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第1章 有害物質を避ける方法 <Part 2>

〔4〕 日々遭遇する有害物質にどのように対処するか
a.新しい物を試す際の注意
b.新しい場所に行く時の注意
c.物を購入する時の注意
d.具合悪くなってしまった時の対処法

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第1章 有害物質を避ける方法

〔4〕日々遭遇する有害物質にどのように対処するか
a.新しいものを試す際の注意
○ 外からやってくるもの・日々の出会い
 毎日生活していると、外からたくさんの物が次から次へと家の中に入ってきて、また外へ出ていきます。食事一つをとってみても、食材を購入して家に持ち込み、調理し、ゴミとなった物を家の外へ排出しています。そのような家へのインプットとアウトプットが生活を成り立たせています。私は、重症だった時(2001〜2002年)には、外から新しくやって来る物に、いちいち反応を起こしていました。外から家の中に入ってくる物には、新しく買った物(食品・日用品など)、届いた物(郵便・宅配便)、近所からのいただきものなどがあります。当時は外から来た物に接する時は、その都度ものすごく警戒していました。例えば、郵便物についていえば、当時は配達される物すべてが何らかの害を持っていて、ほとんどすべての物に反応し、時にはショック症状を起こすこともありました。現在は、かなり過敏性が下がってきたので、それほど警戒する必要はなくなりました。今は、郵便物はどんな物でも普通に開封する事ができるようになっています。しかし、回復したとはいえ、それでも初めて接する物には注意するようにしています。  

○ はじめてのものをためすときには
 重症だった頃、新しく接するものに対して身を守るために、次のような方法を取っていました。

[1]家族の協力が必要です。初めは家の外で行います。外の空気がよい時を選びます。まず、外で家族の人に試したい「物」のうち必要な物とそうでない物に分けてもらいます。包装・紙・段ボール・ビニール袋などゴミになるものはあらかじめ分けてしまい、ゴミ袋に入れて隔離します。  

[2]包装を開けると商品の匂いが中にこもっているので、5〜10分外に置いておいて、匂いをとばします。(家族の人にやってもらいます。) 

[3][2]までは家族の人にやってもらい、ここで初めて 、CS患者が外に出ます。まず、レベル3〜4の服装で行います。初めは遠くから少しずつ試したい「物」に近づいていきます。これ以上近づくと具合悪くなるところまで近づきます。 具合悪くなったら、すぐに家に戻ります。(「物」は放置)。家族が「物」の後始末をします。後始末の方法は人にあげるとか捨てるとかになります。重症で反応が激しい時は、もったいないけど割り切って捨てた方がいいです。保管しておくにしてもリスクを伴います。 もったいないと言って迷っていると、曝露時間が長くなり症状が重くなります。私の場合、反応を起こすとどんどん思考力が落ちていき、正常な判断力がなくなってしまうので、どうしたらいいか決められず、いたずらに曝露時間を長引かせてしまうことがありました。「危険」だと思ったら、 いったんその場を離れて、着替えて有害物質の影響を消してからよく考える、というようなことをしていました。重症の時はずいぶん物を捨てました。すごくもったいなかったです。当時考えていた ことは、「早くよくなって物を捨てずにすむようになろう」という事でした。「もったいない」という気持ちを、「早くよくなろう」という目標に転換していました。現在は それほど激しい反応を起こさなくなったので、使えない物はレベル3〜4の部屋に置いておいて、人にあげています。  

[4]物のそばまで近づけたら、匂いを嗅いでみます。(手に取ると手に匂いが つくので、手に取らず鼻を近づけて嗅ぐといいです。) 嗅いでみて具合が悪くなったら、家に戻ります。(以下[3]と同じ) 

[5]嗅いでみて大丈夫なようだったら、手に取って家の中に入れてみます。ここで服をレベル2〜3の物(前より低いレベルの もの)に着替えます。初めは家の中のレベル3の部屋に置いて、生鮮品以外の物は、2〜3日かけて何度か嗅いでみます。  

[6]レベル3以上の部屋で収納・使用する物については[5]まででチェックできますが、レベル1・2の部屋で収納・使用する物については、さらにレベル1〜2の部屋に持ち込んで、2〜3日かけて何度か嗅いでみます。  

[7]よさそうなら、使用場所に持っていき、使用します。そのままでは使用できない物でも 、干したり覆ったり工夫することで使用できる場合があります。具体的な方法については、
〔2〕−c〔2〕−dをご参照下さい。

 私は重症だった時(2001〜2002年)は上記のような方法をとっていましたが、現在は過敏性が下がったので[1]〜[4]の行程は必要なくなっています。どんなものでも自分で包装を取ってにおいをかげるようになりました。過敏性の高い人はよく警戒して上記の手順を忠実に守った方が安全でしょう。それほど過敏性が高くない人は自分に合わせてアレンジして行って下さい。


b.新しい場所へ行くときの注意
 新しい場所に行く時には、どのような反応が出るのかわからないので、注意が必要です。過敏性が高くてほとんど外出できないような時でも、どうしても出かけなければならない時もあります。病院に治療を受けに行かなければならない時がありますし、物の購入をする際、CS患者本人が出かけていって確認しなければならない事もあります。外出時、危険な場所に近づかないようにする方法、 具合悪くなってしまった時の対応方法を紹介します。

○ 外出の手順
[1] 新しい場所に行く時は1人で行かないようにします。激しい反応を起こした時に、自分 一人では帰れなくなります。家族の人に付き添ってもらうようにします。

[2] 行く場所についてよく下調べします。地図でルートを確認し、反応を起こしそうな場所・要素を予測しておきます。地形図(国土地理院で出している白地図)*は便利です。地形、土地の利用状況、工場の位置、清掃工場など、いろいろ調べられます。私は農薬に強い反応が出るので、農地・公園は要チェックです。資料でチェックして、目的地の危険度を予測します。また、危険な場所は避けるようにルートを決めます。
*地形図は大型書店や政府刊行物販売センターで入手できます。 (詳しくは
第5章〔2〕をご参照下さい。)

[3] 車は便利です。有害物質に出会ったときに、車の窓を閉めておけば、じかに接する事がないので、それだけ反応を小さく抑えられます。体の周りに安全な空気を一層まとっているような感じです。2001年に重症化する前までは、日常的な用事は徒歩ですることが多かったのですが(運動も兼ねて)、悪化してからは、有害物質に出会った時の反応が強烈で、しかもごく短時間でひどい状態になるので、徒歩はやめました。車に乗っていると、野焼きをして煙がもうもうと上がっているような所でも、直接吸い込む事なしに素早く通り過ぎることができます。車の中の匂いにも反応するので、私が乗れる車を見つけるのは大変でしたが、何とか見つける事ができました。車の中は狭い密閉空間 なので、車内の有害物質濃度が上がらないように注意しなければなりません。車の中についても、
〔3〕−a,b,cの方法を使います。車の中をレベル2〜3、トランクをレベル3〜4に設定します。新しく買った物は必ず ビニール袋に入れて密封し、トランクに入れるようにしています。また、空調を内気循環(*1)にして、外から他の車の排気ガスが入らないようにしています。めまいや目の痛みがひどかった時は、夫に運転してもらっていましたが、現在は自分でも運転できるようになりました。それでも、初めての場所に行く時は、急に体調が悪化する可能性があるので、夫に運転してもらっています。

[4] 出かける前に、具合悪くなったらどうするか、家族と打ち合わせしておきます。下調べした内容によって、どの辺の場所が危険なのか家族と確認します。具合悪くて口がきけなくなった時のサインを あらかじめ決めておきます。

[5] 出かけます。CS患者本人は、自分の体の変化によく注意します。具合が悪くなってきたら、そのままやり過ごして進めるのか、引き返さなければならないのかを判断しなければなりません。すごく迷いますが、何度もやっているうちにだんだん見極められるようになってきます。 具合が悪くなって思考力が落ちてきた時は、判断できなくなるので注意が必要です。私の場合、具合悪くて何が何だかよくわからなくなると、夫が「大丈夫か?」と声をかけた時に、他人事のように「大丈夫なんじゃないの〜?」と答える事があるそうです。こういう時の私はかなり意識が遠くなっているので自分で何を喋っているのかよくわからなくなっていることが多いです。夫は私の表情を見て、 具合悪そうな様子だったら引き返すようにしていると言っていました。具合悪くなったら速やかにその場を離れるようにします。目的地に行くのは諦めて家に戻ります。

[6] 具合悪くなって引き返した時は、家に帰ったらすぐに着替えます。できればすぐにシャワーを浴びて、髪や体についた有害物質を洗い流すとよいのですが、そんな力が残っていない時もあります。その時は髪全体をタオルで覆って寝るとよいです。帽子を被っていたとしても、帽子からはみ出た髪の毛が汚染されていたり、帽子の隙間から有害物質が入り込んで帽子の中の髪の毛が汚染されていたりする事があります。タオルで覆わずに寝ると、布団カバーや枕カバー、シーツなどに有害物質が移ることがあります。タオルで覆えば洗濯しなければならないのはタオル1枚で済みますが、タオルで覆わなかった場合、寝具カバーを一式すべて洗濯しなければならなくなります。シャワーを浴びて髪や体に ついた有害物質を洗い流したら、タオルなしで寝ることができます。髪は皮膚に比べて何十倍も汚染が付着するように感じています。(表面積が大きいからだと思います。)

[7] 曝露されたときに着ていた服は、レベル4の部屋に置いて隔離します。有害物質が染み込んでいるので、体が回復する前に接触すると、再び同じ反応を起こす恐れがあります。数時間〜数日で体が回復しますので、それから洗濯するようにします。

[8] 曝露された時に乗っていた車は、窓を閉めていたとはいえ、隙間があるので、車内が有害物質で汚染されています。帰宅したら、窓を開けて換気します。1〜2日で有害物質の匂いが取れてきます。CS患者本人は 具合が悪くて車の ことまで手が回らないことが多いので、家族の人にあらかじめお願いしておきましょう。換気しないでおくと、車に乗った時に再び同じ反応を起こすことがあります。

[9] CS患者本人が着替えてシャワーを浴びるように、同行した家族の人にも体に付着した有害物質を取り除いてもらいます。帰宅後すぐに着替えてシャワーを浴びてもらい、服は隔離します。CS患者が回復してから洗濯するようにします。

*1 常に内気循環にしているとエアコン本体及びエアコンのフィルターにカビが生えやすくなるそうです(カーディーラーの説明による)。それを防ぐために次のような方法があります。
1. 空気のよいところを通る時は外気循環に切り替える。
2. CS患者以外の家族が車に乗る時はなるべく外気循環で使う。


○ 現在の状況(2005年7月)
 上の原稿を書いてから1年近くたちます。現在ではかなり回復したので、上記のような細かい注意は必要なくなりました。当時のことを振り返ってみると、隔世の感があります。現在外出するときは、出かけていって用事を済ませ、帰ってきてから着替えてシャワーをあびれば終わりです。「出かけてみたけど、 具合が悪くなって途中で引き返す」ということは、なくなりました。帰ってきてから寝込むこともないです。

 現在、重症の人は大変だと思いますが、私のように回復すれば楽になるので、頑張ってください。


c. 物を購入する時の注意
○ 過敏性に合わせて選ぶ
 生活上、物を購入しなければなりませんが、過敏性が高いと使えるものを見つけるのがとても大変です。体に合わないものを買うと症状が悪化するので、使えるものを慎重に選ばなければなりません。

 私の場合、重症度3Bのとき(1999〜2001年)は売っているものの50%は使えないものだという感じでした。その後、急激に悪化したとき(2001〜2003年)は、使えないものの割合が95%以上にはね上がりました。この時は買い物するたびに合う物を見つけるのが大変で、本当に困りました。現在は回復して過敏性はかなり下がりましたが、それでも売っているものの中で使えないものの割合は80%くらいです。

○ 定番商品を決める
 物を購入する際に私が行っている方法を紹介します。まず、食品や日用品など繰り返し買うものは、同メーカーの同製品のみを買うようにします。特売だからといって普段と違うメーカーのものを買ったりすると、反応を起こすリスクが高まります。同メーカーの同製品のみを買っていれば、その製品の有害性がわかっているので安心です。自分にとっての「定番商品」をつくるようにします。「定番商品」を決めるには〔4〕−aの方法を使います。新しい商品を買ってみて〔4〕−aの方法で安全かどうかをチェックします。それで安全だとわかったら、その商品を繰り返し買うようにします。

○ 大型商品の購入
 食品・日用品以外で、ある程度大きなものを買うことがあります。例えば、暖房器具や電化製品などです。なるべく買わずにすませようと思っていても、生活上どうしても買わなければならないものもあります。また、現在使っているものが壊れて買い換えなければならなくなることがあります。私は2002年に仙台から札幌に引越したのですが、新生活のために大型のものを買い揃えなければならず、ものすごく苦労しました。この時が私の人生の中で最も過敏性が高いときだったので、本当に大変でした。

  大型商品を買う時は、なるべく返品のきく店で購入します。そして店頭で試せるだけ試します。冷蔵庫を買ったときは、店頭で電源を入れてもらい、15分程度よく冷やしてから、あちこち匂いを嗅ぎまくりました。電気店にいるだけですでにかなり 具合悪くなっていたので、判断するのは難しかったです。大物を買う時は、いつも「賭け」だと思います。これまでの経験を振り返ってみると、その「賭け」の勝率はあまりよくないです。(過敏性が高すぎるためです。) 店頭で見てみて「大丈夫かな?」と思っても、家に運ばれてみるとダメだったり、短時間なら耐えられても長時間使うと 具合悪くなってしまったりします。冷蔵庫は珍しくうまくいった例で、現在でも問題なく使っています。店頭でさんざん匂いを嗅いだ展示品を家まで配達してもらいました。箱に入っている新品を配達してもらうとダメな場合があります。しかし、いつでも展示品がいいのかというとそういうわけではなく、その時々で臨機応変に決めています。

○ 展示品
 展示品は新品の素材の匂いは薄くなっていて助かるのですが、展示してある店内の空気が悪すぎると、その匂いがついてしまっています。例えば近くにアロマ商品のコーナーがあったりすると、買いたい商品に匂いがついてしまっています。洗って匂いを落とせる場合もありますが、紙製品や電気製品など、洗えないようなものは、匂いが取れません。その場合は、展示品より箱に入ったものを買います。その都度いろいろな条件を勘案して選択しています。

○ 返品
 私の住んでいる地域に、購入した商品を開封した後でも返品できるホームセンターがあって、重宝しています。返品理由を聞かずに返品処理してくれます。引越後は物要りだったので、この店で買っては返品を繰り返しましたが、特に嫌な顔もされませんでした。(事務的な対応でした。)本当にありがたかったです。そういう店が見つかると、とても助かります。返品を保証していない店でも、こちらから積極的に働きかけると返品に応じてくれる店はあります。返品する際にCSのことを包み隠さずに話すと、話が通じることが多かったです。私がCSだと気づいた1999年頃は、まだこの病気に対する認識が行き届いていなかったためか、理解してもらうのにとても時間がかかりましたが、ここ2年くらいはかなり社会に浸透してきたようで、話が早くなりました。

○ 通信販売
 百貨店や衣料品店に行くだけで具合悪くなってしまう場合は、通信販売を利用するという手もあります。ただ通販にも店頭売りとは別のリスク(運送の際に付着する有害物質など)もあるので、状況によって判断し選択します。とにかくいろいろ試してみることです。私は、衣類についてはよく通販を利用しました。大手の通販会社だと返品を受け付けてくれます。届いた商品を〔4〕−aの方法で試して、使えない場合はいちいち返品しました。時々使えるものが見つかって本当に助かりました。百貨店の洋服売場や衣料品店はいるだけで 具合悪くなるので、家で商品をチェックできるのは重宝でした。

○ 経済的負担
 過敏性が高い時は使えるものの割合が低くなっているので、数多くのものを試さないと使えるものが見つかりません。「数打たないと当たらない」のです。「大丈夫かな?」「またダメかも」などと悩んでいると先に進まないので、どんどん試すことが必要です。買った物が使えなくて返品もきかないとなると、その度に払ったお金が無駄になってしまいます。これは精神的にきついです。個人差がありますが、例えば、「人工物はダメだが天然のものは大丈夫」とか法則性が見える人はそれに従って選択するとよいでしょう。私の場合そういった法則性が見えないので、一つ一つ試していくしか方法がないのです。はずれが多いと、それだけ経済的負担が大きくなります。初めて試すものについては、その商品の3〜5倍くらいの予算を見込んでいます。もうこれはしかたがないので、割り切って考えています。ただし、必要のあるものだけを買うようにして必要のないものは買いません。シンプルライフです。

○ 原因を考える
 試してみてダメだったものについて、なぜダメなのかをあれこれ考えるのですが、原因がわからないことが多いです。例えば、「抗菌」と表示してある商品はダメで「抗菌」でなければ大丈夫、というふうに目で見える法則性があればよいのですが、実際はそうではありません。私の場合「抗菌」と表示していないものでもダメなものはたくさんあります。また、「抗菌」と表示してあっても大丈夫なものは使うようにしています。(バス・トイレ用品など「抗菌」以外の商品を探すのが困難な分野があります。) 抗菌処理について調べてみましたが、処理方法、抗菌剤の種類が多く、ほとんどの商品で成分を公開していないので、嗅ぐことだけで原因物質を判断するのは難しいと感じています。だから生活していくうえで必要最低限のこと、すなわち、自分にとって安全な商品を選び、危険な商品を避けることを優先にしています。

○ 見た目は変わらないのに中身が変わることがある
 それまで何の問題もなく使っていた「定番商品」が、ある時から急に有害になってしまうことがあります。1つのパッケージを使い切って新しいパッケージを開ける時によくこのようなことが起こります。パッケージなど見た目は変わらなくても、原料や製法などが変化するためではないかと思います。2001年にそれまで飲んでいた青汁(粉末)が急に飲めなくなってしまったことがありました。毎月定期的に送られてくるものですが、ある月にパッケージを開封して1包目を飲んでみたら胃に刺激があり、もたれて気持ちが悪くなってしまいました。メーカーに問い合わせたところ、粉末にする際に使用するデキストリンの原料が変わったという回答でした。しかたがないのでその商品は返品し、別メーカーの青汁で飲めるものをさがしました。このように見た目は変わらないのに中身が変化することはよくあるらしく、青汁の例はたまたま原因がわかりましたが、原因がわからないことがほとんどです。

○ 日用品の購入法
 このリスクを少しでも避けるために、私は日用品を1年分まとめて一度に購入するようにしています。1年に10袋使うものについては、10袋を一度に購入します。なくなるたびに1つずつ購入していると、その都度上記のようなリスクを負わなければなりませんが、一度に買うと10袋とも同じロットなので中身はほぼ同じものです。一年間安定して安全なものが供給されることになります。私は農薬に特に過敏なので、農薬の影響の最も少ない2月に1年分を購入しています。生産する場所、運送中、店頭などで、農薬の濃度が高い場面があると、商品も汚染される恐れがあります。(工場の周辺が農地で農薬の空中散布をする場合など。) まとめて購入するものは日用品、たとえば石鹸・シャンプー・サプリメント・ゴミ袋などです。10袋を一気に買うのはリスクが大きいので、面倒でもまず1袋を買い、いったん家に帰って〔4〕−aの方法でチェックします。それで大丈夫だとわかったら残りの9袋(同じロットであることを確認する)を買うようにしています。


 上記のようにあるとき突然、今まで大丈夫だった商品がダメになることがあります。その場合はすぐに別のメーカーのもので使えるものをさがさなければなりませんが、過敏性が高いと探すのに時間がかかります。新しいものを見つける前にそれまで使っていたものを使い尽くしてしまうかもしれません。2004年1月に、それまで飲んでいたビタミン剤の添加剤が変わり、突然飲めなくなってしまったことがありました。新しいものは強い刺激で目や口が痛くなり、とても飲めませんでした。その時は、市内中の薬局をまわって古いロットのものを買い占めました。全部で1年分くらいになりました。これで1年間は飲み続けられるわけですから、1年かけてじっくり代替品を探すことができます。

 2003年にそれまで飲んでいたミネラルウォーターが急に有害に感じるようになったときも、同様の方法をとりました。また、現在料理用に使っているミネラルウォーターは、2003年に生産年月日が5〜9月にかけて水質が変わり、飲むとお腹が痛くなるので、この季節は飲めなくなって困りました。2004年からは4月に半年分をまとめ買いしています。それを9月まで飲んで、10月からはまた店頭のものを買えるようになります。

○ 衣類の購入
 衣類は使えるものを見つけるのが難しいので、生地店で比較的安全な布を買ってきて作ったりしています。布を買うときは、生地店の店内の空気がよくないので、店頭で匂いを嗅いだだけでは本当に使えるのか判断できないことがあります。その時は着分買ってしまうと使えなかった時無駄になってしまうので、まず10〜30cmだけ買って帰ります。それを洗濯した後、〔4〕−aの方法で使えるかどうかを判断し、使えるようであれば着分買うようにしています。二度手間ですが、この方法が確実です。サンプル分を買ってから着分を買うまで時間がかかると、布地のロットが変わってしまったり、店内の環境が変わったりして安全性に変化が出ることがあるので、すぐに買いに行くようにしています。


d.具合悪くなってしまった時の対処法
 どんなに気をつけて暮らしていても、ふいに有害物質に曝露されてしまうことがあります。その時の対処法を紹介します。

○ 原因物質を回避する
 まず、原因物質を取り除くことが大事です。危険な場所に行った時は、すぐにその場所から離れます。危険な物が近くにある時は、すぐにそれを遠くに離します。そしてその後〔4〕−bで書いたように、体に付着した汚染物を取り除きます。着替えてシャワーを浴びます。

○ 温かい飲み物
 外出先で具合が悪くなってしまい、動けなくなった時は、温かい飲み物を飲むと体がほぐれて楽になることがあります。1999〜2000年頃は、出かけるときは必ず携帯型の魔法瓶に温かいお茶を入れて持ち歩いていました。徒歩で出かけたとき、 具合が悪くなってとても立っていられず座り込んでしまうようなことがありましたが、温かい物を飲むとかなり楽になって、何とか家まで帰ってこれたことがありました。

○ 呼吸症状
 息苦しくなったときには、私の場合次の2通りの症状があります。

[1] 呼吸器の粘膜が腫れているような感じ
[2] 呼吸筋が固くなって呼吸ができなくなったような感じ


[1] 呼吸器の粘膜が腫れているような感じというのは、のどから気管までのどこかが腫れて空気の通り道が狭くなったような感じのことです。必死で息をしようとして吸い込んでも空気が入っていかないような感じになります。この時は、呼吸器のどの部分が詰まっているのかを指で確認していきます。のどが腫れて詰まっている感じがする時は、首の前の部分(男の人ののど仏の辺り)の皮を指でつまんで引っ張ると、スーッと息が通る時があります。首の皮が痛いのですが、息苦しいので必死です。傍からみるときっと変な格好でしょうし、こんな方法はお医者さんにも笑われるかもしれませんが、私にはすごく効果のある方法です。また、あくびをする時のように大口を開けて、のどの奥を開くようにすると、息が通ることがあります。口を開けっぱなしで顎が疲れますが、呼吸は楽になります。

 のどからさらに下に向って息の詰まっている所を探っていくと、胸のあたりが詰まっていることがあります。胸骨のあたり。これも胸骨の両脇の皮を指で引っ張ると、スーッと息が通ることがあります。ここは引っ張りにくいので皮が痛いですが、呼吸は楽になり助かります。

 さらに指で探っていって、さらに先のほうが詰まっているような時は、気管支喘息用の吸入薬(気管支拡張剤)を使います。これはとても楽になります。しかしのどが腫れて息苦しくなっている時は吸入薬はあまり効かないので、どこが腫れているのか調べてから薬を使うようにしています。(吸入薬は副作用があるので、なるべく使う回数を減らすようにしています。) 吸入薬を使っても効果がないときは、「口すぼめ呼吸」が有効なことがあります。口笛を吹くときのように口をすぼめて、ゆっくり息を吸ったり吐いたりします。換気量はあまり増えないのですが、あえぐ感じがなくなって、気持ちが落ち着きます。

○ 体をほぐす
[2] 呼吸筋がカチカチに固まって、息苦しくなることがあります。これはハアハアと息切れすることはないのですが、胸筋が固まって動かず息をしていないような(すごく呼吸が浅い)状態になります。いつの間にかそういう状態になっていて、全身がだるくなって気が遠くなるような感じになります。全身の血の巡りが悪くなって酸欠になっているみたいな症状です。そういう時は、だるくてつらくても、何とか全身の筋肉をほぐすようにすると効果があります。肩・首がバリバリに固くなっていることが多いので、ストレッチします。私はヨガ+ストレッチを組み合わせた柔軟体操プログラムを作っていて、それを一通りやるようにしています。ストレッチをしていくと、体の各部分をほぐすごとに、そこに酸素がいきわたる感覚があり、少しずつ呼吸が楽になってきます。ほぐしている最中に大きなあくびが出るのがよい兆候で、次第に深呼吸が出来るようになってきます。また、ラジオ体操も効果があります。ラジオ体操はだるい時にフラフラになりながらやりますが、全身の筋肉をまんべんなくほぐすことができて楽になります。よく考えて作られた体操だと感心します。また、私の場合、特にふくらはぎとアキレス腱が固くなっていることが多いので、そこを集中的にほぐします。アキレス腱をのばすと、その瞬間、面白いように息が通ることがあります。アキレス腱と呼吸器は離れた位置にあるのに、どこかでつながっているのかな、と思います。いろいろやってみて、自分なりの体の反応を発見し、対処法を開発していってください。

○ だるさ・筋肉痛への対処法
 だるさや筋肉痛がひどい時は、ストレッチに加えてマッサージ・ツボ押しなども効果があります。私の場合は自己流でやっています。私の凝り・筋肉痛はとても人に揉んでもらってどうなるレベルではないので、マッサージ器を使います。(電動のものです。私は電磁波過敏症ですが何とか使える物があります。) 私は中学生の頃からすでにすごい肩こりで、クラスにマッサージ名人みたいな生徒がいたのですが、彼女が今まで経験したことのないような凝りで、手におえないと言われてしまいました。その生徒は学校中の先生方の肩を揉んでいたのですが、大人の先生たちより中学生の私の方がひどい肩こりだと言っていました。マッサージ器でガンガンもむと体が軽くなります。凝りがひどい時は触っただけで飛び上がるような痛みです。少しずつほぐしていきます。

 手足がだるくて疲れていても身の置き場のないような、寝返りばかりうっていて全然休めない時があります。全身に濁った液体が流れているような感じで、体のあちこちが疼きます。こういう時は寝ていても体が休まらないので、無理にでも起きて庭や近所を歩くとまぎれることがありました。踊ると手足のだるさが楽になることがあります。フラフラーと踊ったりしてました。

○ めまいへの対処法
 めまいがひどい時は、じっとしているとかえって酔うので、歩くとまぎれるように感じました。私のめまいは回転性のものではなく、船に揺られているような浮遊感だったので、じっとしていると船酔いみたいになってきます。歩いていると、少し楽になる感じがしました。一頃やたらとそこら中を歩き回っていました。

○ 頭痛への対処法
 頭痛がひどい時は頭痛薬を飲みます。「薬は化学物質だから絶対ダメ!」という方もいますが、私は使える物は使っています。ほとんどの頭痛薬が全く効果がないか、かえって 具合悪くなるかでしたが、1種類だけ効果のあるものが見つかったので、それを服用しています。効きます。ただし続けて飲まないように気をつけています。頭痛をはじめ、具合悪さが続くと精神的に参ってくるので、薬で抑えられる物は割り切って使っています。また、外出先でひどい頭痛がはじまると、動けなくなって家に帰れなくなる恐れがあるので、ひどくなりそうな時は早目早目にに薬を飲むようにしています。                  

○ 精神症状
 精神症状についても書かなくてはならないでしょう。精神症状について書くのはとても難しいことのように思えます。CS患者は多かれ少なかれ「気分が変わりやすい」「急に理由もなく嫌な気分に襲われる」「自分の気持ちがコントロールできない」というような経験をしたことがあるのではないでしょうか。人によって程度の差はあれ、誰もがそのような要素を持っているように見受けられます。これは化学物質によって精神が影響を受けるので仕方のないことです。「精神における自由」(自分で自分の精神をコントロールできる状態)、私はずっとそれを得たいと願ってきました。

 化学物質にさらされると、特に理由(客観的な事実)がないのに、急に嫌な気分になったり、恐ろしい気分に襲われたりすることがあります。反対に、やたらと気分がよくなって浮かれて騒いだりします。その状態を客観的に見られる時と見られない時があります。客観的にモニターできる時は、「ああ、私ったら何でこんなにやたらと浮かれているんだろう。おかしいな。」と気づきますが、モニターできない時は、自分の中核が不在になったような、あやつり人形になったような嫌な感じです。これは、その場でモニターできていないので気づかないのですが、あとから思い出してみてそう感じます。

 自分がCSだと気づくまではそのからくりに気づいていなかったので、なんとなく自分が常に浮遊しているような、自分が自分の意思で動いていないような感じがしていました。自分がCSだと気づいてから、その浮遊感のからくりがわかったので、大いに安心しました。症状自体は相変わらず現れていたのですが、その理由がわかっているのとわからないのでは大違いです。

 CSだと気づく前、理由もなく落ち込んだり悲しい気分になったりした時には、必ず何か理由(客観的な事実)があるはずだと思い、あれこれ原因を考えてみたり、自己分析らしきことをやってみたりしていました。考えれば考えるほど謎が深まっていく感じがしました。

 現在は、化学物質によってそのような気分の変調が現れているということを知っているので、それについてくどくどと考えることはなくなりました。それが化学物質によって起きていることに気づくこと、そしてその上で自分をできる限りコントロールすることを心がけています。精神症状が現れたときの一番の対処法は原因となる物質を特定し、それを取り除くことです。とり除けない時でもその影響を認識して、最低限人に迷惑をかけないように行動することを心がけています。

○ 記憶障害
 物忘れ・記憶障害もCS症状のうちの1つです。私は人生のある時期(1989〜1994年)物忘れがひどくて物事を全然覚えていられませんでした。この頃から物忘れ防止のためにやたらとメモ・記録をとっていましたが、メモしたこと自体も覚えていられませんでした。記憶障害もひどくて、3日間まるごと記憶がとんでいるということもありました。スーパーに買物に行った後、いつの間にか家に帰ってきていてその間の記憶がない、ということもありました。全然思い出せないのだけれどもどうやら買った物を店に置いて帰ってきたらしく、スーパーに戻って確認してみると、確かにそのとおりでした。このようなことが頻繁に起こりました。当時の感覚は、時間軸が1本に通っていなくて、モザイク状になった時間がちぐはぐにつなぎ合わされているような感じでした。現在でもこの期間の記憶は、思い出そうとしてもまだら状になっていて思い出せない部分があります。

 物忘れの対策はとにかくメモを取ることです。全くコントロールの効かない思考力がバラバラになってしまうのを繋ぎ止めるためにも、メモや記録をとることが役立ちます。〔1〕−aで紹介したように記録をとるようになったのも、記憶障害がひどかったのが発端だったように思います。

 自分がCSだと気づき、CS対策をとるようになって、記憶障害は著しく回復しました。現在では「また当時のような障害が現れるのではないか」という恐れは全くなくなっています。私はこの障害を克服したのです。自分の精神状態が悪かった頃のことを紹介するのは気が引けましたが、私のように回復した人もいるのだということをわかっていただきたくて、書いてみました。

(2005年1月)

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