ホーム>第3章

第3章 過敏性を下げる

1〕食事について 
〔2〕栄養補助食品(サプリメント)
〔3〕運動


第3章 過敏性を下げる

〔1〕食事について
○ 原則
 食物は体に栄養を与え、体が正常に機能するのを助けます。栄養が不足すると、体の機能は低下します。CSになると、体に合わない食品・食べられない食品が増えてきますが、うまく工夫して栄養をとるようにしましょう。CSは治療法が確立していない病気なので、「この食事法がCSに効く」というものはまだありません。ただ1つCS患者に共通しているのは、「有害なものを取り入れないようにする」ということだけです。CS患者が食事をする上で大切なのは次の2点です。

・栄養をとる
・自分にとって有害な食品をさける


この両者のバランスを取ることが大切です。どちらか片方にバランスが傾くと、体調を悪化させます。

 私は2003年3月頃から、それまで行ってきた食事法をやめ、一転して別の食事法を試してみました。すると、この食事法が実に私の体には合っていたらしく、CSがめきめきと回復しました。びっくりするほどの回復ぶりでした。この体験を書くことで、CS患者がそれぞれ自分にあった食事法を見つけるための手助けになるのではないかと思います。

○ 以前の食事法
 私は14歳の時にCSを発症し、その後14年間病名がわかりませんでした。常に体調が悪かったのですが、これといった治療法も見つからずに来てしまいました。もともとアレルギー体質があったので、1990年頃からアレルギー医の勧める食事法を取っていました。その内容は次のようなものです。

・アレルギー反応を起こす食品を避ける。
・炭水化物(米)・野菜を中心に食べる。
・動物性タンパク質は少量にする。
・卵・牛乳は基本的に摂らない。
・脂肪はごく少量にする(1日10g以内)
・添加物・有害物質(抗生物質など)を避ける。


  私はこのような食事を12年間くらい忠実に行っていました。本でよく調べて、添加物・抗生物質などをきちんと避けるようにしていました。抗生物質や有害物質を取らないようにするために、自然と動物性食品は取らなくなりました。食物連鎖で、有害物質が体内濃縮しているのが心配だったし、肉類はその育てられ方が問題になります。米・野菜は有機栽培のものにしました。当時はアレルギー食というとこのスタイルが典型的なものだったと思います。また、「粗食・少食が健康によい」という内容の本を読んで、量をあまり食べないようにしていました。この食事法によって、アレルギーはほんの少しはよくなったような気がします。CS症状の方は(当時はCSとは気づいていなかったので、当時を振り返ってみて)、ほとんどよくなりませんでした。

○ 新しい食事法との出会い
 2003年2月頃、図書館でかりた2冊の本が、私の人生の大きな転換点になりました。1冊は、「注意欠如障害(ADD)」の患者のための本です。『わかっているのにできない脳1・2』(ダニエル・エイメン/著,花風社/刊)。私はADDではありませんが、この本に出てくるADDの症状は、当時の私の症状によく似ていました。「注意力が足りない」「集中できない」「考えようと思っても頭が働かない」「物忘れがひどい」。当時、私は常に頭がぼんやりしてうまく考えられず、頭に霧がかかったような感じがしていました。化学物質に対する過敏性が下がらないまでも、せめてこの頭の霧だけは晴れてくれないだろうか、もっと自由に物事を考えられるようにならないだろうか、と思いました。この本にはADD患者の脳の血流量の画像(SPECT)がいくつも載っていました。患者は皆、集中しようとすればするほど、脳血流量が低下してしまうのです。私もまさにその症状であり、脳血流量の低下が思考力の低下を招いているのだと思いました。脳血流量が低下するのがなぜなのかわからないにしても、私にも同様の症状が起きていることは明らかでした。

 この本には、様々な角度からADDを治すための治療法が書いてありましたが、その中でとりわけ私の目を引いたのは食事法です。その内容は次のようなものです。

・毎食必ず動物性食品を摂る。
・砂糖・甘いものを摂らない。
・脂肪を摂る(脳が活動するのに必要)。
・未精白の穀物を摂る。
・野菜を摂る。
・間食を摂り、栄養を補給する。


そして、その本にはおすすめメニューが書いてあったのですが、それは、今まで私が決して摂らないようにしていたものばかりでした(例:卵・牛肉・チーズなど)。また、あまり摂らないようにした方がよいもののリストは、それまで私がよく食べていたものばかりです(例:ジャガイモ・トウモロコシ・白米・食パンなど)。つまり、これまでの私の食事と180度違うものだということです。

○ 私を導いてくれたもう1冊の本
 同時期にもう1冊の重要な本、『脂肪を燃やすトレーニング』(藤原裕司/著,宝島社/刊)を読みました。この本には役立つ内容が書かれていそうでした。この本はトライアスロンの選手が書いたトレーニングのための本です。偶然、同時期にまったく違う分野の2冊の本を読んだのですが、書かれている食事法はほとんど同じでした。『脂肪を燃やすトレーニング』に書かれている食事法の内容をまとめると次のようになります。

・ 炭水化物:タンパク質:脂肪の摂取量をカロリー比で4:3:3にする。(平均的な日本人は75:15:10。) つまり、タンパク質・脂肪の摂取量をこれまでの2倍に増やす。
・ 未精白の穀物を摂る。
・ 砂糖・甘いものを摂らない。
・ 野菜をたくさん摂る。
・間食をする。


これが脂肪を効率的に燃やすための食事法です。この本には、不適切な食事によって起きる症状が書いてありましたが、当時の私の症状によく似ていました。私は、いつも胃の調子が悪く、食前には気が遠くなりそうなぐあい悪さを感じ、食後はぐったりしていました。食事の量も一度に少ししか食べられず、一日中空腹感がとれませんでした。これらの症状が、この本にそのまま書かれていました。このような症状が取れるのなら、この新しい食事法を試してみたいと思いました。

 それまでとはまったく正反対のことをするわけですから、最初は少し戸惑いました。しかし、それまでの食事法は12年間やってきて特に効果がなかったので、「ここいらで新しいことをやってみるのも悪くない。もしやってみて効果がなければ、もとに戻せばいいんだし…」と考え、やってみることにしました。

○ 調理の工夫
 それまでとは違う食材を試すので、CS的に工夫が必要でした。動物性食品は体に合わないものが多くて、それまでほとんど食べなかったからです。まず、食材そのもののにおいがダメなものが多かったので、大丈夫なものを見つけるのに手間と時間をかけました。包装を開けたとたん刺激を感じるもの、火にかけると刺激を感じるものがあり、それをうまく避けなければなりません。私は第1章〔2〕−aにも書いたとおり、ここ2年くらいは「(反応が起きなかったとしても)体に悪そうなものは原則として禁止」という方法はとっていません。CS反応が起きるものだけを避け、それ以外は、食べられるものは何でも食べています。調理中や食事中に刺激を感じたりぐあい悪くなったりしない限り、何でも食べているということです。

 刺激のある食品は、よく、庭にポータブル・コンロ(ハロゲン・コンロ)を出して、下ゆでしてから調理しました。家の中で下ゆですると、湯気が上がって部屋中に刺激臭が充満してしまうからです。とにかく工夫して食べられるものを増やし、食べられるだけ食べました。新しい食事法を試し始めてから3ヶ月くらいは、一日が食事の支度だけで終わってしまった感がありました。しかし、食事の準備をするのは「生きることそのもの」という感じがして楽しかったです。

○新しい食事法の効果
 その食事法をはじめて、たったの1週間で劇的な変化がありました。以下のようなものです。

・視野が明るく広くなった。
・物事をよく考えられるようになった。
・物忘れしなくなった。
・反射神経がアップした。
・体が軽くなり、動きやすくなった。
・精神が集中できるようになった。
・車酔いしなくなった。助手席で地図を見ても平気になった。
・不眠症は完治。朝までぐっすり眠れるようになった。
・食前・食後の体の不調が治った。気が遠くなったり眠くなったりしない。
・気分がよくなり、何もかも楽しくて仕方がない。


 不眠症が治ったのは本当にうれしかったです。それまでは朝までゴロゴロ寝返りを打っていて眠れなかったのですが、まったく変わり、寝床についたとたん寝つき、朝までぐっすり寝られるようになりました。よく寝られる幸福というのは何物にもかえがたいものです。健康の源です。反射神経・運動機能の回復もめざましかったです。それまでははっきり言って「どんくさい」。ものをぽろぽろ落としたり、うまく運べなかったりしていたのですが、それが回復しました。夫が物を放っても、パッと受け取れるようになりました。物がテーブルから落ちそうになっても、さっと手を伸ばしてとれるようになりました。「どんくさい」のは生まれつきではなかったようです。車酔いしなくなったのも驚きました。それまではただ助手席に乗っているだけで、すでにぐあい悪かったのですが、風景を楽しめるようになったし、細かい字を読んでも平気です。CSの人は車酔いしやすい人が多いみたいですが、車酔いしなくなったというのは、回復の1つの指標といってもよいのではないでしょうか。

○ 気分が明るくなった
 気分の変化は最もうれしかったことです。それまでは、どんより暗いというか、物憂げというか、何も考えていないというか、無感動な感じでしたが、食事を変えてからは、何もかもが楽しくて仕方ないのです。口の端が自然に上に上がっていました。脳内麻薬が次々出てくるという感じです。この時は「こんなに幸せなら、病気なんて治らなくてもいいのではないか」と思うほどでした。このような変化は、新しい食事法を始めてからたった1週間のうちに起きてきました。びっくりするほどの効果です。その後も同じように続けたら、CS症状はどんどん回復していきました。日用品に対する過敏性が一気に下がり、使える物が増えていきました。この食事法が私には合っていたのでしょう。最初の3ヶ月は、それまで不足していた栄養素がどんどん体に吸収されていく感じがありました。乾いた土に水がしみこむような感じです。食事量もそれまでの2倍は軽く食べていました。夫の1.5倍くらいの量です。何を食べてもおいしいし、いくらでも食べられました。幸せでした。

○ 原理
 なぜこんなにも、新しい食事法が功を奏したのでしょうか。今振り返ってみると、つまり、10年以上自己流のアレルギー食をしてきて、本来体に必要な栄養が枯渇してしまっていたのでしょう。そのため神経伝達や運動機能に必要な栄養が補給されず、症状を起こしていたのだと思われます。その不足していた栄養が一気に体に入ったので、劇的な回復が起こったのです。要するに、アレルギー食は私の体質には合っていなかったのに、それを長期間漫然と続けてしまったことに問題があったのです。自分から考えずに無批判に、何となく1つの食事法を続けてしまったこと、それを徹底してやったこと、極端な食事法であったことが栄養バランスの不調和を招き、体力の低下を起こしてしまっていたのです。また、2001年にCSが重症化してからは、反応を起こす食品が一気に増えてしまい、これが栄養不足に拍車をかけました。

○ 人によって合う食事法は違う
 ここで1つ断っておきたいのですが、私はアレルギー食そのものを批判しているわけではありません。この食事法のおかげでひどいアレルギー症状から回復した人もいます。ただ、その食事法が私の体質には合っていなかったということです。また、私が行った食事法が万人に合っているとは思いません。私にはよい食事法でしたが…。 年齢によっても適した食事法は違ってくるでしょう。やはりその人その人の体質にあった食事法がそれぞれあるということです。

 私が自分の体験から導き出したことは、次のようなことです。

1.人によって合う食事法は違う。いろいろなものを試して合うものを見つけた方がよい。
2.効果がない食事法を漫然と続けない方がよい。
3.極端な食事法(ある食品を一切取らないなど)にはリスクがある。
4.1つの食事法を続ける時は、長期的な影響にも留意した方がよい。


○ 病から回復した女性の例
 私の知り合いの例を一例引きたいと思います。この人は年齢が60歳くらい。女性。3年くらい前から寒気やのぼせがひどくなり、気分もふさぎがちで、ぐあいが悪くて仕方がなかったそうです。(この方はCSではありません。) 病院では診断がつかなかったので、代替療法をいろいろ試してみましたが、はかばかしくありませんでした。そんなとき、人から勧められて玄米正食を試してみたら、はじめの1週間で急速に回復し、その後もぐんぐん回復して体調がよくなっていきました。その頃は人に会うたびに、「私はよくなったの。体の調子がよくてうれしくて仕方がないの。」と言っていたそうです。3ヶ月たってすっかりよくなったのですが、玄米正食はそのまま続けていました。その人は、玄米正食を紹介してくれた人から「体がよくなったら元の食事に戻した方がよい」と言われていたのですが、こんなに体によい食事なら続けた方がよいと思って、自己判断で続けていました。そうしたら、まただんだんぐあいが悪くなってきてしまいました。紹介してくれた人の二度目の忠告で、今度は本当に玄米正食をやめ、元の食事に戻しました。その後、その人は何の問題もなく、健康なままで現在まで暮らしています。

○ 1つの方法に固執しない
 私の知り合いの医師が次のようなことを言っていました。「治療食はいつまでも続けるものではない。治ったらやめた方がよい。1つのものに執着しないで、その時々に体が欲するものを食べるとよい。」私もこの意見に賛成です。食事法を書いた本には、「この方法は万能だ。一生続けていきなさい。」というようなものが多いように思います。食事法が1つの信仰のようなものになっている感じです。「食事法」というのは本来、人間を強く引きつけてしまうものなのでしょう。特に、病気になってしまった人の思い入れは、強いものがあります。しかし、私の体験から、1つの食事法に固執しない方がいいと思います。

○ 人生観の変化
 私は新しい食事法を始めてから3ヶ月ほど経過したら、それまでの大量食いは一段落して、普通の人と同じ食事量に戻りました。不足していた栄養が充足したようでした。その後も同じ路線で、ときどき変化を加えながら食べています。新しい食事法は、私の人生観にも変化をもたらしました。それまでは、食事に執着せず、あっさりと生きていくのが理想でしたが(そのため「粗食」や「少食」の考え方に同調していました)、新しい食事法を試してからは、人生の楽しみが増えたという感じがしています。食べ物がこれほど私の生活を豊かにしてくれるとは思いませんでした。以前の”うすい”暮らしよりも、生活のあらゆる面に積極性が出てきました。いろいろなことを以前よりも楽しめるようになりました。食べることそのものが人生の喜びです。私はこの暮らしをとても気に入っています。

○ 様々な食事法
 世の中には様々な健康法・食事法があふれています。書店や図書館の書棚をみると、実に数多くの食事法が目にとまります。それらは1つ1つが独特で、正反対な内容の物もあります。例えば、一方では「砂糖は体によくないから摂らない方がよい」と書いてあり、もう一方では「砂糖は脳に栄養を与えるから摂った方がよい」と書いてあったりします。健康になるための食事法は、私が調べた限りでは次のように分類できます。

・ある病気の治療のために考え出された食事法で、研究によってある程度効果が確認されているもの(例:糖尿病食 )
・上記のものを特定疾患以外の人々にも勧めるもの
・ある研究から派生したもの(例:動物実験の結果を人間に当てはめたもの、細胞レベルでの実験結果を人間に当てはめたものなど)
・医師が臨床上経験的につくり上げたもの
・個人が実体験によりつくり上げたもの
・個人の思想からつくり上げたもの
・宗教の教義などから派生したもの
・民間伝承などから派生したもの
・上記の様々な食事法が分裂したり融合したりしてできあがったもの


いろいろあるので、どれが正しいのか適切なのか迷ってしまいます。食事法についてのいくつかの本には、「この方法が一番すばらしい。誰もがこの方法を採用すれば健康になれる」という書き方をしています。しかし、人によって体質・持って生まれたものは違うので、すべての人に適した食事法というのはないのではないかと私は思っています。人それぞれ、その人に合う食事法は違うのではないでしょうか。

○ よい食事法の見つけ方
 以下が、私が提案する、自分に合う食事法を見つける方法です。

1. いろいろな食事法の考え方に触れ、数多く試してみる。(様々な食事法を調べるための方法は第5章{資料を活用する}を参考にして下さい。)
2. ある食事法を試してみて効果があるなら続ける。効果がなさそうならやめて次のものを試す。
3. その時々の体の状態に合う食事法を採用する。
4. 極端な方法(ある食品を一切取らないなど)に注意する。


 食べ物は「薬」です。体に合う食べ物・不足している栄養をとると、体中にエネルギーがしみ込んでいく感覚があり、活力が湧いてきます。自分にあった食事法を見つけていって下さい。


〔2〕栄養補助食品(サプリメント)

○ ビタミンの効果を実感した出来事
 2002年10月に、CS患者を診ている開業医のところに診察を受けにいきました。まずひととおり問診を受けた後、「ビタミン剤の点滴」をすることになりました。その医師はこれまでもCS患者にビタミン剤の点滴を行ってきており、それなりに効果を上げているようでした。

 3日間通って2時間ずつビタミン剤の点滴を受けました。総合ビタミン剤だったと記憶しています。まず、1日目の点滴が終わった時に、自分でもびっくりするくらい体に活力が湧いてきて、気分がよくなりました。その頃、私はまだ体調がとても悪く、家から病院に行くだけでフラフラになってしまっていたのですが、帰りは足取りも軽く楽に帰ることができました。夫が付き添ってくれましたが、夫も私の変わりぶりに驚いていました。翌日までにビタミン剤は体から排泄されてしまったらしく、また、だるくて元気のない私に戻ってしまいました。

 2日目、3日目は夫の付き添いなしで、私一人で車を運転していきました。行きはつらいのですが、帰りは楽ちんです。3日間点滴をして、ずいぶん元気になりました。しかし、やはり、ビタミン剤が排出されるに従って、その効果は消えていってしまいました。

○ サプリメントを飲む
 私がビタミン剤で著しく効果が出るタイプだということを見て、医師は経口でビタミン剤を取るように勧めてくれました。この時の処方は次のようなものでした。

・総合ビタミン・ミネラル剤を摂る。
・ビタミンCを1日4000mg摂る。


総合ビタミン・ミネラル剤は、1992年頃から10年以上飲み続けていたので、それをそのまま続けていくことにしました。新たにビタミンCを4000mgずつ飲むことにしました。それまでもビタミンCを単体で飲もうとしたことは何度かあったのですが、胃の痛みが強く出るので飲めずにいました。しかし、点滴でこれだけ効果があるということが解ったので、胃が痛くなったとしても我慢して何とか飲んでいけないかと考えました。市販のいくつかのビタミンC剤を試した結果、1種類だけCS反応が起こらず胃にも刺激が少なそうなものが見つかりました。

 飲み始めて最初の1週間は猛烈な胃の痛みでした。途中で何度かやめようと思いましたが、昼間も寝たきりで(胃が痛くて起きられない)、1週間飲み続けました。1週間を過ぎたあたりから、胃の痛みが少し軽くなってきて起きられるようになりました。多分それまでは、体に栄養が不足していて、胃も弱っていたのでしょう。最初は胃に対するビタミンC剤の害が、効果よりも勝っていましたが、1週間のうちにそれが逆転したようです。最初の1週間を過ぎると、ビタミンC剤を飲んでもあまり胃は痛まなくなったし、他の食物に対しても胃が丈夫になりました。

○ ビタミンC療法の経過
 ビタミンC剤を飲むと、飲んだ直後に、体に活力がみなぎってくるような感じがありました。手足の先まで体の隅々にエネルギーが行き届くような感覚でした。4000mgを1日8回に分けて飲んでいたのですが、半日くらい飲み忘れると、クターッと元気がなくなってしまうのです。飲んだものはすぐに尿中に排泄されていくようでした。それで体の中のビタミンCが切れないように、こまめに補充していました。

 それを、2003年10月くらいまで、約1年間続けていました。1年くらいたつと、不思議なことに、少しずつビタミンC剤を飲む量が減ってきました。これは意図してそうなったというより、自然と体が欲しなくなったという感じです。体が必要だと感じる時だけ飲むようにしていました。2003年10月から少しずつ量を減らしていき、2004年2月にはまったく必要なくなりました。飲んだあとの体にエネルギーが満ちる感覚もなくなっていました。多分ビタミンC療法の効果は十分発揮され、体の機能が回復したので、これ以上必要なくなったのだと思います。現在は、総合ビタミン・ミネラル剤だけを続けています。このサプリメントは1日2回飲んでいるのですが、現在でも1日飲み忘れただけで、体調が悪くなります。体がまだ必要としているみたいです。

○ ビタミンCの効果
 ビタミンCを1年以上飲み続けてみて、現れてきた効果は次のようなものです。

・だるさが軽くなり、体を動かしやすくなった。
・胃弱だったのが、前より胃が丈夫になった。
・肌が丈夫になった。(それまではカサカサしてかぶれやすかった。)
・気分がよくなった。


このビタミンC療法と合わせて、前項で書いたように、2003年3月から新しい食事療法を始めました。その療法が功を奏して、体調はぐんぐん回復しました。日用品に対する過敏性が下がっていったのも前述の通りです。

○ 毛髪検査
 ビタミン療法を勧めてくれた開業医の元で「毛髪検査」を行いました。これは患者の髪の毛のミネラル成分を分析する検査です。医師の説明によると、この検査は「体にどれだけ有害なミネラルが蓄積しているのか」また、「体内の必須ミネラルは不足していないか」を見るためのものだということでした。2002年10月に毛髪検査をした時は、次のような結果が出ました。

・有害ミネラルは、ほとんどの種類が低値。ヒ素だけ少し高め。
・必須ミネラルは、ほとんどのものが極端に不足している。特に銅・マンガン・クロムが不足。


日本人は魚介類を多く摂取するので、健康な人でも水銀の数値は欧米人より高く出るそうです。私はそれまで10年以上ほとんど魚介類を摂らなかったので、そのため水銀の値は低く出たようです。必須ミネラルは一般の人に比べてかなり不足しており、栄養失調になっていることがうかがわれました。この結果を受けて、前述のビタミン剤の他に単体で、銅・マンガンのサプリメントを摂ることにしました。クロムも摂りたかったのですが、これは体に合うものが見つかりませんでした。銅・マンガンを単体で摂る療法も、初めのうちは効果を実感できました。頭の霧が晴れてすっきりするような感覚がありました。これも続けていくうちに、ビタミンCのようにだんだん量が減ってきて、2004年10月にはまったく飲まなくても済むようになりました。サプリメントに加えて、前述のように、2003年3月から新しい食事法を導入したので、体調がどんどんよくなっていきました。これまでの栄養不足が改善されていったのだろうと思います。

○ 2回目の毛髪検査
 2004年6月に2回目の毛髪検査をしました。前回から1年以上たっています。その間にどれだけ栄養状態が改善されたか、有害ミネラルは蓄積していないかをみるのが目的でした。検査結果は次のように出ました。

・有害ミネラルは全体的に前回よりも高値。水銀は基準値よりも高値になった。
・必須ミネラルは前回と比べてほとんど変化なし。


有害ミネラルが増えたのは合点がいきます。前回の検査の前はほとんど動物性食品を摂りませんでした。また、有害だと思われるものは徹底的に避ける食事法をしていました。2003年3月から、新しい食事法を試していき、いろんな食品から栄養を摂るようにしました。肉類や魚介類の摂取も増えました。その結果、体内に有害ミネラルが蓄積してしまったと考えられます。この検査の結果を受けて、もっと有害物質を減らす食事法に改めるべきなのでしょうか? 私はそうは思いませんでした。検査結果はこのようになりましたが、体調の方は、前回の検査の時よりずっとよくなっていたからです。それは比べようがないくらいの回復です。私は体をよくすることを目的に治療しているのであって、検査結果をよくするためにしているわけではありません。このままの食事を続けていこうと思いました。

○ 毛髪検査の信頼性
 体調が回復したにもかかわらず、必須ミネラルの数値はほとんど変わらなかったのはなぜでしょうか。特に、銅・マンガンは、サプリメントを単体で1年以上毎日摂取しているにもかかわらず、数値はほとんど変わりありませんでした。これはどう見ても矛盾する結果です。しかし、私はこの時すでに、「毛髪検査は体内のミネラルの状態をはかれないのではないか」という疑問を持っていました。これは、図書館で読んだ本で偶然知ったことです。アメリカの医師会の見解では「毛髪検査の結果は体内の栄養状態を反映していない」ということです。*1 つまり、毛髪検査の結果によって、体内でのミネラルの過不足を測ることはできないということです。2回目の検査結果を受けて、このような疑問に答えが出たと思いました。

 その後、さらに別の本で、毛髪検査の信頼性について読み、私が疑問に思っていたことにはっきりとした答えが得られました。毛髪に含まれている微量元素(ミネラル)の量と、全身のミネラル量との間には、相関がないそうです。毛髪は、身体から移行したミネラル分の他に、さまざまな要素によってミネラルを蓄えます。例えば、大気汚染によって、空気中から微量元素が移行してきます。また、整髪料や、シャンプーによってもミネラルの量は大きな影響を受けます。私が読んだ本には、シャンプーがヒ素によって汚染されていたために、毛髪から大量のヒ素が検出された例が載っています。同じシャンプーを使っていた人の毛髪から、共通してヒ素が検出されたために、原因がわかりました。このように、体内からの移行の他に、外来の到来物があるために、毛髪検査は、全身状態を反映することはできないのです。*2

○ ビタミンの大量摂取は安全か
 〔1〕でも書いたとおり、ある治療法が、効果があるかどうかは、自分の体にきいてみるのが一番です。体感で効果がわかるものは続けていけばよいし、よくわからないものはやめてしまってかまわないでしょう。また、その時々で体が欲するものは違うので、効果がある時は使用し、効果が感じられなくなったらやめてもいいと思います。

 ビタミン療法については、私はもともと乗り気ではありませんでした。次のような疑問を持っていたからです。

・ビタミンを食事以外のものから人工的に摂取する必要があるのか。
・大量摂取してからだに害はないのか。


しかし、たまたまビタミンの点滴をやってみたら、著効だったので、この方法は私の体に合っていると思い、やってみることにしました。しかし、ビタミン療法をやってめざましい効果を感じている最中でさえ、上記のような疑問は頭から離れませんでした。ビタミン剤に関していろいろ調べてみましたが、水溶性ビタミンは大量摂取しても尿中に排泄されるので問題ないということです。しかし、現在知られていないような害が後に発見されるかもしれません。*3 また、同時に、大量にビタミン剤を摂取する治療法の根拠について調べてみましたが、はっきりとした根拠は見つかりませんでした。「やってみて効果があれば、それはよい治療法」という考え方があります。確かにその通りかもしれませんが、副作用などもあり得ますし、私は慎重に行うようにしています。

 日本人のビタミンCの1日の所要量は100mgです。*4 私は一時期この40倍を摂っていましたから、常識から考えてもいくら何でも多すぎです。しかし、当時はその量を摂らないと効果が出ませんでした。もし、飲んだ直後にあれだけの効果を感じられなかったら、こんなに大量摂取できなかったと思います。だから、ビタミンC剤を大量に飲んでみても、すぐに目に見えるような効果が現れない人は、ほどほどのの量を摂り続けた方がいいのではないかと思います。例えば、1日100〜300mgであれば効果もリスクも無難なところではないでしょうか。これまで何度も繰り返してきたように、人それぞれ自分にあった方法があるということです。

○ サプリメントの入手方法
 サプリメントを入手するための具体的な方法を紹介します。私は体に合わないものが多いので、サプリメントを選ぶ時も慎重に行いました。まずビタミンCですが、これは国産のものを何種類か試してみました。5種類試してなんとか飲んで行けそうなのは1種類だけでした。試したものの中には、飲む前から目やのどに刺激を感じるもの、飲むとぐあい悪くなるものがありましたが、それを避けて選びました。

 総合ビタミン・ミネラル剤、銅・マンガン剤は、インターネット通販でアメリカの会社から取り寄せました。日本製のものは原材料がよくわからないものがほとんどです。アメリカ製のものは原材料を細かく明記してあるものが多く、品数も豊富です。

 私はビール酵母にアレルギーがあるので、そのために飲めないサプリメントが多いのです。国産のサプリメントでビタミンB剤を含むもの・クロム製剤は、ほとんどがビール酵母を含んでいました。そのため国産のものはあきらめ、アメリカ製で探すことにしました。アメリカはサプリメントの流通の歴史が日本より長いので、様々な商品が開発されています。アレルギー患者に配慮したアレルゲンフリーの商品も数多く出ているので、私はその中から選びました。私が現在飲んでいるアレルゲンフリーの商品は、原料に卵・酵母・牛乳・小麦を使用していません。また、人工の香料・着色料を使っていないものを選びました。当然、成分表示や注意書きは英語なので、こまめに辞書を引いて、内容を確認しました。アレルゲンフリーの商品であっても、なおCSのために服用できないものが多かったので、選別するのに、第1章〔4〕−c(ものを購入する際の注意)の方法を行いました。

*1 『代替療法の医学的証拠』米国医師会/編  泉書房/刊
*2 『証人席の微量元素』ジョン・レニハン/著 地人書館/刊
*3 ビタミン療法の有害性を警告する本も出版されています。  『ビタミン・ショック』ハンス・ウルリッヒ・グリム/著 家の光協会/刊
*4 1999年厚生省(現・厚生労働省)による。


〔3〕運動
 体力をつけるために運動は効果がある方法です。また、体の新陳代謝を高めるため、自律神経の調子を整えるためにも、運動は効果があります。CSについての本を読むと、運動をすることを勧められています。

 私の場合は、引越前(〜2002年)は自宅で筋肉トレーニングをしていました。1日10分程度、腹筋・背筋・スクワットをしていました。体に必要な最低限の筋肉がつくと、姿勢を維持しやすくなり、だるさが減りました。

 2002年に引越をしてからは、家事の量が増えたので、取り立てて運動はしていません。しかし、日常生活でよく体を動かすようになりました。特に洗濯(足踏み洗い)は、定期的に一定時間有酸素運動をする機会になっています。

 体力向上を図って、少しずつ運動量を上げていこうと思ったのですが、その試みは失敗に終わっています。私の場合、1日の運動の許容量が決まっていて、それ以上運動すると決まって体調を崩します。2003年頃、体力をつけるためにステッパーで1日20分足踏み運動をしてみました。やっている最中は特に体がきついという感じはなく、血行もよくなって爽快感があるのですが、その後2,3日は筋肉痛と疲労感とだるさで何も手につかなくなってしまいます。ときには運動したあと、熱が出ることもあります。

 2004年8月から自家用車に乗れなくなり、バスで移動することになったのですが、これによって運動量はかなり増えました。車に乗ってばかりいると、運動不足になりやすいというのが実感できました。バスに乗ると、歩いたり、走ったり、重い荷物を運んだりする機会が増えました。これによって体力がついて体調がよくなったかというとそうではなく、1日に運動したその分しっかり疲れがたまって、体調が悪くなってしまうのです。その疲れがその後何日も続きます。最低限の家事をこなすことも難しくなるので、自然と運動量をセーブするようになりました。

 一般の人は、運動をすればそれだけ筋力がつき、心肺機能が上がって、体力が向上するのでしょう。運動による疲労も、少し休めば解消します。私の場合は、この一般的なメカニズムのどこかに障害があって、運動が体力向上に結びつかないようなのです。現在は家事をしているだけで手一杯なので、それ以上運動をしないようにしています。これは、CSが今より回復していけばもっといい状態に変わっていくのではないかと思っています。

(2005年4月)
 

ホームへ戻る
このページのトップへ
第4章へ続く
第2章に戻る