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読書感想

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No.271〜280

[280] チョコレート工場の秘密

作:ロアルド・ダール
訳:田村隆一

旧版のほうで読みました。

ジョニー・デップの映画は見ました。
(参考:ダイアリーの、映画の感想

映画の、独特の雰囲気、奇抜な感じは、監督の独特なセンスなのかな、と思っていました。でも、本を読んだら、(それは違うところもありましたが)ほとんど、ストーリーはそのままと思えました。

ワンカさんの年齢とか(キャラクターも)、ラストシーンや、砂糖の船の大きさなんか違うかな?とかそういうのはありましたが、寝台が一つしかなくて、そこでお年寄りたちが寝ているとかは、本当に本でもそうだった。

だけど、それでも、なにか他のものを見たような感じ。そんなに独特に感じなかったんですよ。

それでもウンパ・ルンパ族が歌うところは、映画を思い出しました。

ワンカさんが皆の目の前に現れたときの絵が好き!

シルクハット干ブドウ色の燕尾服山羊ひげをはやし、顔は明るく輝き、利口そうで、リスみたいにすばやいワンカさん!

ジョセフ・シンデルマンという人の挿絵みたいですね。(表紙の絵(てのり文庫)は、中の挿絵と絵がらが違うけれど…、誰でしょう?)

燕尾服のすそをひらめかせながら廊下を走って突進していくワンカさん、好き。とても小さい人なんですね。

子どもたちの名前、「バイオレット・ボールガード」の「ボールガード」って、バイオレットがボールみたいになることと関係あるのだろうか。「マイク・テービー」の「テービー」って、テレビみたい。

「わたしには、子どももなければ、家族もない。となると、わたしが老いぼれて、足腰が立たなくなったとき、わたしにかわって、いったい、だれが、チョコレート工場を、経営するのです? 」
(p.268)

このセリフにはじんときました。

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[279] マツの木の王子

作:キャロル=ジェイムズ
訳:猪熊葉子

先日、フェリシモ出版の[276]『ムッドレのくびかざり』を読んで、うしろに載っている、他の出版物のリストを見て、この本を知りました。猪熊葉子さんの訳。読んでみたく思いました。

マツの木の林がありました。まわりには、他の木もはえているのですが、マツのはえているところには、他の木ははえませんマツの美しさはいちばんで、まんなかの林は、マツの木だけがおさめていたからです。そのまんなかに、マツの王さまの土地があって、マツの王子さまもそこにいます。

そんなある日、たいへんなことが起こります。マツの間に、しかも王子さまの隣に、シラカバの木がのびてきたのです。

マツの王子とシラカバの少女はお互いにすきになりました。

私は、シラカバの少女が切られてしまったとき、王子がばったりと倒れるところが、印象にのこりました。

そこから、王子と少女の長い、生涯の旅がはじまりました。

猪熊さんの(?) 「解説 原作者キャロル=ジェイムズについて」を読むと、排他的なマツの王国は、イギリスの 「階級意識を風刺しているようにもおもわれます」(p.167) とありました。 なるほどと思いました。 また、「愛と犠牲への賛歌」(p.167) はアンデルセンにも通じる、と。

そうですね、確かにアンデルセンを思わせる感じもする。

王子と少女は、「愛と犠牲」の後も、さまざまな困難に出会います。

「ふしあわせだったから、こちこちになって、きしんだんだよ。また、すっかり、もとどおりになったね!」(p.156)

盛り上がってクライマックス、の後の人生のほうが長いといってもいいです。

「ほとんどはしあわせにすごした、じぶんたちの一生」(p.161)

と言えて、よかった。

解説で、ジェイムズが尊敬している作家の中に、トールキンがはいっていたのが嬉しかった。

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[278] ぞうのババール

作:ジャン・ド・ブリュノフ
訳:やがわすみこ

プーランクの 音楽物語「ぞうのババール」を聞いて、絵本も読んでみることにしました。
(参考:ブログの、音楽物語「ぞうのババール」の記事)

一度読んでから、番組をもう一度見ながら、本も見直してみました。驚いたのは、文章や言葉が少し違うところや、文章の順番が違うところがあったこと。

本ではあって、朗読では抜けているページがあるのは、ブリュノフの構成自体がそうなっているのかな? それとも番組上?
言葉が違うのは、訳が改版とか、そういうことがあったとか? それとも番組上、聞き取りやすく変更されたのか?

言葉が違うところ:例

「きれいな みち すてきな じどうしゃ」(p.10)「きれいな 大通り りっぱな じどうしゃ」

こういうのは、わかるんですけど、

「なんとなくさびしかった」(p.24)「やっぱりさびしくてたまらなかった」

これはだいぶニュアンスが違うと思う。

「ババールのけっこんしき」 「ババールのたいかんしき」
「オーケストラにあわせ とりたちがうたう」

といった言葉も、絵本のほうにはなかったです。

ババールとおばあさんが体操をしているところの音楽は面白かった。かろやかな音と、どしんどしんした感じの音、二人をあらわしているのかな、と思った。

音楽にはなかったけれど、絵本のほうで楽しいのは、ババールが服を調える場面。りっぱな紳士に変身です。

ババールの「写真」の絵や、星空の下のババールとセレストの、白黒の絵は他の絵とまた違う味わい。

また、ベッティーナ・ヒューリマン[70]『ヨーロッパの子どもの本』で、ブリュノフとババールのことが取り上げられていたのを読み返してみました。

『ババール』ははじめて読んだので、ヒューリマンさんが、『ヨーロッパの子どもの本』でババールについてどんなことを書いていたのか、覚えていなかった。

私には、(まだ一冊しか読んでいないけど)、ババールは魅力的だけれど、ブリュノフの書く動物の絵はなんだかヘタウマな絵柄…と思えるむきもあるのだけど、ヒューリマンさんによると、ババールは、大変すぐれた絵本らしい。

シリーズを通して、あのか細い「おばさん」の人物像。そのあらわすもの、その果たす役割。
また、ブリュノフがスイスで療養しながら描いた話であり、舞台はアフリカであっても、そこに現れているのは、あたたかい<フランスの家庭>の姿である、と。

そういうことが書いてあって、そうなんだ…と思いながら読んでいました。

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[277] 雪の写真家 ベントレー

作:ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン
絵:メアリー・アゼアリアン
訳:千葉茂樹

[83]『雪原の勇者 ノルウェーの兵士 ビルケバイネルの物語』の絵の、メアリー・アゼアリアンの絵本。

読みたいと思っていた、『雪の写真家 ベントレー』、やっと読めました。

文章はジャクリーン・ブリッグズ・マーティンというひと。

アメリカのバーモント州の豪雪地帯に住む、ウィリー・ベントレー。

「ちょうやりんごの花もきれいだけれど、
 雪の美しさは、どんなものにもけっしてまけない。
 ウィリーは、そう思っていました。」

農夫の家に生まれた彼は、雪が大好きでした。顕微鏡で見た雪の結晶の美しさに魅せられます。同じ形は二つとない。スケッチを重ねます。

やがて顕微鏡付きのカメラで写真を撮り始めます。

何度も失敗しても、くじけません。他の人が雪の写真なんぞと笑っても、あきらめることなく、 雪の研究を続けました。

本当に雪が好きだったんだな、と思います。

まったくのアマチュアとしてはじめたことでしたが、彼の長年の努力は、学者からも認められるようになります。しかし、それには、長い長い年月がかかったのです。

そんな彼の生涯を、アゼアリアン独特の雰囲気をもった版画で描いています。

文章もまた、ウィリーのことをうまくまとめ、心にのこる本にしていると感じました。

「わたしは、たったの1度でも、雪の日をむだにしたくないんだ。
いつ、どんなにすばらしい雪が、ふってくるかわからないからね」

友だちに言ったという、ウィリーのその言葉から、ウィリーの雪に対する気持ちが伝わってきます。

日本の雪の研究者、中谷宇吉郎氏も、研究をはじめたのは、ウィリー・ベントレーの雪の写真を見たことがきっかけとなったそうです。

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[276] ムッドレのくびかざり

作:イルメリン・サンドマン=リリウス
訳:木村由利子

教えてもらいました、イルメリン・サンドマン=リリウス

図書館の本を調べてみると、前に手にとって、読んでみたいと思っていた「ムッドレのくびかざり」の作者の人だと知り、読んでみようと思いました。

「訳者あとがき」によると、作者は、「スウェーデン系のフィンランド人」(p.193)ということです。ネタバレになってしまうと面白くないですが、北欧の民話などでなじみの「トロル」などがでてくると書いてありました。

私は「川のぬし」とか、「海魔女」というのは知らなかった。川でせんたくしている人の話って、どこかで読んだんだけど…。イギリスの伝説だっただろうか…? それとは関係あるのかな。ここではこわくなかった。

トロルは、「オサビシトロル」という名前で出てくるんですが、絵がとても可愛らしい。 小さいんですね。こんなトロルははじめてみました。

ストーリーですが、少女ムッドレが、お母さんからもらったサンゴのくびかざりをなくしてしまうことからはじまります。

お人形の「アステル・ピッピ」といつも一緒のムッドレ。(このアステル・ピッピが普通にしゃべったりするところの雰囲気がおもしろい) 庭の奥の「ひみつのお庭」。その北には山があります。そこでくびかざりをなくし、なんだか山も不気味でこわいことになるのじゃないかと、ドキンとしました。

刈らなくてはいけないほど毛がのびた「イッカクジュウ」の絵が好きだな。 絵は、ベロニカ・レオという人で、でも、奥付け(というのか原書のタイトルとか書いているところ)にはその人についての記述はないみたい…。 ちょっとユーモアを感じる絵。本の表紙の絵は同じ人…?

いろいろ冒険はするけれど、ほのぼのとした、素朴なまったり感もあるような、お話でした。

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[275] われた たまご

フィリピン民話
再話・絵:小野かおる

一読して、びっくりしました。これって、言葉が積み重ねになってる!

内容は違うけど、言葉がどんどん積み重なっていく、マザーグースの「クリスマスの12日」みたい!
(マザーグース、ほかにも積み重ね歌、あるかな)

みふうずら の卵が割れてしまった。うまの足あとが残っている。

「 うま うま、
 どうして わたしたちの すのうえを かけたんだい。
(中略)
  それは なんとも おきのどく。
  にわとりのやつが ぎゃあ ぎゃあ さわいだので、びっくりして かけだしたのさ。」
(p.4)

だんだんと言葉が増えます。

「 さるが おどろいて やしのみを おとしたので にわとりが さわぎだし、うまが かけだしたので、
(後略)」
(p.14)

というように次々とさかのぼって、言葉が増えていく。

フィリピン民話ということで、ぜんぜん場所は違うのに。似ていることって、あるものですね。

*マザーグース「クリスマスの12日」
(参考サイト:「大好き!マザーグース」のサイトさんより、「クリスマスの12日」のページ

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[274] あかいくるまのついたはこ

作:モウドとミスカ・ピーターシャム
訳:わたなべ しげお

アメリカで読みつがれた絵本だそうです。

この絵は、どんな手法で描かれているのでしょうか? かすれたような独特のグレー色が、目をひきました。

ページの周りに赤とオレンジの飾り枠がついているのもきれい。絵本全体がぱっと明るくなります。

庭の木の下にあかいくるまのついた箱がある。木戸があいているので、動物たちたちは、興味津々。

「なんだろな?」

めうしからはじまって、順々にのぞいていきます。

かあさんがも が、「しいっ!」と、こどもだちに言っている絵がおもしろい。おかあさんのほうがこどもたちより、声、でかい…(汗)

さてさて、はこのなかにいたのは?

みんなあつまって見ていますよ。太陽もみています。

しめだされてしょんぼりしている、動物たちの目に涙の絵が、かわいいのです。

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[273] でんでんむしの かなしみ

作:新美南吉
絵:井上ゆかり

新美南吉さんでは、「ごんぎつね」があると思う。

日本の童話は、あまりしらなくて、「ごんぎつね」や、「てぶくろを買いに」、も、きちんと読んだり覚えたりしていない。

前にやっと、浜田廣介[161]『ないた赤おに』[154]『りゅうの目のなみだ』を読んだ。

浜田廣介と新美南吉の区別すらついていない自分だけど(汗)、「ごんぎつね」は読みたいと思っている。

「でんでんむしのかなしみ」は、そんな中で題名くらいは知り、今回、読むことができた。絵本になっているものを読みました。

開いてみますと、

「いっぴきの でんでんむしが ありました。」(p.2)

と、単語ごとに区切られた、文章がならんでいます。

無駄な言葉はありません。単刀直入に、語られる言葉が、かなしいけれど、美しい。

次のページに行くと、その悲しみの深さにショックを感じる言葉が。

それにしても、自分を「ふしあわせな もの」(p.6)というでんでんむし。 かなしみを持っていること、ふしあわせ ということがイコールとして結びつかないものを感じるのだけれど。

からのなかにかなしみがある、というでんでんむしに対し、おともだちは 自分もせなかにかなしみがあるという。

悲しみがせなかにあるという感覚は、私たち人間も、共感できることではないだろうか?

この本にはもう一遍、「きょねんの木」という話が入っている。

また違うけれど、アンデルセンの「もみの木」という話を思い出しました。(でもあちらの話は悲しいし少しこわい。)
(参考:[82] 『アンデルセン童話全集2』

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[272] 雑誌 旅 2008年11月号 より 特集 プリンスエドワード島

図書館で、「アン」って書いてあるのを見つけました。はじめて読んだ雑誌です。

写真がとてもきれい。

旅の雑誌らしく、プリンスエドワード島での宿泊施設の情報もあり。キルトやスイーツ、文化のページもありました。「住民の7割がケルトのルーツを持つ」(p.54) そうです。

やはり、「グリーン・ゲイブルズ」を「再現」したお家が興味。 <パフスリーブのドレス>も飾られています。

また、モンゴメリの足跡、生家や下宿先の紹介のページ。途中で人手に渡ったりしても、時代考証をしたり、雑貨もアンティークをそろえたり、管理している人たちの思いが伝わります。

あちらのお家って、ほんときれいですね。キルトや雑貨、みているだけでも楽しい。

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[271] 冬のオーレ

作:ベッティーナ・アンゾルゲ
訳:とおやま あきこ

すごい絵本かもしれない。

表紙は、澄んだ青い空と雪景色はクリアだけど、真ん中の男の子(この子がオーレだな)は茶色い上着だったので、どこか素朴な土着的なにおいのする絵本かな、と思いました。

でも、ページをめくっていくと、目を奪われるような、透明感のある絵がありました。

白く、青い木々からつららの下がる「つららの森」、子ジカに会った森は、シラカバ(?)でしょうか、木々が白くて透明に透けているようでした。遠めがねで見た、「月の光の家」の美しさ。

話の筋は、風変わり。展開がどんどん変わるような感じです。

オーレとリースヒェンの二人、「ちびのオーレも、すこし大きく」なった、とあるからかもしれませんが、どこか、「雪の女王」の、カイとゲルダを思い出しました。(オーレは大人になったわけじゃありませけれど。)
(参考:『アンデルセン童話全集2』の感想

今まで知らなかった、この人。福武書店でいくつか絵本がでていたようなので、また他のも見てみたい。

とおやまさんの解説「メルヒェンの森へ」に、

「ドイツの森はグリムやロマン派のメルヒェンのふるさとです。」

とあったので、ドイツが舞台なんでしょうね。

「オーレ」という名前、ひとつ前のベスコフの絵本、[270]『おりこうなアニカ』に出てきた「ウッレ」に少し似ているなと思いました。

ドイツとスウェーデン。言葉、似ている語源なんでしょうか。

(追記)
(参考:[316]『風の子リーニ』を後日読む。)

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