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【ルポ 2】 |
●製糖工場を見学 |
最盛期、全国から十数人の季節労働者が
キビの絞りカスから高付加価値の研究進む |
【2月19日】
『粟国の塩』10周年イベントの合間を縫って、島のもう一つの“有力産業”である製糖工場を金丸弘美さん、平野 文さん、川島敦子さんと見学した。この工場の正確な名称は「JAおきなわ粟国営業所製糖工場」。
飛行場の近くにある製糖工場は塩工場からは車で5分余り。プラントもコンパクト、プロセスもシンプル、見学も「安全・衛生の為に着帽を」の注意があっただけで、あとは「ご自由に………」といたって大らか。
というわけで、ドカドカと工場内に入る。島の主要産物・サトウキビの収穫期は1月〜3月。最盛期とあって、製造設備はフル回転のようだ。プロセスを簡単に言うと、サトウキビを砕いて圧搾し、絞り汁を燃焼釜で煮沸し、1番鍋から3番鍋に加熱しつつ流す間にキビのゴミやアクを取り除き、その液を濃縮鍋・仕上げ鍋を経て攪拌冷却し、最後に成形して包装………という感じ。しかし、沖縄の数ある黒糖の中でも“粟国の黒糖”は一目も二目も置かれているという。それは、昔ながらの直火炊きで作っているので黒糖の風味が最後まで残るためのようだ。
この間約20分。あっけない感じで辞去しようとしたら、ちょっと気になるものが目に入った。キビのしぼりカス、バッカスが積まれていたことだ。後日取材で分ったことだが、バッカスは一部は動物の飼料に混ぜられて、一部は燃料にし、余ったものは廃棄していたが、外皮部分の繊維を抽出、綿に混紡して「かりゆしウェア」などの衣料用繊維にするという抽出技術を開発したという。粟国の一次産業がより付加価値をつけたものになるわけだ。
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▼黒糖が出来るまで▼ |
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ハンマークラッシャーから出てくる絞り汁を振動ふるい機でふるう |
3つの鍋で煮詰めていく |
濃縮と仕上げの2つの鍋に来る頃には黒いチョコレート状に |
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攪拌冷却機で練られ、冷やされる |
まず、このような塊にされる |
あとは人力で上から押しつつ網目を通していく |
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箱詰め、包装される前の黒糖 |
この絞りカスが飼料・燃料だけでなく繊維になる技術が開発された |
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期間労働に北海道やタイから若い人が集まる |
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タイから粟国への“出稼ぎ”は2年目という広瀬夫妻 |
ところで、工場には全国から季節労働者が今年は10数人集まっているという。それも20代の若い人たち。そのうちの何人かが夜の“スローフード小宴”に参加していたが、なんと言っても異色なのはタイの北部山岳地帯に住んでいるという広瀬貴史・明希夫妻。大阪と京都の出身だそうだが、東南アジアを旅行中に出会い、タイが気に入り、住むようになって、生活費を確保するために3ヵ月間、粟国島に“出稼ぎ”に来ているとか。「粟国では時給750円ですが、2人で3ヵ月働けばタイでは半年生活していけます」と屈託ない。思わぬところで日本のたのもしい若者の一端を見せてもらった感じで、なにか嬉しくなった。
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