○小侍くもと下水で日を暮らし 〔柳多留二〕 |
武家奉公の少年が主人の飼う小鳥の餌になる蜘蛛やミミズをとる。
*「下水」という言葉が使われた珍しい句。 |
○小柄櫃ほど鞘町の箱下水 〔柳多留一三六〕 |
「小柄」と「鞘」、「櫃」と「箱」の縁語仕立て。
*「箱下水」という言葉が使われていたことが分る。 |
○雨落を掘り掘り噺す下女が宿 〔柳多留一二〕 |
口入屋が下女の相手を外へ呼び出し、談判をしている。
*「雨落下水」の位置が分る。道路両端につくられていた。 |
○井出よりも蛙の多い割下水 〔俳諧ケイ二〕 |
「井出」は京都の井出の玉川。蛙が多いことで知られていた。
*江戸の下水は汚れていなかった。 |
○放れ馬どぶから旦那首を出し 〔玉柳一二〕 |
手綱を離れた暴れ馬を避けて「どぶ」へ飛び込んだ旦那。
*町中の「どぶ」の大きさが分る。 |
○どぶ板で名倉れましたと駕籠で来る 〔柳多留九七〕 |
「名倉」は有名な外科医。「殴られ」と「名倉れ」のシャレ仕立て。
*「どぶ」に蓋がされていたことが分る。 |
○小気味よく大屋が落ちて溝普請 〔不明〕 |
長屋の住人が落ちたくらいでは、腐ったドブ板も直してはくれない。
*長屋の下水は大屋が管理していたことが分る。 |
○どぶさらい古かね買いも一度はめ 〔寛政六年〕 |
古金買いにメッキのものを本物と言って売った。
*「どぶ浚い」を仕事にする者(鳶の者が町から請け負った)が居たことが分る。 |
○名の高い下女は流しの口を吸い 〔柳多留一二一〕 |
流し口に網を張り、溜まった飯粒を食べ、自分の食事を乞食などに与えたという「竹女故事」。大伝馬町の名主の家で働く下女が大日如来の化身だったという伝説。
*「下水」にごみを流さない工夫がされていた。 |
○井戸替えだそうで泥水押してくる 〔藐姑柳追〕 |
井戸替えは年中行事。臨時の井戸替えは事故があったか。
*下水が町から町へ通じていたことが判る。 |
○行き過ぎて用水桶で心づき 〔柳多留一一五〕 |
用足しに出向いた町を通り過ぎていたことに気付く。
*用水桶(天水桶)に町名を記すようにとの町触が出されていた。 |
○裏店を樋竹売りのあとしざり 〔俳諧ケイ二六〕 |
長い竹を担いだままでは、狭い路地を折り返すことは出来ない。
*梅雨前頃に、樋竹屋が町々を売り歩いた。 |
○今日休み小便をして帰り 〔柳多留四九〕 |
銭湯へ来たら休業日。忌々しいからと…。
*銭湯の前に「下水」がつくられていた。 |