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第1章  電磁波過敏症(携帯電話)その3


その1 
〔1〕電磁波過敏症の経緯――発症から現在まで (2011年10月30日更新)

その2
 〔2〕観察――電磁波の感じ方と症状の出方
(2011年10月 30日更新)
   a.中継アンテナへの反応
   b.症状
   c.携帯電話機(端末)への反応
   d.金属製品による症状

その3
 〔3〕対策
(2011年10月 30日更新)
   a.電磁波発生源を避ける
   b.金属製品の除去
   c.シールド


〔3〕対策

a.電磁波発生源を避ける
 携帯電話のアンテナの位置をよく知って、なるべく近寄らないようにしました。日常的に出かける場所については、地図にアンテナ位置をプロットしておき、その場所に近づかないようにし、通り過ぎなければならないときでも、とどまらず、すばやく通り過ぎるようにしました。

 また、携帯電話の電磁波が強くなる時間帯や時期をよく観察して、それに備えるようにしました。以下のような電磁波カレンダーをつくりました。

【電磁波カレンダー 】




 基本的に携帯電話の電磁波は避けることができません。しかし、このように時間的な強弱の変化を知っていれば、自分の体調を管理することはできます。電磁波が強いと予想される時期に体調が悪ければ(たいていはそうなります)、それは電磁波が原因だとわかり、いつ症状が回復するのかも予測できます。自分の置かれている状況を把握して予想を立てられることは、私にとっては大きな安心感となりました。避けられないまでも、自分で生活をコントロールしている感じを持てました。

 2003年に自宅から100mのところに携帯電話の中継アンテナを見つけたときには、引越をするべきか悩みました。2002年に命からがらという感じで仙台から避難してきてから、まだ1年もたっていません。引越からアンテナ発見までの期間、家を住みよい場所にするために、ひたすらCS対策をしてきました。また、自分が特殊な体質であることを周囲から奇異な目で見られないように、近所の人々ともよい関係を築くよう努力してきました。幸い、近所の人々はよい人ばかりで、私の生活事情に同情してくれて、協力してくれるようになっていました。

 私は「いずれこのアンテナが原因で引っ越しせざるを得なくなるかもしれない、しかし、今はまだ通常の生活もままならない状態で、引越しても新しいところでやっていけるだけの力はない。もっと体調がよくなるまで、ここで何とか頑張っていこう」と決心したのでした。そして、その後7年間をこの家で過ごし、最終的には2010年に、このアンテナが一因となって引越をすることになったのです。

○避難場所を探す
 自宅から100mのところに中継アンテナがあるので、電磁波の強い時期には家にいても大変つらい症状が出ました。そのため、小規模な避難場所を求めて模索する日々が続きました。携帯アンテナは約500m〜1kmおきにあるので、アンテナとアンテナの中間地点にいれば、受ける影響を小さく抑えることができるはずです(図15)。

アンテナ地図を見ながら、体感で電磁波の弱くなる場所を探し回りました。2003年のことです。しかし、当時は3社の携帯アンテナの他に、PHSがドコモ・KDDI・アステルと3社あり、それが網の目のように通信網をつくっていました。携帯電話のアンテナを避けても、50mおきくらいにPHSのアンテナがあり、避けきれません。また、化学物質過敏症もあるため、夏期には農薬の影響のある場所(農地や公園や河川敷など)も避けなければならず、制約が多すぎて安心できる場所を見つけることは難しかったのです。

 また、年末年始や選挙など、携帯電話の電磁波が強くなる時期は、至る所で電磁波量が増大します。そうすると、ふだんは影響が少ない場所でも、アンテナからの電磁波強度が増すため、反応を起こす場所になってしまうのです。(図16)
年末年始はふだんの100倍以上とも感じられる大量の出力量になるので、市内全体が電磁波の海となったようで逃げる場所を見つけることができませんでした。

 

b.金属製品の除去
 金属製品による症状を軽くするために、生活からなるべく金属製品を取り除くようにしました。目の痛みの起こる生活用品は代用品を探しました。前述のように、金属製のカトラリーや調理器具をプラスチックのものに変えました。また、身につけるものから金属製品を取り除いていきました。本で調べていて、「金属製品を身につけていると、それがアンテナとなってESの症状が出る」との記述を読んだからです。しかし、私は本当に金属除去の効果があるのかどうか確かめる必要があると思いました。もし効果がないのだとしたら、無駄な対策はしたくありません。

 私はまず、サンダルについている金具を、右足の分だけ取り除いてみました。それで1日外出してみました。帰宅したとき、心持ち右足だけが軽いような感じもしましたが、はっきりとした違いがわかりません。1日だけではまだわからないと思い、その後2週間、そのサンダルを履いてみました。1週間を過ぎた頃から明らかに右足の方が軽く感じられるようになり、夜の足のだるさや筋肉痛、重さが違ってきました。左足はだるくて筋肉が張っていますが、右足はそれが少なかったです。2週間後、私は左足の金具もはずしてみました。そうしたら、両足とも軽くなり、歩きやすくなりました。金属を除去することで、筋肉の症状に効果があることがわかりました。

 その翌年、今度は別のサンダルを履いてみましたが、足がとてもだるくなりました。古いサンダルを出してきて履いたので、底が減ってクッション機能が弱くなっていて、足が疲れやすいのだと思いました。私は金属除去のことをうっかり忘れていました。それを3日ほど履いた後、ようやく金具が原因だと気づきました。金具を取り外してみたら、一気に足が軽くなったのです! 金属除去の効果はここまであるのかと驚きました。

 冬になると札幌の道路は凍結して滑りやすくなります。そのため、スパイクピンがついた靴が売られています。私はスパイクピンがついている靴を履いていたのですが、非常に足が疲れました。それで、ピンのない靴に変えたら、足のだるさはおさまっていきました。

 他に金属除去をしたのは次のような製品です。

◆髪どめ・ヘアピン
 ヘアピンは2001年に使えなくなってしまいました。代わりに髪ゴムでしばったりしていたのですが、ゴムの匂いによるCS反応でぐあい悪くなってしまいます。ゴムを伸ばしてよく干してから使っていましたが、やはり化学的な匂いがしてつらかったです。その後、木綿の裁縫用の黒い糸で縛るようになりました。ゴムのように伸び縮みしないので、しっかりと留まらず、ほどけてきてしまいます。糸で大きめの輪を作って何度も髪に巻き付けると、重なった糸同士の摩擦力でほどけなくなります。現在でもヘアピンや髪ゴムが必要なところには、糸を使っています。

 髪どめ(バレッタ)は、プラスチック製のものでも、ちょうつがいやバネのところに金属が使われていることが多いです。この金具の部分がチリチリとした痛みを引き起こします。オールメタルフリーのものを探すのが大変でしたが、ついに見つけました。(写真11) この髪どめはオールプラスチックである上に、素材の匂いが弱く、私でも使うことができました。適度な弾力性があって、しっかりととまります。札幌市内のイトーヨーカドーで2005年に見つけました。プラスチック製なのに壊れにくいです。

 これを使う前には別のタイプ(図17)を使っていましたが、はずれやすい上に棒が折れやすく、使い勝手がよくありませんでした。

 



◆下着
 ブラジャーのホックやアジャスターなど金属製の部品をすべてプラスチック製のものに替えました。部品は大型手芸店で買いました。(札幌では「カナリア」という店で売っていました。)金属製のワイヤーははずしました。脇のところに金属の針金が入っていたのではずして、プラスチック板を切ったものを代わりに入れました。

◆ファスナー
 スカートなどのファスナーをすべてプラスチック製のスナップボタンにつけなおしました。ファスナーをほどいてはずし、適当に加工してボタンあきにします。ジャンパー・コート類のファスナーもはずしてボタンにしました。ブラウスの包みボタンが金属製だったので、プラスチック製のボタンに替えました。ちなみに、オールメタルフリーのファスナーがないかと探してみましたが、存在しないようです。手芸店の人の話によると、スライダーの部分だけは強度が必要なので、金属でつくるしかないそうです。

◆眼鏡
 眼鏡をメタルフリーのものにしました。私がつくったのは「アイフォリクス」http://www.eyephorics.co.jp/。スイスのメーカーのものです。はじめは眼鏡店でフレームだけプラスチックのものを探したのですが、ちょうつがいのところもメタルフリーのものを見つけて驚きました(写真12・13)。

   

 

 私はもともと視力に問題がなかったので、それまで眼鏡をかけたことがありませんでした。この時つくった眼鏡も度が入っていないものです。2001年に強い目の痛みの発作を起こすようになってから、目を保護する必要性を感じていました。最初は何が原因かわかりませんでしたが、常に目の痛みを感じ、視界がまぶしく、刺激を感じていました。太陽光や照明の光の反射がまぶしく、つらく感じられました。私が考えたのは、紫外線を防ぐUVカットの眼鏡をかければ、目の負担が減って痛みも軽くなるのではないかということでした。当時は化学物質や金属製品など、多くのものに目の痛みを感じており、どのように対策したらよいのか、はかりかねていました。2002年頃からは携帯電話を初めとする通信電波にも反応していることがわかってきました。

 UVカットの色つきサングラスをかければ、まぶしい光を防いで目の負担を軽くできるかもしれないし、紫外線を防ぐことによる効果も期待できます。ダイレクトに原因を防ぐことはできなくても、いわば援軍として眼鏡を活用できないかと考えていました。

○まずは安いものから
 2002年の12月から、100円ショップで買ったサングラスを使って実験を始めました。初めから高価な眼鏡を買って効果がなかった場合、大きな損失になります。まずは低価格のもので実験してみようと思いました。

 私が買ったのは淡い青色が入ったUVカットのサングラスです。外出時には、これを常にかけているようになりました。かけるようになると、明らかに視界の刺激が減りました。外出のとき、昼も夜も、晴天時も曇天時も、外でも屋内でもかけていました。はずすとすぐに強烈な光の刺激が来て、目が痛くなるからです。そのサングラスは少し派手なデザインで、直射日光がないようなところでかけているのは場違いな感じがありました。もしこのサングラスが目の負担を減らす効果がなかったら、人目を気にして、かけ続けていることはできなかったでしょう。しかし、私にとってはそれをしのぐだけのはっきりした効果が感じられ、手放すことができなくなりました。そのサングラスはちょうつがいの部分に金具が使われていたので、心配でした。私は金属製品を身体に近づけると筋肉痛などの症状が出るからです。そのサングラスをかけると、金属部品のあたりにピリピリと刺激がありましたが、小さな症状ですみました。目の痛みを軽減する効果はそれをしのぐほど大きいものでした。

○本格的なメガネをつくる
 1ヶ月ほど100円の眼鏡の効果を実感した後、私はもっと標準的なデザインの眼鏡をつくることにしました。普通の眼鏡のようなデザインであれば、どこにでもかけていくことができます。眼鏡店に行って、フレームがプラスチックのものを探していると、店員さんがオールメタルフリーのものを紹介してくれました。これはフレームの軽量化のために開発された製品だそうです。ちょうつがいの部分にも金属を使っていないので、私にとってはまたとない最適な製品となります。化学物質過敏症の私にとっては、眼鏡の素材に対するCS反応もチェックしなければならない点です。眼鏡店には様々な製品が置いてあり、店内の建材や空調から発散される化学物質もあります。私は眼鏡のサンプルの匂いをよくかいで体への反応を調べましたが、はっきりとした有害性は感じられなかったので、注文することにしました。後はつくってみて、長期間使っていくときの影響を確認するしかないようです。

 私はできれば透明のレンズにしたかったのですが、色つきのものでないと光の刺激を抑えられないかもしれない、とその点も気がかりでした。UVカットの透明レンズのサンプルを借りて、目への作用や物の見え方を試してみました。UVカットレンズを通した方が視界のぎらぎらとした刺激が減り、目の負担が減るように感じました。それで、グレーのフレームと透明なUVカットレンズの組み合わせで、おとなしいデザインの眼鏡を作ってもらうことにしました。

 1週間ほどで注文した眼鏡はできてきました。幸い、眼鏡のプラスチックなどにCS反応を起こすこともなく使うことができました。この眼鏡をかけると、視界のギラギラした刺激が減り、ものを見やすくなります。それまでは外界の事物をじっと見つめようとすると目に強い痛みが走るので、目をそらすように、焦点をぼやけさせてみていました。この眼鏡をかけると、ものに焦点を合わせてはっきりと見ることができるようになりました。目の痛みが格段に楽になりました。夜寝ているとき以外は常にかけるようになりました。

 この眼鏡は紫外線を防いで、目の負担を減らしてくれます。それに加えて、私は体感で、この眼鏡は携帯電話などの電磁波も防いでくれているように感じました。電磁波に詳しい人に相談してみると、UV眼鏡が紫外線を反射するしくみはいくつか種類があるようですが、中には通信電波を反射する作用を持つものもあるのではないかということでした。

 眼鏡をかけて携帯電話の中継アンテナの近くに行ったとき、アンテナからの電磁波が前方から来る場合には、眼鏡がその刺激を反射して防いでくれるようです(図18)。アンテナが背中側にあるときは、後方から来た電磁波の波が、眼鏡のレンズの内側に反射するようで、ときどきギラッと強い痛みが走ることがあります。電磁波の発生源とレンズの角度によって、反射する角度が決まるので、常に刺激があるわけではないのですが、ちょうど角度があったときに刺激が目に刺さるようです。(図19)

  

 1年後に同じメーカーでリムレスの眼鏡をつくりましたが、これは強い刺激があって使えませんでした。リムレスなので、レンズを接着剤でつけているのだそうです。この接着剤が私にはよくなかったようです。眼鏡は高い買物なので、はずれると経済的に厳しいです。1つでも使える眼鏡ができてよかったです。

○ゴーグル
 目の痛みが強いときは、UVカット眼鏡の上から、さらにUVカットのゴーグルをかけて二重にしました。かなり楽になります。UVカットのゴーグルはホームセンターで作業用に売っていたものです (スモール・データ・バンク「ゴーグル」参照) 。 二重にするとパソコンの画面を短時間だけなら見られるようになりました。それまでは強い目の痛みが出て、見ることができませんでした。

 ゴーグルは側面からの紫外線なども防いでくれるので、保護効果が高いようです。さらに、ホームセンターで色つきのゴーグルを買ってみました。日差しや刺激の強いときサングラスとして使え、目の負担をさらに軽減する効果があるのではないかと考えたのです。しかし、このゴーグルは素材自体に目の痛みを感じて使うことができませんでした。化学物質が原因なら干すことで刺激を軽減することができるはずです。2年ほど直射日光下で干していましたが、刺激が減ることはありませんでした。私はUVカットや電磁波シールド用の素材に対して、金属製品と同じような反応を起こすことがあるので、それが原因かもしれないと思いました。その後、晴天時用に100円ショップで色の濃いサングラスを買ってみましたが、それもプラスチックへの反応なのか、目が痛くて使えませんでした。私の場合、反応を起こす物質が数多くあるので、はじめにつくった眼鏡は運良く使えて、本当にラッキーだったと思います。

○症状の変化
 2007年頃から、私のCS・ESは様子が変わりはじめ、理由ははっきりとはわからないのですが、透明レンズの眼鏡をかけると、かえって目の痛みが強まるようになってきました。この眼鏡はかけることができなくなってしまいました。その後は、一番はじめに(2002年12月)お試し用に買った100円ショップのサングラスを外出時だけ使うようにしています。色がついているので、まぶしさを防いで楽です。

 2007年頃からの変化については原因を探るのに何年もかかりましたが、どうやら中国大陸からの黄砂や大気汚染の到来が関わっているように感じられます。この点については、後の章「黄砂・越境大気汚染」で詳しく書きたいと思います。

◆パイプ椅子
 パイプ椅子に座ると、パイプの部分がちょうど太ももの後ろ側にあたり、そこからビリビリと刺激が来て座っていられません。全身がだるくてしかたがなくなるので困りました。私は月1回趣味のサークルに参加していましたが、そこの椅子はみんな金属フレームのものばかりでした。その会合は会員の自宅の施設で行っていたので、お願いして、私専用の木製の椅子を置かせてもらうことにしました。それに座ると金属製のものよりずっと体が楽です。木製品の匂いが少し気になりますが、金属製のものより格段に楽になりました。

 2008年の春に、東京で行われる会合に出ることになりました。このとき会場の会議室はすべてパイプ椅子だというので、私は段ボール製の折りたたみ椅子をつくって持っていきました。座り心地はよくないですが、パイプ椅子よりはずっと楽でした。

◆照明の傘
 2002年に引っ越した家では、プラスチックよりも化学物質の発散が少ないだろうということで、金属製の電灯の傘を購入しました。それを設置している部屋にいると目の痛みや頭痛、全身の痛みを感じました。原因がしばらくはっきりしなかったのですが、照明と自分の体の位置関係を観察していくうちに、電灯の傘が原因であることがわかりました。照明に頭を近づけると特に頭痛が強くなります。傘は円錐形をしていたので、パラボラアンテナのように電磁波を集めていたのだと思います。金属製のボールを使っていたときに起きた症状と似ていました。この傘をはずしたら、頭痛などの症状が軽くなりました。金属製の傘の代わりにプラスチック製のものを探しましたが、よいものが見つからなかったので、傘なしの裸電球のまま使うことにしました。

c.シールド
 電磁波対策としてシールドもいろいろ試してみました。化学物質の対策がビニールで覆うことで有効なのだから、電磁波だって覆って害をなくす方法があるはずです。

○シールドクロス
 私が携帯電話に過敏なことを知って、夫の友人が電磁波シールドクロスを送ってくれました。そのクロスは銀の繊維を織り込んであるものでした。これを頭に巻くと有効だということです。しかし、私はクロスの金属臭に具合が悪くなってしまい、使うことができませんでした。

 電磁波過敏症について調べてみると、アルミ箔を帽子の中に入れて頭を覆い、電磁波を防ぐ方法が紹介されていました。しかし、私はアルミ箔自体に強い目の痛みを感じていたし、金属と接触すると痛みを感じていたので、そのような方法をとることはできませんでした。OAエプロンなども「体の一部だけを覆ったところで効果があるのか?」と疑問を投げかける声が多くありました。スウェーデンの携帯電話会社の社員だったパー・セガベック氏は携帯電話の電磁波によって過敏症となり、制限の多い生活を強いられています。氏はスチール製の部屋に住み、外出するときは電磁波防護服を着ます。それは宇宙服のような防護服でした。効果的に電磁波を防ぐには、やはり体の一部を覆うだけではなく、そのくらいの重装備が必要なのだと思い起こさせてくれます。

○シールド小屋
 携帯電話の電磁波強度が強くなったときのつらい症状を抑えるためにシールド小屋のようなものをいくつか試してみました。はじめにやったのは、ステンレス金網を使ったシールド小屋です。幅90cmのものを数m買ってきてつくることにしました。まずこの素材でペンケース大の箱を作り、そこにPHSの電話機を入れます。(図20)そして、自宅の固定電話からかけます。つながりません。うまいぐあいにシールドされているようです。

次に90cm幅の大きな金網を縦に巻いて、円筒形をつくります。上下を網で覆ってその中に私が入ります。そうして効果を見てみることにしました。(図21)      

  

 まずはじめに、私が金網の外に出た状態で、PHSの端末を中に入れて、家の電話からかけてみます。…つながりました。少しでも隙間があるとダメなようです。金網同士の継ぎ目がすかないように、よく押さえて再び電話してみました。今度はつながりませんでした。成功です。そして次に私が中に入りました。上に網をかぶせてもらって、よく押さえます。すると、それまで全身をしばっていたような圧迫感が消え、みるみる体が軽くなったのです。すばらしい!と思うと同時に、本来なら体はこのくらい軽いはずなのに、電磁波の影響でふだんはあんなに強い筋肉痛が起きていたのかと思うと、何とも言えない気持ちになりました。私は10分ほどその小屋に入っていましたが、だんだん頭痛がしてきました。金網の金属の匂いが気持ち悪くて吐き気がします。いくらがんばってもこの匂いは10分が限界だと思いました。体は軽くなったけれど、別の反応が現れてきてしまいました。

 金属の匂いが立ちこめているということは金属の成分が発散して鼻の粘膜に到達しているということです。これもES的によくない効果を及ぼしているように感じました。フラフラになったのでいったん外に出て、働かない頭で考えてみました。外に出た途端、またあの重苦しい筋肉痛が戻ってきてしまいました。

 金網を加工するときや出入りするときに金網の端で手足を傷つけてしまい、そこが赤く腫れてしまいました。かゆみもあります。じんましんのような症状で、金属アレルギーを起こしたようです。そしてこの日からピーナッツを食べるとじんましんが出るようになり、食べられなくなってしまいました。金属臭の問題やアレルギーの問題・・・乗り越える課題はたくさんあるようです。いったん金網によるシールド作戦はやめにしました。金網にさわることでアレルギー症状が出ることが怖かったからです。

○シールドルームづくり
 金網実験の痛手から立ち直り、次に試したのがスチールラックを使ったシールドルームづくりです。これは鉄板を粉体塗装したスチールラックを材料として使うもので、塗装してある分、金属のにおいを抑えることができます。これを組み合わせて箱状のものをつくりました(写真1 5)。

まだ途中でしたが、いったん中に入ってみると、隙間から光が漏れているのが見えました。ここをふさぐ必要があります。アルミ箔やアルミテープはそのものに強い目の痛みを感じるので使えないでしょう。アルミテープは粘着剤によるCS反応の心配もあります。また、完全に密封すると暗いし、息ができなくなるので、一部を金網で覆う必要があります。金網はステンレスむき出しのものだと、二の舞になるので、ビニールで被覆したものを使えばよいと思いました。ホームセンターに見に行きましたが、被覆した金網からは、何ともいえない化学臭・金属臭がしてします。(機械油のような匂いです。)使えるものが見つからず帰ってきました。

 その後、完成に向けてあれこれいじっていたのですが、その中で感じたことは、金属製品に長く接していると、様々な症状が出てきて具合が悪くなるということです。金属の板や部材そのものがビリビリと刺激を帯びており、それを見たりさわったりすると痛みが起こります。そうしているうちに金属によってシールドしようとすると、その金属自体に反応してしまうということに気づき、対策方法を根本的に見直す必要に迫られたのです。スチールのシールドルームは解体され、元のスチールラックに戻り、その後も棚として使用されることになりました。この試みは失敗に終わりました。

○金属板による遮蔽
 携帯電話のアンテナによる反応を見ていると、鉄筋コンクリートや金属壁の建物の陰に隠れると症状が和らぐような感じがあります。特に電磁波が強い場所(大通など)にいったときには、こういった建物の陰に隠れて、直接電磁波を浴びないようにすると、症状が和らぎます。建物が電磁波を遮蔽してくれるからだと思います。まるでついたてか屏風のように遮ってくれます。光源の前についたてを置くとまぶしくなくなるのと同じです。しかし、ついたての裏側は薄暗くなりますが、真っ暗にはなりません。少しずつ光が回り込んでつい立ての裏側にも到達するからです。携帯電話の電磁波もこれと同じで、建物の裏側にまで回り込むのでしょう。体への影響は残ってしまいますが、それでも直接浴びるよりは楽だと感じました。

 私の家は携帯電話の中継アンテナから100mのところにありましたが、家の一部が隣家の陰になっています。(図22・23) ほんのわずかな“陰”でしたが、ここにいると楽でした。

 我が家は木造で壁はモルタル造りでしたが、隣家は防寒のため外壁全体を鉄板でサイディングしていました。この金属が遮蔽材になったようです。私は1階の自分の部屋のベッドを、この遮蔽された空間に置いてみました。ほんのわずかなスペースしかないので、ベッドを斜めに置く羽目になってしまいましたが、こうすると楽です。私はスチール製のベッドを使っていたので、そのため全身の筋肉が痛くなっていたのですが、こうやって建物の陰になると楽でした。

○ES症状が悪化
  2006年頃からワンセグ機能の携帯電話が出るようになり、他にもネットを見たり使い放題のプランが出たりと、通信環境が変化してきました。通話やメール以外にも長時間携帯電話を使う利用者が増えてきました。それに伴い、私のES症状も強まってきたように思います。

 それまで人混みに行ったり、公共交通機関を利用することも何とかできていましたが、2007年頃には難しくなってきました。そして、家にいるときもそれまでとは違う全身の筋肉の痛み・だるさ・頭痛が出るようになり、生活がつらくなってきました。それまでは家事をしたり、CS対策を行ったり、だるさがある中でも何とかこなしていたのですが、2007年頃からちょっと体を動かすのもつらくなり、家事も滞りがちになってきました。化学物質の影響は次々と訪れてくるので、そのたびにきちんと対策していかなければならないのですが、どうしても体が動かず、対策できないことが多くなってきました。また、家事もCS仕様となっているため、一般の人々より手間のかかることが多く、それが次第に滞ってくるようになりました。例えば、私は洗濯機の匂いやカビが苦手で、洗濯をすべて手洗い(浴槽で足踏み洗い)で行っていましたが、これは体力のいる作業なので、次第につらくてたまらなくなってきました。我が家では浴槽がステンレス製だったので、金属に過敏な私にとっては、これもつらかったです。浴槽の中で手足を使いながら洗濯するのですが、足がステンレス面に触れているだけで、ビリビリと上がってくる刺激を感じ痛くなってしまいます。ステンレス浴槽の形状は、金属板が凹面になっており、身をかがめると電磁波の影響を強く感じました。夏場は蒸気が充満して、それだけで体力を奪われます。冬場は暖房を充分に使えないので、氷点下となった浴室で洗濯をしていました。体を動かすたびに全身に痛みが走るようになったのも、この頃です。それで、用事があっても体が動かず、一日中、座っているか寝て過ごすことが多くなりました。また、大変疲れやすく、外出した後は2〜3日だるくて活動できないことが多くなってきました。外の世界も電磁波の量が多くなってきたためと思います。

 2008年になると、電磁波環境ばかりか、CSやアレルギーの面でも住環境は悪化していきました。気候の変化により、札幌の夏の湿度は年々上がりはじめ、古い木造の家はカビの発生が多くなってきました。また、近所に大きな自然公園がオープンし、そこで使用する殺虫剤や除草剤も大きな影響を及ぼしました。他にも様々な要因が重なり、最終的には家に住み続けることが難しくなりました。引越せざるを得なくなってしまいました。

○鉄筋コンクリートの建物
 私はそれまでの観察で、木造の建物より鉄筋コンクリートの方がずっと体が楽なように感じていました。引越先は鉄筋コンクリート製の建物にしようと決心しました。私たち夫婦は2009年から札幌市内で小さな会社を経営しています。そのオフィスが鉄筋コンクリート製のマンションの中にあり、そこにいると体がとても楽に感じます。CS的にはいろいろと問題のある場所でしたが、ES的にはよかったのです。オフィスにいると、体が軽く動きやすくなるのを感じました。2009年の12月には、毎年恒例の年末ES期間のため、頭痛・筋肉の痛み・目の痛みが増しましたが、会社の事務所にいるとかなり楽でした。仕事が終わって家に帰ると、いつもの全身の痛みや頭痛に見舞われてしまいます。

 鉄筋コンクリートの壁は、電磁波を遮蔽して室内に入れない効果があるようです。しかし、問題となるのは窓です。ガラスは通信電波を透過させてしまいます。私の会社がある建物は、防火基準の指定地域に建っているため、窓ガラスに飛散防止の鉄線が格子状に入っています。格子の間隔は約1.5cmくらいです。これが窓から入る携帯電話の電磁波をうまく防いで室内に入る電磁波量を減らしているようでした。

 室内にいても携帯電話は通じるので、完全に遮蔽できているわけではないのですが、屋外よりも、木造の建物内よりも、格段に電磁波量が少ないようでした。会社では、マンション内の同じフロアに2部屋事務所を借りています。コードレスフォンで実験してみましたが、それぞれの部屋に親機と子機を置いて電話を受けてみると、親機からの電波が別の部屋の子機に届かないことがありました。鉄筋コンクリートの壁、鉄線の入った窓、鉄製の厚いドア、これらがシールドとなって、電波のやり取りを防いでいるようです。電磁波対策として有効な部屋だと思いました。

○ついに引越
 引越先として、同じような条件の建物を探せばいいと思いました。2010年の春頃から引越を強く意識していたのですが、体調が思わしくないこともあり、なかなか進みませんでした。そんな中でも住んでいる家のCS・ES環境はどんどん悪くなっていきます。2010年の秋頃に限界を感じ、引っ越すことを決意しました。物件を決めるのは難しかったです。いくら下見をしたからといって、実際に住んでみたらどんな不具合が出るのかわかりません。結局少しでも内部を知っている方が有利だということで、会社の事務所が入っているマンションに引っ越すことにしました。夫は初めこの引越先に反対でした。というのは、このマンションは単身者向けのワンルームマンションで、家族で住むようにはできていなかったからです。同じ仕様のファミリー向けマンションを探していたのですが、どうしても間取りが大きくなると、一部屋くらいは和室が入ってきてしまいます。私の場合、畳によるCS反応はあまりに強く、住居内に一部屋でも畳の部屋があればアウトです。もう迷っている時間はないということで夫も納得し、ワンルームマンションに引っ越すことになりました。夫と私とそれぞれワンルームを1つずつ借ります。バタバタと慌ただしい引越準備の末、2010年の11月下旬に私たちは引っ越しました。(引越の経緯については  第2部 第6章「引越」 をご参照ください。)

 CS的にはずいぶんと対策が必要であり、今でもまだ解決できていない部分もありますが、ES的には予想していたとおり、体調は格段によくなりました。1日ぐったり過ごしていたのが、体が軽くなり動きやすくなりました。それまでこなしきれなかった家事がだんだんできるようになってきました。頭痛や目の痛みも軽くなり…前の家では限界を感じていたので、本当に救われたと思いました。

○自作のシールド板(窓用)
私が借りた部屋は角部屋で、ベランダ側の窓には鉄線が入っていますが、もうひとつの小窓には入っていません。この窓からの電磁波の侵入が体につらいので、ここをシールドすることにしました。着脱できるシールド板をつくりました。

つくりかた(窓枠の大きさ:約1200mm×600mm、窓枠は金属製)
材料 角材(5×14×1800mmのもの)2本
車の窓に貼るUVカットシート
ビニール袋(45リットルのもの)2枚
ホチキス
木工用ボンド

・1800mm長の木の棒を1200mmと600mmに切り離す。(のこぎりがなかったので、カッターを使いました。)
・それを四角の枠に組んで、木工用ボンドで接着する。補強のためにホチキスで留める。(図24)
・UVカットシートを枠の大きさより大きめに切ってホチキスで貼っていく。そのとき裏に折り込むようにする。(側面も覆う)(図25)
・全体をビニール袋で包んで木材の成分の揮発を防ぐ。ホチキスの錆も防ぐ。
・できあがり。

     



 シールド効果のキモとなるUVカットシートですが、2003年に車のスモーク系シートが携帯電話の電磁波をシールドできることを発見していました。このとき住んでいた家の窓に、スモーク系シートを貼ったりしました。(木造だったので壁は素通しだったし、窓の一部だけに貼ったので、あまり効果を感じられませんでした。)今回シールド板をつくるに当たって、新たにUVカットシートを買ってきました。今度は家の窓用の物で、透明度の高いのを買いました。シールド板をつくる前に、このシートで携帯電話を覆ってみて、本当にシールドできるかを実験しました。

実験手順
1.まず、フタ付きの缶に夫の携帯電話を入れて缶のフタを閉める。家の電話から携帯にかけてみる。→結果:つながらない。シールド成功。
2.次に缶のフタを開け、携帯電話を入れ、缶の上部をUVカットシートで覆う。家の電話から携帯にかけてみる。→結果:つながらなければシールドは成功。つながればシールドは失敗。
(*携帯電話がつながると私の体には危険なので、夫が缶の部屋にいる役、私が別の部屋から電話をかける役をしました。)

この方法で実験しましたが、透明UVカットシートは、携帯がつながりシールドは失敗しました。このシートは返品して、次に車用のミラー仕様のUVカットシートを買ってきて同様に実験しました。これも携帯がつながりシールドは失敗。しかたがないので、2003年に買ったUVカットシートの切れ端を出してきて、同じように実験してみたところ、今度は携帯がつながらずシールドが成功しました。

 そういうわけで、このシートの切れ端をいくつか貼り合わせて、600×1200mmより少し大きめのシートを作り、枠に貼り付けたのでした。こうしてシールド板は完成しました。これを窓に重ねて設置すると、室内のES環境がよくなり、頭痛や体の痛みが減ります。窓に密着させるために、テープで貼る予定でしたが、上下のサイズが偶然にも窓枠にぴったりなので、ググッと押し込むとちょうどいい具合に密着してくれます。

 このシールド板をつくる前は、応急処置として窓にアルミ箔を貼っていました。そのままむき出しで貼るとアルミ箔から発散している何らかの成分(金属の匂いがします)に反応してしまうので、アルミ箔をビニールで包んだものを貼っていました。これもきちんと電磁波を防いでくれますが、光の透過性がないので、部屋が暗くなります。車用のシートの場合は、部屋が若干暗くなりますが、光を透過するので、完全に暗くなることはありません。

 夏になって窓を開ける季節になると、会社の事務所も私の部屋もシールド効果がなくなります。実際、引越後の2011年の夏に窓を開けて1日事務所にいると、頭が痛くなってしまいました。自室のシールド板のつくりかたで、針金を網状に張り巡らせた風通しのよいシールド板をつくれないかと検討中です。針金は金属の匂いがしないように、ビニールで被覆されたものを使う予定です。

 以上、携帯電話による電磁波過敏症について書いてきました。また、新たなことがあったら、追加して記述していくつもりです。


「第2章 電磁波過敏症(年末年始)」へ続く
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