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読書感想

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No.331〜340

[340] 丘の家、夢の家族

作:キット・ピアソン
訳:本多英明

ボリュームと読み応えがあり、読み出すと、もう少しもう少しと、止まらなくなります。

深刻なところも多々あるのです。

カナダはバンクーバー。主人公の少女シーオは、9歳。16歳でシーオを産んだ若い母親リーと二人で暮らしています。生活は苦しく、学校にもなじめず、いつも本を読んで物語の世界に入り込んでいるシーオ。

「どうしていつも、そんなにぼんやりしているのさ? なにを考えてんだい?」(p.16)

意地悪なクラスの子も、意地悪というよりは不思議そうに聞きます。

  本をたくさん読んでいるシーオ。[31]『砂の妖精』をはじめ、たくさんの児童書の名前がでてきますよ。 読んだものや、読んでみたいなと思いながら少しワクワク。

もうすぐバンクーバーオリンピックが始まりますね。

本多英明さんのあとがきを読んでいると、 バンクーバーのみならず、各国の都会でも、ものごいをする親と子の姿はめずらしくないという。ショックでした。

シーオもリーに言われて、通りで踊りの真似事をしてはお金をめぐんでもらう場面があります。学校でも、シーオだけが貧しいのではありません。クラスには、こざっぱりした格好の子と、シーオに近い境遇の子もいて、でもシーオは、どちらにも心を開かないのです。

そんなとき、シーオには夢のようなことが訪れます。突然、理想の家族を見つけ、家族の一員として受け入れられるのです。不思議だ、夢か魔法か、と思いながら、過去のことをふりきりたいシーオ。でも…。

もうひとりの、<本好きだった>少女、その人がどうかかわってくるのか…。

シーオ中心の物語で、もう忘れそうになっている頃に、そのあたりがからんできて。

現実の厳しいドラマと、タイムトラベルではないけれど、それに似た超えて結びつく感覚もあり。人間ドラマも味わった本でした。

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[339] はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー

文・絵:ばーじにあ・りー・ばーとん
訳:いしい ももこ

バージニア・リー・バートンの絵本です。

タイトルと作者名がひらがなのところを見ると、幼い子ども向きなんでしょうね。

[218]『ちいさいおうち』なんか、どうだったのかなあ。作者名はカタカナだったような気がする。

読んでみて、でもこちらの『けいてぃー』、けっこう難しい気がする。

お話は、単純だけど、バートン独特の、絵の周りの説明画というか、 「55ばりき」とは、みたいな感じで、馬が五頭ずつ並んでいたり、トラックの種類がたくさんあったり。

とにかく、周囲の絵、楕円形やカーブのついた繰り返し図模様、 東西南北の様子、細かい部分から始まってさいごは俯瞰図で、パノラマ体験、とバートンワールド、大展開、って感じ。

疲れてるとき読むと、ちょっとしんどいかも…。

バートンという人は、方向感覚とか、立体図の感覚がある人なんだな、という印象があります。 [208]『せいめいのれきし』で、「太陽がこっちで家の方角がこっちだから…」みたいに頭をひねった覚えがある。

しかし、『ちいさいおうち』がたいへん人気があり評価も高くて、 こちらはそんなに有名でなさそう(というわけではないかもだけど…)なのは、どうしたことでしょう。どこが違うんでしょう。

バーバラ・エルマンの[216]『ヴァージニア・リー・バートン 『ちいさいおうち』の作者の素顔』で、エルマンの感じていたことは書かれていたように思うけど。

  「けいてぃー」って、ひらがなで見ると、なんだかちょっと違和感を感じる。

「ケティ物語」とかの、「KATY」かな、とは感じた。原題を見ると、「KATY AND THE BIG SNOW」なので、合ってた。

だけど、絵の中のけいてぃーにはなんと、「K.T.」というイニシャルが書いてあるじゃないですか!!

どちらがほんとうなの?

「はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」と見たとき聞いたとき、どちらかというと「K.T.」という印象がある。皆さんはどうでしょう?

けいてぃーも、ちいさいおうちや、メアリ・アン([234]『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』)、キャリコ「[202]『名馬キャリコ』)? などと同じく、女の子ですね。 (参考:[305]『「月刊MOE 2009年9月号(特集「ちいさいおうちとアメリカ黄金期の絵本」)』

じょせつきをつけた、けいてぃー。じょせつきが大きなハートみたいでかわいい。

(追記)
ひらがなだった、と、教えて頂きました。岩波書店のサイトで見てみると、なんと2つの版があることがわかりました。私の読んだのは、小さい版で、「岩波の子どもの本」シリーズ。これはカタカナで書いてあるようです。大きい版のほうはひらがなで書いてあるようです。

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[338] ぐりとぐら

なかがわりえこ と おおむらゆりこ

これは読んでおかなくちゃな〜、かな〜。あるきっかけもあり、やっと読みました。

「ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
 このよで いちばん すきなのは
 おりょうりすること たべること
 ぐり ぐら ぐり ぐら」

リズムがいいですね。絵もカラフルで、青と赤の服もいいし。

あの材料でカステラって、そして、おなべでできるものなの? 私なら、ホットケーキ、と思い浮かぶところだけど、ホットケーキじゃ、ありきたりかもね。

カステラのこんもりした形と色がおいしそうです。

シンプルなのに、楽しい絵本でした。

(追記1)

福音館書店のサイトで、「ぐりとぐら」のコーナーがあって、 そこに、かすてらの理由が書いていました!! 卵をたくさん使うの、それも大きな卵でないと、みたいなこと…。ホットケーキじゃなくて「かすてら」じゃないとダメなんですね、この絵本では。カステラは作ったことがないので実際のところはどうかわからないけれど、 作者の意図するところはわかりました! 福音館書店のサイト、自由にリンクできるといいのですけれど…。ダメみたい。申請して、しかもトップページじゃないと…。

(追記2)

あっ、と思ったら、読むことになったあるきっかけ、と言っていたところに、上記の、ホットケーキじゃなくてカステラ、に関することが載っているじゃありませんか!

それは、朝日新聞2010年1月6日社会面の「探嗅」という記事の5、です。

「ぐりとぐら」が取り上げられ、神奈川の「ののはな文京保育園」で、園児たちがあの「かすてら」を作る。園長先生が、以前から取り組んでいた「物語メニュー」を作る一環だ。

園長先生は、最近、こどもの嗅覚をあらわす言葉が気になっているという。何でも「くさい」というのだ。いろんな臭いがあるのに、その表現の言葉がでない。

「もっと自然のにおいを体験させないと」

と園長先生。

中川さんが「ぐりとぐら」を書いたとき、中川さんは保母だったそうだ。当時、園長先生がホットケーキを焼いた。そこから「ぐりとぐら」の発想がでたのだろう。ホットケーキより「かすてら」、の理由が、中川さんの中にあった。

記事はこう、しめくくる。

「子どもを、あらゆるにおいが取り巻いていた時代。書き上げたのが、「ぐりとぐら」だった」

と。

におい、かすてらだけじゃなくて、周りの自然の。そういう視点で読み直してみるのも面白いな〜。

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[337] アルフレッド王の戦い

作:C. ウォルター・ホッジズ
訳:神宮輝夫

HPで一番初めにアップした本が[1]『アルフレッド王の勝利』でした。

今年2010年、一番初めに読んだ本がこの『アルフレッド王の戦い』。『アルフレッド王の勝利』の前の編にあたります。

あれから、サトクリフや、歴史のもの、読んできました。まだまだわからないこと多いけれど、このアルフレッド王は、アングロ・サクソンの王で、サトクリフのローマン・ブリテンの後の時代にあたるのですね。

ローマが去ったあと、ブリトン人が戦ったあのサクソンの時代がやってきたのですね。

だけれど、アングロ・サクソンの七王国も争いが絶えず、ウェシクスが一番勢力があるようになったけれど、デイン人の侵入に苦しめられました。

アルフレッドは四男で、自分が王になるとは思っていなかったけれど、偉大な王になったんですね。

この物語で描かれているアルフレッド王はとても魅力的です。 病気の発作に苦しめられながらも、思慮を失わず、亡くした兄を継いで、ウェシクスをデイン人から守りました。

この物語は、その王と同じ名を持つ、若い少年だったアルフレッドが、年老いた後、かつての思い出を物語る形になっています。

幼い頃片足をなくし、身寄りもなかった少年アルフレッドが、 不思議な導きで、アルフレッド殿下が王となるしるしのような役目をします。

『アルフレッド王の勝利』では、こげたパンのエピソードなど、伝説になっている事柄が描かれていましたが、こちらでも、馬勒(ばろく)とか、伝説になっている事柄なのでしょうか?

ホッジズのがまた、いいです。表紙や、内表紙のアルフレッド王のかっこいいこと。

おもな人物の絵も、それぞれあったりするので、バイキングの頭領の人とか、こんな感じだったのかなあ…と思いながら見ていました。

白亜の地面に描かれた馬の絵のまわりに陣営がある場面があって、サトクリフの『ケルトの白馬』の本を思い出していました。

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[336] ビーザスといたずらラモーナ

作:ベバリイ・クリアリー
訳:松岡享子

なつかしい。

『ラモーナとお父さん』『ラモーナとお母さん』など、あたらしいものは読んだけど、この作品の改訂版が新しくでてたので、読んでみました。

ビーザスの妹、ラモーナのいたずらや、きかんぼのところは並大抵じゃありません。

きょうだいの中の複雑な気持ちや、小さいきょうだいとの確執。おもしろおかしく読みながら、わかる、わかるとうなずける、現実の世界に沿ったお話は、人間の素直な心の気持ちを表しています。

絵画教室の、青い空に緑の馬の絵

おもいだしました。色合いがあまり良くないとビーザス自身が思ったことや、 先生にあまり認められなかったことだけ覚えていたけれど、ビーザス、さいごは、やったね!

ラモーナが読んでとせがむ、スチームシャベルの絵本、「ちっちゃなスチームシャベル」

スチームシャベルというと思い出すのは、バージニア・リー・バートンの[234]『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』

「スチームシャベルに目なんかついているはずがないじゃない」
(p.13)

と思うビーザス。

関係ないかもしれないけれど、ダーリングの挿絵の、涙をこぼしているスチームシャベルを見ながら、なんか、あのバートンの絵本と関係あるのかしら…? と、思っていました。

クリアリーは、バートンの絵本になにか言いたいことでもあるのだろうか?

というのは、ただの想像ですけれどね。

面白さに、読みすすめていました。面白いだけじゃなく、こころに響く、作品です。

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[335] かいじゅうたちのいるところ

作:モーリス・センダック
訳:じんぐうてるお

ついに読みました。『かいじゅうたちのいるところ』。

映画になる前から、有名なのはわかっていたけど、なんとなく手に取れなかった作品。

[328]『月刊MOE 2010年1月号』の特集も読んで、やっぱり本物は読んでいたい。

で、読んだら、映画の中では、ちょっと複雑な家庭みたいなこととか、かいじゅうたちとのやりとりの中で起こってくることとか、あったようだけど、そういうことがらはなかったし、わりと短い作品だったので、一瞬、あれ?これだけ?と思ってしまいました…。

絵や細かいところはまた読んでみようかな。台詞のない、見開きの3ページの絵は特にみなくちゃ、ね。

子どもの心の中にある、欲求不満やいかりの感情をあらわしている、ということや、それを抑制したりする力をつけたり、そういうことが描かれているみたいに、MOEで読んだ記憶があるんだけど、そういう深い、絵本だったのね。

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[334] ねむれないの? ちいくまくん

文:マーティン・ワッデル
絵:バーバラ・ファース
訳:角野栄子

おおみそかになりました。あせるー。簡単に書いておきます。

表紙のちいくまくんのかわいらしいこと。足の先を手で持って、おおきなくまさんを見上げている姿。

読んでみると、お父さんくまとこぐまのお話ではないところがいいなと思いました。ふたりはどんな関係なんでしょうね。

おおくまさんが読んでいる本が、この絵本みたいなんですよ。

そのユーモアと、ちいくまくんがねないので、たったの三ページしか読めない、と言ってぶつぶつ言っているのが、本当に3ページに対応しているのかな、とか思いながら読んでいました。

おおくまさんのおおきな腕のなかで、すやすやねむっているちいくまくんの絵にいやされるー。

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[333] おもいでのクリスマスツリー

文:グロリア・ヒューストン
絵:バーバラ・クーニー
訳:よしだしんいち

バーバラ・クーニーの、クリスマスの絵本。もうひとつみつけたのですが、まずはこれを。

吉田新一さんが訳で、後ろの解説をしているのも嬉しかった。

クーニーの絵は素晴らしいです。自然、木のはえた岩、そしてドレス。

しかし、あとで吉田新一さんがこの絵本の背景や、精神を解説しているのを読んで、感動もし、この絵本の精神をあらためて知ったのですけれど、読んでいて、無粋な読み方かもしれませんが、ハラがたってしまうところがありました。

それは、なんで、先生は、大きなそでのドレスが必要だということを、もっとはやく伝えないんだ、と。

お母さんも、ツリーのこと、もうちょっとはやく用意できるのに…? お父さんが帰ってくると、信じているとしても…。

夜遅くから出発して、あれだけのことができるわけない…。「だいたんな男しかのぼっていかない」ところなのに、お母さんとルーシーだけで。帰ってきてからも、まだ、あれだけのことをしている。心配してくれた牧師さんをからかうなんて…。

  と、いうのは、現実的すぎるでしょうね…。

というのは、きっと、読む側の自分に、いろいろな雑事をこなすことができてないから、そう思ってしまうんでしょうね。

それはともかく、アパラチアの伝統的クリスマスを描いたこの絵本、一見です。

吉田さんのあとがきから、この言葉を引用して、贈りたいと思います。

「この物語は公共のツリーとそれを立てる名誉に対する誇りと責任を描いたもの」

ちょっと背筋がのびる気がします。

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[332] あすはたのしいクリスマス

文:クレメント・ムーア
絵:トミー・デ・パオラ
訳:かなせき ひさお

ムーアの詩「クリスマスのまえのばん」の、絵本の中でトミー・デ・パオラのを読めました。

タイトルが「クリスマスのまえのばん」ではないので、同じ題材だとは気づかれにくくて、ちょっと損をしているかもしれませんね。

でも、同じ詩から、こんなにたくさんの、それぞれの絵が生まれてくる。素敵なことだと思います。

トミー・デ・パオラ版では、サンタの物音に気づいて起きだして様子をうかがっているのは、 この家のお父さんということになっているので、あれっ、そうだったのかな?とびっくりしました。英語の原文ではどうなっているんだろう。

訳も、前に読んだジェシー・W・スミスの絵の[326]『クリスマスのまえのばん』より、より原文に近いような気がしたのですが、どうでしょう?

つやつやほっぺのサンタさんの顔。原文でそんなイメージかな、と感じたような、人の良さそうな血色のよいサンタさんの雰囲気がでています。

この絵本では、サンタさんは赤い服を着ていました。

「けむりのはなわが あたまをかこむ」

とあったので、ジェシー・W・スミスの絵でも、なにやら頭の周りに囲んだ絵があったなあと思い出しています。あれは、パイプのけむりだったのですね。

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[331] 子どもの生活・こどもの本 1979年国際児童年シンポジウム

羽仁説子・田沼武能・松岡享子・竹内セ

国際児童年を記念して行われたシンポジウムの記録みたいです。

お話の言葉をそのままではないかもしれないけど、収録した形になっているので、話しことばで、読みやすい部分もありました。

この中で名前存じ上げてるのは、松岡享子さんくらい…。

松岡さんの講演、読んでいると、この時代でももうだいぶ前ですが、この時点でも、子どもが文庫に来て本を読んで聞かせるときの、話への入り込む力が昔より弱くなっている、と。

そして、そのことに関して、「くりかえし」のお話として、 「三匹の子ブタ」などの本が挙がっていました。

松岡さんが挙げていらっしゃったものとは訳が違うと思いますが、 このあいだ、[320]『三びきのこぶた』は読んだばかりだったので、そのあたりが興味ぶかかった。

うしろに、資料があって、中に子どもの本専門店のリストなどあって、見ていたら楽しいです。わー、今でもこの書店あるのかな。

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