プログラム |
後2時00分 開会あいさつ
2時05分 第1部 講演 演題「古民家再生を地域の力に」 講師 建築デザイナーカールベンクス
3時00分 休憩
3時10分 第2部 対談 カールベンクス氏、安中市長 茂木英子氏、地域づくり団体未来塾代表 松本立家
3時40分 終了
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主催者挨拶 |
皆さん、こんにちは。
お忙しい中、講演会にご参加いただき誠にありがとうございます。
本日の講師でありますカールベンクス氏は、新潟県十日町竹所を拠点に、数々の古民家再生を手がけ、日本の伝統や文化、歴史を次世代に伝えています。
また、若者を呼び込む一つの施策として、市営住宅やシェアハウスのデザイン、街並みの修復にも統一した色やデザインを使用し、魅力あるまちづくりにも力を注いできました。そして、移り住んだ自然豊かな、竹所の住民の皆さんと共に、ベンクスさんがデザインした「竹所プロジェクト」で夢を共有し、取り組んでいる地域づくりは、今までにない「魅力づくり」ができたらと考えています。
最後に、今日の出会いが皆様の、夢や思いを叶える後押しになれば幸いです。
2016年2月14日
地域づくり団体未来塾 代表 松本立家
地域創造集団楽舎 会長 内田浩良
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新潟県十日町市松代2074-1
www.k-bengs.com
カール・ベンクス プロフィール
1942年、ドイツ・ベルリン生まれ。
Fresco(フレスコ)・家具職人の父の影響を受け、日本文化に関心を持つ。
ベルリン・パリで建築デザインオフィスに勤務しながら、建造物・家具の復元修復を学ぶ。
1966年、空手を学ぶために日本大学に留学。以降建築デザイナーとしてヨーロッパや日本で活動。
特に日本の民家に強く惹かれ、ドイツに移築する仕事に携わる。
1993年、新潟県十日町市竹所(旧松代町室野)で現在の自宅(双鶴庵)となる古民家を購入、再生に着手する。
2001年、新潟木の住まいコンクール入賞
2007年、第2回安吾賞 新潟市特別賞受賞
2009年、新発田市内に「カールベンクス古民家ギャラリー」がオープン
2010年、ほくほく線松代駅近くの商店街にあった築100年の旅館を再生する松栄館夢のプロジェクト ベンクスハウス完成
2015年、テレビ東京の密着ドキュメンタリー番組〝Crossroad"で放映 大きな反響を呼ぶ。
現在、カールベンクスアンドアソシエイト(有)代表取締役
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~ 竹所の軌跡=奇跡の桃源郷~
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新潟県十日町市は県南部に位置し、人口56千人ほど。その中心部から北西の山間部に入ったところに竹所はある。
氏は再生する古民家探している時に米を買いに来た友人に誘われて山間部に入った〝竹所”を訪れ、今住んでいる家周辺の景色に一目ぼれ、帰る時には購入を決めたという。
氏は「山奥に別荘を持つことではなく、地域と一緒に過ごすこと。豊かな自然の中で、住民が支え合う暮らし方そのものが私の夢でした。スイスか南フランスか・・・。そんなときに竹所に出会ったのです。」と述懐されている。
竹所集落は昭和34年(1959年)には39世帯237人が暮らしていたが、平成に入り、9世帯にまで減り「存続か否か」の決断を迫られる状況であったという。
その後、平成6年(1994年)の氏の移住を契機に集落には氏の古民家再生理念に惚れた都会からの移住者が増え、平成27年(2015年)12月1日現在は10世帯28人となっている。
若者や子供が増えて高齢化集落(限界集落)を脱し、〝竹所のキセキ”といわれている。 キセキ=奇跡といえるのではないか。 —詳しくは著書古民家の四季—
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立ち席も出る盛況振り |
講演終了後販売した著書にサインを求める列を熟すベンクス氏 |
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著書「古民家の四季」取材・構成 片岡義博 新潟日報事業者 A5版128ページ 定価(本体1,905円.+税) 日本の四季を章ごとに分け、田舎への思い、日本の建築と職人の評価、古民家再生手法などに著者の持論が展開され一気に読み終えた。 |
左掲の著書「古民家の四季」にサインを
本は売り切れ順番待ちの長蛇ができた。
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― 講演を聴いて ― |
近年山間部を中心とした多くの町村で過疎化が進み、限界集落化も現実的懸案として社会問題化している。
過疎の進む山間集落では地方創生策として行政を中心に空き家バンクの創設、地域での就業先の斡旋、各種インセンティブの供与などの策を講じて、出生率の向上、子育て世代の移住をすすめUターンやIターン者の確保に取り組んでいる。
過疎化策の例を挙げれば、住民に占める65才以上の高齢者の割合(高齢化率)が全国一高いとされる群馬県南西山間奥地に位置する南牧村では平成28年1月末現在60%の大台に達したことが住民基本台帳ベースで分かった。
既に当集落は2014年に有識者団体「日本創成会議」の試算で、今後30年間の若年女性の減少率が全国で最も高く、自治体機能を維持できなくなる「消滅可能性都市」と位置づけられている。
危機感を募らせる村では各種打開策を講じ、官民による情報発信やイベントを行っているが、即効性のある奇策はなく、長谷川村長は「高齢化率を計画的に下げていくため、一つ一つの政策に着実に取り組んでいくしかない」と上毛新聞の取材に対し話された。
この南牧村では平成28年1月31日村活性化センターでフォーラム「なんもく移住・就職フェア」を開催した。村内の就職口を紹介するだけでなく、当日村長らが希望者を面接、条件が合えば村内施設の職員として採用を即決するという全国的にもユニークな策を講じた。その結果県内の40~60代の男女やその家族ら6組が面接に臨み、2組が即合格を決めたという。
―2/1 ’16 付 上毛新聞より―
本講演会を開催した安中市でも山間部の集落を抱えている。一方市街区域でも人口の減少は免れず、今後諸策を講じて行くことを検討しているという。
そんな状況下、茂木市長を長とする行政と民間の地域づくりの団体未来塾の代表松本氏達が企画したイベントと見られ、近隣の市町村関係者も多く出席されていたようだ。
参加定員180名のところ当日受付もおこなったこともあり、何と200人を超え、多くの立った聴衆者には主催者側も驚きを隠せない盛況振りであった。
奇跡の村興しとも言えるカール・ベンクス氏の古民家再生手法がここ安中市にそのまま通用できるとは思われないが一つの地域興しの有効策として採り上げたことは大いに当事者意識を刺激し機を得た企画であったと評価できる。
主催者から地域の古民家案内をかね、ベンクス氏を松井田町五料の茶屋本陣中島邸などへ案内し、前泊は明治16年に総欅造りで建てられた部分を残す、霧積の温泉古宿「金湯館」へ泊まられれたとの紹介があった。
ベンクス氏は、異邦人でありながら、我々自国民には決して快適な住環境とは思えない田舎の奥地、それも有数の豪雪地帯を気に入り、スイスや南フランスの田舎にも優る世界一美しいところと言って憚らない驚き。.地域住民に溶け込むと言った考え。古い物とりわけ古民家に日本の美や伝統工芸の価値を見出し、再生を通して維持、保存を訴えている姿勢に感動し、頭が下がる思いをさせられた。
古い物を大事に後世に引き継ぎながらも、部材、様式、色などは100%古い物に拘ることなく、懐古趣味でなく、お施主の嗜好や希望を反映させながら、現代社会に受け入れられる伝統とモダン、和風と洋風の融合など味付けした氏独特の味付けをした時代のなかに息づく古民家再生を行っている。
例えば壁はハーフティンバー様式、色も古来の白黒に拘らず、淡い黄色,さくら色、べんがら色、グレーを使う。部材ではドイツ製の天然スレートや木枠サッシの複層ガラスも使う。
こんなところが若い人達の共感も得て、話題の人気者となっているのではないだろうか。
氏の再生手法の基本は古い構造材だけ生かし、他は新築同然の建築という。古部材の生かし取り、古来伝統の建築技術、古材の再調達などコスト面が気に掛かる。
話の中で、大手ハウスメーカーの新築と変わらない主旨の発言をされていたが、もっと超えるのではなかろうかとの疑義は残る。
古民家を取り壊すのではなく、コストをかけても後世に引き継ぐ付加価値を付け新たな価値ある財産として上質で価値ある遺産に再生することが氏の持論のようだ。
限られた講演時間内では理解しきれないところが多々あったが、氏の著書「古民家の四季―田舎は田舎のままでいい」や配布された資料「とおかまち 特集竹所のキセキ」を読み
改めて氏の人柄、活動に感動を覚えるとともに敬意を感じざるを得ない。
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ベンクス氏の住居がある竹所は十日町に合併前は松代町。
合併後は十日町市竹所となり住所表記には松代は入らない。
しかしながら合併前の松代エリアを総称して松代と呼んでおり竹所も松代とのこと。
—十日町観光協会 Tel(025)757-3345
Karl Bengs and Associates, Ltd.
カールベンクス アンド アソシエイト(有)
〒942-1526 新潟県十日町市松代2074-1
TEL025-594-7882 http://www.k-bengs.com |
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