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読書感想

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No.101〜110

[110] 墓畔の哀歌

グレイ
訳:福原麟太郎

もうひとつ詩を挙げます。児童文学やファンタジー関連ではありませんが、イギリスの詩人ということと、ウェールズの古伝説の詩を訳したもの(断片)が入っていたこともあります。これからはいろんなジャンルのものを挙げていくかもしれません。

この本の中に入っている、「愛猫を弔ううた」という詩のタイトル、この名前をどこかでわりと最近見たことがある記憶があり、読んでみることにしました。

また、この人の詩で有名なのは、「田舎の墓地で詠んだ挽歌」。本のタイトルになっている「墓畔の哀歌」とは、この詩に、大正時代、桜井鴎村という人がつけた訳名ということです。それまでも、「グレー氏墳上感懐の詩」とか「墳上哀詩」「墓畔吟」などと訳されたこともあるそうで(解説より)、短い言葉でよく内容を表しているタイトルだなあ…と思いました。

解説を読んでいたら、ヂョンソン博士、その弟子ボズウェル、という名前が出てきた。(ヂョンソンは、グレイの詩を酷評したが「田舎の墓地で詠んだ挽歌」だけは褒めたという)

ジョンソンという人は名前は、なんとなく聞いたことくらいはあるけれど、私は歴史や文学について、ある人がどの時代の人とか何をやった人とか理解するのが、あまり得意でない。でも今回、その名を見て、思いついた。ジョンソンとは、[47]『オシァン』を読んだときに解説の中で、マクファーソンの偽作だと言って酷評した、と書かれていた人ではないか。

それで、少しだけ、彼らがだいたい同時代に活躍した人なのだ、ということがわかり、良かった。

「マシウ・アーノルドがグレイの時代は散文の時代であったというわけだが、その間に、北スコットランドから始まった自然文学が起り甘美哀傷の詩歌が流行してくる。グレイの「春のうた」「イートン学寮遠望」「逆境をたたえて」に、厳格な古雅な形象や道徳性があるのは、むしろポープに近い詩境であるが、「挽歌」に至るや、その頃から起った新しい詩歌の嗜好が見られる。しかも、「挽歌」の前半は古典的で後半は浪漫的であるというのは、その時代の詩風のうつりかわり、グレイ自身の中の古典性から浪漫性への転換を象徴するものである。」
(p.202-203)

グレイが「挽歌」を発表したのは、マクファーソンのオシァン関連著作よりも以前のようだけど、時代はロマン主義へと向かっているところだったのかな。オシァンが出るとブームになって、ロマン主義に影響を与えた、みたいなことが書かれていたように覚えているんだけど。

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[109] クリスチナ・ロセッティ詩抄

訳:入江直祐

岩波文庫の復刊です。瀬田貞二さんの『幼い子の文学』の中に、この人のことがあり、復刊を知って読んでみました。
(参考:『幼い子の文学』(評論の項へ)

そこで紹介されている「シング・ソング」という詩集ではありませんが、西条八十の訳で有名だという『風』という詩はこちらにも入っていました。訳し方によって雰囲気は違う感じになりますね。

古い本ですので、訳も言葉が古めかしい感じです。文語調でも流麗な感じのところはいいのですが、語尾などあまり好みでないかなと思うところもありました。あとで、瀬田さんの本をチェックしなおしていたら、次のような文章を見つけました。

「昔の上田敏や永井荷風の、ああいう凝った文体の訳詩ではなくて、今日われわれが日常使っている、ごく平明な、やさしい言葉で、意味がすっと通るという形で訳して欲しいというのが、ぼくが詩の翻訳に望むぎりぎりの要求です。」
(『幼い子の文学』瀬田貞二 中公新書 p.106)

瀬田さんのおっしゃっているのは、この前の部分で語られている、詩の意味合いと響き、「マジック・アンド・ミュージック」ということについてとかかわっての、訳詩についてのお考えなわけで、読んでいると詩の言葉って深いなあと思わされます。だから、訳詩などあまり読んだことがない私がたまたま思ったのとは、意味も深みも違うわけですけど、この文章を見つけた時は思わず嬉しかったです。

クリスチナ・ロセッティの詩に触れられて良かったです。童謡詩だけではありませんでした。

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[108] トールキンとC.S. ルイス

本多英明

1985年でしょうか?、同じく笠間書院から出ていた本が、あたらしく新装版として出版されました。

前の版は読んだことがなく、もう読めないのかと思っていたので、復刊されて嬉しいー! ナルニア効果、でしょうか?

カバー表紙に、ライオンの絵があります。アスランをイメージしているのでしょうか? でも、トールキンとC.S. ルイス、なので、トールキンをイメージする絵は無いのでしょうか。

本を開いたところの紙は表紙側がピンク、裏表紙側が黄色になっていて、2人の対比、みたいなイメージを表しているのかな、みたいに勝手に思っています。

内容は大きく分けると、先にトールキンのこと、あとにルイスのことがあり、トールキンのところは、読み進むのが時間がかかった。ルイスのところからはわりと早くすすむことができた。

私にはなかなか難しいところもありましたが、二人のこと、また作品について少し理解を深めることができ、この本が読めてよかった。

最後のしめの言葉が、たとえが効いていて、内容がぐっと凝縮されているようだし、いいなと思いました。

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[107] シンドバッドの冒険

文・絵:ルドミラ・ゼーマン
訳:脇 明子

[26]『ギルガメシュ王ものがたり』シリーズの、ルドミラ・ゼーマンの絵本です。

この絵本があることは知っていて、読みたいなとも思っていたのですが、ダイアリーで紹介した番組『夢のつづき わたしの絵本』(参考:4月のダイアリーの記述)の中で、佐藤しのぶさんが「千一夜物語(アラビアン・ナイト 」関係の絵本を3冊、選んでおられたのを見て、読んでみようと思いました。

『千一夜物語』、って、言葉は聞いても、どういう話なのか、ちゃんと読んだことがないです。アリババと四十人の盗賊、アラジンと魔法のランプ、船乗りシンドバッドの冒険、は、全部千一夜物語の中にあるんですね。

シェヘラザードが語る物語、その物語の中の物語という入れ子形式について、言葉を使うわざの重要性についてなど、作者のことばや訳者のことばに書かれていることが興味ぶかかったです。

『シェヘラザード』というクラシックの曲がありますね。聞いていたことがあるのですが、いったい誰のことなのか、どういう曲なのか分かっていませんでした。千一夜物語がテーマだったのですね。

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[106] アーサー王の剣

文・絵:エロール・ル・カイン
訳:灰島かり

最近、興味のでているル・カインの絵本です。『ハイワサのちいさかったころ』もちゃんと読んでみたいのですが。(参考:[71]『ハイアワサものがたり』

アーサー王のお話は、詳しくは知りませんが、中世宮廷もののような雰囲気があまりすきじゃないかもと思っていたけれど、もともとはブリテンの王がモデル、みたいなこと、そんなことがサトクリフの本でわかってきたところ。そういうことも、今度この本の灰島さんのあとがきで書かれていた。

「5〜6世紀のブリトン人(ケルト民族の一種族)の英雄がモデルといわれていますが、その姿は濃い霧の向こうにかくれています。その原因のひとつは、ケルト人が文字を持たない民族だったため、伝説が書きとめられたのは時代をずっと下って、中世になってからだからです。」
(訳者あとがきより)

そうだったんですね。そして、

「この絵本に描かれたお城やファッションも中世風のものですが、いっぽうでル・カインはケルトの文様も上手に取りいれています。」
(訳者あとがきより)

ともあります。

ル・カインの絵本は、名前はよく聞くけれど、ちゃんと触れていなかったしどんな絵があまり把握できていませんでした。だから、アーサー王、ということで壮麗な感じの雰囲気を想像していたのですが、ユーモラスな味わいもある絵柄で、話も剣が大きくなって日陰をつくってくれたり、小さくなってつまようじになったりと、面白かったです。

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[105] やぎのブッキラボー 3きょうだい

作:ポール・ガルドン
訳:青山 南

[66]『しょうがパンぼうや』のポール・ガルドンが描きます。

[103]『三びきのやぎのがらがらどん』のバージョンはこのあいだ読んだけど、今度はこちらを読んでみました。

絵は、トロルなどユーモラスな感じもします。でもやっぱり、マーシャ・ブラウンの絵とせたていじさんの訳の『三びきのやぎのがらがらどん』のほうが好みかな。

さいごのしめの言葉は、

「ぱくぱく もりもり おなか いっぱい、
 おはなしも ここで ひとやすみ。」

となっています。

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[104] 英語の歌

河野一郎

マザーグースから、民謡、ポップソングなど、イギリスやアメリカの歌の対訳と解説。

歌詞・楽譜が載っていて、どんな歌かなと頭に思い浮かべながら、あ知ってる知ってる、とか、知らない歌も。

単語など、ざっと追っただけですけど、「bonnie」という言葉はスコットランド(?)の歌によく出てくるみたいな気がします。スコットランド方言で、ビューティフルのことだそうで、女の人(愛する人)の名前としても出てくるみたい。

アメリカの歌の、「GREEN, GREEN GRASS OF HOME」というのは、囚人のことを歌った歌だったんですね。知らなかった。

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[103] 三びきのやぎのがらがらどん アスビョルンセンとモーの北欧民話

絵:マーシャ・ブラウン
訳:せた ていじ

やっと読みました。北欧民話からの絵本です。

(アスビョルンセンとモー)参考:[88]『太陽の東 月の西』

トロルの絵は、天狗かなまはげみたい。(鼻が長い。)かなりおおきい。

しっかし、大きいやぎのがらがらどんの絵が、迫力。

小さいやぎは小さい声で、3回の繰り返しは、
[50]『3びきのくま』の話と似ているパターンだなと思った。ここが子どもが喜ぶところなんだろうな。

「かた こと かた こと」

という音と。

がらがらどん という名前と

「チョキン、パチン、ストン」

は、まだナゾ。(チョキン〜は話をしめくくる言葉、ということだろうか)

この話は他の人が絵本にしているのもあるようです。それらも見てみたいです。

(参考:[105]『やぎのブッキラボー 3きょうだい』を後日読む。)

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[102] ロビンソン・クルーソー

デフォー
訳:阿部知二

ロビンソン・クルーソーは、以前、読んだことがある(この訳だったかどうか)けど、だいぶ忘れていたし、
[89]『ロビンソン・クルーソーを探して』という、本を読み、再読してみようと思った。

以前読んだときは、土人などという言葉が出てくるのがイヤだったし、好きになれない本だと思ったような気がする。今度は、覚悟して読み始めたというのもあるし、驚きはしなかったけど、やはりそうか、とも思った。

そういう部分はともかく別としても、無人島の冒険物語、みたいな、活劇のようなイメージを想像しながら読もうとしても、これを読んでいると、そうわくわくとするような話じゃない。

ロビンソンが改心をしていき、生活を整えていく過程が、えんえんと書かれているというような感じがする。

しかし、島に独りきりという恐ろしい試練のうちに、反省し、節制をし、成長していった、その人が、「蛮人」なんて平気でいうところが、かえってぎょっとさせられる。

(また、食べるためでない動物でも殺したり、わりと乱暴なところもある)

[69]『ヨーロッパの子どもの本』にも、ロビンソン・クルーソーについて書かれていた。ルソーが絶賛しているということや。『スイスのロビンソン』などのロビンソン文学へとつながっていくこと。また、フライデイ=「善良な野蛮人」というモチーフができ、それが、インディアン文学にも通じていく、みたいなこととか。(なんかカチーンとくるなあ…。「野蛮人」もカチンだけど、<善良な>・<野蛮人>って…。)

オウムのポル、皮の着物や傘などは覚えていなかった。それらは、ロビンソンを象徴するもの。その姿のさし絵など見たら、ロビンソンだとわかるものだと思う。それは今回チェックできたのはよかった。

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[101] 古代のイギリス

ピーター・サルウェイ
訳:南川高志

岩波から出ている、「1冊でわかる」シリーズのひとつ。

「イギリスがローマ帝国だった時代」(帯より)

のことが書いてある、と知り、読んだ。ブリテン島がローマ帝国だったなんて、サトクリフの本を読むまで知らなかった。少しだけ知ったこのごろ、ちょうどこんな本を知り、ぴったりな気がして読んでみた。

でも難しかった。これ「1冊でわかる」というのは無理じゃない?もうちょっと大まかな流れを知っておいたほうがよかったかも。

でもとにかく、属州総督アグリコラ、女王カルティマンドゥア、アントニヌスの長城、とかでてくると、読んだばかりで名前だけは記憶の片隅にあったのか、おっ、確か[98]『王のしるし』で見たような? と思ったし、カラウシウス(カロウシウス)とアレクトゥスは、[11]『銀の枝』で描かれた人たちだ!と思って嬉しかった。

サルウェイさんの本文のうしろに、訳者の南川さんによる遺跡案内がかなりのページを割いてある。そこは文章も優しいめで、わかりやすかった。シルチェスターから出土されたものは、レディング市の博物館にある、というところでは、[5]『第九軍団のワシ』のところで知った、ローマ軍の旗じるしがその博物館にあるんだ、とわかった。

南川さんの文章で、サトクリフの歴史小説、と一文だけ言及されていたのは嬉しかった。歴史の方向からの興味じゃなくて小説から興味もってこの本読むなんて、あまり想定されていないかとも思えたから。

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