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【データ 2】
●『粟國の塩』10周年記念イベント〈第2部〉
=中村成子さんら5人のパネラーが「塩・食・健康・環境・教育」でシンポジウム=

『粟國の塩』10周年記念イベント〈第2部〉のシンポジウムは「塩・食・健康・環境・教育を考える」をテーマに5人のパネラーを迎え、金丸弘美さんの司会で行われた。5人のパネラーはそれぞれの体験、日々行なっていることをベースに多様な話題を提供した。200人を超す聴衆は次第に引き込まれていった。
【文責:≪環っ波≫編集部】

金丸さん(左端)の司会で進められたシンポジウムの5人のパネラーたち(左から塩川さん、中村さん、武富さん、森本さん、宮城さん)
=2005年2月19日、粟国村総合センターで
▼パネリスト  =発言順
宮城 弘岩さん 「沖縄物産企業連合」社長
森本 茂さん 「大地園」代表
武富 勝彦さん 古代米復元農家
中村 成子さん 料理研究家
塩川 恭子さん 「食の学校」主宰
▼コーディネーター  
金丸 弘美さん 食環境ジャーナリスト

連関している「塩」−「食」−「健康」−「環境」
“何が本物なのか”をキチンと子供たちに伝えよう
金 丸  「塩・食・健康・環境・教育」―というテーマでお話をしていただきます。まずは、みなさんがいまやっておられることから伺います。宮城さんに口火をきっていただきましょうか。

▼日本国民が欲しがる「沖縄の食」をまとめて全国展開したい:宮城
宮城弘岩さん
宮 城  沖縄という地域の食文化を全国的に広めていく、子供たちにそれを教える。さらには「食」をもって経済的に活性化していく。それによって私たち仲間だけでなく県全体がどういうふうにしたら食べていけるかということに延長して、沖縄の食を中心に全国的展開を図っています。と同時に、何千人という雇用の場を創出するということも頭に入れてやっています。
その中に塩があることは言うまでもありません。ただ、『粟國の塩』は需要に対して供給量が足りない。この島の他のものも大量生産できる態勢にはないので、多品種のものを丸ごとまとめて「これが沖縄の粟国のものですよ」という形でデパートやスーパーに売り込み、最近ではインターネットで扱うこともやっています。いずれにしても、日本国民が欲しがるものを全国的に展開していくことを心がけています。

金 丸  次に、森本さんお願いします。

▼若い人たちに食材がもっている本来の味を分ってほしい:森本
森 本  私は宮崎の方で有機JAS規格の認定を受けた有機栽培によりお茶を作っています。またソバやゴマ、さらにハーブ茶や緑茶の部分を残したほうじ茶とかお茶を利用した石けんなども応用編として作っています。
そういう中で、「味」について日頃思っている事を申し上げたいと思います。
その一例がソバです。ご存知と思いますが、穀物の中で生で食べられるのはソバだけです。小麦粉や米は生煮えでは食べられませんが、ソバは生でも生煮えでも食べられます。そこで私たちは若い人たちに“生で食べてみてください。そうすることによって、そのものの味が分りますよ。味をつけるならまず塩をかけてください”と言っています。そういうことから食を見直し、また飼料用のお茶を開発し、豚とか牛に食べさせてもらっています。動物薬をほとんどゼロにすることが求められている時代ですので、そういう動きに参加させてもらっています。ここ粟国にもそういう時代の波がやってくると思います。
お茶は人間はもちろんですが、動物の血液もきれいにする効果があります。それには無農薬によるお茶作りが必要で、天からの授かりものの雨水だけで栽培することも手がけています。
また、料理の仕方によっても食材が本来持っている味を知ることが可能です。たとえば、我が家ではお好み焼きを作るのにキャベツでなく白菜を使います。イリコやチリメンジャコを使います。そうすることによって、白菜の味がよく分かります。こういうことは若い人たち、規格化された味に慣れた人たちには新鮮に感じられるようです。そういう勉強をみなさんとともに今後もしたいと思っています。

金 丸
  武富さん、お願いします。

▼体調崩し、サラリーマンから農業に転じて古代米に取り組む:武富
武富勝彦さん
武 富  佐賀から来た武富です。私は佐賀で生れ育ち、佐賀という所は魅力的な所だと思っています。というのは、古代米が日本に最初に入ってきたのは佐賀の唐津なんです。ほぼ2000年前、縄文時代の晩期の頃です。それから吉野ヶ里の遺跡はその後です。そして、森本さんからお茶の話がありましたが、お茶の発祥の地が実は佐賀なんです。ということは、多くの私たち日本人が毎日食べる米、毎日飲むお茶の発祥の地がともに佐賀だということなんです。
その佐賀の真ん中へんで生れたのですが、サラリーマンをやっていました38歳の時、体調を崩し、検査したところ、その年で骨沮喪症(こつそそうしょう)などいわゆる生活習慣病にかかっていることが分りました。それでサラリーマンをやめ、親から5反あまりの田んぼを譲り受けて農業に転じたわけです。
さて、古代米に魅せられたのは古代黒米のおはぎを食べさせていただいたのがキッカケでした。鹿児島県の元町長さんから一握りの古代米をいただき、それを元に4種類の有色米をいまも栽培しています。ご承知のように、百姓仕事は相当の体力が必要です。もう一つは、当時は有色米などどこも扱ってくれませんでしたので、たとえ収穫しても自力で売らなければなりません。そのへんがいま振り返ると厳しい点でした。
いろいろなことがありましたが、一番のポイントは、いまみなさんが日常食べている白米は精米してしまっていますからビタミンとかミネラル類が不足しています。したがって有色米、古代米を少量混ぜることでそれらを補えるということと、アワとかキビ、ヒエなどを混ぜて、いわば健康運動として取り組んでいることです。
もう一つは、カヤとかヨシに米ぬか、フスマを水と混ぜて堆肥化し、それでイネを作っています。また、世界最高のミネラルといわれるにがりにも注目し、花が咲いている田に撒いたりして農業に応用していますが、目に見えた効果を上げています
一方、大学にも籍を置いていますが、そこでは塩についての偏見や誤解と闘っています(笑い)。

金 丸  続いて、『粟國の塩』とは長いお付き合いと聞いていますが、料理研究家の中村さんにそのへんを含めてお願いします。

中村成子さん
中 村  いまは料理研究家と言うより島根県の仁多町という奥出雲の田舎で暮し、中山間地で農業に励んでおります。
私が料理を研究するキッカケは子供が生まれ、母乳で育てることに深く感動するとともに、それだけに食べ物に注意しなければならないという思いからです。
そして、子供が思春期になって、親子の会話やコミュニケーションが足らなくなったことで、ようしお弁当で子供にラブレターを発して意志の疎通を図ろうと思い立ちました。これはお塩の効用という話になりましょうが、お弁当の中に一粒の梅干を入れますと、子供がもって帰ってきたお弁当箱の臭いが全然違うことに気づきました。殺菌力があるわけですが、そういうことから梅干からお塩に関心が行き、小渡さんとのつながりも出来たわけです。
そして、私が直接農業をやることでさらにお塩の素晴らしさや食とのつながりを深めることになりました。それまで住んでいました横浜で100坪の畑を借りて野菜を作るようになったのが農業とのかかわりの始まりですが、周囲の人たちが殺虫剤などを使っているのを見て、キャベツを無農薬で作ってやろうと思い立ったものの、見事に失敗しました(笑い)。しかし、その失敗はますまさ自分を奮い立たせました。何年か続けるうちにだんだん無農薬でもトマトやコマツナなどが収穫できるようになりました。
そんな中で小渡さんとの出会いがありました。NHKの番組で梅干を通して塩との関わりをお話しした時にお知り合いになったわけですが、9年前のことでした。梅干を作るためによい塩を探していた時期でもありました。いまや沖縄を代表する料理研究家の山本彩香さんに勧められたのが直接的な出会いで、『粟國の塩』を舐めた瞬間、「こんな塩をどういう環境で作っているのだろう」と思い、その翌日には粟国島に飛びました。当時は4人乗りのヘリコプターが1日1便飛んでいました。
小渡さんと語り合いました。「塩作りは自分の運命のようなもので、やっていかなければならないことだ」と言われました。小渡さんにとって塩作りは天職なんだな、このことをなんとか世の中に広めてあげたいと思いました。そして東京に戻り、いろいろな人に『粟國の塩』の存在を知らせました。これが小渡さんとのお付き合いの第一歩でした。10周年というのは、私にとっても“『粟國の塩』との10周年”であるわけです。
いまも『粟國の塩』で梅干を作っています。そして田んぼの畔で作った大豆で味噌を作り、しょう油を作って、地域の人に楽しんでもらっています。さらに川が運んでくれる中国山脈の雪解け水を使っての米作りを通じて、ミネラルやカルシウムの存在を改めて知らされています。
いま日本の医療費は33兆円に上っています。でも、食生活を変えたり、食の在り方を改めることによって、この医療費を半分にすることは出来るのです。みなさんに健康になっていただくには塩と米、そして水を元にただすことがとても大切なことだと思っています。

金 丸  塩川さん、お待たせしました。

▼生産者が何を考えて作っているかを消費者に広く伝えたい:塩川
塩川恭子さん
塩 川  名前が塩川ですので塩とは切っても切れない縁です(笑い)。私たちの「食の学校」とは全国のいろいろな人たちが集まって食べ物をまともに考えようという会です。どういうことかと言いますと、食べ物が生み出される背景や流通経路などを知りたいということで、したがって、必然的に“産地へ行こう”ということにつながります。
私自身がこの運動に携わったのは、実は子育ての失敗からです(笑い)。それまでは出版社に勤めていまして、よくあるグルメ情報を流すような仕事をしていました。そして双子を授かり、子育てを始めたわけですが、私が与える食べ物を子供たちは舌で押し返すんです。頭で描いていた食べ物は子供たちに合わなかったわけです。それから、自分の子供に合う食べ物はなにか? 食べ物探しを始めました。しかし東京では探せませんでした。地方にしかありませんでした。
一例を上げると、おしょう油です。とてもいいので分けてくださいとお願いすると、「せっかく来たけど、そんなに売れないのでたくさんは作らない。せめて1樽(500本)引取ってくれなければ余計には作れない」と言われ、はっと思いついたんです。結局、話合いの末、量的にまとまれば作ってくれるということになり、いわゆる共同購入しているグループの人たちと話し合って商品開発のことも始めました。
そして、産地を訪ねることから始めたのですが、その際一番大事なことは産地の人たちが何を考えてものを作っているのか、ということをキッチリ受け止め、その思いを聞いて、それを消費者に伝えていきたいという思いが今の運動につながったと言えます。

金 丸  いろいろなすばらしい話が出されました。しかし、実はここにおられる方々がされていることはまだまだ少数派です。その理由は、日本の食の自給率は40%にすぎず、残りの60%は輸入に頼っているからです。
そういう中で、現場で苦労しておられる森本さんに、どういう思いでそういうところに突っ込んでいったのかということを伺いたいのですが………。


▼生産者側も有機栽培などの工夫を消費者に伝えるべきだ:森本
森本 茂さん
森 本  いま、食がらみで私たちの回りにあるものはすべて化学物質で人工的に生産されていると思うんです。アミノ酸という調味料を初め着色剤、乳化剤などちょっと数えただけでも末恐ろしさを感じます。それで、できるだけ化学物質を使わない方法はないかと思い、無農薬でお茶の栽培を始めました。しかし、結果は散々でした。葉っぱがすべて虫に食われてしまいました。しかし、めげずに試行錯誤を続けました。小渡さんからいただいたにがりを撒いたりもしました。その効果か、畑の中にはこんなにミミズがいたんだとか、昆虫がいたんだということを知らされました。それはカラスや野鳥がウチの畑に入っても周りの畑には入らないというようなことで立証されました。野生動物というのは自分たちが食していいものとそうでないものはキッチリ色分けするということも知りました。これって、私にとっては凄い感動ものでした。
ひるがえって、身の回りを見直すと、金丸さんのお話にもあったように、農産物の大部分が輸入ものです。しかも大豆にしても菜種油にしてもほとんどが遺伝子組換えによるものです。しかし、これらの影響がはっきり出るのは10年20年でなく50年先でしょう。とても恐ろしいことです。
そこで一念発起して、そういうものを使わないで育てるJAS規格を取ろうと家内と二人で勉強しました。JASの資格取得は実はかなり厳しいし、お金もかかります(笑い)。そのくせ農家にはあまりメリットはありません。でも農業は人々の食をあずかる仕事、役目をもっています。メリットだけを追求すべきではありません。消費者の方々に、いかにそういうものが必要なんだということを紹介することが必要なんです。消費者あっての私たちなんですから、その人たちに真実を伝えるのは私たちの役割なんです。金銭だけ考えたら農業は成り立たないでしょう。
JASには基準をはずしたら罰金ということもありますし、出荷したものを全量回収する義務も負わされています。そういうことを一つ一つクリアーすることによって、いかに消費者に本物を知ってもらう、これを利用してもらうことによって私たちもメリットを得るという、目先でなく5年先、10年先を見つめた仕組みだと思っています。

金 丸  武富さんはさきほどご紹介した以外に地域の若い人たちや子供たちに食とか健康というテーマを通じて「教育」という方法で接触しておられますが、そのへんについてお聞かせください。

▼大学など教育現場で感じる「食」への思いの希薄さ:武富
武 富  いま、佐賀の二つの大学の講座で食環境などについて話していまして、医学部と農学部に関わっています。それぞれに素晴らしい先生方が居られ、そのおっしゃるところは立派だし、医学も農業ももちろん大切なんですが、どうも私のような現場から見ると、そのよって立つところは「食」だと思うのにそのへんがどうも足らない感じがします。まあ、それで私が呼ばれているということもあるのですが(笑い)。
それで発見したことがありました。現役の大学生も、私のところに集まってくる若い人たちも共通していることは缶ジュースの飲み過ぎ、糖分の取り過ぎです。
それに対して私は、ほうじ茶を飲ませ、玄米やひえ、あわを食べさせ、梅干を勧めます。梅干に至ってはいい塩で作ったものを1日1個は食べろと言ってます。そうすると、目に見えて青年たちの目がはっきりと開いて、しっかりしてきます。
そういうことを通じて、食べ物の素晴らしさというものがよく分かってきます。例えば熊本のお寺のお坊さんが近所から梅の実を分けてもらい、天草の塩を使って梅干を作り、寺に来る信者に分けてあげるなどしてたり、いろいろなケースがあります。

金 丸  私たち消費者側からすると、そういういろいろな事をされているのを知らないケースが多いのが実態ではないでしょうか? そういう点で塩川さんは子育てを通じて体験し、全国のいいものを広げておられるわけですが、私も同じような経験をしています。いいものを、もっと広く知らしめるという見地からお話してください。

▼直接植樹をしなくても、そういう考え方に賛同する精神が大切:塩川
塩 川  無添加のものを作っている、いいものを作っているということを聞いて、そのメーカーさんへ行くと、「いくらだって作れるよ。でも本当に買ってくれるの?」とか、「そんなもの買う人がいるの?」とか聞かれます。
そして、いまの世の中には“体にいい”と言われる食べ物情報は溢れています。しかし、それが実際の販売につながっていないのも一方の事実です。反面、そういうことにほとんど関心を払わない人たちも多いのです。あるいは、「そういうのって高いんでしょ?」という認識です。
そういう状況を見るにつけ、私たちはここではこういう人がこういうものを作っている―という情報の種を撒き続けるしかないと思っています。
たとえば、“森は海の恋人”という言葉で広く知られている
畠山重篤さんという方が海を守るためには海に注ぐ川、その上流の森を守ることが大切ということでもう10年以上にわたって植林運動をされているのですが、畠山さんは「木を植えに行かなくてもいいよ。そういう生き方をしている生産者が作っているものと作っている姿勢や環境に賛成してくれれば」という意味のことを言われています。そこまでキチンとものを選んで買って食べているかということは現実にはなかなかつながらないのですが、そういうことを通じて支援するということは今後も続けていきたいと思います。

金 丸
  先日、佐渡島へ行きましたら、佐渡の漁業の人たちもいまご紹介のあった宮城の畠山さんに習って植樹を始めていましたし、この運動はその他いろいろ広がっているようですね。

塩 川  そうですね。漁業の人が山に木を植えることは一見つながらないのですが、長い目で見れば結局は自分たちのためなんですね。要するに、「環境」ということをどう捉えるのかということだと思います。

金 丸  さて、地域の多様な食べ物、食文化というものをどう経済に乗せるかということで宮城さんは具現化しておられるわけですが、現状についてお話しください。

▼沖縄の物産販売、経済面では厳しい問題たくさんある:宮城
宮 城  沖縄の食への需要は相当伸びているのですが、逆に作っている人たちは減っているというのが今の実情です。そして、農協などが厳しく指導しているのですが、個々の農家では対応し切れていないのです。それから、沖縄県内では全生産量の33%しか売れません。ということは、本土と言いますか、県外に販路を求めなければ元は取れません。しかし、まとまった量にならないのである程度ストックする機能やシステムももたなければなりません。
たとえば、北海道でゴーヤーの需要があっても単独では量がまとまらない。そのうえ物流の問題もあるのでどうするかとか、個々に見るといろいろ難しい問題があります。また厳しいユーザーのニーズにどう応えつつ、個々の農家の所得を守るかということもある意味では相反することで、これらを解決するかは実はかなり難しいのです。一方で人口の減少、農家の減少も下げ止まっていませんので農産加工業の戦略を練っているというのが現状です。

金丸弘美さん
金 丸  いまの宮城さんのご指摘は大変難しい局面であり、しかしそれが現実ではあるのですが、きょうはあと残された時間で「食べ物」を通じて子供たちに何を伝えるか、何が出来るかという面で伺いたいと思います。私は行政指導じゃない消費者教育をキチンとやっていくことと、付加価値の高いものをキチンとアピールすること、さして食の大切さを認識する交流の輪を広げていくことが必要と考えるのですが、塩川さんどうでしょうか。

塩 川  たくさん食べるのでなくて、いいものを少し、いい食べ方をする。そのためには情報公開といいますか、本当のところを知ることから始める必要があるのではないでしょうか
▼教育の単位は「家庭」。それが環境問題につながる:中村
中 村 いろいろありますので一言では言い尽せませんが、自分たちがどう生きてきたのかを未来につなげるということだと思うんです。そういうものを子供たちと一緒に体験していきたいと考え、自ら農産物を作り、料理し、食べたい。ただ作って、ただ食べるのでなく、それが人の命とどうかかわっていくのかを体験を通じて子供たちに実感して欲しいですね。子供たちってすごい夢をもっています。
そして、やはり家庭が一つの単位になって子供を育てていってもらいたい。それがまた環境問題につながり、なおかつ未来へつながるのではないでしょうか。

武 富  千葉県の成田にアジアの青少年を中心にした自然循環農業をやる学校をやろうとしてサラリーマン時代の退職金がゼロになったのですが(笑い)、さきほど出ました日本の自給率の問題などを含めて本当に農業の在り方を根本から考える必要があります。いまは20代や30代の投資家が何十億円もパーと投資していろいろな三次産業に参入していますが、私は本当に素晴らしい農業の学校をうんと作ってほしいという思いが強いですね。しかも微生物を大切にする農法を教える学校を。
そして、若し人たちに農業の大切さ、食の大切さを本当に分ってもらいたいと強く願っています。
『沈黙の春』とか『複合汚染』とかはもうたくさんです。いろいろな先生方が立派なお考えを残されています。そういう事を一人でも多くの若い人たちに農業の大切さということで知って欲しいですね。

森 本
  生産者の立場から言いますと、消費者の方々が「これって何で出来てるの? どんなふうに作られるの?」 という目で世の中に出回っているものを見直してほしい、疑問を抱いてほしいと思いますね。本当に大事だと思うなら自分たちで勉強して、行動して、そして出来るだけ生産現場へ行ってほしいですね。問題は味噌、しょう油の類いからその他いっぱいあります。イオン交換膜によって作られた塩を使っているもの、発酵を促す合成品、腐らないようにするための酸化防止剤などなど問題は山積です。自分たちの健康は自分たちで守るのがこれからの時代ではないでしょうか。

▼農業は健康だけでなく観光にもつながる:宮城
5人のパネラーはそれぞれ持論を展開した
宮 城  私は、農業は観光につながると思っています。一例を上げますと、隣りの台湾の一流のレストランはほとんど沖縄の塩を使っています。塩だけでなく黒糖も買いに来ています。
なぜか? 塩は単なる塩化ナトリウムではないんだという認識なんですね。さらに
タラソテラピーという面でも塩を使っています。このように観光と健康、健康と観光は結びつき始めています。そして、地域だけでなく、もっとワイドに広がりつつあります。
あと付け加えて申し上げたいのことは、農家の人たちも経営的感覚、視点から考え、行動することも必要ということですね。

金 丸
  いろいろ伺ってきましたが、いま宮城さんのお話にあったように、国内だけでないということと、食そのものだけでない、健康にも役立っているという状況になっています。
そこで「塩の大切さ」についてまとめていただきたいと思います。

▼循環のすべての元は「塩」であると言えよう:塩川
塩 川  お塩は太古の昔から水とともに大事なものであったことはみなさんご存知の通りで、食に関しても塩ですべてが変わると言ってもいいのではないでしょうか。さきほど漁業の人が山に木を植えて海をきれいにする運動についてお話しましたが、塩もとにかく海をきれいにしないといいものができてこないことははっきりしています。そういう意味で、循環のすべての元は塩だと思います。

中 村  塩というものを考えたときに私は人間の生命にとってかけがえのないものだと強く思うのですが、塩と一言で言っても自然から作られたものと、人工的に作られたものをどう認識するかということはとても難しいんですね。というのは、味付けの際にお塩を入れますが、自然塩はなかなか溶けにくいんです。でも、自然塩を味見するとき、塩辛さの中に甘味をふくよかに感じられるというところが自然塩と化学塩の違いなんです。
きょうは『粟國の塩』10周年ということですが、この10年は100年への第一歩だと私は思っています。長いサイクルの中で育まれていくことがとても大事なことだし、私たち大人が実感したことを伝えていくことが重要だと思っています。

▼塩もミネラルも本物を適量使うことが大事:武富
武 富  ミネラルが大切だということは理科でも習いましたが、塩にしてもミネラルにしても本物を適量使うことがポイントですね。そういう意味で、私はちょっと贅沢なことをしています。風呂に『粟國の塩』を少量ですが入れています(笑い)。

森 本  昨年は全国的に台風の被害が大きかったですね。しかし、面白い現象ですが、台風が来た翌年は農作物の収穫はいいんですよ。なぜかと言うと、日本は火山国で火山土が多いのでミネラルが少ない。台風の潮風はこのミネラル分を補給する役割を果たしてくれるんですね。東北とか北海道ではとくに顕著に出ます。そしてこれは人間にも通じるんです。ミネラルは農産物に必要ですし、そういう意味で小渡さんと出会い、『粟國の塩』に出会って幸せだと本心から思っています。

金 丸  最後に宮城さんお願いします。

宮 城  ポイントは死んだものを食べるか生きたものを食べるかだと思うんですよ。塩は塩化ナトリウムがほとんどです。その意味では鉱物です。でも、バイオ作用のあるミネラルを含んでいる塩は実は生きてるんです。そして私たちの体は生きているものを取り入れるわけです。そういうことから言っても、自然塩は重要です。加工用に使う場合もこの自然塩−『粟國の塩』は有用であるわけです。

金 丸  お立場の違う5人の方々から存分にお話していただけたと思います。きょうのパネラーの方々のお話がみなさんに少しでもお役に立てば幸いです。長時間ありがとうございました。



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