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読書感想

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No.81〜90

[90] ブライディさんのシャベル

文:レスリー・コナー
絵:メアリー・アゼアリアン
訳:千葉茂樹

[83]『雪原の勇者』の絵の、メアリー・アゼアリアンの絵です。

ブライディさんは、ヨーロッパから大海原を渡ってアメリカに行くときに、一本のシャベルを持っていきました。

この絵本は、私的には、あまりいいなと思わなかった。絵は版画の味がでているのはいいなと思うけど、『雪原の勇者』の時は、ストーリーが良かったし、絵もあってたし、あちらのほうが好き。

うしろの、レスリー・コナー、メアリー・アゼアリアン、千葉茂樹さんの紹介のところで、 シャベルを持ってる、ということを書いている。『雪原の勇者』(同じ出版社)のときは、 作者、画家(アゼアリアン)の紹介で、スキーのことが書いていたような気がする。そのとき、絵本を作った二人ともスキーがすきなんだ!と思って、ちょっと感激していたのに、なんだ…、今度はシャベルを持ってるってだけじゃないの。特別にシャベル好きってわけじゃないのだろうな。だったら、そんなこと紹介しなくてもいいんじゃないのかな。スキーのことも、ただそれだけだったのかな。

海をわたって新天地に行く話、とどこかで見たようだったので、船の場面などたくさんあるのかと思った。それは、あまりなかった。

アゼアリアンのもうひとつの絵本『雪の写真家ベントレー』も読んでみようと思う。

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[89] ロビンソン・クルーソーを探して

高橋大輔

デフォーの書いた『ロビンソン・クルーソー漂流記』には、実在のモデルがいて、その人(アレクサンダー・セルカーク)が四年四ヶ月、無人島で過ごした、その小屋あとを見つけた、という新聞記事を、去年だったか、読んだ。

この本をみつけたとき、その新発見のことが書いてある本が出たのだろうかと思ったけど、それ以前に出ていた本です。つまり、まだ最終的に小屋を見つけてはいない段階。島での探索や、人々との交流、資料探し、セルカークの生活がどんなものだったか推理…。それらが情熱に満ちて描かれて、どんどん読み進められました。

1999年に単行本で出て、2000年度には、青少年読書感想文コンクールの課題ともなり、2002年度文庫化するにあたって、探検の新しい展開の章を加えたものです。

「単行本の縮刷版とは思えない、特別の思い入れがある」
(p.347)

とあとがきでも書いてらっしゃいます。だから、もし新しく読まれるかたがいたら、文庫をおすすめします。

そして、読んだ後、この本に書かれたことだけでも、わーすごい…という気分になってこれだけでも充実感があったのに、切り取っていた新聞記事を出してきて、このあとでついに発見に至ったんだ、とわかったら、「ヤッタネ!高橋さん!」という気持ちがわきました。

(参考:[102]『ロビンソン・クルーソー』を後日読む。)

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[88] 太陽の東 月の西

編:アスビョルンセン
訳:佐藤俊彦

ノルウェーの民話集です。ノルウェーの民話はアスビョルンセンとモオによって集められました。

でもこの本、アスビョルンセンの名前しか出てないよね。アスビョルンセン一人で出した本もあるみたいだけど、訳者あとがきを読んでいると、この本はどうも二人で集めた本の中から選りすぐったように読めるけど…。モオさんはいずこに…?

「人間の血と骨のにおいがする」

トロルがよくいう、このセリフ、イギリスの民話にもでてきた。違うのは、お姫様が

「渡りガラスが一羽、たったいま、この上をとんでいって、くちばしにくわえていた人間の骨を煙突に落としていったのです。」
(p.64)

と、言う。このセリフはイギリスの民話を読んだときは出てなかった気がする。

あと、おかあさんと二人で話してはいけない、言うことをきいてはいけない、そうでないと、私たちは不幸になるから、みたいなことが、2つくらいのお話ででてたけど、これも初めて聞いた。何故お母さんのいうことをきいてはいけないんだろう。

■パンケーキ

ありました、ありました。[56]『ころころパンケーキ』で紹介したお話が。やっぱり最後はブタ。

■海の水はなぜからい?

あとがきにも出てたけど、日本にも似た話ありますね。不思議です。

■ふとりたくて丘にゆく三びきの牡ヤギ・ブルーセ

「チョキン・パチン・ポキン」

というのが面白い。マーシャ・ブラウンの絵本『三びきのやぎのがらがらどん』の話ですよね。瀬田貞二さんの訳ではチョキン、パチン、ストンになっていると思う。「ブルーセ」というのが「がらがらどん」なの? がらがらどん、ってどういうこと…? 『三びきのやぎのがらがらどん』はまだちゃんと読んでないから、読んでみたい。

(参考:[103]『三びきのやぎのがらがらどん』を後日読む。)

■家事をすることになっただんなさん

痛快なところあるかも。

■太陽の東 月の西

太陽の東 月の西って、きれいな言葉。「ノロウェイの雄牛」というイギリス(イングランド? スコットランド?)の民話にも似ている部分がある。

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[87] 王への手紙(下)

トンケ・ドラフト
訳:西村由美

下巻からは、かなりスピードアップして読めた。

ひとつ気になったのは、言葉のこと。あまり訳がうまくないような気がする…。キャラクターの性質にあってない人もいたと感じた。たとえば、おじいさんなのに、他の人と区別つかなかったり違和感感じたところとか。別におじいさんだから「〜じゃ。」とか話さなくてもいいけど。

岩波少年文庫、上下巻の長編、騎士ものがたり、ということで期待したのですが、やや残念な気持ちも。重厚なお話というより、やや子どもむけに思えた。子どもむけというのはそのとおり児童文学なんだから、いいんだけど・・。そういうことじゃなくて、なんだか、うまい人なら、これくらいのものは書けるような気もして、50年で一番いい本なのかなーって。岩波少年文庫どうしたの、っていう気持ちも。

いろいろ書きましたけど、読んでみた第一印象です。

いい展開だなと思わせる光る部分もありました。邦訳はされてないけど、このお話の続編もあるそうなので、邦訳されたら読んでみたいなと思う。この先がどうなるのか、やっぱり気になる。

(追記)
2006年11月に続編の邦訳が出たようですね。『白い盾の少年騎士』 岩波少年文庫から。

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[86] 王への手紙(上)

トンケ・ドラフト
訳:西村由美

昔に出版された本を読む事が多いですが、今回は新しい本です。(邦訳は新しいですが、原書は1962年)

トンケ・ドラフトはオランダの作家。(この本はさし絵も、トンケさんの絵)

オランダでは毎年、「子どもの本の週間」というのがあり、児童文学の中で一番良いとされる作品に「金の石筆賞」が与えられますが、2004年度は50周年記念にあたり、過去50年の金の石筆賞の中での一位が選ばれました。それが、この『王への手紙』だということです。

とても期待をしつつ読み始めた。

でも、あれれ? これって・・・J.R.R. トールキンの『指輪物語』に影響されてる・・?

違うかもしれないけど、私にはそう思える。人間以外の種族などでてくるわけではない。話の筋ももちろん違う。でも、地図といい、宿といい・・。オマージュは悪いことじゃないし、そういうの探すのは楽しいことでもあるけど、この場面はあの場面(からヒント?)・・とひらめくことが多くて、それが気になる。

あと、状況の説明が多いかなと思う。

■ストーリー
騎士見習いのティウリは、仲間たちと礼拝堂で夜を過ごしていた。明日、騎士になる、そのための、最後の試練の夜なのだ。一晩中、食べも飲みもせず、話もせず、眠ってもいけない。しかしそのとき、ティウリの耳に聞こえた見知らぬ男の声。ティウリは、規則を守って騎士になるか、助けを求める声に応えるか迷うが・・・。

感想は下巻に続く

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[85] 百合若大臣

文:たかしよいち
絵:太田大八

「日本の物語絵本」シリーズ9です。

百合若は若くして大臣の位にのぼり、八尺五寸の鉄の弓をもあやつる剛の者。蒙古の軍も降参させる。しかし家来の別府兄弟の裏切りにより、玄海島に置き去りに…。

英雄ものです。この英雄物語は、しかし、創作(フィクション)なんだそうです。幸若舞や説経節として語られていたものが人気を得、歌舞伎などにもなって、より親しまれました。

「宝永七年、大坂の竹本座で近松門左衛門の台本による浄瑠璃『百合若大臣野守鏡』が上演される頃にはだれもが伝説から生まれた物語と信じていたといいます。」
(西本鶏介氏の解説より)

とのことです。

そして、このお話は、『オデュッセイア』と似ているんだそうです。

ユリシーズというのが、オデュッセウスのラテン語形の英語読み(?)かなにかで、「ユリシーズ」と「百合若」って、どこか響きが似ているし、面白いです。

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[84] 信太の狐

文:さねとうあきら
絵:宇野亜喜良

絵本です。ポプラ社の「日本の物語絵本」シリーズ7。

陰陽師の安倍晴明の出生の伝説。

うしろの西本鶏介氏の解説に、

「この本は浄瑠璃正本といわれる説経節をもとにして書かれたもので、「葛の葉物語」とも呼ばれるポピュラーな伝説を面白く読むことができます。」

とある。

安倍野の里に安倍の保名(あべのやすな)という若者がいた。狩の犬に追われて逃げ遅れた子狐を助けるが…。

絵がいいですね。

「きゅーん こん!」

保名の手の中でふるえる子狐がちっちゃくてかわいい。

「うおーい、この子の母は どこじゃあ? 母をこいしがり おまえの童子が まいったぞお」
「母さまあ、母さまよう!」

母と童子のわかれが胸をうちます。文章のセリフのところなど、古風な言葉というのもありますが、流れがよくて響きの印象がいいなと思いました。

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[83] 雪原の勇者 ノルウェーの兵士 ビルケバイネルの物語

文:リーザ・ルンガ-ラーセン
絵:メアリー・アゼアリアン
訳:千葉茂樹

絵本です。

「スターラ・ソーズソン再話『ホーコン・ホーコンソンズ・サーガ』より」

とある。

「ビルケバイネレン」という、スキーのクロスカントリーのような競技は、この逸話が元となっているのだそうです。競技者は、3.5キロくらいの重しを持ちます。それは、幼い王子を抱いて雪の中を進んだ戦士たちのことを表している。

ノルウェーには昔、ビルケバイネルと呼ばれる人たちがいた。「白樺のあし」という意味。高価なかぶとなど身に着けず、白樺の皮を足にまきつけた、まずしい農民たち。でも彼らは、王に忠誠を誓う心と強靭な体の持ち主たち。

王が亡くなり、王に対抗する一派「バーグラー」が勢力をつよめている。危険がせまるクリスマス・イブの夜、赤ん坊のホーコン王子をかくまうため、インガ妃と司祭とビルケバイネルは雪山を越えようとする…。

リレハンメルという地名がでてきた。オリンピックがあったところですよね。

版画でしょうか、ざっくりとした絵が力強い。

はじめのほうは歴史の史実なんだろうか。最後のほうは、不思議な出来事です。

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[82] アンデルセン童話全集2

H・C・アンデルセン
訳:高橋健二

けっこうボリュームあります。ふー。5分の2冊目です。道のりは長いです。

■みにくいあひるの子

「これからは、たまごを産んだり、のどをゴロゴロ鳴らしたり、火花をだすことをおぼえなさい!」
「でも、ぼくはやっぱり、広い世界にでていきたいんです!」とあひるの子はいいました。
(p.28)

あまりにも有名なこのお話は、アンデルセン自身のことや気持ちがよく反映されているなあと思った。本の後ろの解説を読んでいると、助けとなってくれる人からも、虐げる人からも、詩作をすることに反対があった。

■もみの木

ずーんと心にこたえた。

■雪の女王

アニメのほうも、だんだんとおわりに近づいてきた雰囲気。アニメで、オープニングのテーマ曲のところで踊っているカイとゲルダ。その姿をみて不思議に思っていたこと、原作を読んで、それが、大事なポイントだったのだと思った。はっきりこうだ、という意味はわからないけれど・・・。

■鐘

これは美しく荘厳な感じがします。アニメの雪の女王にもこの場面がありました。この巻の中で一番好きな話かもしれません。

■赤いくつ

おそろしい気持ちもします。最後はよかった…。イギリス映画『赤い靴』と後ろの解説に書いてあったけど、前に一度見たことがある(テレビで)。いい映画だったように思います。

■デンマーク人ホルガー

この話もそうだし、他にも、デンマークの偉人の名が挙げられている話がいくつかありました。

■マッチ売りの少女

こんなに小さなお話だったんですね。

■影法師

なんというラスト。

■水のしずく

これは面白い。気がきいていて、考えさせられる。私たち人間のことだと…。解説(p.437)によると、

「デンマークの物理学者H・C・エルステッドのために書かれ」

た話だという。

■あるお母さんの話

さいごのところ、心にひびきます。

■数千年後には

未来の発想です。アンデルセンは科学にも興味があったそうです。1852年に書かれたので、 ヴェルヌが1873年に『八十日間世界一周』を書いたのより早かったのです。

「ヴェルヌがこの話を読んだことは確かでしょう。」
(解説のページp.443)

ですって!

そのほかの話も、興味深いものがありました。

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[81] ゆうかんな船長

原作:キップリング
訳:龍野立子
文:川村たかし

キップリングでは、『プークが丘のパック』という話を読みたいと思っているんだけど、訳はされていないのかな…?  『ジャングル・ブック』が有名だけど、こんな本があるのを見つけて、これを読んでみた。

上に書いたように、原作キップリングとあるけど、それ以外に、「文」とあるのは、どういう意味だろう・・? キップリングの文章そのものというわけではないのかな。

それに、これの元の版はイタリアのものみたい。「CAPITANI CORAGGIOSI」 というタイトルが出ている。キップリングってイギリスの人だと思ったんだけど、邦訳はイタリア版を使っているのだろうか。翻訳だとそういう場合もあるのかな、とは思うけど、なんかちょっと惜しいなー、という気もする。

う〜ん、それに読んだ感想は、キップリングってこんなんだろうか…? 『ジャングル・ブック』とか、すごい有名な人ですよね…。

場面場面は面白いことは面白い。でも、ある金持ちでわがままで生意気な少年の成長を描く物語で、それなりに感動はするけど…。言っちゃ悪いけど、「良い子」の本です、みたいな展開という感じも、私にはした。本の装丁や体裁自体もあるだろうけど。

船や漁、漁師のことはいろいろと描かれていて、めずらしくて興味をひいた。

汽船の一等室にのる生意気な少年、ハービー・チェインは、船から落ち、あやうく助けられ、漁船ウィール・ヒヤー号で漁師の生活を通して、成長していきます。トループ船長、のっぽのジャック、顔に傷のあるトム・プラット。みんな厳しく優しい。船長の息子ダンとは親友になる。ペンと、サルターズおじさんの場面が胸にひびいた。

(追記)
2007年1月に邦訳が出たようですね。『プークが丘の妖精パック』 光文社から。

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