●鍼灸 ~古くて新しい2000年の歴史~
鍼灸の起源は、石器時代にまで遡るともいわれますが、紀元前の中国王朝、殷・周時代にはすでに鍼灸治療が広く流行したという文献が残っているそうです。
その鍼灸が日本に渡ってきたのは、奈良時代。中国の僧侶が仏典とともに鍼灸の医学書を携えてやってきたとされています。漢方が渡来してくるのもこの時代です。
平安時代から室町時代にかけて、文献だけでなく、人的交流も盛んに行われて、鍼灸や漢方といった中国医学が日本社会に定着していきます。
江戸時代に入ると、鎖国によって大陸との交流も途絶えますが、鍼灸は日本人研究者により、日本の伝統医学として独自の進化を遂げていきます。その後、明治政府の西洋化政策によって、鍼灸や漢方を主流とする日本の伝統医学は表舞台からは追いやられてしまうこととなります。
昭和に入ると、伝統医学の見直し運動が起きますが、やはり西洋医学の台頭に、鍼灸は民間医療としての地位に甘んじることになります。
しかし、その後も民間での支持は強く、鍼師・灸師は国家資格として制定されることとなりました。これにより、鍼灸の教育制度はさらに充実し、教育を基盤に鍼灸も新しい時代へ突入します。
各国の伝統医療が見直されている昨今、鍼灸は最も優れた伝統医療として、世界各国の医療関係者が、そのメカニズムと研究結果を発表。日本でも、従来の肩こりや腰痛といった、一般にもなじみの深い症状だけでなく、スポーツ、免疫、ストレスなど様々な分野での治療への取り組みがなされています。約2000年前に確立し、1500年もの間、日本、そして世界で進化し研究が続けられてきた「鍼灸」は無限の可能性を秘めた治療法だといえそうです。
(鍼灸 FACT BOOK より /鍼灸医療研究会)
●伝統的はり灸治療 ~体全体のバランスを整える~
東洋医学では「身体は、全体が複雑につながり合い、絶妙のバランスで健康を維持している」と考えます。病気や症状が表れるのは「身体全体のバランスの乱れ」が原因であり、「病気(症状)」そのものを治療するのではなく、「身体全体のバランス」を整えることが治療となります。
東洋医学に基づく “伝統的はり灸治療” ではこの「バランスの乱れ」を、問診・脈診・腹診などを行い東洋医学的に分析・把握し治療を行います。治療は、「症状のある部位の治療」と「バランスを整える治療」を合わせて行う
“全身治療”が基本です。
当院では、東洋医学の考えに基づく “伝統的はり灸治療” を、お一人お一人の身体に合わせて、丁寧に行います。(当院の全身治療は「身体全体のバランスを整える」という意味を含め、全身治療としております)
●治療の流れ
(1) 問診表にご記入いただきます
・症状、持病、常用薬、生活状況など
・東洋医学的な観点からの問診表にもご記入いただきます |
(2) 問診を行います
|
|
(3) 脈診・腹診等をします
・上向きでリラックスした状態
|
脈診の様子 |
(3) はり灸治療をはじめます
・身体の反応を見ながら、
軽い治療からはじめます
・うつ伏せの治療と、
仰向けの治療をします |
|
(4) 最後にもう一度脈診をして、治療は終わります
|
●鍼施術
はり
治療で使用する鍼は
全て使い捨ての鍼を使用 |
|
刺入方法は、金属あるいは合成樹脂の細い筒を用いて行い、これによってほどんど無痛で刺入することができます。鍼はきわめて細く、注射針の穴の中に治療用の鍼が何本も入ってしまうほどの、ステンレス製の鍼です。
これを、経穴(ツボ)に刺し、10~15分ほど安置します。
症状によって、下記のような治療を加えることもあります。
鍼治療の種類 |
効果 |
刺入した鍼に、微弱な低周波パルス通電する |
痛み、筋肉のこりなど
|
『置き鍼』
小さな絆創膏に、1~2㎜の長さの小さな鍼のついたものをそのまま刺した状態にしておく。 |
・特に症状のつらい部に
(絆創膏から鍼が取れなくなっていますので、身体の中に入ってしまうことはありませんので安心です。) |
『接触針(小児鍼)』
刺入せずに、皮膚に接触させたり、押圧させたりする方法 |
・乳幼児の夜尿症、夜鳴きなど
・アトピーなど皮膚の症状
・頭痛 |
『耳鍼』
耳のツボに、小さな磁気の粒を貼ります。 |
・空腹感を感じにくくなり、
ダイエットなどの食事療法がラクにできる効果
・花粉症の症状を抑える
(症状の出始める、約1ヶ月前から始めると
より効果的です) |
●灸施術
お灸
もぐさをひねるお灸と
台座のついたお灸を使用
|
|
灸は「もぐさ」でできています。もぐさを用いて、経穴(ツボ)に刺激を加える方法です。
もぐさを直接皮膚にのせて着火させる直接灸と、皮膚の間を空けて行う間接灸とに大別されます。
直接灸 |
1㎜ほどの太さにもぐさをひねって、肌に直接お灸を乗せます。1㎜程度ですので、ほとんど跡にも残ません。少し残った場合でも、1週間程度で消えますのでご安心ください。 |
間接灸 |
台座のついたお灸です。 じんわりと暖かく、心地よい刺激です。お灸の強さは様々あり、数種類を使い分けています。 |
●衛生について
体内に刺入する鍼は、全て使い捨てのディスポーザブル鍼(右上の写真)で、使用済みのものは破棄し、毎回新しいものを使用しておりますので、衛生的です。
その他の備品は、高圧蒸気滅菌機(オートクレーブ)で完全消毒したものを使用しております。肝炎、エイズ等の感染症が鍼から感染することはありません。
|