■データ 3■
ホルマリン使用トラフグ出荷へ
「天草の海からホルマリンをなくす会」
〜長崎、166万匹のトラフグ出荷へ〜
本年4月、民放のドキュメント番組をきっかけに養殖トラフグ生産量日本一の長崎県にて過半数の養殖業者がホルマリン(水産庁通達で禁止)を寄生虫駆除剤として使用していたことが判明しました。およそ166万匹のホルマリンを使用したトラフグは県や関係漁協などでつくる「トラフグ養殖適正化対策協議会」によって出荷停止処分となりました。
長崎県は7月に「ホルムアルデヒド安全性検討委員会」を立ち上げ、トラフグ中のホルムアルデヒド残留検査結果などの評価を検討しました。
同委員会はたった2回の検討会議だけで、「残留検査値は健康上問題のないレベル=安全である」と結論付けたのです。ホルムアルデヒドはタンパク質などと非常に結合しやすいのですが、結合して出来た反応生成物の性質や存在の確認さえしませんでした。
7月29日に開催の「食品安全・安心委員会」第2回会合において、「食品として安全である」旨の検討結果が報告され、県漁連代表はそれを受けて「廃棄は地域経済へ重大な影響が及ぶ。ホルマリン使用履歴書の添付や胸びれを切るなど使用魚の識別を可能にする」と出荷に理解を求めました。
これに対し、消費者代表などからは「料理店がホルマリン使用と表示するとは思えない」、「とても出荷を受け入れる状況にない」などと極めて厳しい意見が続出しました。
にもかかわらず、その直後の7月31日に開催された「トラフグ養殖適正化対策協議会」において出荷が決定されたのです。世を挙げて「食の安心・安全」が叫ばれている中、時代の流れに逆行する消費者無視・業界優先の姿勢であると言わざるを得ません。
長崎県の幹部が県漁連役員らと全国各地の魚市場を回り、事実上自県産フグの取り扱いを求めていたことも明らかになりました。
〜熊本の状況〜
一方、生産量第2位の熊本県では5月に1業者のホルマリン使用が判明し、県は出荷停止中の約4万尾の廃棄を求めていますが、業者は未だに態度を明確にしていません。また、県は県漁連と共に第三者機関「県養殖トラフグ生産履歴審査会」を設置し、飼育魚の安全にお墨付きを与える認証制度を今年の出荷分から導入することを決めました。しかし、その内容は養殖業者の提出した生産計画と作業日誌の照合など一方的な情報提供に負うところが大きく、隠れてホルマリンを使ってもチェックできる仕組みはありません。
〜安心なトラフグはどこに?〜
ではホルマリン使用が明らかな物以外のトラフグは大丈夫なのでしょうか?
長崎の一件をきっかけに水産庁はトラフグ養殖関係県会議を開催し、ホルマリン使用状況などを調査しました。しかし、それは単なる聞き取り調査であり、虚偽報告の確認は全くなされていません。
実際、海水浴場からもホルムアルデヒドが検出されるなど長年にわたり使用が問題となってきた愛媛県の使用はゼロと報告されました。他にも薬品流通関係者による「過去2年半に40業者に150トンものホルマリンが販売された」との証言(熊本)、魚市場関係者による「使用しても報告しなかった業者もいる」という指摘(長崎)など実相は闇の中です。
冬の高級料理が手軽に食べられるとして急速に普及した養殖トラフグですが、末端の消費者が本当の飼育情報を得るのは極めて難しいようです。
*発表先:日本消費者連盟「消費者リポート」1234号(2003年9月7日発行)