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養生(ようじょう)


東洋医学では、健康のために食生活や生活習慣を整えることを「養生(ようじょう)」と呼び、重視しています。どうしてかというと、「私たち人間も自然の一部」だと考えているからです。私たち人間を取り巻く自然、様々な環境は、常に変化しています。私たちも自然の一部であり、その影響を受け、また自分自身も日々変化しています。そのため、健康は不安定な物であり、常に健康でいられることは当然ではないといことです。健康を維持する為には、日々養生し、こころとからだのバランスを整え、変化に対応できる身体づくりが大切だと考えられています。

 ● 二千年の時を経た東洋医学の教え
 ● 現代における養生とは
 ● 養生の基本 「食事」「睡眠」「運動」「感情」






●二千年の時を経た東洋医学の教え 
 皇帝内経
(素問・霊枢)


『黄帝内経(こうていだいけい)』 は、東洋医学における3大古典の一つと言われ、その成立時期ははっきりは分かっていませんが、今から約2千年以上前に書かれたものであろうとされています。医学知識のなかった大昔、古人はどう病気と対応し、自然界の色々の現象に出会った時、どう理解したのか。伝説上の帝王である黄帝(こうてい)が問い、医学の師である岐伯(きはく)が答える形式で、「東洋医学の思想」や、「養生(生活の仕方)」が説かれています。黄帝内経は、今なお研究が続けられ、東洋医学の永遠の聖典であるといわれています。
〜 黄帝が問う
「昔の人は、百歳をこえても衰えはしないと聞いたが、
なぜ今時のひとは50歳位で皆衰えてしまうのだろうか?
それは、自然環境が変わったせいか、それとも不摂生のたま寿命が縮んだのか。」

岐伯が言う
「昔の人は、養生のことをよく心得、四時陰陽に応じて暮らしていた。
彼らは飲食に節度があり、寝起きは規則正しく、無理な力使いをしなかった。
だから、心身ともに健やかで百年の寿命を全うすることができた。
彼らは、養生の道理に則って長く生きられたのです。」

  (参考文献 : まんが 黄帝内経 中国時代の養生奇書 編訳 張恵悌 医道の日本社 より抜粋)




●現代における「養生」とは


現代を生きる私たちの生活にも、太古昔と同じく様々な変化が訪れます。四季の変化、仕事や人間関係など、社会環境の変化、年齢の変化など、あらゆる変化を含んでいます。二千年前と比べればはるかに便利な時代ですが、人間が「変化」と共に生きている点は変わりありません。古くからの養生の智恵が現代に生かされる理由は、そこにあります。

私たちを取り巻く「変化」 
  四季・気候の変化  仕事や人間関係の変化   年齢の変化


 
 




●養生の基本
 「食事」 「睡眠」 「運動」 「感情」


”変化に対応できる力”、気力、体力を維持し、さらには高めていくことが養生のポイントです。身体を整えるために、毎日の生活で心がけたいのが「食事、睡眠、運動、そして感情」です。全ての養生の基本となる考え方は、「中庸(ちゅうよう)」です。大切なのは、各自に合った中庸の状態を保つことです。
*中庸:かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。

養生
食事
「気血を補う」

毎日の食事が気血を補い、健康な体を作ります。基本となるのは「バランスの良い食事」。ポイントは「旬の食材を摂る事」です。→続きはこちら


睡眠
「気を補う」

睡眠は気を補うもとのとされ、生き生きと過ごすために欠かせない大切なものです。→続きはこちら

運動
「気血を巡らせる」
   

運動して汗をかくと、気血の巡りがよくなります。運動には、身体に栄養を巡らせ、老廃物を排出する効果もあります。→続きはこちら

感情
「気を整える」

感情は、五臓と関連しています。どの感情も過ぎてはよくありません。日々を穏やかな心で過ごすことも養生です。→続きはこちら


 食事
「気血を補う
   


毎日の食事が、気血を補い健康な体を作ります。基本となるのは「バランスの良い食事」です。さらに、人間も自然の一部ととらえ、季節の移り変わりに合わせて「旬の食材を摂ること」も大切です。旬の食材には、季節の変化に身体を順応させてくれる効果が期待できます。そして、「腹八分目」「夕食は寝る3時間前までに」も大切です。

●バランスの良い食事は、定食屋さんのような食事
栄養学の考えでは、バランスの良い食事とは、定食屋さんのような食事のことを言います。上のイラストは焼き肉定食ですが、これもバランスの良い食事になっています。この定食には、@主食(ごはん)、A副菜が2品(煮物・わかめとキュウリの酢の物)、B主菜(焼さんま)と味噌汁が組み合わされており、様々な栄養素をバランス良く摂ることができます。
食事のバランスは「一日3食の食事と、おやつ」の一日分で考えましょう。C乳製品と、D果物は毎食食べなくても良いので、一日の中のどこかで食べるとよいでしょう。例えば、朝食にホットミルクを、おやつには季節の果物をいただくと、一日のバランスがグッと良くなります。栄養素は、それぞれ身体に対する働きが異なります。健康には、バランスの良い食事が大切です。


 内容  栄養素 働き
@主食  ごはん・パン・麺 炭水化物 エネルギー源
A副菜  野菜・きのこ・芋・海藻類  ビタミン・ミネラル 身体を整える
B主菜  肉・魚・卵・大豆・豆腐  タンパク質 身体を作る
C牛乳・乳製品  牛乳・ヨーグルト・チーズなど  様々な栄養素が含まれる 骨歯を丈夫に
神経・筋肉の働きにも関係
D果物  季節の果物  ビタミンなど 身体を整える



●さらに詳しく知りたい方は、「食事バランスガイド(厚生労働省へのリンク)」

も活用されてみてはいかかでしょうか。食事バランスガイドには、一日に「何を」「どれだけ」食べたら良いのかの目安を、わかりやすくイラストで示されています。厚生労働省と農林水産省の共同により策定されたものです。




睡眠
「気を補う」

睡眠は、気を補うものです。気とは、様々な働きを持ちますが、「気・血・水を身体中に巡らせる働き」があります。現代では「元気がある」「気を遣う」といった気も、その働きの一つです。睡眠がよくとれていないと、気を消耗し、疲労が蓄積したり、老化を早めてしまいます。

●質の良い睡眠を充分とるようにこころがけましょう。
人によって必要な睡眠時間は異なりますが、なるべく0時前にはベッドに入り、最低でも6時間は眠るのが良いとされています。そのなかでも、22:00〜2:00は睡眠のゴールデンタイムとも言われ、疲労回復、美容にも大切な時間です。この時間帯はなるべく多く眠りましょう。

●30分のお昼寝もおすすめ。
お昼寝は、気分のリフレッシュや、その後の集中力アップにも効果的です。夜の睡眠に影響がでないように、長くても30分以内にしましょう。夜の睡眠が確保できない方、質の良い睡眠がとれない方、疲れやすい方などにもおすすめです。





運動
「気血を巡らせる」
 

運動をして汗をかくと、気血の巡りが良くなります。身体に栄養を巡らせ、老廃物を排出する効果もあります。現代人は、頭を使う仕事に費やす時間が多く、運動不足になりがちです。気血の滞りは、様々な不調の原因と考えられています。適度な運動は、充実したこころとからだの基礎とも言えます。散歩やヨガ、ストレッチなど、じんわりと汗が出て、爽快感を感じる程度の軽い運動を、週に1回からでもできると良いでしょう。

●運動する時間がとれない方は「細切れの運動」もおすすめ
一回の運動時間は10〜15分程度の短い時間でも、一日の中で何度かできると、ちりも積もれば山となります。
・エレベーターの代わりに階段を使う を一日数回
・寝る前に軽くストレッチをする を毎日
・歩ける距離なら、歩いてみる を週に数回 など





感情
「気を整える」  

ちりも積も東洋医学では「怒・喜・思・憂・恐」を「5情(ごじょう:5つの感情)」といい、現代で言う喜怒哀楽と同じ様なことをさしています。感情は、五臓に関連していおり、どの感情も過ぎると身体に影響を及ぼすと考えられています。日々、穏やかな心でに過ごすことも養生です。


日々養生をして、こころとからだ・身体全体のバランスを整え、様々な変化に対応できる身体づくりが大切です。