと思いました。

 この日の水道屋さんとの話し合いでは、次のことを確認しました。
◆便器は抗菌していないものを使う。
◆床材のクッションフロアを貼るとき、接着剤を使わず両面テープで貼る。
◆配水管をつなぐとき、シーリング剤ではなく、シーリングテープを使う。
(配管用のシーリング剤は、缶に入った白い液体で、溶剤のような強いにおいがします。)
◆元栓の金具を交換し、水漏れをなおす。


 これ以外のことについては、この段階ではまるで想定できず、この先、工事のしかたや建材についてCS対策を調べたり考えたりしなければなりませんでした。

[タンクの撤去]
 とりあえず、トイレ中が水浸しになる危険を回避するために、水道屋さんがトイレのタンクをはずしてくれました。中にはぎっしり氷が入っているので、大変な重量です。水道屋さんはフーフー言いながらタンクを外に運んでいました。そのあと便器もはずして、外に運ぼうとしました。

「ちょっと…ちょっと待ってください。工事日も決まっていないのに…私たちはこれからどうやって用を足せばいいのですか?」
私が焦って質問すると、水道屋さんは
「何とかしてください。」
「それは困ります。どうせもともとバケツで流していたんだから、タンクがなくても便器さえあれば用が足せます。便器は置いていってください!!」
私の必死の懇願で、便器は戻されることになりました。

 そもそも、水道屋さんは、今回の事態をよくのみ込めないようでした。「ふだんから元栓を開けずにバケツで流しているということはどういうことなのか」「なぜ人が住んでいるのに、トイレのタンクが凍るほど室温が下がるのか」「なぜ昼間も元栓を開けられないのか」このような根本的な疑問を解消できないようでした。札幌市でも、私の家のように室内が寒い家は、他にそうそうないようです。タンクがなければ、当然便器も使えないだろうということで、一緒に運びだそうとしたのです。

 便器はトイレに戻されましたが、一旦はずしたものを固定するのは難しいし手間がかかるということで、便器は床に置いただけ、排水管も軽くつないだだけです。
「バランスを取りながら、気をつけて用を足してください。」
その日はそう言い残して、水道屋さんは帰っていきました。予算の話し合いや工事方法の準備をしてから、工事をしてもらうことになりました。

[崩壊寸前のトイレ]
 トイレの中は、まるで災害現場のようでした。そこいら中に陶器の破片が散っているし、水も飛び散っています。また、便器はどんな成り行きで割れたのかわかりませんが、後ろの方にヒビが入っていて、今にも崩れ落ちそうでした。用を足すときは、よくバランスを取って座らないと、便器ごと横倒しになりそうです。体重を預けることができず、腰を浮かせて用を足しました。

 タンクをはずした翌日には、元栓からの漏水がはっきりと確認できました。元栓のバルブを閉めていたにもかかわらず、配水管の先からつららが下がっています。少しずつ漏れ出た水が、寒さで凍結したようです。タンクが割れた原因がはっきりしました。元栓の修理も必要です。



 私の胸中は複雑でした。工事が入れば、体にどんな影響が出るかわからない。トイレのみならず、家中の空気が汚染されてしまえば、家で暮らすことができなくなり、避難する必要もあるかもしれない。できれば工事などせずにすませられればいいのに…。「先延ばしにしたい」という気持ちでいっぱいでした。何度も使用しているうちになれてきて、ぐらぐらした便器でもうまくバランスを取って用を足せるようになってきました。この先ずっとバケツで流して、この便器で暮らしていってもいい…とすら思いました。そんなことは不可能なことなのですが……それはわかっていたのですが…。

 夫はこの便器に完全にキレていました。
「こんなもので用が足せるか!」
夫は、私よりずっと体が大きく体重もあるので、この便器に座るのが怖くてしかたなかったようです。つまり、事態は一刻の猶予も許さないのであり、すぐにでも工事をしてもらう必要がありました。

[トイレ工事について調べる]
 情報収集には、インターネットが最適だと思いました。しかし、私は1月から電磁波過敏症(ES)が悪化したために、パソコンを使うのがつらくなっていました。自分で一から調べるのは手間がかかるし、時間もかかります。「掲示板で相談してみよう!」と思いました。建材やリフォームについては、私より詳しい人がいっぱいいます。頼もしい仲間たちです!

 私が気になっていたのは
◆便器・タンクの抗菌
◆便器・タンクの表面加工(汚れがつきにくくするためのもの)
◆床材(クッションフロアか代替品か)


 掲示板にはたくさんの人がレスをつけてくれて、1つ1つがいちいち参考になり助かりました。わざわざサイトを検索してくれたり、カタログを調べてくれた人もいて感激しました。

「化学物質過敏症 私の方法」掲示板 スレッド番号[543]
http://www3.bigcosmic.com/board/s/board.cgi?id=dnalccet

 わかったことは…

◆ 現在流通しているたいていの便座は抗菌で、便器・タンクは汚れのつきにくい表面加工がしてある。抗菌の種類は、プラスチックに銀を練り込んだものが多い。汚れのつきにくい表面加工は、釉薬を表面に焼き付けてあり、化学成分の揮発は少なそうである。

◆ 排水口の位置を変えずに交換できる便器がある。TOTOのリモデル便器。これを使えれば、床の工事がいらず、床材を貼りかえる必要がない。
TOTOのサイト http://www.toto.co.jp/products/toilet/t00019/05.htm
リモデル便器の構造説明 
http://www.sunrefre.jp/wc/remodel/


◆ クッションフロアはとてもにおうので、使わない方がよい。代わりの床材には、天然木の無垢材、タイル、リノリウム、石などがある。

◆ もしクッションフロアを使うにしても、すぐに敷かずに干してからの方がいい。

◆ ウォッシュレットや暖房便座は、プラスチックが加熱されて匂いがあがるのでよくない。電磁波の問題もある。
 私はタンクが割れてからというもの、考えなければならないことがたくさんあって、何が何やらわからなくなっていました。割れたことによる精神的な衝撃で、呆然としていたのも大きかったです。掲示板のレスをじっくり読んでいるうちに、だんだん考え方の道筋が見えてきました。

[工事内容の検討]
 ウォッシュレットと暖房便座については、まったく掲示板の皆さんのいうとおりで、これはつけるべきではないと思いました。ウォッシュレットはプラスチックが加熱される問題の他に、洗浄水が水道水で塩素が含まれているという問題もありました。ふだん直接体に触れる水はすべて浄水で何とかやっているのに、ここだけ水道水で私の体が耐えられるとは思えません。第一、ウォッシュレットにするにしても、何もこんな大変な事態のときにやる必要はなく、平穏なときに考えればいいことです。ウォッシュレットに対し、変に憧れを抱いていたのですが、すっかり目が覚めました。特別な機能のないシンプルな便器にすることにしました。

 表面加工・抗菌については、どんな便器を選んでもまぬがれないのかもしれないと思いました。私は普段から銀の抗菌剤が苦手なので、これは心配でした。ショールームに行って、いろいろな便器を実際に嗅いで確かめたかったのですが、工事を急ぐ必要があり、それだけの時間が取れそうにありませんでした。

 いちばんの問題は床材で、クッションフロアを使うのか、他のものにするのか、他のものを使うにしても、それを試したり検討したりする時間があるのかどうか。サンプルを取り寄せたり、ショールームを見にいっている時間はなさそうでした。

 リモデル便器が使えれば、床材を貼りかえずにすみます。掲示板で紹介していただいたサイトをよく見て、検討してみました。我が家のトイレは、もともとの便器が古い型のもので、排水口が壁に迫っています(図2)。リモデル便器では、従来の排水口が壁から305〜405mmにあれば、便器自体で調整可能なようでした(図3)。しかし、我が家の従来の排水口は壁から180mmところにあり、リモデル便器では対応できないことがわかりました。穴を開け直すのは避けられないようです。床材も貼りかえる必要があります。



 このような経緯で私は使えませんでしたが、リモデル便器は、もし使えるのなら、CS患者にとても有効なものです。この先、トイレ工事の予定がある方は、ぜひ検討してみることをお勧めします。

[建材を試す]
 私はホームセンターに行って、便座とクッションフロアを嗅いでみることにしました。ホームセンターは、店内に入っただけで化学物質の匂いがするので要注意です。便座は何種類か嗅いでみて、思ったより刺激・匂いがないことを確認しました。「これなら大丈夫かもしれない」と思いましたが、何しろホームセンターの他の商品の匂いが混じってしまっているので、定かではありません。

 次にクッションフロアです。私は2001〜2002年頃は、クッションフロアに強い反応を起こしていました。勇気を出して嗅いでみると…思ったより匂いませんでした。塩ビの匂いがします。これも店内の匂いと混じっていて嗅ぎにくいので、10cmばかり切り売りしてもらって、家に帰ってから嗅いでみました。

 私はつねづね匂いの強そうなものを嗅いで試すときは、お風呂に入る直前にやります。そうすれば、反応したとしてもすぐに入浴して、体についた匂いを洗い流すことができます。入浴直前、服を脱いで嗅ぐと(←寒い!)、服にも匂いがつかないので、洗濯の必要もないです。

 家で嗅いでもクッションフロアはあまり匂いや刺激がないので、「ひょっとしてこれは使えるかもしれない」と思いました。たった10cm(90cm巾)のものを嗅いだだけなので、工事で広い面積を使ったらどうなるかはわかりません。

 しかし、私は天然木の無垢材(樹種に限らず)にも強い反応が出るので、それよりは害が少なそうでした。もう工事の時間は迫っており、もしクッションフロアでいけるのなら、それがいちばんと思いはじめていました。価格も安いので、「もし使ってみてダメならあらためて考えてみる」という方針で行くことにしました。クッションフロアを貼ってみて強い反応があれば、しばらく床の上にビニールシートを貼って暮らすという手もあります。そして、気温が上がる4月になったら、ビニールをはがし、めいっぱい換気をして、匂いを飛ばしてはどうかと思いました。

 この時点で考えた方針は…
◆ 床材はクッションフロア。接着剤は使わず両面テープで貼ってもらう。
◆ 便器・タンクはシンプルな型のものを。これで反応するようなら、そのとき考える。


 このときの私の頭にあった工事内容はこのくらいでした。実際工事が始まってみると、他にも様々な材料や道具を使う場面が多かったのですが、この時点では思いつきませんでした。

 工事は翌日に迫っていました。

[工事当日]
 工事の朝に、工事車両が来て、廊下や玄関にたくさんの道具が広げられました。この道具類には、それまでの工事で使った建築材料の匂いがついているようです。家の中の空気が溶剤のような匂いになって、少し気分が悪くなってきました。

 はじめに、水道屋さんから、クッションフロアと両面テープを嗅いでみるようにと渡されました。鼻を近づけて嗅いでみると、両面テープの方はOKです。普段から、物によっては両面テープに反応していたので、これはラッキーなことでした。匂いや刺激はありましたが、私の苦手なタイプではありませんでした。

 次にクッションフロアです。これはとても匂いました。私がホームセンターで買ったサンプルよりもずっと強い匂いです。大きなシート(90cm×1.3m)が巻いてあったので、まず外側の匂いを嗅ぐと、タバコの匂いが。これは、私の家まで運搬するまでの間に、車内で吸ったタバコの匂いがついたのではないかと思いました。なぜなら、巻きをほどいて中の方を嗅いでみると、タバコの匂いはしなかったからです。建材の運搬の際にも注意するべきだったのに、私はそこまで頭が回りませんでした。あらかじめビニールに包んでもらうようにお願いしておけばよかったのです。しかし、タバコの匂いがあとからついたものは、しばらくすれば抜けるのではないかと思いました。普段の経験から判断すると、私の体質では、このくらいのタバコの影響なら、何とか耐えられます。

 もっと問題だったのは、クッションフロア全体にシンナーのような強い溶剤臭がついていたことで、これは巻いてある表面だけではなく、中の方までしっかり染みついていました。「これは製品のもともとの匂いなのか、工場や保管場所でついたのか? それとも、工事車両の匂いが移ったのだろうか?」 どのみち、これを使うのは無理でした。それで、ホームセンターに行って、私の大丈夫なクッションフロアを買ってくることにしました。自分の車で行って買ってくれば、工事車両の匂い移りを心配することがなくて安心です。

 私が事前にサンプルを買ったのは、家から離れたホームセンターでした。車で20分くらいのところです。(これをA店とします。)それで、同じチェーン店で、家の近くのホームセンターに行きました(B店)。同じものが売っているはずです。ところが、B店には、サンプルで買ったものは売っていなかったのです。やむを得ず、その場で匂いを嗅いでよさそうなものを選びました。

 水道屋さんは、このホームセンターのチェーン店の、さらに別の店(C店)に行って、クッションフロアを買って来たのだと言っていました。見てみると、B店でも同じものが売られていました。それを嗅いでみると、水道屋さんがC店で買ってきたものと全く同じ匂いがしました。シンナーのような匂いです。それで、この溶剤の匂いは、工事車両の匂いが移ったのではなく、もともとの製品自体についていたものだとわかりました。(製造時か保管場所の匂いではないかと思われます。) 

 新たに私が選んだものは、それよりはずっと匂いの少ないものでした。しかし、ホームセンターの店内で嗅いでいるので、はっきりと判断できません。このクッションフロアを90cm巾×1.3m買って車に積み込み、家に向かいました。その途中で、私はすでに刺激を感じました。目や粘膜にピリピリと刺さるような刺激です。「これを使って大丈夫だろうか?」と思いました。家に帰ってからも、条件や方法を変えながら、何度か嗅いでみましたが、やはり刺激があります。

 結局、最終的には、私が事前にサンプルを買ったホームセンター(A店)へ夫が行って、同じものを買ってきてくれることになりました。往復40分の道のりですが、夫は行ってくれました。とてもありがたかったです…。

[工事の行程]
 工事は、私が思っていたのより、ずっと多くの行程を要しました。実際に行ったのは、次のような工事内容です。

1.タンクをはずす。(これは、前日までに撤去済みです。)
2.便器をはずす。
3.元栓の金具を交換する。
4.クッションフロアをはがす。
5.排水口の位置を変える。
 a.排水口の周りの床板を四角にくりぬく。
 b.排水管をつけ直して位置を変える。
 c.四角い板(新しい排水管の位置に合わせて穴を開けたもの)をはめる。
6.クッションフロアを貼る。
7.便器・タンクを設置する。
8.配水管をつなぐ。(元栓〜タンク)


 この行程を工事前にすべて聞き出して、使う材料や道具もすべて事前に検討できればよかったと思います。しかし、私はこのような工事内容は全く頭に浮かばなかったので、そもそも質問のしようがありませんでした。水道屋さんの方も、いつも通りの工事をいつも通りにするだけなので、どこがCS的に問題となるのか、思いつかないのではないかと思います。あらかじめ、水道屋さんの方で気づいた点は、いくつか取り上げて打ち合わせをすることができましたが、その他のことは、工事当日になってから対応していただくことになってしまいました。つまり、水道屋さんの側では、何がCS的に問題なのか思い浮かばないし、私の方は工事の内容が思い浮かばないし、ここの間に空白ができた形となりました。それは空気のようなもので、どちらの意識にものぼらなかったのです。私の側で1つ1つの行程をじっくりと聞き出して確認すればよかったのですが、知らないことを聞くのは難しいものです。よく準備するにしても、ある程度の知識がないと、アプローチのしかたがわからないです。

 掲示板に、工事の行程について詳しく書き込みしてくださった方がいました。本当に我が家の工事は、全くその通りに進んでいったのです。工事前に見られればよかったのですが、書き込みを見たのは、工事が終わってからでした。残念です。

[元栓の修理]
 はじめに便器をはずして、元栓の金具を交換しました。タンクが割れたそもそもの原因は、元栓が閉まりきらなかったことです。便器・タンクを交換しても、元栓からの漏水がなおらなければ、また割れてしまいます。もし、金具を交換しても水が止まらないようだったら、もっと大がかりな工事が必要だと説明されました。水道屋さんは「床を壊して床下の配管をいじる必要がある。庭の土を掘って、その中も工事する必要がある。」と言ったので、私は血の気が引きました。そんな大工事に、私の体が耐えられるとは思えなかったからです。幸い、元栓の金具を交換しただけで、漏水は止まりました。本当に安心しました。

[床材と排水管の工事]
 次に、クッションフロアを剥がしていきました。下地の板は合板でした。排水口の位置を変えるために、下地の合板を四角く切り抜きました。電動工具で板をくりぬいたあたりから、本格的に家の空気が悪くなってきました。私は工事の様子を遠巻きに見ていました。近づきすぎると、CS反応が出てしまうし、かといって、ぜんぜん見ないのも心配だし…。

 床下の排水管を交換するときは、塩ビのパイプをつけ替えるのですが、本来ならこのとき、継ぎ目を接着剤で固めるそうです。水道屋さんは、この接着剤を使わずにすませてくれました(写真4)。これは、こちらからお願いしたのではなく、水道屋さんが機転を利かせてくれたのです。接着剤は匂いが強そうなので、使われていたら大変なことになっていたと思います。 



 そのあと、合板を四角に切って丸い穴を開け、新しい排水口に合わせて床にはめ込みました。合板を切る作業は外で行っていましたが、外にも玄関にも粉が飛び散って、とてもいがらっぽい空気になりました。私は遠くから合板を眺めましたが、それは新品のものではなく、とても古いものでした。新品の合板は匂いが強いということで、水道屋さんが気を利かせてくれたのかもしれません。合板をトイレの床にはめ込むときには、何か接着剤のようなものを使ったのかどうか…これは確認しなかったのでわかりません。上にクッションフロアを敷けば、封入された形になり、揮発は少ないのではないかと思いました。

 クッションフロアを敷き込む前に、下地の合板が濡れているところを、ドライヤーで丁寧に乾かしました。私は合板の匂いが熱であがってくるのではないかと、なるべくその場に近づかないようにしていました。我が家は築30年の古い木造住宅なので、下地の合板は古くなっていましたが、長年クッションフロアに覆われていたので、成分がどの程度抜けているのかは見当がつきませんでした。ドライヤーは夫のものをお貸ししたので、ドライヤーに合板の揮発成分がついてしまうのではないかと心配になりました。ドライヤーはファンで外気を取り込み、電熱線で温めて吹き出す構造です。内部に合板の匂いが付着して、夫が髪を乾かすときに、その成分がついてしまうのではないかと心配でした。しかし、工事後、夫がドライヤーを使っても気になるほどの匂いはなく、安心しました。下板の合板は古いものだったので、成分の揮発は少なかったのかもしれません。

 夫がホームセンターから帰ってきたところで、ちょうどクッションフロアの敷き込み作業に入りました。掲示板で、クッションフロアを敷き込む前に何日か干してみるように勧められたのですが、私は下地の合板の匂いの方が問題なように思われました。それで、すぐにクッションフロアを敷き込んでもらいました。もし、事前に干したり洗ったりできたら、その方がよかったと思います。

 クッションフロアをちょうどよい大きさに切ったあと、下地の合板に両面テープを縦横にはりめぐらせ、クッションフロアを貼り込んでいきます。この時点では、私はいろんな工事の匂いを嗅ぎすぎて、ぼんやりしてきてしまい、匂いをよく嗅ぎわけられなくなってきてしまいました。「とにかく早く工事が終わってほしい」と思いました。

[便器とタンクをつける]
 便器をつける段になって、水道屋さんから、新品のトイレットペーパーホルダーを嗅いでみるように言われました。このホルダーのプラスチックと、便座のプラスチックが同じものだということです。嗅いでみたら、少し刺激があるような感じがしましたが、判断しづらくなっていたので、そのままつけてもらいました。

 便座もタンクもつけてもらって、ふと見ると、水道屋さんがシーリング剤を手に持っています。私は反射的に「シーリング剤は使いますか!?」と聞いたら、水道屋さんもハッとしたようで、「あ、シーリング剤はダメですか」と聞き返してきました。「ええ、多分。あらかじめ匂いを嗅がせてください。」 シーリング剤は、注射器のような いれものに入った透明なペーストでした。それを紙の上に練りだしてもらって、匂いを嗅いでみましたが、鼻がバカになっているのでよくわかりません。

 夫の部屋に行って、夫に嗅いでもらうと、「これはダメだよ。ひどい匂いだ。」と言われました。私ももう一度嗅いでみると、確かに匂います。夫の部屋はストーブを焚いていて暖かかったので、寒い廊下で嗅いでいたのとは違い、今度ははっきりとわかりました。肺を圧迫するような重苦しい匂いです。それで、シーリング剤は使わないでもらうことにしました。

 本来なら、床と壁の間、便器と床の間にシーリングを施して、隙間を埋めます。床と便器の間は、本当はシーリングしてほしかったのです。古い便器を撤去すると、便器が乗っていた部分の床材が真っ黒にかびていました。これは、2002年にこの家に引っ越してきたときから、ずっと気になっていました。カビにアレルギーがある私は、この部分のカビで息苦しくなっていたからです。新しい便器にシーリングを施せば、この部分のカビは防げます。しかし、トイレを使えなくなったら元も子もないので、シーリングはやめてもらいました。

[配水管工事]
 最後に元栓からトイレタンクまで配水管をつないで、工事は終了です。本来なら、継ぎ目に液体のシーリング剤を塗るのですが、それは使わずシーリングテープを巻いてもらいました。

配管用のシーリング剤は、便器や床の隙間を埋める透明のものとは違い、缶に入った白い液体です。ペンキのような強いにおいがするので、CS患者は使わない方がいいと思います。私は、2002年に水道の蛇口を交感したときに、このシーリング剤の匂いでぐあい悪くなってしまいました。水道屋さんは、そのときのことを覚えていてくださったのです。シーリングテープはほとんど匂わないので、助かりました。 

 配管用の金具は、あらかじめ外でガスバーナーを使って焼いていました。表面のさびを防ぐためなのかどうかよくわかりませんが、ガスの苦手なCS患者は注意をする必要があります。私は、もう疲れとぐあい悪いのとで、なすがままという感じで…確認せず、そのままつけてもらいました。

 配管をしたあと、見映えをよくするために、この金具にシルバーのペンキを塗ることになっているようなのですが、水道屋さんが判断して塗らずにすませてくれました。ありがたかったです。

[工事後の経過]
 こうして、我が家のトイレ工事は終了しました。トイレはピカピカの新品になりましたが、とても空気が悪く、近づくのがはばかられました。夫がトイレの窓を開けてくれました。私は、この後どうおさまるのか心配だったけれど、夕方から用事があったので外出しました。翌日も朝から用事で家を空けました。この間、家にいなくてよかったと思います。

 工事の翌日の夜に、廊下・玄関・トイレに、丁寧に掃除機をかけました。合板の粉が飛び散っていると思ったのです。また、玄関の外に散っていた合板の粉は、雪が降ったので、雪の下になり、風が吹いても飛び散らなくなりました。私は工事中の曝露と、その後の外出で疲れていたので、お風呂で体を隅々まで洗い、よく休むことにしました。

 1日目は、自分の部屋にいても空気の悪さを感じ、夜寝ていても気持ちが休まりませんでした。でも、少なくとも家にいることはできたのです。工事後、避難する可能性も考えていたので、これにはホッとしました。工事後3日目を過ぎた頃から、家中にもうもうと漂っていた不穏な匂いが薄れてきて、体が楽になってきました。それに伴い、気持ちも落ち着いてきました。

 工事後、トイレに入るのが怖かったです。でも、1日に何回かは入らないわけにはいかずに、恐る恐る入りました。トイレ用の服を一式用意して、トイレに行く直前に着替えるようにしました。用を足してトイレを出たら、またもとの服に着替えます。トイレで服に匂いがついても、すぐに着替えるので、その影響を最小限に抑えられます。頭は帽子をかぶって、髪をすっぽり覆うようにしました。

 工事直後は、トイレに入ると、モヤッとした匂いと、ピリピリとした刺激が迫ってきて、気が気じゃなかったです。それが日に日にうすまってきて、3日目を過ぎた頃から、楽になってきました。工事から2週間を過ぎると、さらに匂いと刺激はうすまって、服を着替えずにトイレに入れるようになりました。その後、春になって気温が上がってきたので、化学物質の揮発量が増えるのではないかと心配しましたが、常にトイレの窓を開けていれば、問題なく過ごせています。

 この先さらに気温が上がってくると、化学物質の揮発量が増えることが予想されますが、換気を徹底することで、対応していくつもりです。



 皆様のおかげで、無事工事がすみました。掲示板で相談に乗ってくださった方、見守ってくださった方々、本当にありがとうございました。


まとめ・工事の中でCS対応してもらった部分

工事内容 標準的な建材 CS対応 分類
床の下板をはめ直す 合板 古い合板
排水管のつなぎ替え 接着剤 接着剤なし
クッションフロアを貼る 水道屋さんが用意したクッションフロア 自分で用意したクッションフロア
クッションフロアの接着 接着剤 両面テープ
タンク・便器 抗菌、ウォッシュレット、暖房便座 抗菌してないもの、シンプルな機能のもの
床・壁・便器間のシーリング シーリング剤(透明なペースト) シーリングなし
配水管の接続 シーリング剤(白い液体) シーリングテープ
配水管の塗装 ペンキ 塗装なし

分類:A…事前の打ち合わせによるもの B…工事中に指摘 C…水道屋さんの機転

(2008.4.7)

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