ホーム >> ブック >> ブックリスト2 >> 読書感想 >> No.321〜330
フィンランド特集があると知って、読めるのを待っていた『ミセス』。
たまに興味ある特集をしてくれるミセス、しっかしセレブな雑誌ですね…。特集のところぐらいしか読んでないですけど。
北欧、フィンランドといえば、デザイン、と教育、ですか? それらの紹介のページもありました。
特に、興味を持って読んだ記事は、
「館野泉さんが案内する 音楽が生まれるところ」。
館野さんは、シベリウスの音楽に、森を感じておられるようだった。
初めて聴いたのは、有名な「フィンランディア」ではなくて、最後の交響曲、第7番。後に「タピオラ」を聴く。
その曲の「呼吸」の深さや「沈黙」に、
「こういう作品を書いてしまった人は、もう音楽が書けないだろうと思った。」
(p.165)
そうです。
9月13日のN響アワー「北欧の巨匠シベリウス 魂の風景」(ブログの記事)を思い出しました。
(そこでは西村朗さんが、シベリウスが筆をおいたのはなぜか推測していらっしゃいました。)
また、大作ではないけれど即興曲第5番には、
「どこから始まったとも知れず河は流れ、生涯私の中を響き続け、死の後にも私の中を流れていくのだと思った。」
(p.165)
とも書いておられた。
館野さんの中に、シベリウスのそのような作品に通じ合うものが、あるのでしょうか。
若者だったときから、ウィーンなど他の演奏家のめざす土地ではなくて、フィンランドに住み続けてきた館野さん。
本もお好きだったようです。北欧の文学もよく読んだと言って、作家の名前を挙げたそうですが、どんな作家なんでしょうね? 気になるところです。館野さんがお持ちの、カレワラの本の写真も載っていました。
アイノラ荘の写真もありましたよ。
また、テンペリアウキオ教会の写真もありました。
(NHK海外ネットワーク フィンランド中継特集(ブログの記事)で出てきた教会ですね。)
館野さんと息子さんのコンサートがここで開かれたそうです。
クリスマスの絵本、フェリクス・ホフマンのがあった! 知りませんでした。
[173]『グリム童話 ねむりひめ』で、とってもすてきな絵だと思ったフェリクス・ホフマン。
受胎告知から、幼子キリスト降誕の夜のできごとが、描かれます。
この絵本は、ホフマンの最後の絵本となったそうです。
福音館書店の、「世界傑作絵本シリーズ・日本とスイスの絵本」となっているんですが、どうして「スイス」じゃなくて、「日本とスイスの」なんだろう? ほかのホフマンは「スイスの絵本」なのに。
奥付を見ると、普通の場合はまず初版の外国の表記があるのに、これは、
「1975 Fukuinkan Shoten」
とあるから、日本で初版だったのかな?? (わかりません)
(参考:フェリクス・ホフマン関連図書:
[298]『おおかみと七ひきのこやぎ』 [181]『王子ヤンと風のおおかみ』(挿絵))
特集「映画「かいじゅうたちのいるところ」とセンダックの絵本」
。
センダックの絵本は読んだことがありません。『かいじゅうたちのいるところ』も。有名な絵本ですよね。
自分的には、どこか日本の絵本の『おしいれのぼうけん』(?)に通じるイメージがあると、かってに思ってるところがあります…。
この特集は、映画になった『かいじゅうたちのいるところ』にあわせ、映画のこと、センダックの絵本のこと、カラーのきれいな特集ページで楽しめました。
神宮輝夫さんの記事もあったし、マザーグースやグリムを描いたセンダックのこと。
センダックの絵本のリストもあって。
また、それとは別に、エロール・ル・カインの展覧会にあわせ、紙上ミニギャラリーがあったのがよかったです。
(追記)
(参考:[335]『かいじゅうたちのいるところ』を後日読む。)
本のお仲間がこれを読んでいて、知った本です。
オランダの、スケートを運河ですべるようなストーリーを知り、[238]『銀のスケート』を思い出しました。
図書館の新着コーナーにあったので、あ、あの本だ、と思い読んでみました。
あとがきを、そっと見ると、『銀のスケート』という文字が見えたので、あ、やっぱり言及されてるのかな、と思いながら、読む楽しみに影響しない程度にあとがきを読んでいってみると、なんと! この人、『銀のスケート』の挿絵を描いたひととあるじゃないですかぁ〜!
「作者自身は、日本にはさし絵画家として、一九五二年に邦訳が出た『ハンス・ブリンカー――銀のスケート――』(M・M・ドッジ作/石井桃子訳)でお目見えしていますが、今回はじめてお話を絵を合わせた作品が翻訳紹介されることになったいきさつは(後略)」
(p.148 訳者あとがきより)
名前は忘れていたけれど、『銀のスケート』の感想を書き留めたデータを見てみると、(参考:『銀のスケート』(物語の項へ))ほんとにそうだ。びっくりです。
この本は、アメリカで出版された当時は脚光を浴びたそうですが、1994年に復刊されるまで60年間も手に入りにくい本だったのだそうです(訳者あとがきより)。
私は、ドッジの『銀のスケート』も良かったと思いますが、(似たような、と言ったら言葉は悪いですが…、)同じくオランダの運河のスケートを滑ってゆくストーリーを持つ、 作品の挿絵としてしか、(アメリカ版や他国の版の挿絵はヒルダさんだけなのか知りませんが) 日本で知られていなかったわけですよね…。
ご自分も、スケートのお話をお書きなのに…。
このたび、作品と絵もそろったものが、日本で出版されたわけです。良かったですね。やっと日のめを見れた作品かな、と思って、読めてよかったです。
カラーの絵もとてもきれいです。白黒の小さな挿絵はユニークな場面もあります。
スケート遠足で行った先で、ほかの学校の生徒と雪合戦がありました。デ・ウィットさんが背中に雪がはいって、身をよじっているところはおもしろい。学校の若い先生のお友達のわりに、おひげなんか生やしているのでびっくりしました。
みんなはつらつとして、愛情を受け、いい子たちです。おとなしいシモンだけは家庭にめぐまれず、さびしい思いをしていますが、危険がせまったとき、冷静で、機転がきくのは、シモンです。エベルトも、もっとはやく、シモンに声をかけてあげればなあ…。
スケート遠足の途中で、氷の上にでているお店で食べたケーキ・コルスチェや、農家でいただいた「雪のパンケーキ」など、よく食べていますね〜。おいしそうです。
ウィリアム・W・デンスロウ絵の、[210]『クリスマスのまえのばん』は、以前、読みました。
このクレメント・C・ムーアの詩に絵をつけている絵本で、こういうのを見つけました。そういえば、トミー・デ・パオラの絵のも、読みたいな。
この絵も、1912年出版、とありますから、古いです。 デンスロウのもそうですが、サンタクロースは、赤い服を着ていません。
黒い毛皮を着た、ちいさくて丸くふとったおじいさん。目はキラキラとかがやき、ほっぺは赤く、楽しそう。
この絵本には、英語の詩も載っています。訳と比べて読むほど、わからないけれど、訳はかなり、言葉を省略したり順番を入れ替えたりしているように感じる。でもリズムは詩のように滑らかですね。
「ダッシャー、ダンサー、プランサー、ビクセン、
よるは みじかい さあ はしれ
コメット、キュービッド、ドンダー、ブリッツェン、
みんなが まってる それ いそげ」
原詩は、語尾が韻をふんでるようになっています。
レトロな絵が美しい絵本です。
エロール・ル・カインの絵本、久しぶりです。
あんまりオリエンタルな絵本より西洋的なのが好きだし、これはなかなか読もうとしてませんでした。
でも、こういう題材こそ、ル・カインの才能と魅力が発揮させるところですね。
これは、十二支の順番で、どうしてねずみが一番になったか、というお話。うしと、一番の順番をあらそうんですけど、ねずみのほうが一枚うわてでした。ちょっとずるい気もしますけどね。
動物たちの絵は、中国ふうな感じだけど(「りゅう」なんてまたすごくてね)、私は馬って中国ふうな絵ではどんな感じかあまりわかってないのもあるし、この馬はどこか、ユニコーンみたい、と思いました。(もちろん、つのはありませんけど)
しかし、ル・カインは、題材により、いろんな風味の絵がらを使い分けますね。いろんな絵が描けて、独自性があり、異色な絵本作家さんですね。
瀬田さんの絵本、新しいものがありました。
後ろの奥付に、「こどものともコレクション2009 全15冊」と書いてあります。 福音館書店のサイトに行ってみたら、過去に出た「こどものとも」の中から 限定でハードカバーで出版されたものみたいでした。
この昔話は、あまり知りませんでした。すずめの恩返し、のテーマです。大きなひょうたんがでてくるのは、どこかできいた気もするけれど…。
おばあさんが、子どもが投げた石にあたって動けなくなったすずめを、助けて、介抱してやります。そして、放したあと、あのすずめがやってきて、たねを落としていくではありませんか。それはひょうたんの種でした。植えてみると、それは…。
あとはお決まりの、隣の、意地のはったおばあさんの登場です。
隣のおばあさんが、介抱するためのすずめを、自ら石をなげて捕らえるのには、びっくりしました。石をなげているおばあさんの絵、パワフル。しかもすずめのこしを折っちゃうっていうんですから。
そのこしを折ってる手元が、みょうにリアルに感じて(リアルなタッチの絵じゃないんだけど)、 なんか、音までしそうで…。
「「よくわすれずに、きたこと」と
ふりあおぐおばあさんの かおを、」
とか、
「たねは、
(中略)
あきになるにつれて、ひろがりさかえ、」
とか、瀬田さん的な言葉づかいなように感じました。
続いて石井桃子さんです。これは面白かった!
これから、かまきりを見たら、「きりお」という名を思い出してしまいそう。
ありこがのみこまれるところは、一瞬ぎょっとしたけど、丸い円の絵がおもしろいのと、次々とたべられていく、繰り返しの楽しさがある。
また、
「いやだあ、いやだあ。あやまったのに たべるなんて――ばかあ!」
の言い方がおかしい。
むくすけの、
「わるものお!」
はインパクトありますねえ。
くまきちのおかあさんは、よくできた人(くま)です…。
石井桃子さんの絵本です。
石井桃子さんの本は、おもに翻訳のほうが心に浮かぶのです
(参考:ブログの、石井桃子さん関連)。絵本の文も書いていらっしゃるのですね。
絵のこねこが、とにかくかわいいです。見てて、<かわいい〜。きゃー、きゃー>と読んでいました。
かなり昔の絵本なので、人間のこどもの服や髪型、車の絵などが古っぽい雰囲気なのは否めません。しかし猫のかわいさは、いつの時代も普遍ですからね。
「ちいさな ねこ、
おおきな へやに
ちいさな ねこ。」
ぽつんと一匹いる、こねこのたよりなげな表情。真っ白な空白。最後のページと対になっているのでしょうか。
スピーディで面白かったです。
少年ジンゴのいる、孤児院のダガット院長は、強欲なばあさん。ジンゴはまけちゃいないけど、自分を捨てた父さんのことは心にひっかかっている。
会いたいわけじゃないんだ。
母さんのことは大事に心にしまってある。宝物のような思い出だ。
そんな時、煙突掃除屋のスカーロック将軍が、すすはらいの用をさせるため子どもを探しにやってきた。煙突掃除の仕事からはまんまと逃げ出したけど、宝の秘密を知っちゃった。
「クジラの歯」を手に入れたジンゴは、ジンゴを引きとりにきた謎の人物に出会う。
ピーコック氏は何者? 父さんのことを知っているのか? すごい人だと思っていれば、やっぱり味方でないとも思う。2人の旅は、続きます。
ピーコック=ヘムロック=ジョーンズ氏の手際の鮮やかさや、何者かわからないハラハラ感もあって、楽しく読めました。旅程は長いのに、余計なことは書かない感じで、ちょっと、さっさとすぎていく感じもしたけど…。
ロマの人たちの言葉の響きが、風変わりで魅力的。ピーコック氏に「チャヴォー」(ぼうず)なんて、呼ばれてみたいかも。
佐竹さんの絵のジンゴがかわいいの。ボストンからメキシコまでの地図も、見て楽しいです。
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