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読書感想

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No.71〜80

[80] フィッツェブッツェ

文:パウラ&リヒャルト・デーメル
絵:エルンスト・クライドルフ
訳:わかばやしひとみ

クライドルフの絵本3つめ読みました。これは、クライドルフの文章ではなくて、パウラ・デーメルとリヒャルト・デーメル夫妻の文章。

一見してびっくりしたのは、クライドルフの、今まで読んだ、[73]『ふゆのはなし』[76]『花のメルヘン』とぜんぜんちがう〜!

たしかに絵は、特に人物は、クライドルフの描く人物の顔つきだなーと思うんだけど、なんか、今まで読んだ美しい絵本の柔らかな感じとは違って、パキっとはっきりした色で、くっきりした線や形のような印象を受けた。

この表紙に載ってる、糸ひき人形の印象が強い。 (「フィッツェブッツェ」というのがこの、人形のことなのかな…?)

中の詩もよくわからなかった。

「デーメル夫妻は,「因襲にとらわれない子どもの側に常に立っていた詩人」といわれ,ドイツの童謡界に新風を吹き込んだ。『フィッツェブッツェ』は,ドイツ絵本を代表するベストセラー『もじゃもじゃペーター』を打ち負かそうとする意図で書かれた。『もじゃもじゃペーター』の教育的意図に対抗して,本当に子どもの心や感覚にかなう,しかも芸術的効果によって,ただ楽しませることだけを目的とした。」
(うしろに載っている解説より)

そうなのか。『もじゃもじゃペーター』は読んでいないけれど[69]『ヨーロッパの子どもの本』で取り上げられていて、ホフマンという人になかなかの好印象を持った。いつか読みたいと思った。でも、ここで言われているように「教育的意図」によって書かれた本なのかなあ。読んでみないとわからないけど…。

ともかく、今回のクライドルフは、あまり好きになれませんでした。

「この作品は,1907年になって音楽付きの幻燈が上演され,のちには踊りもつくられた。」

とあります。どんなのでしょう、幻燈なら見てみたいな。

(参考:[229]『ぼうぼうあたま』を後日読む。)

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[79] ウッレと冬の森

エルサ・ベスコフ
訳:おのでらゆりこ

はじめてエルサ・ベスコフの絵本を読みました。

冬らしいお話のようなのでこれを選びましたが、絵もかわいらしいし、お話も良かったです。

まっしろなコートに真っ白な髭の白霜じいさんがいい感じ。(<白い>おじいさんって、いいな。)

「とっととかえれ」

なんて言われる雪どけばあさんが、かわいそうかなあ。そのときは、ちょっと白霜じいさん、きついなあと思った。

冬王さまは大きくて威厳がある。

ラップランドの人たちの帽子や衣装がかわいいな。でもおじいさんとおばあさん、女の子と男の子で仕事の内容がはっきり分かれているのが少し気になった。女の子の服には赤い色があり、男の子は緑だし(大人は共通?)・・・もし現代の出版だったら、どうなるかな・・。

最後は雪どけばあさん、よかったね! ウッレたちと同じように、私もばあさんが好きな気持ちでいっぱいになったよ。

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[78] サンタ・クロースからの手紙

J.R.R. トールキン
編:ベイリー・トールキン
訳:せたていじ

昨年の冬から、次のクリスマスごろには読みたいなと思っていました。

絵本のわりに字がたくさんありそうで、遠ざけてたようなところもあったけど、読めてよかった。

『指輪物語』や『ホビットの冒険』で有名なトールキンが、自分の子どもたちにあてて、サンタ・クロース(ファーザークリスマス)になりかわって書いた手紙。

トールキンは絵がうまいなあ。本当の絵描きみたいにうまいのじゃないかもしれないけど、色使いが独特で、表紙にもされてる絵なんかすごいインパクトがある。

このサンタって、『ホビットの冒険』のガンダルフみたい。花火とか煙とか。ゴブリンとの戦いのところとか。なによりそのものが<ガンダルフ>みたい・・

子どもにあてたこんな個人的な手紙の中にも、創作の構想というか種子みたいなものが、現れているのだろうなあ・・

そういう面も読んでて面白い。

子どもたちが大きくなってもう、これらの手紙もおわりというときの言葉に、目がうるんだ。

(参考:後日再読した。[211]

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[77] アンデルセン童話全集1

H・C・アンデルセン
訳:高橋健二

アンデルセン、いちど読んでみようかなと思った。全部で5巻もある。読めるかな。1巻でもかなりたくさんのお話が入っている。こんなにたくさんの話を書いていたとは知らなかった。

王子たちが白鳥にされて、妹がいらくさの服をあんで助けるお話(『野の白鳥』)、あれ、グリムか何かにもなかったっけ?と思った。他にも、昔話で聞いたことがあるような話があり、不思議に思った。アンデルセンって、グリムみたいに民話の収集じゃなくて自分でお話を書いたように感じていたから。

そのあたり、知らなかったなと思っていたら、後ろに詳しくアンデルセンの生涯と作品解説について説明がついていてその中に書いていた。

「グリム兄弟は、古くから伝わった話を、できるだけ忠実に再現しようとしたのですが、アンデルセンは自分の生活したことをフィクションの形で再現しようとしました。(中略) しかし、アンデルセンも初期には、古い伝説や民話をもとにして、いくつもの話を書いています。」
(p.443)

そうだったのか。「えんどう豆の上にねたおひめさま」はグリムも童話集に入れていたけど、アンデルセンの童話集の中にあることを知ったらしく、グリムは童話集からけずった、というのはなにか面白いです。

そういう民話ふうのおはなしの中で、『旅の道づれ』が印象に残った。

魔法使いのところへいくお姫様が、ヨハネスの道連れに打たれながら、

「まあ、あられのふること!あられのふること!」

といって、飛んでいくのは、不思議な感覚。

魔法使いの住処の描写が気色悪いこと。

ほか、「ばらの花の妖精」もショッキングな話だった。

「ひなぎく」
「幸運のオーバーシューズ」
「しっかりしたすずの兵隊さん」
「青銅のいのしし」
など他にも印象に残る話があった。

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[76] 花のメルヘン

エルンスト・クライドルフ
訳:ささきたづこ

3つ下の[73]『ふゆのはなし』の、エルンスト・クライドルフ。

この『花のメルヘン』が最初の絵本。花が擬人化されていて、とてもかわいらしい。

詩も、詩の訳もいいなあと思いながら読んだ。

インゲン夫人とエンドウ夫人の豆やの店びらきが面白い。

トリカブトの騎士とバラの君の結婚式のため、お客様があつまります。スミレさんがしとやかに座り、サルビア氏がるり草を差し出したりするところは、うっとりだし、ユビヌキソウを迎えるヒヨス夫人は、おしゃべり好きなおばさまみたい。

そして結婚式。この絵がいいな。オレンジ色系の背景が明るくて、バラの君が愛らしい。(騎士は…老けてるのかなー…、ひげが立派)

この絵本、とても気に入りました。

クライドルフの絵はユーゲント様式といって、これはアール・ヌーボーのことらしい。

「ユーゲント様式の根本感情は、自然を新しい目でながめ、自然の中へ出ていこうとする旅立ちの心だといわれるが、クライドルフは動物や植物を擬人化して描くことによって、この気持に表現を与えた。」
(うしろの解説より)

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[75] ジャックと豆のつる イギリス民話選

ジェイコブズ
訳:木下順二

[63]『ころころころパン』で、

「木下順二さんが『とうもろこしパン』、瀬田貞二さんが『おだんごぱん』と訳されたジェイコブスのこの物語は、」

とあったけど、『とうもろこしパン』なんて本ないけどなあ…と思っていたが、この本の中にあるひとつのお話だと気づいた。

■とうもろこしパン

「おら、おじいさんを追いこして、おばあさんを追いこして、それからちっこい小僧を追いこしてきただぞう。おめえたちだって追いこせるだぞうい」

あと追いこすのは、「ふたりの井戸掘り」「ふたりのみぞ掘り」「くま」「おおかみ」 さいごは「きつね」

■ 三びきのくまのはなし

[50]『3びきのくま』のバージョンなどと違い、金髪の女の子(ゴールディロックス)ではなくて、おばあさんがでてきた。

■親指トムのはなし

トムが針の剣でくもと戦うところ、なんか『ホビットの冒険』思い出した。小さいのも似てるし。(トムは小さすぎるけど)

■ジャックと豆のつる

「人間の血のにおいがするぞ
 生きとろうと死んどろうと
 そいつの骨でパンをこねてやる」

巨人がいうこのセリフ、他の話でも少しずつ形は違うが時々出てくる。

ほかにも、たくさんのお話が入っている本。

訳の木下順二さんは、『夕鶴』で有名な人だなあ…と思いながら、お名前だけくらいしか存じあげなかった。後ろの「訳者のことば」には、民話の再話や民話の翻訳について、書かれていた。それはよくわかるのだけど、いざこの本を読んだ印象は、言葉が、日本の昔話ふうにも思えるのが、少し違和感を覚えた。

「今はおとっつァんの王さまが、晩飯をくいかけておるころだ」

なんて、王の息子が言うかなあ…なんて。(原文はどうなっているかわからない)

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[74] アンデルセン童話集1 雪の女王

絵:エドマンド・デュラック
訳:荒俣 宏

『雪の女王 七つの話からできている物語』
『豆つぶのうえに寝たお姫さま』
『皇帝の新しい服』
『風の話 ワルレマール・ドウと彼の娘たちのこと』
の4編がはいっている本です。

エドマンド・デュラックの絵がところどころ入っていて、絵は一ページつかっているから、ちょっとした画集みたいに楽しめました。

『豆つぶの上に寝たお姫さま』は短いお話でしたが、20枚のふとんの上に寝て

「夜じゅう、ほとんど目をとじることもできませんでした!」

という表情をしているお姫さまがよく表されていました。

『雪の女王』は、ちゃんと読んでみたのがはじめてだと思う。こういうお話だったのか…。ラストはだいたいわかってたけど、山賊の娘などははじめて知った。アニメは見ているんだけど、舟で流れていったところにある家のお話など、これはアニメにもあった。その家の前に木でできた兵隊がいるところはアニメにもあったな、なんて思いながら読んでいた。アニメでゲルダが旅の途中で出会う人々、人魚姫や、他のエピソードは、またアンデルセンのほかのお話から取っているのだろうな。アンデルセン、他のも読んでみたい。来年になったら記念年終わってしまうし。

アニメに出てくるキャラクターの<風の精>、そういう話あるのだろうか。『風の話』の風からヒント得てるのかな。これ、裕福な一家の没落の話なんだけど、うーん…すごい話ですね。もう没落しきって、きれいなお嬢さんがたがみじめな暮らししなくちゃいけなくて…。 子どもの読むお話とは思えないほどだけど、荒俣さんの解説がよかったです。

「たぶんかれは、大人の生活がいかにたいへんなものであるかということを、お説教として子どもに伝えるつもりなどなかったのです。そうではなく、子どもが別の意味で老成した大人であること、子どもが老人のように賢いことを知っていたからこそ、アンデルセンは「あるがままの話」をあるがままに子どもに聞かせようとしたにちがいありません。」
(荒俣さんの言葉)

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[73] ふゆのはなし

エルンスト・クライドルフ
訳:おおつかゆうぞう

古典的な、優しいいろどりの絵本です。

エルンスト・クライドルフについて、うしろの作者紹介の欄に

「スイスの絵本の歴史のうちで、明けの明星のようにかがやく、詩人作家」

と書かれている。

この絵本は、石版画(?)というのでしょうか、あわいような色合いの、美しい絵で、どのページにも、冬の雪の情景があふれています。朝日が射したり夕日でほんのり赤くなった雪がきれいです。

三人の小人が、「いとこ」にあたるという七人の小人のところへでかけます。白雪姫もでてきて、七年に一度、姫は小人たちに会いにくるのです。白雪姫のお話はディズニーのアニメなどで受けた印象ではあどけない印象を持っている私ですが、それとはまたちがった感じで、お妃になった白雪姫は大人びた落ち着いた雰囲気もします(楽しく笑ったりもしますが)。十人の小人たちの動きや表情がいいですね。

1924年に発表された、この作品のほか、『くさはらのこびと』や、『花のメルヘン』などがあるようなのでまた読んでみたい。

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[72] 緑の海の海賊たち

エリック・リンクレーター
訳:神宮輝夫

[70]『ヨーロッパの子どもの本』を読んで知った。
(リンクレーターの作品で他には『月にふく風』というのがある(カーネギー賞をとった))

海賊がでてくる話で、有名な児童文学者に紹介されているなんて、きっと、冒険に満ち溢れた男っぽい話かなと想像してたのですが、とても面白い愉快な話だった。

大西洋にぷかぷか浮かんでいる不思議な男。しゃべるタコ、カリー。美人ダコのミス・ディルデリイ。かんしゃくもちのスペンス大佐の口癖は

「すかんぴんのいんちきやろう!」

で、海賊の名前がダン・スカンピンとインキイフェロウなんて、なんだか人をくったような感じがするかもしれませんが、なんとも味のあるおかしさに満ちていて、笑いながらもしんみりとするような気持ちもでた。

(スカンピンなんて英語ないですよね…? インキイフェロウはインクとフェロウ(野郎)なのかな? ダン・スカンピンの翻訳する前の名前はなんだろう?)

ハラハラするところ、世界が地球があぶない!というところもあり、堂々たる統率者もでてくる。

見ただけでやめたくなるような分厚さ(しかも2段組)だけど、どんどん読みすすめられた(それなりに時間はかかりましたが…)

それにしても不思議な考えをする作者だ。海賊や船乗りたちがすんでいるのが、海の底。 うばざめやながすくじらの背にのって、旅をする。海の底にある、結び目とは? 人が考えもつかないような、なんと面白い思いつきを持っている人だ。

さし絵は、長新太さんです。

神宮輝夫さんのまえがきとあとがきがとても良かった。リンクレーターの代表作2作は、「ナンセンス」文学なんだそうです。アリスなどのナンセンスとはまたちょっと違うのかなーと思うのですがそのあたり、神宮さんの言葉が、心に響くいい言葉でした。

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[71] HIAWATHA(ハイアワサものがたり)

原作:ヘンリー・ロングフェロー
作・絵:スーザン・ジェファーズ
日本文:ひらいしたえこ

絵本です。[69]『ヨーロッパの子どもの本』の中でインディアン小説のことが出ていた。

(インディアンという言葉は、いけないとされているのかもしれません。ともかく文学上では、アメリカの先住民族の人たちやその世界をテーマとしたものの作品の流れがあるということです。)

一番有名なのは、ジェイムズ・フェニモア・クーパーの『モヒカン族の最期』だろうけど、ほかにもいろいろあるようでした。『モヒカン族の最期』も、5部(?)作の『革脚絆物語』の中の1つだそうです。

ロングフェローという人が書いた、『ハイアワサの歌』という叙事詩があると知りました。 まずはそれをもとにした絵本をみつけました。

でも、いざ開いてみたら、英語でした。タイトルも、「HIAWATHA」です。これって、洋書になるのか、なんなのか? 丸善メイツというところから出ているみたいで、中は英語の本のままだけど、別に日本語がついていた。それで、それを参考にして、辞書で大まかに読んでみました。

この絵本では、ハイアワサが赤ちゃんのころから少し青年になっていくところまでが、とてもきれいな絵でかかれています。

少年のハイアワサがとてもかわいいし、夜空に、まぼろしというか、羽かざりをつけた戦士たちや、亡くなったお母さん(?)の姿など、多くの人の姿が浮かんでいるところなど とてもきれいです。

ハイアワサは動物たちとも仲良しです。おばあさんは、「月の娘ノコミス」で、ハイアワサにいろいろなことを教えてくれます。

おや、ハイアワサの絵本で他に、『ハイワサのちいさかったころ』というタイトルで ル・カインの絵で出ているみたい!? わー、こっちはどんなんだろう。

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